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気候のための行動を学ぶ:私の学びと思い描く未来に向けて

丸山 華  /  2021年6月11日  /  読み終えるまで8分  /  アクティビズム

Illustration : MORIHARU

編集注記:パタゴニアは2020年12月に「気候のための行動を学ぶ」をテーマにクライメート・アクティビズム・スクールをオンライン形式で開催しました。そして、2021年3月にはこのプログラムを発展させ、より具体的なフィールドやテーマに焦点を絞ったフィールドワークをオンライン形式で開催しました。これからご紹介するエッセイは、このフィールドワークのテーマの一つである「脱炭素社会(ゼロカーボンシティ/横須賀市)」のプログラムに参加した高校生が寄稿したものです。

私は高校2年生。高校生活と同時にアーティスティックスイミングやピアノを趣味として楽しんでいる。幼い頃から自然に触れる機会が多く、小学生の頃はヤモリや麦、海などの自然について調べ、中学生になるとSDGsの貧困をテーマに研究に取り組んだ。そして、将来の自分を見据えたときに、国際的な課題である海洋汚染や環境問題の解決に関した取り組みに携わりたいと考えるようになった。高校へ進学し、私自身が何か挑戦をすることで、周囲を少しでも良い方向に動かすことができないかと考えていた時、この想いを知った母親が、パタゴニアのウェブサイトで興味深い取り組みがあることを教えてくれた。それが、クライメート・アクティビズム・スクールだった。このプログラムに参加することで、新たな出会いを築くこと、環境問題のみならず世の中のあらゆる分野に好奇心を持ち、主体的に行動できるようになりたいという想いを胸に参加を決意した。

気候のための行動を学ぶ:私の学びと思い描く未来に向けて

写真:丸山 華

昨年12月に開催されたクライメート・アクティビズム・スクールでは日本全国からの参加した人々と出会い、新たな考えや価値観に触れた2日間だった。そして今年の3月に、このプログラムの続編となるフィールドプログラムへ参加した。

地域の取り組みを多角的に見る
横須賀市で活動する皆さんの取り組みを聞いて、気持ちだけでは解決できない深刻な問題に対し、社会の一人一人が積極的に活動することが肝心だと実感した。持続可能な保全において、小さな海洋生物の生態系が崩れると、陸の生態系にも大きな打撃を与えるということ、そして日本人の魚離れを改善することで、畜産業における問題へと結びつき、環境保全に繋がるということを知った。世の中の課題に直結しないと捉えていた日常の出来事こそが、それらの問題解決に繋がる。

年齢の違うメンバーたちと未解決の環境問題について議論し、問題の解決に向けて意見を共有し、より良い解決方法を一つ一つ紡ぎながら探ることの楽しさを実感した。相手の意見を聞くたびに自分にはない価値観や思考を知り、自分自身が新たなものの見方を見出すごとに新鮮さを感じた。さらに、環境問題についてだけでなく、一人の人間としてあるべき人間像についても学んだ。

またFridays For Future Yokosukaの行動力のある取り組みは同世代でありながらも、既に日本という一つの国に対し、働きかけを行っていることに驚かされた。同じ意見を持っている若者が一団となり社会に投げかけを行うことは、想像以上に多くの人々に注目されるというメリットがあり、“若者だから限りがある、できない”のではなく、一人の人間として、学校や国を超えて世界で活動することができるのではないかと考えるきっかけとなった。

共感することへの感覚と理解
劇作家の平田 オリザさんの「シンパシーからエンパシーへ」のプログラムでは、環境問題と教育の密接な関係を学び、世の中に存在する多くの解決されるべき課題は教育問題にたどり着くと考えた。環境問題の場合、多くの人が課題に対して興味を示してもらえるよう、私たちは相手に歩み寄って理解することが重要だ。100人いれば100通りの価値観が存在するし、自分一人の価値観に縛られてしまえば相手とのあいだに溝が生じる。そこで、私たちは演劇という体験を通して、他者を演じることにより相手の心情を考え、「共感する」ことへの感覚と理解を深めた。決して相手に同情はできなくとも、共感することで心を開いてもらい相手との溝を埋めること、またAでもBでもないCの解決方法が生まれる可能性があるということを学んだ。もし、学校教育や習い事のなかで若い頃から培うことが出来れば、世の中に存在する多くの解決されるべき課題の解決策を見出せるかもしれない。本来、学校とは、勉強を学ぶ以上に自分以外の他者との関係を築き、共に人間性を学ぶために存在するべきなのではないか。そして、なにより若い世代の一番身近にある学校という環境が、今まで以上に気候変動や社会問題をテーマとした教育に取り組むことを日本や世界で増やしていくべきではないのかと思っている。

