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ごまかしがないショット

 /  2023年6月28日 読み終えるまで4分  /  コミュニティ

写真家ゲイリー・レジェスターのレンズを通して見る70年代のパタゴニア。

写真とキャプション:ゲイリー・レジェスター

1974年、当時ロサンゼルスのアートセンター・カレッジ・オブ・デザインの学生だったゲイリー・レジェスターは、授業の課題を仕上げるため、シュイナード・イクイップメントでじゃまにならないように撮影をさせてもらっていました。1週間かけてあれやこれやとショットを収めていくうちに、創業当初の従業員たちと仲良くなったゲイリーは、その後も時折ここを訪れては彼らの成長を記録しつづけるようになりました。ゲイリーと彼がそこで出会った友人たちはまた、パタゴニアが商業的な写真から、よりジャーナリズム的な方法にたどり着く過程を、知らず知らずのうちに助けていました。「笑顔のモデルに間違って着せたウェア」という大失敗を経験しながら、その協働が私たちの必要としていたスタイルを作り上げたのでした。それは私たちの創業者イヴォン・シュイナードが呼ぶところの、「リアルな人間がリアルに取り組んでいる様子をとらえる『ごまかしがないショット』」という方法です。私たちは創業50周年を祝うにあたり、みずからに問いかけます。

私たちは何を持っていき、何を置いていくのか。パタゴニアの写真部にとって、その答えは明確です。それは、私たちの写真における原則を貫くこと。次の50年はリフレームではなく、さまざまな背景や経験をもった視覚芸術家たちの非公式なギルドを育てるという新たな取り組みです。本物に対する審美眼をもった、そして初代アートディレクター兼写真編集者だったジェニファー・リッジウェイが呼んだ「正しい心構え、正しい精神」をもったアーティストたちの開拓です。それは未来のゲイリー・レジェスターと言ってもよいでしょう。

「私たちは魔法を放つ写真が好きです」とジェニファーは記しています。「これを言葉にするのはむずかしいけれど、ある種の像には構図を超えた精神があります」

――ハイディ・ヴォルプパタゴニア写真部長

ごまかしがないショット

姉のクリスにつづいてシュイナード・イクイップメントに雇われたロジャー・マクディビットの最初の仕事は、鍛冶工房で「ボンボン(広いクラック用のアングルピトン)」のリベットを打つことだった。「ロジャーは若いながらもビジネスに対する洞察力を発揮した」と書いたイヴォンは、彼を工房から小売運営に異動させ、それから卸売運営、やがては専務に任命。1979年にクリスが専務兼CEOとして就任すると、ロジャーは製造管理に携わった。ロジャーはカタログに掲載する製品写真のモデルとして駆り出されることもあった。回収された木材を店舗の空間のデザイン要素として使う、というのは彼のアイデアで、以来その伝統は守られている。

ごまかしがないショット

1970年代後期のエクストリームスポーツ短編映画『The Edge』の撮影中、イヴォンをフォローするキャロル・カーシャ。このショットを収めるため、写真家のゲイリー・レジェスターは(シュイナード・イクイップメントの)トム・フロストとチャールズ・グロースベックの撮影班に加わり、アブミとアセンダーにぶら下がって上から撮影した。カリフォルニア州ヨセミテ国立公園

ごまかしがないショット

シューナーズ(シュイナード・イクイップメント製クライミングシューズ)とスタンドアップ・ショーツでスタイリッシュに逆立ち技を決めるビル・ボーンブレイク。カリフォルニア州オーウェンズ・バレー、バターミルク

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毎週のスタッフミーティングでの、キャッシュフローに関する緊迫した討議。イヴォンが着ているストライプのラグビー・シャツは、初代パタゴニア製ウェアの一種であるとともに、金銭問題の原因でもあった。見るに耐えない書類を手にしているのは当時の製造マネージャーだったイヴォンの兄ジェフ・シュイナードで、妻の馬に数百メートルも引きずられたことから負傷した脚は1年近くもギプスが取れなかった。足元に子どもを寝かせているのはストアマネージャーのテックス・ボシアーで、トレードマークだった古着のオックスフォードシャツ姿。シャツが汚れると古着屋に寄付し、そこでまたきれいなシャツを買うというのが彼の習慣だった。腕組みしているのは卸売マネージャーを務めていたイヴォンの甥ヴィンセント・スタンリーで、ミーティングはいつもこれほど陰鬱だったわけではない、というのが彼の証言である。

ごまかしがないショット

初期のシュイナード・イクイップメントとパタゴニアのカタログでは、社員や友人や家族が製品のモデルを務めた。この写真はマウント・シャスタのホース・キャンプ小屋で雪嵐に何日も足止めを食らったあと、ゲイリーの弟デイヴィッド・レジェスターがエッゲ・ダウン・エクスペディション・ジャケット、マウンテン・スペクタクルズ、ダハシュタイン・ミットを身に着けている姿。背後に立つゲイリーの妻ジョニー・レジェスターは、エッゲ・デラックス・ジャケットで寒さ対策をしている。

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雪遊びほど最高の仕事はない。ロック・クリークでオフピステを楽しんでいるのは、キャンプ7の営業担当者でありパタゴニアの友であったブルース・フランク。カリフォルニア州ビショップ

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ここでカタログ撮影のためにエクスペディションウェイトの寝袋のモデルを務めているのはシエラのクライマー、ダグ・ロビンソンと犬のバッファロー。ダグはこの写真の2年前、シュイナード・イクイップメントのカタログ創刊号にチョックとクリーンクライミングについてのエッセイを書いたことでよく知られている。1972年のその記事の著名な序文は「それを表す言葉が存在する。その言葉とは『クリーン』である」だ。ピトンの製造と販売からの離脱は「私たちが長年のあいだに踏み出していく、環境保護への最初の大きな一歩だった」と語るのはイヴォン。「ピトンは事業の柱だったが、私たちは同時にみずから愛する岩そのものを破壊していた」

ごまかしがないショット

タトル・クリーク・アシュラムで感謝祭を祝う同僚と友人たち。七面鳥とワインを含むすべてのご馳走はバックパックで運ばれた。1974年、カリフォルニア州ローン・パイン周辺

ごまかしがないショット

パタゴニアの卸売マネージャーだったヴィンセント・スタンリー。雪に慣れておらず、足の冷えを癒す薬を服用中。カリフォルニア州オーウェンズ・バレー、バターミルク

70年代初頭、ゲイリー・レジェスターは授業の課題で写真を撮るなかで、シュイナード・イクイップメントの内部を垣間見ました。2023年春刊行の50周年記念号である『パタゴニア・ジャーナル』に掲載されたゲイリーの写真を再掲したこのフォト・エッセイは、ゲイリーが知らず知らずのうちに、パタゴニアが商業的な写真から、よりジャーナリズム的な方法にたどり着く過程を手助けしたことを紹介します。それはパタゴニアの創業者イヴォン・シュイナードが呼ぶところの、「リアルな人間がリアルに取り組んでいる様子をとらえるごまかしがないショット」という方法です。

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