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健全な川を後世にのこす象徴サクラマス

佐々木 克之  /  2014年10月23日  /  アクティビズム, 環境

佐々木克之 (一般社団法人北海道自然保護協会副会長)

私がサンル川やサクラマスのことを知ったのは、北海道自然保護協会の理事になった2004年頃だった。サクラマスが富山の押しずしの食材ということ、サクラマスは桜の花が咲く春に生まれた川の河口にやってくること、サケと違って生まれて2年目になって海に下ること、紅鮭と並んで美味しいサケ科の魚だということなどを知った。たくさんのサクラマスが遡上して、子どもであるヤマメが日本でももっとも密度高く生息しているサンル川の観察会に参加し、こんな小さな川に遡上するんだ!と感心した。

そのこんな小さな川にサンルダムを造る計画がある。サンル川の平均流量は約8㎥/秒で、サンルダムの貯水容量は約5720万㎥なので、ダム湖をいっぱいにするには約80日かかる。サンル川はそんなに小さな川だ。たとえば北海道日高地方の沙流川に造られた二風谷ダムの貯水容量は3150万㎥、平均流量は58㎥/秒なので、ダム湖がいっぱいになるには6.3日あればよいことになる。現在、ダム工事のため森林が伐採され、サンル川がよく見えるが、それを見た一般市民は、こんな小さい川にダムを造るの?と言う。

北海道自然保護協会でサンルダムを担当するようになり、いろいろと勉強した。サケは12月頃生まれ、翌年の3月頃海に降るが、ヤマメはサケと同じころに生まれても、翌々年の春に海に降る、それだけ川にいる時間が長い。したがってサケと同じように放流しても川に長くいて、海に降る前にその数は減ってしまう。そこで1年間飼育したヤマメを放流することをやってみたが、放流した稚魚のなかで親となって戻ってくる数はサケほど高くないということもあり、サクラマスの放流は採算が合わないことも知った。実際に漁獲されたサケの99%以上は放流サケだが、サクラマスの場合は約20%が放流魚で、残り約80%は野生魚である。そんなこともあり、サクラマスの放流事業は実用化していない。

サクラマスはサケ科の魚のなかでもっとも遡上能力が高い。よってダムや河口堰がなければサンル川のようにかなり上流の支流にまで遡上して産卵する。サクラマス/ヤマメの豊富な川は海から上流までダムなどがない川である、ということの証明であり、サクラマスは健全な川を象徴する魚である。サンル川のサクラマスは、日本海から天塩川を約200キロメートルも遡上してきて、産卵する。天塩川の河口からサンル川まで200キロメートルもダムや河口堰のない川がつづいているということだ。

北海道の日高地方に沙流川という大河がある。沙流川はアイヌ文化が豊富な河川で、そこに造られた二風谷ダムはアイヌ文化をないがしろにした、という裁判の判決がだされた(しかし裁判所は、できたものはしかたがないとしたので、二風谷ダムは存在している)。そこで沙流川流域のアイヌ文化を調べることが重要となり、調査報告書が出された。そこには、ダムのない昔の沙流川流域ではサケやサクラマスが遡上し、上流ではヤマメが真っ黒になるほど生息していたと報告されている。いまではサクラマスは二風谷ダムの上流には遡上できないため、ヤマメもほとんどいなくなった。二風谷ダムは100年のあいだに溜まる土砂は15%ほどのはずだったが、1997年に完成したあと2012年にはダム湖の半分以上に土砂が溜り、ダムの下流はダムからの泥の流出で濁った川となり、名物のシシャモも取れなくなった。沙流川はダムができたら川がどうなるかを示す反面教師である。私たちは教師からよいことを学ぶが、反面教師からはそうなってはいけないと教えられる。

私たちの反対にも関わらず、今年になってサンルダムのダム本体の工事がはじめられようとしている。サンル川が流れる下川町長は、水害を防ぐためにサンルダムを!と述べて熱心にサンルダム建設を進めている。しかしサンル川は名寄川に流れ、下川町はその名寄川の反対側にあるので、サンルダムは下川町の水害とは関係ない。日本にはあまたのダムが建設されているが、現在本当に必要なダムはほとんどない。あれこれ理由をつけてダム建設に熱心な人たちの内心のスローガンは、「いまがよければすべてよし」。 下川町は森林の町として有名だが、サンル川のことはまったく無視している。私たちのスローガンは、「美しく、豊かなサンル川を豊かな森林とともに後世にのこす!」である。

ダム建設を進めている北海道開発局は、じつはサンルダムを建設しなくても水害を防ぐことができることを明らかにしている。川を広くしたり、深くしたりすれば、大水がでても川は氾濫しないからである。開発局は、「しかし、川を広く、深くする」にはそれだけ川を掘らなければならず、ダム建設よりもお金がかかるから、サンルダムがよい、と言う。たとえ少しお金がかかっても、サクラマスが守られれば、結果としてダム建設より安くなるはずである。しかし、開発局はサクラマスを失った場合の損害金額については考えていない。具体的に述べると、国交省のダム建設の是非の検討では、最も安価にできる治水方策を選ぶことになっていて、ダムがそれにあたるとしている。ここでは、サクラマスが失われる被害額は算定基準に入っていない。ダム建設の是非はお金で検討するのに、ダムによる環境破壊を計算に入れないのは、はじめからダム建設を選ぶことと同じである。

現代の生態系保全の目的は、多様な遺伝種をのこすことが新薬に繋がることとか、サクラマスの漁獲によって人間に役立つことなど、長い目でみて人間に役立つこととしている(これを生態系サービスと呼んでいる)。サクラマスは日本と沿海州にのみ生息している種であり、このまま減少すると絶滅危惧種に指定されかねない。サクラマス資源は北海道にとって有益であるとともに、下川町にとっては街おこしの重要な材料になりうる。森林とサンル川とサクラマスのセットで自然を学ぶ町にもなり、サクラマスをさまざまに食することのできる町にもなりうる。サクラマスが躍る下川町からサクラマスのいなくなる下川町になることは、下川町にとっても、北海道全体にとっても、経済的かつ文化的損失ではないか。

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パタゴニア日本支社では映画『ダムネーション』の日本公開とともに、日本の川に自由な流れを取り戻すため、まずは熊本・球磨川の瀬戸石ダムの撤去、愛知県・長良川河口堰の開門、北海道サンル川のサンルダムの中止のために、行動を起こします。

代替策があります:サンルダム建設の中止を 一般社団法人 北海道自然保護協会/北海道

北海道の貴重な自然資本を失うことになるサンルダムの建設は中止し、河道改修という代替手段による治水ならびにダムに頼らない地域の活性化に関する検討を高橋はるみ知事に要請します。北海道北部、上川郡下川町を源流とする天塩川水系名寄川支流サンル川で、国土交通省北海道開発局が進めているサンルダムの建設中止に取り組むものです。北海道の河川に豊富に生息していた野生のサケマス類が河川開発によって危機に直面するなか、サンル川は天塩川河口から源流部の産卵場までの200 キロメートルもの距離を毎年1000 ~ 3000 尾ものサクラマスが遡上して自然産卵を繰り返す、海と山を結ぶ極めて貴重な生態系が残されている川です。サンルダムの目的を代替するより良い方法は提案されており、サンル川の野生のサクラマスを持続できるか否かの歴史的な危機が目の前にあります。まさに今がサンル川のために行動する時です。

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