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デポか、ゴミか

ジェーン・ジャクソン  /  2020年1月30日  /  読み終えるまで9分  /  クライミング, アクティビズム

クライミング・レンジャーやクライミング管理人、ボランティアからなるボランティアチームが、エル・キャピタンの頂上にある多くの隠し場所の1つから回収した巨大なゴミの山を見つめる。Photo: Eric Bissell

きれいに晴れ渡る秋の早朝、ヨセミテ・サーチ・アンド・レスキュー(YOSAR)の古びたバンが、危険なほどの急ハンドルを切りながら驚くようなスピードでタイオガ・パス・ロードをガタガタと走っていく。私を含む12人は後部でぎゅうぎゅう詰めになり、おしゃべりをしながらバンの内側の壁で体を支えていた。道が車では通行不可能になると、私たち全員が車から飛び出し、エル・キャピタンの頂上へと続くトレイルのスタート地点で、空の運搬袋12個を降ろした。しかし、クライミングに行くわけではない。ゴミ拾いをしに行くのだ。

過去15年の間、クライマーたちは9月の週末にヨセミテ国立公園に集まり、夏のシーズン中に訪れた数百万人ものビジターが残したゴミを清掃している。そのストーリーの始まりはこうだ。ケン・イェーガーは当時、ヨセミテ・マウンテニアリング・スクールでガイドとして働き、バレーにあるさまざまな崖に向かう途中で目にするトイレットペーパーやタバコの吸い殻にうんざりしていた。やがて彼は数人の友人を集めてグループを結成し、公園内で見つかるあらゆるゴミの清掃に取り組みはじめた。今ではヨセミテ・フェイスリフトとして知られるこの清掃活動は、その後拡大していく。昨年は、3,334人のボランティアが参加し、6,300キログラムを超えるゴミを回収した。

このストーリーでは、公園を訪れたビジターたちの後をクライマーが無私無欲に清掃する。しかし、クライマーたちも問題の一部なのだ。クライマーの数は毎年増えつづけていて、その影響はエル・キャピタンのふもとに散らばるゴミや、人気のあるコース沿いのクラックに押し込まれたペットボトルに見て取れる。

デポか、ゴミか

一日の終わりの計量。昨年ボランティアは、220kgを超えるゴミ(そのほとんどがぼろぼろになったロープ)をサラテ・ウォールの頂上から取り除いた。Photo: Eric Bissell

過去数年の間、ヨセミテのクライミング・レンジャーはボランティアの人々とともに、ノーズやフリーライダーのようなトラッドルート上にクライマーが残したゴミの問題に取り組んできた。今年の目標は、エル・キャピタンの頂上をきれいにすることだ。そこにはフリークライミングの挑戦で残されたロープやデポされたギア、ビバークサックなどが忘れ去られて転がっている。

タイオガ・パスの終点に話を戻そう。クライミング・レンジャーや自然保護レンジャー、そしてクライマーを含む私たちのグループは、古くくたびれた運搬袋を肩にかけると、エル・キャピタンの頂上に続くなだらかな下り坂を歩きはじめた。YOSARのバンは行き止まりの狭い道で12回の切り返しをした後、グループから離れ、荒れたアスファルトの上をガタガタと跳ねながらハイウェイ120に戻って行く。

汗をかきながら11キロメートル進むと、森を抜けた。目の前に木々や素晴らしく青い空が広がり、リボン・フォールの上には金色の縞模様の花こう岩がのぞいている。バレーにある比較的小さな地形は、私たちがいる地上900メートルの位置からはミニチュアに見える。粗い花こう岩砂が足の下でザクザクと音を立て、崖の端から400メートルの所にある真の頂上に集まった私たちに強い風が吹きつける。私たちはそこから散らばり、エル・キャピタンの端に並ぶ洞穴や割れ目にあるゴミを探しはじめた。

最初のうちは、数本のペットボトル、プラスチックの小片、ツツジの茂みに絡まった色あせたウェビングなどだった。その後、サラテ・ウォールの頂上に近づくと、誰かが小さな張り出しの下にあるドライバッグを見つけた。中に入っていたロープが新品だったため、私たちはバッグを元の場所に戻した。この作業の難しさを実感し、(この日はその後何度も思うことになるが)ゴミとデポの線引きは実のところどこにあるのだろうか、と考えながら。

次に、大きな石の後ろにベアキャニスターが押し込められているのが見つかった。カサカサと音を立てる劣化したスタッフサックもあり、中にはクイックドローやカム、カラビナ、スリングなどが大量に入っていて、やや旧式ながらもまだ使える状態だった。一方でベアキャニスターの中身は大量の腐った食品で、半分は崩れてカビが生えていた。

