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変化のイカリを下ろす

モーガン・ウィリアムソン  /  2022年1月6日  /  読み終えるまで6分  /  サーフィン

リズ・クラークのタヒチ生活は、彼女の環境保護活動の新たな幕開けとなった。

地元のサンゴ礁と漁場のために、島の環境保護グループ「A Ti'a Matairea(ア・ティア・マタイレア)」が立ち上がった。

全ての写真:Liz Clark

リズ・クラークは自著『Swell: A Sailing Surfer’s Voyage of Awakening(スウェル:覚醒するサーファーのセーリング航海記)』に綴った10年以上の洋上生活に終止符を打ち、2018年、タヒチにイカリを下ろした。ブック・ツアーの後、再び大海原に戻るのではなく、リズは新たな章に入った。パートナーのタフイ、6匹の犬と2匹の猫、そして里親となった動物や一時的に保護しているケガをした野生生物と共に、ラグーンに浮かぶスウェル号を眺めながら、陸の家で暮らしている。

「海の漂流者だった頃、行く先々でさまざまな環境問題を目撃したわ。当時は、私が体験している美しさや奇跡、そして海が直面している困難な現実を、陸地に戻った時に人々へ伝えることが自分の役割であり、人々が地球のために何かより良いことをする動機になればいいと感じていた。けれど、スウェル号の本を書いてからは、世界的な環境危機に直面している自分の保護活動を拡大させ地域で行動を起こし影響を与えなければならないという焦りを感じるようになった。この新しい展開が、他者の心を動かし影響を与え、それぞれのコミュニティで行動を起こすきっかけになることを願っているわ」

タヒチ島の地域社会に変化を起こそうとするリズの取り組みは、2018年に彼女の愛していた猫のアメリアが犬に殺されたことがきっかけだった。島の野良犬と野良猫の惨状と過剰な増加を目撃し、リズはアメリアの名誉のために何かできるか考えた。まずは1軒1軒訪問し、進行した皮膚病(この地域で犬が捨てられる主な理由の1つ)の手当ての仕方を地域の人々に教え無償薬を配布した。「ゆっくりだけど、効果が出てきた」と彼女は言う。「犬たちが回復し、それが飼い主の幸せと自信につながるのを見るのは素晴らしいことです」

変化のイカリを下ろす

「パンデミック前は、島の野良犬の里親になりアメリカに連れて帰ってくれる家族を探していました。観光業が再開されたら、またそうすることになるわ。」

リズは市長との面会を設定し、島内の野良犬の集団避妊イベントを提案した。「とにかく犬が多すぎる」と彼女は言う。「初めてこの問題を市長に持ち込んだ時、全面的に賛成してもらえたけど、活動を支える非営利団体が必要だと言われたわ」

そこで彼女とタフイは、地元のサーフコミュニティの友人らに話を持ち掛けた。こうして若いサーファーやコミュニティの長老のほか、環境保護と動物福祉に注力し、変化を起こそうとする人々によって、島の環境保護グループ「A Ti’a Matairea」が誕生した。グループの名は「あなたの島のために立ち上がろう」という意味だ。目標はシンプルに、地域社会のつながりを維持することで、フランス領ポリネシアにポジティブな変化を起こすことだ。

変化のイカリを下ろす

リズは自身が設立に協力した非営利団体の地域会合でスポークスマンを務める。「最初は(タヒチの)地元民じゃないから、リーダーシップを取ることに気後れしたけれど、このチームが自信を与えてくれた。環境保護に対する地元コミュニティのニーズや要望を促進することを目指すわ」

最初の大規模な環境への取り組みが開始されたのは、ある若い漁師がグループに加わってからだ。彼は無責任にイカリを下ろす行為から自宅近くのサンゴ礁と漁場を守らなければと不満を抱いていた。そこで次の地域会合でこの問題を取り上げた。

「航行する船の数は年々増えていて、このエリアをよく知らないと、生きたサンゴの上にイカリを下ろすかもしれない。漁師の怒りは爆発し暴力沙汰になったこともあったのよ」リズたちがこの取り組みを現実的なものにするには、ある善意の騒動を引き起こす必要があった。

「(毎年)大規模なカヌーイベントがあって数百もの船が一斉に湾にやって来る。とても破壊的よ。そこで抗議活動を行い、大きな帆に絵を描き、地域全体に海上での参加を呼び掛けた。さらにソーシャルメディア向けに、この状況を説明し、ボートに迂回をお願いするエリアを伝える短いビデオも制作したわ。それが地元の政府の目に止まり、市長が私達の元に来て、解決策を見いだす協力を申し出てくれた」

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「ビーチの清掃や、地元の学校でのゴミ、ゴミ処理、プラスチックに関する教育など、多角的な活動を行っている」

変化のイカリを下ろす

島の環境保護メンバーとビーチ清掃の収穫物。

漁師の現地情報に地元の希望やリズのセーリング経験を組み合わせて、島周辺で安全とされる砂底の水域を地図に描き出した。2年間をかけて、詳細を詰め、フランス領ポリネシアのお役所仕事をなんとかやり遂げ、2021年8月、投錨水域が法律として制定され、正式に航海用海図に付記された。「サンゴへのダメージを減らし、保護するのにきっと役立つ」とリズは言う。

リズたちの次なる課題は、魚の乱獲を防止する海洋保護区(MPA)のネットワークの構築だ。「植民地化されるまで、タヒチの人々には『Rāhui(ラーフイ)』と呼ばれる、あるエリアでの漁や捕獲を一時的に禁止して、海洋資源を調整するシステムがあったけれど、時がたつにつれ崩壊してしまった。今回は事を進めるに当たって、まず漁師に働き掛けたかった。保護区は、そのエリアを利用し、そこの資源に依存している人々から提案されなければ、きっとうまくいかない。そもそも漁師たちが保護区を望むかどうかも知りたかった。」海洋資源省の協力を得て、この非営利団体は、島の漁師たちへのアンケートを作成した。まず地区から地区へ、家から家へたずね歩き、MPAに対する感触を探り、保護すべきエリアの情報を集めることから始めた。「今のところ約90%の漁師が乱獲をどうにかしたい、この地方に海洋保護区のようなものを作りたいと考えているわ。だから、私達は伝統的なRāhuiの仕組みと近代的手法の併用を提案しているの。でも決めるのは、漁師と女性たちよ」

「心が躍るわ。本物の海洋保護活動がこの手にかかっていると実感できる」

変化のイカリを下ろす

サーフィン後のマンゴーは、リズとタフイの愛犬シスターへのちょっとしたご褒美。

リズにとって、その思いはセーリングのかたわら変化を鼓舞してきたこれまでの人生の中で芽生え、自然に成長してきたものだ。「海にいた頃、私は環境問題のグローバル・アンバサダーであることを自覚し、そして自分らしく生き、そこから変化を起こせるように最善を尽くしていた。今は、地域レベルの非営利活動を通じて、実際に良い影響がこの目で見られることに喜びを感じるわ。大変だし、セーリングのような派手さはないけれど、そこには同じだけのやりがいがある。また洋上生活に戻る日が来るとは思うけど、でも今は、地球が私を最も必要とする場所にいることを実感できるの」

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