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ヨーロッパ初となる原生河川国立公園はここにある

モーリー・ベイカー  /  2023年6月13日  /  読み終えるまで6分  /  アクティビズム

自然のままのアルバニアのヴョサ川は、世界の水源保護活動の新たな模範になる。

2022年6月13日、アルバニア政府はパタゴニアとの基本合意書に署名を交わし、ヨーロッパ最後の原生河川の1つであるヴョサ川を原生河川国立公園に指定しました。それから1年も経たない間に、この河川の保護が法制化され、ヴョサと3つの主な支流は、現在では永久に保護されることになった。アルバニア、ケサラト付近のヴョサ川。Photo : Nick St. Oegger

原生河川とは何か。あなたはそれを見たことがありますか?河川の流れを押さえ込もうとする人工構造物によって細断されることなく、自由に蛇行し、景観を縫うようにしなやかな美しいカーブを描き、最後は海へと流れ着く。これこそが、河川のあるべき姿である。そして、それは渇水と再生の絶え間ないプロセスに委ねられている。あらゆる河川は、アルバニアのヴョサのようにあるべきだ。世界の大河川のうち、人間による干渉、つまり河道整備を免れているものはわずか3分の1であり、その中でヨーロッパ最後かつ最大の河川の1つがヴョサなのだ。ヨーロッパでは初めてとなるヴョサ原生河川国立公園が誕生したが、これらを保護することは活動に携わった人々の10年来の夢であった。そしてこの新しい公園は、これからの水源保護の正しいあり方を示す国際的な模範としてその役割を果たすだろう。

市民、企業、政府から人々が集まり、努力した結果、ヴョサを守るこの新しい方法が考案された。条例はこの川の自由な流れの維持を保証し、そこに生息する1,100種の動物の保護に貢献する。その中には新種や世界的に絶滅が危惧される13種類の動物が含まれる。暮らし、文化、生活様式が何世紀にもわたって原生ヴョサに結び付いている10万の人々への配慮であることは言うまでもない。分断されてしまえば、河川自体も、そこに生息する生物も、再生しなくなる。治水を追求する中で、我々は随分と破壊を繰り返してきた。

ヨーロッパ初となる原生河川国立公園はここにある

シュシカ川は、国立公園宣言のフェーズ1で保護されるヴョサ川の3支流の1つ。アルバニア、ブラタジ村付近のシュシカ川。写真:Nick St. Oegger

ヨーロッパ初となる原生河川国立公園はここにある

アルバニア、ヴョサ川のかつてのカリヴァチ・ダム建設予定地。2021年、ティラナ市の行政裁判所は、ダムを建設しない判決を下した。Photo : Andrew Burr

ヴョサ川の流域面積は、アルバニア国土の3分の1以上を占めるほどで、とても大規模なものだ。2023年3月15日に確定したヴョサ原生河川国立公園フェーズ1には、細く長く続く2万ヘクタールの地域、アルバニアとギリシャの国境からアドリア海まで自由に流れる400kmの保護河川、そして3つの支流が含まれている。フェーズ2では、保護対象の支流を追加し、地域をギリシャに広げることで、この河川の源流やさらなる流域が含まれると期待されている。

このようなプロジェクトに近道はない。時間と、関係性への投資が必要であり、ついでにいくらかの資金も役に立つ。社会を構成する人々が総出で協力し、各自の方策を駆使し、パートナーとの信頼関係を築くことを基本とするモデルである。

ヨーロッパ初となる原生河川国立公園はここにある

2022年6月13日、アルバニアの観光・環境大臣ミレラ・クンバロとパタゴニアCEOのライアン・ゲラートは、ヴョサ国立公園創設の基本合意書に署名した。アルバニアのティラナ市にて。Photo : Nick St. Oegger

「皆がいっしょになって、歴史、エゴ、その他の障害になりそうな複雑な事情を手放しました。ゆっくりと着実ではありましたが、誰もが互いの痛みに耳を傾けることに尽力しています。これは基本的な交渉術ですが、効果があります。いっしょに向き合いましょう。世界のリーダーは、歴史に類を見ない方法で変化を起こそうとする市民や企業の圧力に直面しています。私たちは、誰もがこの生きた同じ惑星に依存していることを、次第に理解し始めています。今ヴョサから学べることは、これらのことが達成可能であり、やる価値があるということです」と語るのはパタゴニアCEOのライアン・ゲラートだ。彼は、2016年にこの川の河川敷で一晩を過ごし、それ以来、自由なヴョサの擁護者となった。

ヴョサに関しては、交渉を続け、保護すべき水系がまだ他にもあり、パタゴニアとしても、他のいくつかのシナリオを立ち上げている。それは前進しようとする市民と、自国の必要と必然のバランスを取る政府の両方を支援するために、企業が介入するというものだ。

アルバニアは、政府が河川に関心を向けられるようになるには、乗り越えるべき独自のハードルがあった。「90年代に共産主義の独裁政権が崩壊して以来、アルバニアは解決すべきとても多くの深刻な問題を抱えていました。私たちは90年代を生き延びました。続く2000年代と2010年代に、私たちは国家という、以前は存在しなかった法の支配がある民主的社会を建設しつつあり、それには私たちの命がかかっていました。」アルバニアの観光・環境大臣で、2013年に閣僚になる以前は、異文化コミュニケーションの教授であったミレラ・クンバロは言う。「しかし2013年になってようやく、アルバニアがどうあるべきかというビジョンを構築し始める余地が生まれました。その問いに応えるために、私が自分の子を育てるこのアルバニアは、何ができるでしょうか。」

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アルバニア人ベシャナ・グリは、いつもヴョサを愛していたが、娘が生まれてから、この川を守る道のりが、いっそう意味のあるものになった。「ヴョサを守ることが私の人生のミッション」と彼女は言う。「そしてそのために何でもするわ。」Photo : Nick St. Oegger

「母になったことで、この川とのつながりが深まったの。あらゆるものへの見方が変わり、ヴョサを守ることが自分の人生のミッションとなり、そのために自分は何でもするということを、よりいっそう確信するようになったわ」環境NGOエコアルバニアの共同創設者で、アルバニア人のベシャナ・グリは言う。彼女は10年近く、ヴョサを保護するキャンペーンに取り組んできた。この成功の瞬間について娘は何を知るべきかとたずねると、グリはこう言った。「娘には自分の母や、母がやったことを誇りにしてほしい。人々と環境に責任を持ち、配慮することを、人生の教訓としてほしい」

ヴョサの例では、国際的関心が後押しとなった。ただし、これが世界的潮流になるかどうかという疑問は残こしたままだ。次はどの川か。かつてクンバロ大臣はそう問いかけた。「アルバニアを訪れたことがあり、ヴョサを守るべきだと言っている他の先進世界に言います。なぜこれが最後の原生河川の1つなのですか。他はどこにありますか。後に続くのは誰?」

ヨーロッパ初となる原生河川国立公園はここにある

私たちは川を訪れ、写真を撮り、泳ぎ、浸かり、水浴びをする。しかし、川はダイナミックなものであり、絶えず変化し続けているものである。ギリシャの哲学者ヘラクレイトスは、「同じ川に2度入ることはできない」と言った。川を愛するスロベニアのカヤッカー、ロック・ロズマンは、流れにたたずむ。Photo : Andrew Burr

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