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地球が私たちの唯一の株主

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市民からはじまる小さなうねり

木村 芳兼  /  2015年5月28日  /  アクティビズム, 環境

「エネルギーを選択するということは地域に愛着をもつこと」 という言葉が心にストンと落ちた。2013年4月、パタゴニアの吉祥寺ストアで開催されたGo Renewable – 「いまあらためて再生可能エネルギーを活かして」 『シェーナウの想い』フィルム上映会&トークイベントで、元国立市長で脱原発を目指す首長会議の事務局長を務める上原公子さんがおっしゃっていた言葉だ。そのときに心がスッとなったと同時に背中を押してもらい、いまなお大事な支えとなっている。

2007年、渋谷ストアで働いていた私がストアの環境担当をしていた当時、宮下公園を出発点として青森県六ヶ所村における再処理工場建設反対のデモが行われていた。ストアから近かったこともあり、よく参加していた。宮下公園周辺を「NO NUKES」と書かれたプラカードを持って初対面の方と同じ言葉を叫びながら練り歩いた。そこからのつながりで原子力発電に関する反対運動のイベントなどにも参加するようになり、イベント後もかならずプラカードを持って歩いた。何かに反対したり、訴えるデモ活動は全国で大なり小なりあると思う。自分にとってはじめて行った社会活動はエネルギー問題だった。

反対を訴えるような活動はそれ相応のエネルギーが必要なことも学んだ。そして、反対の意見の代替えとなるような答えをもっていなかった私は活動に疲れてしまった。先が見えない道をものすごいエネルギーを消費しながら進んでいたことを、それ以上つづけられなかったのだ。自分勝手ではあるが、登りかけた山を降りる決断をした。反対運動をしているころから再生可能エネルギーという言葉は聞いていたが、正直なところコストや規模などの面から考えても既存のエネルギーからの代替えになると思えなかったこともあった。

しかし、2011年3月の福島第一原子力発電所の事故により、それどころではなくなった。いよいよ、既存のエネルギーからの脱却が必要になったのだ。

2010年、パタゴニア日本支社の環境助成金プログラムのひとつである「ボイス・ユア・チョイス」〈認定NPO法人環境エネルギー政策研究所(ISEP)〉が助成先として名を連ねていた。飯田哲也所長のお話を聞く機会があり、とてもワクワクしたのをいまでも覚えている。大規模なものより小規模で、一極集中ではなく分散型、そしてその土地に住む地域の人びとが協力しながらエネルギーを作る。枯渇する可能性がある資源を使うのではなく、自然の力を利用するエネルギー。チェルノブイリ原発事故のことは知っていたが、日本で事故が起こるとは思っていなかった。エネルギーを自分が選択していくことなど考えてもいなかった。反対の声を挙げつづけるのではなく、新しい社会の方向へと舵を切れるような動きが必要だと感じていた私にとって、ISEPでインターンシップをすることはとても自然な流れだった。

エネルギー問題に取り組むにはものすごいエネルギーが必要だがゆっくり登っている時間もない。そしてうれしいことにふたたび登りだした山は仲間が多かった。市民からはじまる小さなうねりは全国で起こっていた。

パタゴニアの環境インターンシップ・プログラムを利用してISEPで私が参加をした活動を紹介したい。環境省が行う「地域主導型再生可能エネルギー事業化検討業務」というものがある。この事業の概要を簡単に説明すると、地域の住民が再生可能エネルギー事業の立ち上げを促進するための、学識経験者、民間企業、環境関係NPO等民間団体、地域住民、地方公共団体、さらにその他の関係行政機関などの関係者で構成する事業化協議会などの設置、運営支援、人材育成、その他事業化に必要な専門的手法の支援および地域主導型再生可能エネルギー導入に向けた事例の収集などだ。目的は、地域住民が参画できる再生可能エネルギー導入事業の円滑な立ち上げのための事業化計画策定手法の確立。つまり、「エネルギーを選択することは、地域に愛着をもつこと」を体現できる支援である。ISEPはこの業務の事務局を担当しており、全国で採択された地域の取り組みがうまくいくようにコーディネートしている。また、地域の特性や人の想いを汲みとる課題解決事例を共有することでオープンプラットフォームとなっている。

