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暮らしの素材を変える

リンジー・モリス  /  読み終えるまで10分  /  フットプリント

インドは世界で最も一般的な天然繊維であるコットンの最大生産国。現在有機栽培されているコットンは、その総生産量の1%以下。Photo:Tim Davis

テキサス州ミュールシューのコットン農家ジミー・ウェデルがオーガニックコットンへの移行に踏み切る最後の決め手となったのは、ある鳥の死でした。畑でコットンの植え付けを手伝っていた彼の父親がキジの巣を見つけ、熱心なバードウォッチャーでもあったことから、その巣を避けるために数列飛ばして作業をつづけました。しかしその努力もむなしく、翌朝2人は巣の近くで死んでいる母鳥を見つけました。畑の殺虫剤の毒で死んだのでした。

「3つの悪条件が重なる最悪の事態でした」と、ウェデルは当時を振りかえります。「野生動物のことが心配で、化学薬品は広告ほどの効果はなく、利益はまったく上がりませんでした」 費用は彼の財政能力以上にかさみ、そのおかげで夜も眠れないほどになりました。そして1993年、ウェデルは自分のコットンを有機栽培に切り替える決心をしました。オーガニックコットンは当時(そしていまだに)稀な存在であったにもかかわらずです。

コットンは世界で最も一般的な天然繊維で、世界中で毎年約2,500万トンが生産されています。しかし従来のコットンは、いまも汚いビジネスでありつづけています。世界の農地全体の3%以下にすぎないコットン栽培に、総使用量の16%に相当する殺虫剤が投入されているからです。そして過去25年以上にわたってこうした強力な化学薬品を使用した結果、アメリカ国内の農業はミツバチなどの益虫を脅かす毒性を50倍近くも高めました。

さらに、従来のコットンの大半はしばしば、発がん性物質であるグリホサートから作られた除草剤に耐えるよう、遺伝子組み換えされています。有害な化学薬品の流出は川や湖を汚染し、海に酸欠海域を作り、私たちの食料にも入り込みます。

ウェデルは自分がこの有毒な循環の一部であることを意識し、それを変えることに踏み切ったのです。

「そのやり方をつづけて10~15年経っていましたが、化学薬品を使うのはもううんざりだと感じたのです」と、彼は回想します。

ウェデルは自分の農場を有機栽培に移行させることを決意し、〈テキサス・オーガニックコットン・マーケティング協同組合〉の創設にも携わりました。現在は組合の代表を務め、パタゴニアをはじめとする企業にオーガニックコットンを供給しています。「誰もが『そんなことできない、無理に決まっている』とあきれるなかで、私たちは『いや、実際にできる』と言い張ったのです」

一方、1994年にパタゴニアの取締役会は、リスクを承知でオーガニックコットンに2,000万ドルを費やす決断をし、同様の懸念を抱えていました。

「いま明らかになっていることを承知のうえで従来の方法で栽培されたコットンを使ってウェアを作りつづけたら、いずれにしても破滅する」とパタゴニアの創業者であるイヴォン・シュイナードは言いました。「やってみようじゃないか。オーガニックで行こう」

パタゴニアはオーガニックコットンの市場が小さいことを重々承知で、1996年までにオーガニックコットンに100%切り替えました。環境保護をミッションに掲げる会社が環境問題の一部となっているのはおかしい、とパタゴニアのグローバル・スポーツウェア部門の副社長ヘレナ・バーバーは説明します。「みずからを厳しく見直し、非常に大きな変化が必要だと気づいたのです」 その決断には多大な費用と時間がかかり、またサプライチェーンの再考も必要でした。しかしそれは実行すべき正しい選択でした。そして私たちは、「オーガニックコットン製品の販売を成功させる」「オーガニックコットン農業の成長を奨励する」「オーガニックコットンの使用を促進するため、他のアパレル会社に影響を与える」という3つの目標を立てました。

