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まだ見ぬ水平線の彼方へ

内野 加奈子  /  2017年6月29日  /  コミュニティ, カルチャー

私が〈ホクレア〉という名のハワイの伝統航海カヌーの存在を知ったのは、海の魅力に惹かれ、週末ともなれば、伊豆や三宅島に通っていた学生時代のことだった。友達が手渡してくれた1冊の本に描かれた、星や月、波や風を読み、水平線の彼方の島を目指す伝統航海の世界。人はこんなにも深く自然を理解することができる。人と自然のかかわりに興味を持っていた私にとって、ホクレアは新しい扉を開く大きなきっかけになった。

ハワイ大学に進むことを決めた私は、2000年の6月9日、小さなスーツケースひとつでホノルルに降り立ち、その翌日、ホクレアの停泊する桟橋に向かった。初めて見る伝統航海カヌー、ホクレア。そのカヌーはひっそりと静かに美しく、海の上に浮かんでいた。桟橋にはクルーたちが忙しく行き交い、近くを通りがかった一人が、これからカウアイ島に向う準備をしてるんだ、と教えてくれた。カヌーの上には、伝統航海術師のナイノアの姿も。しばらくして、カヌーから下りてきたナイノアが足を止めてくれた。「伝統航海に興味があります」 どこから来たとも知れない外国人のその言葉を、ナイノアは真っすぐな眼差しで受けとめてくれた。今日まで続くホクレアとの関わりのはじまりの一日だった。

ホクレアは大きな航海から戻るごとに、陸にあげられ、すべてのパーツを取り外して、修繕作業に入る。釘を1本も使わず、ただロープを使って括られた甲板やマストを船体から外し、海水や太陽の光でダメージを受けた部分を丁寧に補修していく。すべてボランティアの手で進められる修繕作業、私も大学に通いながら、授業が終わるとすぐにホクレアに向い、夜遅くまで、他のクルーたちと一緒に作業した。そうして少しずつ、船のしくみを覚え、航海の話を聞き、ときには小さなカヌーで夜の海に漕ぎ出て、星や月の動きを習ったりした。「僕は、情報をあげることはできるけれど、知識をあげることはできない。機会をあげることはできるけれど、経験をあげることはできない」 ナイノアはそう言って、ときに優しく、ときに厳しく、すべては自分次第ということを教えてくれた。

8つの島々からなるハワイ諸島の間で、いくつもの航海を重ねた後、2004年、ハワイからミッドウェイ諸島に向けた長距離航海に参加。続く2007年、ハワイからミクロネシアを経由して日本を目指す、5か月の航海に参加することになった。ハワイから日本まで、航海術の師、マウ・ピアイルグの故郷でもある、ミクロネシアの島々を訪ねながらの1万3千キロの航海。様々な物語を生み出しながら航海を続けたホクレアは、2007年4月、沖縄に到着。その後、日本各地を巡り、6月9日、最終目的地、横浜に入港した。私にとっては、2000年にハワイに降り立った日から、ちょうど丸7年目にあたる日、ひとつの旅が終わろうとしているなか、新しいはじまりに立っている感覚に包まれた不思議な一日だった。

日本への航海を無事に終えたホクレアは、世界を巡る航海への準備をスタート。2014年に出航し、3年間かけて、4万6千キロもの海をわたり、世界150カ所以上の港に立ち寄った後、今年の6月にハワイに帰ってきた。出迎えに集まった数万人の人びとに見守られるなか、ホクレアはまた、新たな歴史を刻んだ。

ハワイ-日本航海から、ちょうど10年の節目。6月24日には、瀬戸内でホクレア日本航海10周年を記念したイベントも、大盛況のもと開催された。このタイミングで、絵本『星と海と旅するカヌー』を刊行。まだ見ぬ水平線の彼方に、星や太陽や風や波と共に旅した人々の物語。ホクレアの航海を通じて、私が見てきた世界、体感してきた世界を、イラストレーターの山崎由起子さんが見事に描き出してくれた。大海原の生きものたちや、空から見たカヌー、星空の海、嵐の海など、ページをめくるたびに、はっとするような情景が広がる。巻末の星やカヌーの解説、ホクレアのダイアグラムや航海術の基本など、盛りだくさんの1冊になった。

「あなたは何を大切にし、どこへ向っていく?」 日本各地で、そんな問いかけをしたホクレア。これからの10年、私たちはどこへ向っていくのだろう。自然に支えられ生きていることを忘れたかのような社会。異常気象や温暖化、大気や海の汚染、資源の枯渇……守られた大地はなく、水や空気でさえ、当たり前のように、いつも安全で安心できるものとは限らなくなってきた。約束された未来はどこにもない。変化しはじめた大きな自然の動きは、もう変えられないところまできているのかもしれない。風の向きは変えられない。うねりの向きも変えられない。けれど、だからといって、私たちは、ただ翻弄される必要もなく、向う先なく漂流する必要もない。私たちはいつだって大きく帆を開き、舵を切ることができる。変えられないことを受け入れ、変えられることを知り、行動することを選ぶことができる。

感覚を研ぎすまして日々の変化を感じ取り、自分たちのできうるすべてを使って、まだ見ぬ水平線の向こうを目指すことができる。自然と共にある悦びを味わい、感覚を使って生きることを楽しみ、日々、同じ船に乗る人々に思いを向けていくことができる。ホクレアという小さなカヌーは、そんな航海そのものが、かけがえのない時間なのだと教えてくれている気がしてならない。

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