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バックカントリーでのランチ

コリン・ワイズマン  /  2019年12月3日  /  読み終えるまで7分  /  スノー

眺めはしても触れてはいけない。カルデラを囲む縁、リムへの人の立ち入りは、安全と生息環境保護の観点から禁止されている。リア・エヴァンスとケイル・マーティンは、立ち入り禁止地域との境界に立ち、湖に滑り降りるラインを思い描く。Photo: Colin Wiseman

クレーターレイクで贈り物を楽しむ

「ダークセンの方に向かえ…」

私の小さな双方向無線機にはかなりの雑音が入っていた。ジョシュ・ダークセンの声を少しでも聴きとれたのはちょっとした奇跡だ。2日前にベンドで一緒に夕食をして以来、彼には会っていなかった。取り決めていた無線のチャンネルと呼びかけ時間は、彼の手書きの地図と同じようにうまくいった。

メンバーのマリー=フランス・ロイリア・エヴァンス、ケイル・マーティン、そして私は、湖の西岸にあり「ザ・ウォッチマン」として知られる、垂直距離で128メートルある隆起部の下にいた。間には2つの小さな山と数キロほどの距離がある。

「そちらに向かう」と私は答えた。

バックカントリーでのランチ

曇り空の下を進む朝のツアー。マリー=フランス・ロイがケイル・マーティンとリア・エヴァンスをリードして、雪のモンスターが立ち並ぶザ・ウォッチマンの西側を登る。続く24時間を激しい嵐が襲おうとしていた。Photo: Colin Wiseman

3月の初頭、春がオレゴン州南部に近づいてきていた。カナダカケスがさえずっている。太陽が今では頭上高くに昇り、地面を暖めはじめている。旅客機が残した多くの飛行機雲が、空に網目模様をつけていた。クレーターは、空の上にあるハイウェイの経由地なのだろう、と私は考えた。

さしあたり、キャンプはのどかで美しかった。2つのテントが4メートルほど離れて張られていた。ザ・ウォッチマンへと続く常緑樹のスノー・モンスターたちの陰になっている小さなくぼ地だ。私たちは、前夜にスキニングで山頂に登り、山に残る夕日の輝きの中で数ターンを滑り、今朝もまた円錐形の火山、ウィザード島に昇る朝日を見に行っていた。ウィザード島は、アメリカで最も深い湖の中に位置している。降雨量が多い年には最大深度が594メートルにもなる。国立公園局によるとこの湖は、出来てから比較的年月がたっておらず、流入河川がないため、世界でも最も透明できれいな湖だ。

バックカントリーでのランチ

リア・エヴァンスとマリー=フランス・ロイは暖かさを保とうと全力を尽くす。通常それは、太陽が沈み、気温が-7℃を下回った時の、防寒服の重ね着や、たっぷりの温かい食事を意味する。Photo: Colin Wiseman

ザ・ウォッチマンの山頂には、火災監視を兼ねた資料館があり、夏の間は多くのビジターが訪れる。1931年から1933年の間に、クレーターレイク・マスター・プランの一部として建設された。当時は、国立公園のインフラストラクチャーが自然保護青年団の優先事項であった時代が始まったばかりだった。クレーターレイク国立公園自体は、1902年にセオドア・ルーズベルト大統領が設立し、その後すぐに観光名所となった。1919年には、湖の全周囲53キロにわたるリム・ドライブの原型となる未舗装道路の敷設が終わった。湖の南側にあり、急傾斜の屋根や71の客室、石の基礎構造を備えたクレーターレイク・ロッジ(1915年頃)が、この旅の初日にメンバー以外の人に会った最後の場所だった。

バックカントリーでのランチ

自然の中で寝泊まりしていると、必ずふざけて遊ぶ時間がある。マリー=フランス・ロイがこの小さな踏切台をキャンプの少し上に作り、リア・エヴァンスがスキンを手にそこから飛び出す。この後、また別のツアーに出かけた。Photo: Colin Wiseman

計画は、湖の周回だった。私たちは、近くのベンドから来ているジョシュに参加するか尋ねたが、彼は膝のリハビリから復帰したばかりで、もっとのんびりしたアプローチを選んでいた。湖の北端で一泊のキャンプだ。70万人を越える年間観光客数にもかかわらず、冬に湖一周を行う人はほとんどいない。おそらく1年で200人程度だ。ほとんどはクロスカントリースキーヤーで、3〜4日間の旅になる。雪質がパウダーやスラッシー(あるいは、風が磨き上げた堅くつまった雪以外の状態)だと、骨の折れる仕事になる。

バックカントリーでのランチ

プルカ(そり)は、救いにも重荷にもなり得る。コンディションが良ければ、バックカントリーでの重い荷物の運搬がぐっと楽になる。今回の旅では、深い雪と難しい地形のせいで、私たちは、いくつかのトラブルや、不安定な場所でのトラバースに遭遇する結果になった。ケイル・マーティンは低いラインを取り、リア・エヴァンスとマリー=フランス・ロイのために楽しい瞬間を作る。Photo: Colin Wiseman

