未来志向の民主主義に大切なこと

西田 吉蔵  /  読み終えるまで7分  /  アクティビズム

政策に対し、みずから解決策を考えはじめる若者たち。日本版気候若者会議の持つ可能性。

写真:日本若者協議会

いま、ヨーロッパを中心に、気候市民会議の運動が広がりをみせている。
フランスでは、黄色いベスト運動・国民大討論会に示されたエコロジートランジションと政策への市民参画の強い要望に対して、マクロン大統領が応える形で気候市民会議が開催された。この気候市民会議には、2019年10月から2020年6月までに政府が予算を投じ150名が参加した。この一連の動きをきっかけにヨーロッパ各地で、気候市民会議が広がりはじめている。気候市民会議とは、一般市民が専門家からのインプットを受け、対話や熟議を繰り返し、気候変動対策を提言書にまとめ、大統領や政府に提出し議会で審議するものだ。

このヨーロッパの動きが日本にも伝播してきている。
2020年11月から1ヶ月間、全国に先駆けて「気候市民会議さっぽろ2020」が開催された。この会議でまとめられた提言書は札幌市に提出され、気候変動対策行動計画の策定や実行などの取り組みに活用された。2021年5月には、神奈川県川崎市で「脱炭素かわさき市民会議」が開催された。2022年7月には、日本初となる地方自治体主催の「武蔵野市気候市民会議」が開催される予定だ。また、埼玉県所沢市でも気候市民会議「マチごとゼロカーボン市民会議」が開催されると発表され、渋谷区では若者の議論と発信を目的にした「シブヤ若者気候変動会議」が開始。横浜市でも新たな市民会議の動きが起こるなど、各地域で行政と民間とが協力しながらの開催が模索されている。

日本若者協議会は、2021年に様々な若者団体メンバーによる共同事務局を立ち上げ、団体に所属していない個人の若者や多様な背景をもつ参加者を募り、「日本版気候若者会議」を開催した。日本は若者が政策形成過程に参加できておらず、まずはその課題を解消しなければならないという問題意識から若者主体の会議体とした。将来、安全に暮らすことのできる地球環境や気候が、生活や仕事のベースに必要であると感じている若者が100名規模で10週間にわたり参加し、専門家からレクチャーを受け、参加者同士で対話・熟議し、ゼロベースから提言作りをおこなってきた。

未来志向の民主主義に大切なこと

写真:日本若者協議会

2022年には2回目が開催され、需要、生活、産業、国際人権、未来社会の各テーマに分かれグループワークを行い、若者視点での気候変動問題の解決策を参加者自身で提言書にまとめた。日本版気候若者会議2022提言書本文から主要な提言を抜粋すると、カーボンフットプリントの表示義務や太陽光発電設置の普及、産業転換と公正な移行、人権デューデリジェンスのガイドライン策定、気候市民会議の設置などがある。経産省、環境省、農水省といった政府、自民党、立憲民主党などの主要政党、経済団体では経団連やJCLPに提言書を提出した。

日本版気候若者会議の意義は、政策提言という形で若者の大きな声を可視化し、社会に意見を届けること。また、世の中に対して継続的に働きかけ定点観測し続けて、現時点の社会の本気度を知れること。気候若者会議は「誰が本当によりよい社会を作ろうとしているか」を問うリトマス紙となっている。日本政府が掲げる2050年カーボンニュートラル、NDC46%(2030年までに2013年比で温室効果ガス46%削減)がどれほど難しいのか若者自身が知り、未来を担う彼ら自身で解決策を作っていくことが「気候変動解決に必要な社会変革」に大切なことではないか。これらを通して未来志向の民主主義の仕組みとして社会実装していくことが重要だと考える。気候変動問題がここまで深刻化した背景には、選挙ごとでしか見れない短期目線の政策・政治問題がある。「未来志向の民主主義」とは、子どもやその子どもたちなど、これから生まれてくる命を含めた、100年先を見据えた社会全体の調和や幸福を探求するような社会と定義している。気候変動が過去30年以上にわたり問題視されてきたにも関わらず、解決されなかったのは、この考え方が政策決定者にも投票する市民側にも不足していたからだろう。

日本で「代議制(代表制)民主主義」に対する不満が高まっていることを考えると、日本でも政府が積極的に市民、特に若者を巻き込む取り組みが求められている。提言の中でも、気候変動対策に関して若者や市⺠の意⾒が⼗分に反映されているとは⾔えない現状に対して、若者や市⺠の政治参加を促す提言も見られた。「気候市民会議の開催」がその代表であるが、そのほかに「選挙供託⾦の減額及び没収制度の撤廃」が挙げられた。日本若者協議会で推し進めている政策でもあり、多様な候補者が立候補できるように「被選挙権の年齢引き下げ」とともに働きかけている。日本の被選挙権は昭和20年代から長らく変わっておらず、衆議院議員は満25歳以上、参議院議員は満30歳以上のままとなっており、現在は被選挙権年齢の引き下げに向けた議論がなされ、今回の参議院選の各政党の公約に入るなどしている。これが実現すれば、若者が関心をもち、政治行動をとることにもつながっていく。

選挙のたびに誰も望んでいない世代間の分断が起こるのは、与野党政治家の短期目線での課題とそれを問題視しないメディアの影響であることにも触れておきたい。未来に向けて時間軸を縦に使うことで横軸の世代間分断をなくし、お互いに合意できる政策を実現できるかもしれない。政治家の皆さんにも分断を繋ぎ未来志向の視点で国政に取り組まれることを望む。

そして何より、これからどのような社会や政治が必要なのかを、若者や市民がみずから考え、いわゆる“普通の人”がより良い未来のために実践し、社会づくりに参画していくことが最も重要ではないだろうか。選挙はそのための一つのツールであり、最も影響力が大きく、最も容易に政治参画できるものだ。「若者よ、投票に行け」と言うのは簡単だが、未来志向の民主主義を実践するためには、若者が政治参画できる仕組みをつくることが必要不可欠。そうした仕組みによって政治や社会への自己効力感が高まり、投票に行って当たり前な文化が根付き、結果的に投票率も向上する。そして、投票することで新たな仕組みを作ることにも繋がりポジティブな循環が起こる。

未来志向の民主主義が確立されるために、引き続き若者の声が政治に届く仕組みを実践・実現されるよう働きかけていきたい。これが結果として、若者だけではなく、これまでの政治や選挙に変化を生み出し、他の世代にもポジティブな影響が広がることを信じてやまない。参議院議員選挙をきっかけに、改めて何のために投票に行くのか、そして、選挙という政治参画ツールの重要性について深く考えたいと思う。

日本若者協議会では、若者と主要6政党の政治家が直接対談する公開討論会を行いYouTubeで公開しています。各党の主要政策を若者に関わる主要なテーマで一覧にした「参院選主要公約比較一覧」と合わせてご覧ください。
各党や候補者が掲げる公約はもちろん、綺麗事をなんとなく並べただけなのか、法整備や仕組みづくりまで本気で見据えているかどうかが透けて見える。国会とは立法府と言われる立場で、国の仕組みづくりの根源でもある。国会議員の候補者にそのような視点があるかどうかは、投票の際の一つの判断材料になるだろう。どんな仕組みづくりをしようとしているのか、冷静に政治家の言葉を自身で見極めてください。

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