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アルパイン・スーツ

マイリー・フン  /  2023年12月19日  /  読み終えるまで8分

山で着られるワンピース作り。

アルパイン・スーツがシャモニの地吹雪に対応する能力をテストするマット・ヘリカー。その結果は?優秀そのもの。フレンチ・アルプス Photo : Andrew Burr

2023年2月の季節外れの暖かい日、フランスのシャモニで、パタゴニアのクライミング・アンバサダーのマット・ヘリカーとアドバンストR&D・デザイナーのエリック・ノールが再会しました。3年にわたる対話と実験の末、ついに実現した構想をクライミングで試すことになったのです。「25年にわたってスコットランド、アルプス、そしてさらに大きな山々でクライミングをしてきたなかで、ずっと作りたかったものがあるんだ」とマットは言います。「それは、ワンピースだ。冬季登攀では、いつもジャケットの裾をつかんでハーネスの下にたくし込む。そのとき、冷気や雪がウェアのなかに入ってくるんだ」とつづけます。「アンダーレイヤーと一体となるワンピースのハードシェルがあれば、動きがスムーズになる」

コル・デュ・ジュアンのコンディションは悪く、理想のアルパインクライミングには暖かすぎました。しかし、それはエリックとマットを止める理由にはならず、それよりもスーツを試すために一緒に時間を過ごすことが重要でした。「未知のクーロアールをいくつか登攀し、数ピッチの岩ではミックスクライミングを、ヴァレ・ブランシュではスキーをしましたが、どこにも登頂しませんでした。完璧でした」と言うのはエリックです。想定したほど過酷な天候には遭わなかったものの、スーツは2人の期待以上の機能を発揮しました。まるでイージス艦のように全身を守るプロテクションを提供しながら、それを感じさせませんでした。

マットがはじめてワンピースの構想をエリックと共有したのは、2020年1月、スコットランドのベン・ネヴィスでフィールドテストをしているときでした。IFMGA(国際山岳ガイド連盟)認定のガイド資格をもつマットは、アルプスやその他の大山脈で数多くの初登を達成し、高所における救助でも受賞。25年にわたりフィールドテスターとして信頼されてきました。そのベン・ネヴィスの旅で、エリックはスコットランドの海洋性気候をみずから体験することになりました。エリックとマットは、時代遅れのアルパイン・スーツ(つまりトップとボトムをつなぎ合わせただけの、無駄が多く動きにくいもの)について語り合いました。マットはその代わりに、「遭遇する最も過酷なコンディションに対応する最高の一着」、つまり最大限のプロテクションと最大限の自由な動きを実現するスーツを思い描きました。エリックは興味はそそられたものの、そのような特殊なウェアを開発する時間を見つけることは想像できませんでした。その後、新型コロナウイルスの世界的大流行が起こり、エリックは時間を見つけてあれこれと研究をしていきました。

アルパイン・スーツ

アルパイン・スーツはテクニカルウェアとしてはそれほど特徴が多くはないが、それこそが要点。絶対不可欠なものだけに絞り、詳細のひとつひとつに機能性を追求した。「マットとの仕事が本当によかったのは、彼が『何か新しいことをやってみよう』と言ったこと。それでやる気になったんだ」とは、アドバンストR&D・デザイナーのエリック・ノールの談話。Photo : Tim Davis

「マットも僕も、既知のものに戻ることは可能だとわかっていたけど、何が存在しうるかという可能性を押し広げるための時間と場所、そしてお互いの存在がありました」とエリックは言います。「何か新しいことをやってみようという感じでした。あらゆることに」

マットとエリックがWhats Appでアイデアや動画をやりとりしているうちに、思わぬ発見により彼らの情熱的なプロジェクトはあつらえの実験から、テストケースへと押し上げられました。ゴア社はパタゴニアが長年テストしてきたPFCフリーの防水性/透湿性メンブレンをついに完成させ、それを披露するときでした。「この素材はこのウェアにもってこいでした」とエリックは言います。「僕らがやってきたことを披露するには、本当に格好の方法でした」この幸せな偶然により、一度かぎりのデザインであったはずのものが、このような独自の機能で運用されることはめったにない製造工程に組み込まれました。