その一方で、気候変動解決には少なからず知識が必要であることも実感した。地理を知らずに、環境破壊が進んでいる場所を語ることができないし、数学や理科を知らずに科学的な根拠を示すことはできない。それから、国語力がなければ相手に説明をすることすらできない。私自身がこれほどの多くの教科を学校で学んでいることの意味をこのプログラムを通して理解した。このように、唯一無二の地球で暮らす世界中の人々に、平等で質の高い教育を提供することは、数ある社会問題解決に向けた一つの近道ではないかとさえ思う。

このプログラムで、心に響いた言葉がある。それは、「演劇をするにあたって、声の小さい子は“声の小さい子”という役を得意とする」というオリザさんの言葉だ。私はこの言葉を聞いた時、どんな状況においても人をまとめる際には、この言葉が一番大切であり、忘れがちであること気づかされた。地球上に何十億という人が生きている中で、すべての人が一致する“普通”など存在しない。それぞれが持ち合わせる多様な個性を押し殺すのではなく、活かす、理解することが様々な立場の人が暮らしやすく、よりよい社会を作りだす。自分ひとりのものさしで他者や物事を見るのではなく、常に広い視野、価値観をもって考えることが肝心なのだ。

これまでの私とこれからの私
クライメート・アクティビズム・スクールに参加するまでは、環境問題の解決には世の中の多くの人々が直接的に関わることなく、他人事として受動的に取り組むことだと考えていた。しかし、このプログラムを通して、他者理解や教育が環境問題だけでなく、紛争や人権保護などの社会問題と密接に関わっていること実感した。

私は海洋汚染の大きな原因であるプラスチックに興味がある。これからの活動として、幼い頃から海に行くたびに集めていた貝殻が何かプラスチックの代替的なものにならないか、そしてごみといわれているすべての物が自然由来になり、人間を含む地球で暮らすすべての動植物に害がない新時代の“ごみ”となる素材を開発することに情熱を持ち続けていたい。

事務局後記:このフィールドプログラムは、2021年1月28日ゼロカーボン宣言を表明した横須賀市に目を向けたもので、様々な立場から話を聞くことからはじまりました。パリ協定以降、世界で脱炭素化への動きが加速し、昨年は日本政府も2050 年までに温室効果ガスの排出をゼロに抑える目標を示し、若い世代からは、安全に暮らせる未来を求めて、さらに気候危機への対策をすすめてほしいというメッセージが横須賀市出身の小泉環境大臣に届けられていました。その状況での横須賀市の宣言を環境団体はキャッチし歓迎もしています。けれども、同時に大規模の石炭火力発電所の建設が進んでいて、年間のCO2排出量は726万トン/年と非常に大きく、横須賀市の温室効果ガスの排出量である約188.8万トン-CO2/年(2017年度)の約3.8倍にも相当する量です。この火力発電所の建設を継続させ、今後稼働するようなことがあれば、気候危機に直面するなかでの脱炭素社会への大転換とは逆行することになってしまう。この現在地からどのような社会や未来を創造していくのか。横須賀市でよりよい暮らし、街、社会にしていくことを望み、様々な地域の活動にも取り組まれている地元の事業者や市民団体、横須賀市の石炭火力発電所の建設中止を求める認定NPO法人気候ネットワーク、Fridays For Future Yokosukaの学生、それぞれから見えているものを共有してもらう時間。そのなかで、地元の人たちからはゼロカーボン宣言をしたことも知らなかった。今回のスクールで知ったという方もいた。その上で、横須賀市は脱炭素社会をつくるとしているけれど、どんな道からすすんでいけば良いのだろうかを想像してみること、また、どの活動においても難しい複雑だからと横においてこられた課題のようなところが新たに創造するところでもあり、これまで行われてこなかった多様な人たちとの関係を築くことや対話、そして解決策が必要になっていること、そのために必要な自分の学びと行動は何だろうかということを、参加者とともに、協力してくれた大人も一緒に考えていく時間となっていました。4月には菅首相は日本の2030年度の温室効果ガス排出量削減目標を2013年度比46%(50%)減と発表。

“先進国は2030年までに石炭火力を段階的に廃止し、途上国は2040年までに段階的に廃止するよう要請します” ーアントニオ・グテーレス国連事務総長

“石炭火力発電所を建設する余裕はもう世界中どこにもありません” ークリスティアナ・フィゲレス気候変動枠組条約第4代事務局長

クライメート・アクティビズム・スクール事務局

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