「Don’t Buy This Jacket(このジャケットを買わないで)」:ブラックフライデーとニューヨーク・タイムス紙

写真:2011年11月25日にニューヨーク・タイムス紙に掲載されたパタゴニアの広告
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なぜブラックフライデーに「このジャケットを買わないで」という広告をニューヨーク・タイムス紙に掲載したのですか?
(注:ブラックフライデーとは、アメリカ合衆国の11月第4木曜日の感謝祭の翌日の金曜日のこと。感謝祭明けにスタートするクリスマスのセールにより、小売店が黒字になることから、こう呼ばれる。)
会社として、消費者主義の問題に正面から取り組むときがやってきたからです。
「コモンスレッズ・イニシアティブ」の最も困難でありながら重要な要素というのは、環境フットプリントを削減するためには、あらゆる人びとが消費を抑える必要があるということです。ビジネスは製造を削減して、より高品質なものを作る必要がありますし、消費者は購買決定をする前に熟考する必要があります。
それはなぜでしょうか。 私たちが作るすべてのものはこの地球から、戻すことのできない何かを奪っています。パタゴニアのウェアのひとつひとつが、たとえそれがオーガニックであれリサイクル素材を使ったものであれ、その重さに対して何倍もの温室ガスを排出し、最低でも半分の廃棄物を生み、地球上のあらゆる場所でだんだんと希少になっていく淡水を大量に使用しているのです。
ニューヨーク・タイムス紙に広告を掲載した理由は、それが国内で最も重要な新聞であり、「記録の新聞」として知られているからです。私たちはこの広告をホリデーのショッピングシーズンの開幕日である「ブラックフライデー」に掲載しました。ブラックフライデーに購買を控えることを求めている会社は、この国でも私たちだけでしょう。
けれども、私たちは物を作り、売るビジネスをしています。私たちの給料はそれに依存しています。そればかりか私たちのビジネスは成長しており、新しい直営店をオープンさせ、カタログの発行部数も増えています。私たちを偽善者だと呼ぶお客様にはどう答えたらよいのでしょう。
「ビジネスを手段として環境危機に警鐘を鳴らし、解決に向けて実行する」というのが私たちのミッションの一部です。
私たちは環境を改善するための仕事をしているのですから、お客様に「購買はよく考えてから」と奨励しないことの方が偽善なのではないでしょうか。環境への悪影響を削減するためには、環境により配慮し、およぼす害のより少ない方法で製品を製造するだけでなく、私たち全員が消費を減らさなければなりません。一方、健全な経済が基盤にすることができるのは人びとが必要としないものをより多く売買することだと思い込むのは、愚かなことです。そしてそれを愚かだと思う人びとは、その意見を述べるときなのです。
それでもなお、パタゴニアのビジネスは成長しており、そしてこの先もビジネスを長くつづけていきたいと思っています。私たちの誠実さ(あるいは偽善)は、私たちが売るすべてのものが有益で、可能な場合は多用途に使えて、しかも長持ちし、そして美しいけれども流行の奴隷でない、ということにかかっています。私たちはそこに完全に行き着いているとはまだいえません。すべての製品がこれらの基準を満たしているわけでもありません。けれども「コモンスレッズ・イニシアティブ」は、こうしたゴールに向けて私たちを前進させる構想となるでしょう。
人びとに購買を控えて、より熟考した購買を促すだけなら、なぜ挑発的な見出し文を使ったのでしょう?
それはこの問題に、強く、明確に、注意を促すためです。
数年前のカタログに使った「このシャツを買わないで」という文句は強い反響を導きました。この見出し文によって、できるだけ多くの人たちが広告の全文を読み、私たちのウェブサイトへ訪れて、「コモンスレッズ・イニシアティブ」の誓約をするきっかけとなることを期待しています。