それから24年が過ぎ、最初の目標は達成しましたが、残る2つの目標にはさらなる野心が必要です。私たちが全力を傾けても、巨大なコットン産業界においては、オーガニックコットンはいまだに1%以下にすぎません。私たちのあとにつづいたアパレル会社はごくわずかで、その結果、衣類や寝具の大半に使用されるコットンはいまも強力な化学薬品を使い、環境に対して破壊的な方法で栽培されています。それでもパタゴニアのオーガニックコットンへの切り替えは私たちに、農家に、そして土壌に違いを生み出しました。その方向に針を向けるにはさらなる努力が必要ですが、有機栽培への移行は必要不可欠です。地球とその住人の健康がかかっているのですから。

1%を超える

「アパレル業界でのオーガニック繊維の使用を促進し、拡大するために、私たちには何ができるのかを問うときです」とバーバーは言います。

「私たちが一企業としてできることをはるかに越えてオーガニックコットンの需要を増やすために、もっと役立つことができるはずです」

オーガニックコットンの市場シェアを1%以上にするのは容易ではありません。従来の栽培法から移行する場合、コットンがオーガニックの認証を得るまでには約3年かかります。認証がないと、多くの農家は有機栽培で育てても従来のコットンとして販売しなければならず、オーガニックの上乗せ料金で売ることができません。商業銀行の目には農家の土地所有権や担保は不十分で、農家は融資を受けられず経済的に行き詰まります。やむを得ず悪徳な金融業者から借金をしてしまったり、その期間のコットンの不作や人件費の増加などによって事業が左右されたりします。また、たんに十分な誘因がないために移行しない農家もあります。そこで、支援が必要となるのです。

より多くの農家がオーガニックコットンに移行できるよう、私たちは経済的な支援の手を差し伸べ、またその移行中の数年間は、ペルーの「コットン・イン・コンバージョン」プログラムを介してコットンを購入しています。ペルーはラテンアメリカ有数のオーガニックコットン生産国であるため、変遷期の農家を支援することにより、市場でのオーガニックコットンの供給総量の増加を促進できるのです。

「船首を正しい方向に向け、変化を生み出そうとする会社で働くのは素晴らしいことです」とバーバーは言います。「食品に関するオーガニックへの意識が深まるにつれ、衣類に使うオーガニック繊維にも関心が高まることを望んでいます」

リジェネラティブ・オーガニック:悪影響を減らす以上に、好影響を増やす

2018年10月のある蒸し暑い日、私たちは誰とどのような仕事をしているのかを実際に目にするため、インドを訪れました。それまで訪問した他のコットン農場とは異なり、コットン畑は雑然として見えました。

しかしよく見ると、その意図がわかりました。従来の農場は畝が土で分けられていますが、ここではマリーゴールド、レンズ豆、ヒヨコ豆、野菜などが、オレンジ色がかったピンクの若い綿花を囲んでいました。そこには生命がありました。コットンにまぎれた野菜をその場で取って食べることができるのです。

しかしそれ以上に、こうした作物には目的がありました。それらは自然に土壌に窒素とカリウムを加えながら害虫のいない肥沃な表土を維持し、化学肥料よりも効果を上げるとともに、土中に炭素を蓄えます。さらにこれらの作物は農家とその家族の生計の助けともなります。

これは有機栽培を上まわるものでした。環境再生型有機農業は自然のなかに解決策を見出し、土壌を回復させ、動物福祉を尊重し、農家の生活を向上させるのです。

「オーガニックコットンは最初の段階にすぎません」と言うのは、パタゴニアでサプライチェーン社会的責任/農場/特別プログラムのマネージャーを務めるレイチェル・ケプネス。「環境再生型有機農業は、直面する問題からの回復力なのです」