デポか、ゴミか

洞穴の中に残された、古いロープやその他のギアが入ったバッグをくまなく調べるクライミング・レンジャーのブランドン・アダムスPhoto: Eric Bissell

私はサラテ・ケーブに向かった。端に近い素晴らしい場所で、張り出したツツジに守られている。じゃりじゃりする白い砂で膝に擦り傷をつけ、ツツジにシャツを引っ掛けながら、ケーブの中心部分に這って入った。どちらかと言うと、上に張り出した大きな石があり、下には砂の床があるポーチのような場所だ。そこで私は、小さな石で押さえられた、ネズミがかじってぼろぼろになった3枚のフォームパッドを見つけた。ケーブの一番奥の左側には、2枚の砂にまみれた大きな防水シートが、やはり石で押さえられていた。汚れたボウル、スプーン、ケイジャン・スパイスミックスのボトルがパッドの横に転がっている。これらはすべてゴミだ。パッドはばらばらになりかけているし、防水シートはゆっくりと風による劣化が進んでいる。私たちはぼろぼろの寝袋を振り広げた。落胆し、このゴミにうんざりしながら。スパイスミックスもスプーンも利用することはできない。

上から、応援を呼ぶ声が聞こえた。「大鉱脈」を発見したのだ。私たち3人は、急いで上にあるケーブに這い上がり、覗き込んだ。見えたのは、ケーブ内部を埋め尽くすロープの山だ。巻かれたロープ、ドライバッグに収められたロープ、あるいはぼろぼろになったゴミ袋に入ったロープもあった。真っ白な花こう岩のスラブと節くれだったジュニパーが作り出すエル・キャピタン頂上の景色と比べると、その光景は異様だった。

あそこを登ったクライマーなら、おそらく誰もがギアをどこかに隠した経験があるだろう。それでも、目にした光景にグループ全員が言葉を失った。1日か2日の間、1本のロープを岩の下に隠すことはあるだろう。しかし、忘れ去られ、使われることのないロープの山を見ていると、太平洋ゴミベルトのミニバージョンに出くわしたかのような気持ちに襲われた。

私たちはロープの巨大な山を引っ掻き回しはじめた。そのロープの存在と、用意した70リットルの運搬袋に入るだけのロープを担いでイーストレッジを下る作業に私たちは志願したのだという事実に圧倒され、腹を立てながら。ペットボトルや細かいゴミで袋をいっぱいにすることは予想していたが、何年も前に誰かがフリークライミングに挑戦した後で忘れていったぼろぼろのロープの山は想像していなかった。私たちはロープをケーブから明るい陽射しの中に移動させる作業を繰り返しながら、小声で悪態をついた。

夏にはヨセミテのバックカントリーをパトロールし、焚き火のかまどを崩したり、バックパッカーのウィルダネス・パーミットの確認をしたりしている自然保護レンジャーでクライマーのアニーが「バックパッカーがこれをやっていたらって想像できる?もし、ヨセミテ・ウィルダネスの他のエリアにもデポがあって、何百キロものバックパックギアがあるとしたら?」と言った。

デポか、ゴミか

清掃作業後、30キログラムを超える運搬袋を秤に乗せるバド・ミラー。Photo: Eric Bissell

想像できなかった。私たちは、クライマーとしてバレーで多くのことを見逃してきたが、この日、その一部が私たちに返ってきたのだ。私たちは、触れる岩の近くで、密接に存在する自分たちに誇りを持っている。やぶを押し分けながら、バレーのほとんどの人が訪れない場所に行き、木々の間を登り、壁でコウモリや鳥、カエルと出会う。

それならば、なぜ世界で最も大きな感動を生む、偉大な壁の頂上にあるケーブの中にゴミ捨て場を作ってもいいと思えたのだろう。ビジョンやインスピレーション、モチベーション、その他エル・キャピタンにフリークライミングで登るために必要なものすべてを持つのは良いことだが、時にその勢いは、私たちが及ぼす影響の大きさを見る能力をねじ伏せてしまうのかもしれない。

コミュニティとして、私たちは全般的に改善されてきている。エル・キャピタンの斜面から排せつ物を投げ捨てるのは、もはや一般的な行動ではない。今ではほとんどのクライマーが持ち帰っている。しかし、まだ改善の余地は多く残されている。

おそらく今こそ、多くの人に非常に感慨深い経験を与えてくれたこの壁の頂上に対する扱い方を考え直す時なのだ。サラテ・ケーブは一例に過ぎない。他にも多くの岩やケーブに、ぼろぼろの寝袋や古い食料、そして何より忘れ去られたロープが隠されている。公園局の規則は自分には適用されないと私たちは考えがちだが、適用されるのだ。私たちが出すゴミは、下にいる観光客が残すゴミとまったく変わらない。

その日、私たちは220キログラムを超えるゴミをサラテ・ウォールの頂上から除去した。数百メートルの使われずに忘れ去られたロープが、未だにエル・キャピタンの頂上に残され、次のシーズンではさらに多くが山積みになる。

ヨセミテ・フェイスリフトでは、ボランティアがエル・キャピタンの頂上の清掃を続けていく。そして私たちは、デポをゴミに変えてしまうサイクルからの離脱に向けて働きかけたいと願っている。

デポか、ゴミか

ボランティアが重い運搬袋を背負って、ゆっくりとイーストレッジを降りて行く。Photo: Eric Bissell

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