この事業の研修会にインターンとして参加をする機会があり、主に会場設営や全般的な運営のお手伝いをさせていただいた。ストアでお客様にサービスを提供する感覚に近く、参加者が心地よい研修を受けられるための心づかいを意識した。自分にとっても学びになり、地域の合意形成を導くワークショップはストアでのミーティングのコーディネートにとても役立っている。OST(オープンスペーステクノロジー)という手法を使ってワークショップを開催していたが、学識経験者、地域住民、地方公共団体、民間企業などのステークホルダーが集まり、初対面同士が地域が抱える問題に向き合い、解決方法を探る時間は有意義だった。

静岡県に環境省事業に採択された地域がある。静岡市を拠点に活動する〈しずおか未来エネルギー〉は、静岡県内で地球温暖化対策に取り組んできた〈NPO法人アースライフネットワーク〉と地元企業である〈鈴与商事株式会社〉の出資により設立された事業会社で、〈アースライフネットワーク〉と静岡市の共同提案書が平成23年度の地域主導型再生可能エネルギー事業化検討業務に採択されている。採択されるまでも大変な苦労があったにちがいないが、環境省事業の公募がはじまる前から地球温暖化に取り組み、地域のあり方や地球環境に対して「愛着」をもっていたキーパーソンの存在があったからこそ採択されたのだろう。

2015年1月には静岡県地球温暖化防止活動対策推進センター主催で『地域の自然エネルギー活用と温暖化防止を考える』温暖化防止研修会が開催された。静岡県地球温暖化防止活動推進員、一般参加者、全国ご当地エネルギー協会関係者を含む約200名が参加し、大盛況のうちに終了した。このイベントにもインターンとして参加をし、運営に関してマンパワーを提供することができた。同日、全国ご当地エネルギー協会の幹事会も開かれ、全国のご当地エネルギーの活動について各地の幹事や会員が活発な意見を交わす場を体験し、「市民からはじまる小さなうねり」は確実に「大きなうねり」のコミュニティ・パワーとなっていることを確信した。

また、〈全国ご当地エネルギー協会〉が関係するイベントでは、必ずと言っていいほどご当地の食材を食す機会があり、その地域のことを知る機会が用意されていることは大きな特徴だと感じた。静岡市のキーパーソンのひとりである〈しずおか未来エネルギー〉の服部乃利子さんは全国から集まる協会の方に、静岡の特性を感じてもらうために素敵なおもてなしをご用意してくださっていた。「ご当地エネルギーが美味しい」と話題になるのはそう遠くないはずだ。この考え方は、地域に愛着を持って地域社会を持続的にしていくうえでも大切だと考えているが、地元産の食材を地域で消費し、循環させていくという環境負荷に対してもスムーズな方法と言える。パタゴニアでも「レスポンシブル・エコノミー (責任ある経済)」「ヒッコノミー(田舎っぺ経済)」というエッセイを紹介したが、まさにその社会経済ができつつある。

静岡市での活動も、静岡市でのイベントが大盛況に終わったことも、何も特別なことではなく、これからの社会にとってはとても必要な変革だと、インターンシップを通じてあらためて確信することができた。それと同時にパタゴニアのストアで勤務する私にとっても、ストアのある地域にさらなる関心を持ち、訪れるカスタマーにとっても有益な情報を提供するとともに、何かに愛着をもつということはとても素晴らしい変化が起こっていくということをお伝えしたい。必要な製品をじっくり選ぶお手伝いをさせていただくのはもちろんだが、それぞれが大事にしている何かについてもじっくりとお話をさせていただきたい。

インターンシップを経験し、全国で地域に愛着をもち活動をしている方との交流のなかで、私にも大事にしたい地域ができた。これからは経験を活かして地域にご当地エネルギーをつくる活動をしていきたい。そして、そこでの経験をパタゴニアへ還元していく決意をもつこともできた。これまでは地域に愛着をもつということは他人事のような気もしていたが、実際に活動している方々とお会いする日々はとても刺激的であり、なにより「市民からはじまる小さなうねり」はとても人間らしく本能的だからだ。

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