2018年、パタゴニアは〈ドクターブロナー〉および〈ロデール・インスティテュート〉とパートナーを組んで〈リジェネレイティブ・オーガニック・アライアンス〉を結成し、環境再生型有機農業の実践における基準と認証であるリジェネレイティブ・オーガニック・サーティフィケーション(ROC)の設定に取り組みました。これは既存の有機農業の基準を書きかえるものではなく、農家や牧場経営者、ブランド、非営利団体が環境再生型有機農業の実践を生かす支援となるものです。

最初に実践した世界規模の18の試験プログラムの1つはパタゴニアのイニシアチブで、これは世界最大のコットン生産国インドでROCを目指す150件以上の小規模農場でのコットン栽培に捧げられました。

「被覆作物と間作物で農家の収入が増えることを期待しています」と、ケネプスは語ります。「そして土壌の改善が農家に順応性をもたらし、気候変動にともなうさまざまな気象現象に遭遇しても農地を健康に保つことができるよう願っています」

暮らしの素材を変える

インドでROCを目指す150件以上の小規模農場のひとつで、綿の木を点検する農家。この自然の仕組みのなかで一緒に植えられた鮮やかな色のマリーゴールドやその他の植物は、害虫を引きつける無毒の対策として用いられている。Photo:Tim Davis

その翌年、これらの農家は今春リリースされるパタゴニア初のROCパイロット・コットン・Tシャツ製品に使用するのに十分なコットンの生産に成功しました

「世界中の中小規模の農場は一次産品基盤の流通に苦しめられていて、それはすべてにおいて農家が太刀打ちできない勢力をもった農産大企業が占めています」と言うのは、〈リジェネレイティブ・オーガニック・アライアンス〉の事務局長であるエリザベス・ウィットロウ。「私たちは発足したばかりの新たなROCプログラムで農場に代替経路を提供することで、この現状を変えるつもりです」

「健康な土壌と地域社会を築く環境再生型有機農法を採用する農家に報酬を出しています」と、ウィットロウはつづけます。「発がん性のある農薬で水や空気を汚染し、前例のない表土の浸食を引き起こしているという、現在の枠組みである抽出型の産業化農業システムを崩壊させることが私たちの目標です」

その成功を想像してみてください。もしパタゴニアが支援する農家が土壌の改善を助け、作物の生産性を向上させることができれば、農場や農家の健康を維持しながら土壌の損失を覆せる可能性があるのです。

「土壌有機物(炭素が豊富な表土)には非常に大きな利点があります」と説明するのは、パタゴニアの環境研究者であるステファニー・カーバ。「それは土壌を安定させて浸食を防ぎます。土壌有機物が1%増すだけで、土は75,700リットル以上の水を蓄えることができます。有機物のあらゆる増加が土壌の保水力を高めるのです」

この農法が気候危機対策そのものに貢献するという期待もあります。汚染のない健康な土壌は、大気中の過剰炭素を固定するという可能性も秘めています。
これは炭素隔離と呼ばれ、植物が光合成で吸収した二酸化炭素から糖分を抽出し、その植物の根から土壌に引き出された糖分をバクテリアや菌類が吸収します。これらの微生物は土壌のミネラルを栄養素に変え、植物の成長を促します。またその糖分を変換して、炭素を数世紀にわたって閉じ込める有機物も作ります。

この過程は他の農法よりも多くの炭素を蓄えて真の変化を生み出す、という証拠もあります。土地を利用する気候対策を役立てれば、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によるパリ協定の目的を達成するために2030年までに必要とされている、温室効果ガスの3分の1の削減を実現できるかもしれません。最終的には、Tシャツ用のコットン栽培が気候危機の解決に役立つかどうかにかかわらず、その重要性は明らかです。

「ROCは農業慣行の頂点を築きはじめています」と言うのは、パタゴニアで製品責任シニアマネージャーを務めるエリッサ・フォスター。「農家にできる最高の方法は何かを問い、業界内の対話を促し、そして私たちがいま経験している気候危機対策に農業がどう役立つのかを農家やブランドが考える刺激となることを願っています」

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