アルパイン・スーツ

「この再会は、クライミング自体ではなく、この数年間にスーツを介して築いた関係を確かめることにありました」と語るエリックは、「山での日々、スーツが期待以上の機能を発揮してくれたという体験を共有したことで、プロジェクトに区切りがついたような気がしました」と締めくくる。この写真はフランスのヴァレ・ブランシュでフィールドテストを行うマットとエリックが、スキーからクライミングに移る際にブーツを替えてアルパイン・スーツの裾のジッパーを閉めている様子。Photo : Andrew Burr

個性的なデザイナーによって生み出された実験的なデザインを製造可能なウェアに変換することは、つねに新たな困難をともなうもので、さらなる難題が待ち受けていました。クライミングの動きに合わせて素材を調整するため、エリックは二次元的スケッチではなく、代わりに手で裁断したモスリン生地を、マネキンのハーネスの下に直接かぶせました。そして、サイズ&フィット・パターンのシニア・エンジニアであるリリアン・クロウがパターンをデジタル化しました。「スーツの型には多くの立体形状が組み込まれていました。ダーツはなく、すべて曲線でした……直線ならパターン全体を変えることなく縫い目を数センチ動かすことができます。曲線は直線のように簡単ではありません」

もちろん、チームとしては誰もが着られるようにしなければなりませんでした。製品ディベロッパーのクリスティン・トランはウェットスーツのサイズを応用し、スーツの各寸法を調整することで、さまざまな体格にフィットするようにしました。彼女はまた、ヒップ部分のジッパーが快適で機能的であり、パタゴニアの製品保証を満たすことも実現させました。「私たちは通常、社内でパターンを作ることはありません。それがどのように工場に伝えられるかを見るのは、いつも興味深いことです」とクリスティンは言います。「工場は、機械も違えば、プログラムも違う。専門も異なります。アイデアを製造レベルで実現するのは、いつも楽しい挑戦です」

多くのチームが、スーツのあらゆる側面が機能的であることを確認しましたが、最も重要な利点のひとつは無形のもの、自信です。「本当に厳しい状況にあるとき、山でとても無防備だと感じているときに、安心感を与えてくれるものを着ていれば、生き残る助けになるだろう?」とマット。「このスーツがあれば自分は不滅だと、感じられると思うんだ」

アルパイン・スーツ

情熱的プロジェクトから製造テストケースへ

スパイラル・ジッパーを施したフード
変換可能なフードに施した、かさばらないスパイラル・ジッパー。ジッパーを開けばフードはクライミング用ヘルメットの上にもフィットし、ジッパーを閉じればビーニーの上にぴったりとフィットして余分な生地はじゃまになりません。このようなエリックの構想はこれまで作られたことはなく、「フードのパターンを作るのに25時間はかかったと思います」とリリアンは報告します。

チェストポケット
まち付きのチェストポケットは、外側に拡張するよう位置をずらし、かさばりを最小限に抑えます。十分な大きさを備えているので、クライマーが携帯品の整理に悩むことはありません。「山ではあらゆるエネルギーを節約したいから」とエリックは語ります。

ウエストバンドのないデザイン
かさばりを最小限に抑えてルート上での動きを促進するすべての機能を確保するために、エリックはモスリン生地の試作品をマネキンの上にかぶせてクライミング用ハーネスを付け、食い込みや摩擦の要因となる継ぎ目や折り目をずらしました。「すべてのラインは形を整えるために使われ、無駄は一切ない」と彼は言います。スーツはマウンテン用サスペンダーとの併用でフィットを微調整したり、アプローチ中に不要な上半身部分を留めておくことができます。

4つの支点を備えたまち
4つの支点を備えたまちは、360度の可動域を確保するためにデザインされました(このアイデアは、アルピニストのコリン・ヘイリーとともに取り組んでいた「ニンジャ・パンツ」に由来するそうです)。これにより、クライマーは動きを妨げられることなくハイステップやサイドステップを行うことができます。

2つのまち付きジッパー
「トイレ休憩のために開口部をどれだけ大きくする必要があるかを検討するのはとても面白かったです」と言うのはクリスティン。位置をずらしたまち付きのジッパーは、ハーネスを付けたままでも下のレイヤーにアクセスできるため、すばやいトイレ休憩を可能にします。

スパイラル・ジッパーを施した裾
今日ではより多くのアルピニストが、僻地のクライミングのアプローチやクレバスだらけの氷河の横断にスキーを使います。スパイラル・ジッパーを施した裾は広げてスキー用ブーツの上にフィットさせ、しっかりと絞ることができるので、「クランポンの爪を引っかける心配なし」とマットは説明します。

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