滑降をしようと考えてこの場所にやって来る者はさらに少ない。そこには、禁じられた果実のような側面がある。標高2,000メートルの位置にあるリムから、300メートル下の湖面へと続く地形は急峻で岩が多く、タホ湖を思い起こさせる。巨大なテレイントラップがなければ、そして湖の北端にある岸辺へと続くなだらかな夏用のトレイルを除き、人の立ち入りが正式に禁じられているのでなければ、スノーボード向けの地形として最適だったかもしれない。

クレーターがこれほど急峻で深くなったのは、7,700年以上前に湖を形作った、標高3,700メートルのマザマ山の噴火が原因である。これにより、上からの眺めは、見逃してはならないと思わせる絶景になっている。ザ・ウォッチマンを含むいくつかの隆起部分では、カルデラを見ながらの滑降が可能だが、ほとんどの滑降可能な地形は湖の反対側へ向かっている。後で見つけることになるが、ジョシュのお気に入りのウィンドリップが多い地形に沿って、急勾配で厄介な滑降可能エリアや、パシフィック・コースト・トレイル に向かって伸びる1、2本の長いツリーランがある。しかし、それを発見するのは後の話で、今は昼食としよう。

バックカントリーでのランチ

眺めのいいバックカントリー・ランチ。ジョシュ・ダークセン、リア・エヴァンス、マリー=フランス・ロイ、ケイル・マーティン、そしてタイラー・ローマー。ウォッチマン・オーバールックから広大なクレーターレイクの眺めを臨む。背景のサドルはリムビレッジがある場所。そして旅はこの地点から垂直距離で300m下にあるパーク・ヘッドクオーターから始まった。Photo: Colin Wiseman

私たちはトレイルを外れ、北へ向かった。30分後、黄色の服を着た人物が地平線に姿を見せた。ジョシュの後ろにはタイラーがいて、浅い谷の反対側にある低い小道から現れた。雪で覆われた道でのスキニングは簡単だ。私たちのスキーとスプリットボードは約15センチの雪に沈んでいた。2人はカルデラリムのサドルを素早くトラバースした。20分後、私たちは腰を下ろし、簡単な食事を取ることにした。塩漬け肉、チーズ、そしておしゃべり。夏には見晴台となる場所で、わずかばかり頭を出している案内標識がちょうどいい椅子になった。広大な湖の全容を見ることができた。右手にはウィザード島がある。左にはほぼ平坦な北側の岸。湖の反対側、8キロ離れた場所にはスコット山。約2,750メートルと、クレーターリムの中で最も高いポイントだ。

ジョシュは20年前に初めてここを訪れ、南にあるビジターセンター近くの地形を楽しんだ時のことをいろいろと話した。北側の夏用アクセスロードを使った最近のツアーの話もした。しかし、ジョシュはトレイルの起点よりも先には行ったことがなく、完全な一周旅行をしたがっているのは明らかだった。

「君たちはやはり湖の一周旅行をするつもりなのか?」とジョシュが尋ねた。

「天気のせいで動けなくなるかもしれないけどね」と私は答えた。

バックカントリーでのランチ

旅の途中で、予想以上に激しい嵐が30cmを超える雪を降らせると、キャンプの下にあった木々は探検にぴったりの場所となった。リア・エヴァンスが、あられの多く混じった雪を深く刻みながらパシフィック・クレスト・トレイルに向かって滑降する。Photo: Colin Wiseman

この旅では、スコット山やその先での滑りは想像するしかなくなるだろう。出発時に予想されていた弱い嵐は、力を強めていた。今では、強風と雪が24時間続くと予想されていた。スコット山までは、24キロのほぼ平坦な何もない地形で、その先の道程ではかなり大きな雪崩の危険にさらされることになる。私たちは腰を据え、嵐を乗り切ることに決めた。新しい探検のようなアタックをキャンプしながら、週末まで忙しく過ごすのだ。その方が、ギアを大量に載せたそりを引いて嵐の中に向かって歩いていくよりも楽しそうに思えた。

バックカントリーでのランチ

「おかえりなさい、ケイル!」リア・エヴァンスが、ホワイトアウトの中、キャンプの下での短時間の滑降から戻ってきたケイル・マーティンを迎える。Photo: Colin Wiseman

周回達成という私たちのゴールは来年までお預けとなったが、それで構わない。今は、この幻想的な雪で覆われたカルデラが私たちだけのものなのだから。デイパックだけを背負って、私たちはジョシュに従い、小さな山の日当たりのいい斜面を北に向かって登っていく。山頂から、数キロ先の山腹にあるジョシュとタイラーの小さな赤いテントが見える。

北西の斜面は影になっていて、冷たい雪が残されている。まずケイルが飛び出した。それからジョシュ、マリー、リア、タイラー、最後に私が続く。雪は滑らかで安定していて、15センチほどの深さだ。6回程度のワイドなオープンターンには最適。素晴らしい食後酒となった。

バックカントリーでのランチ

1日目、キャンプにたどり着くのに予想よりも時間がかかった。落ち着くと、急いでザ・ウォッチマンに登り、日没前の最後の光で、テントへと滑って戻るマリー=フランス・ロイとケイル・マーティン。Photo: Colin Wiseman

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