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「Family Man(ファミリーマン), 5.14」:初登の物語

ソニー・トロッター  /  2014年12月11日  /  読み終えるまで8分  /  クライミング

ルート上部の核心の入り口にさしかかるソニー。Photo: Taran Ortlieb

「Family Man(ファミリーマン), 5.14」:初登の物語

ルート上部の核心の入り口にさしかかるソニー。Photo: Taran Ortlieb

日々起こる色々なことと同じように、すべては5年前に届いたあるeメールからはじまった。それはブリティッシュ・コロンビアのオカナガン・フォールズの友だちからスコーミッシュのクラック狂の仲間数人に宛てた短いメールだった。

「よお、みんな、このいくつかのルーフクラックを見てくれよ。きっとフリーで登れるぜ!じゃあな」−ダグ

ダグと彼の奥さんのジャネットはスカハ・エリアの長年の地元クライマー、ハイカー、そして探索者で、おそらく誰よりもスカハに詳しい。それになんといっても彼らは最高にいい人たちだった。もちろんこのメールには思わず目を見張りたくなるような見事な写真が1枚か2枚添付されていた。最初から魅了された僕は、すぐにでも飛んで行きたかったことを認めよう。でも時間や資金、そしていくつかの約束事があり、そこへちゃんと行けるようになるまでに2年足らずを要した。

最初のトリップはこのルーフクラックを見るだけで終わったが、今年の3月、妻のリディアと生後2か月のテイタムと一緒にふたたび戻ってきた。当初の計画ではスミスロックに行くつもりだったが、赤ん坊のパスポートが間に合わず、計画はボツとなった。スカハは第二候補だったが色々な条件、とくに生まれて間もない赤ん坊を連れていくのにスミスよりはるかに適していることがわかった。まずドライブ。オレゴンまでは14時間かかるが、スカハなら7時間で行ける。岩場も駐車場から比較的近いし、急なアプローチも稀だ。それにスカハはオカナガン・エリアの南部に位置し、乾燥した砂漠気候で冬の遅い時期でもクライミングにピッタリの条件を提供してくれる。我々カナダ人にとっては天の賜物のような存在なのだ。

クラックの基部に着いて準備をはじめるのに、たいした時間はかからなかった。単独だったのでルーフクラックのあるドームの頂上のスラブに生えた古い木にロープをセットし、まず懸垂してみることにした。いくつかのもろい岩を超えて下降すると、最初のルーフの下に着いた。途中小さなストッパーやオフセットカムをいくつかクラックにセットし、ルーフからはなれないようにしてから、ダグのメールにあった写真の興味をそそられたラインに近づいた。だが残念なことにそのラインを登るのはほぼ不可能だった。

「Family Man(ファミリーマン), 5.14」:初登の物語

3月にはじめて懸垂下降してクラックをチェックした。実際にこのクラックを登る可能性は皆無だった。僕の指には細すぎたからだ。Photo: Sonnie Trotter

僕の最初の反応は純粋な欲求不満だった。我々クライマーは美しくかつナチュラル、しかも自分の能力の限界一歩手前で、日々のクライミングをはるかに凌駕し、集中力と注意力を要求する完璧なルートを求めてあちこちを探索している。初登の魅力に取り憑かれた者として、僕はいつも自分の能力とインスピレーションを高レベルへと導いてくれる特別なルートを探している。いままでは幸運にも、そんな理想のクライムのいくつかに出会ったが、このルーフクラックはよりひんぱんに遭遇する行き止まりのように見えた。僕にできることは地面まで降り、ドームの上までふたたびハイクアップしてロープを回収することだけだった。

しかしうれしいことに、懸垂をつづけていくうちにルーフのかなり左寄り、そしてクラックの右側に使えそうなホールドが目に入った。細いクラックに指を入れることは不可能でも、このジレンマを解決してくれそうな配置のフェイスホールドのいくつかが見えてきた。その夕方、興奮で僕の血は騒ぎ、血管にオキシトシンが送り込まれるような感覚を覚えながらトレイルを駆け下りた。もはやこのルートは不可能ではない。だが睡眠不足で前腕もすっかり萎えてしまった僕にこのルートが落とせるのだろうか。

翌日妻がパートナーとしてビレイをかってでてくれた。彼女は僕がこの新しいプロジェクトにどれだけ高揚しているか、僕の目を見て知ったのだろう。だが他のスカハの岩場に比べて、このルートへのアプローチはあまり容易ではない。厳しい日差しのなかを急な斜面を登ると、とがったボルダーが転がった基部にたどり着く。おまけにそこはしばしば強風にさらされる。生まれたばかりの赤ん坊とママには決して快適なハイクとはいいがたい。

でもリディアはテイタムが胸のハーネスのなかで眠るのを見て微笑み、何のためらいもなくウェットナップ、おしめ、ダウン・ジャケット、予備のクリームやらパウダー、水分、暖かい服など、この生後2か月の幼児が山で過ごすのに必要なものを詰めたバッグを肩にして歩き出した。僕は駐車場から背の高い草木を掻き分けて進む彼女のあとを一心に追った。

岩場の基部で僕が作れる唯一の安全な確保方法は大木の基部にアンカーをセットすることだった。こうすればリディアもテートもハーネスを付ける必要もなく、ただ僕が登るにつれてロープを繰り出せばいいだけだ。彼女がテイタムの世話をするときは、ただ確保器をそのままに、僕がロープにぶら下がって待てばいいだけ。手が空いたときに僕を降ろすことができるって訳だ。生後2か月の赤ん坊を抱えた人にビレイされるのは生まれてはじめての経験だった。うまく説明しがたいが、ロープの片端を握る妻と、安全なベビーキャリアのなかから見つめる息子のサポートを受けることは、この経験全体を信じられないほど豊かなものにした。要するに僕がいちばん大切する3つのことが同時に叶うという稀な機会だったのだ。新ルート、最愛の妻、そして僕らの個人的なウンチ工場。まるで天国だ。

「Family Man(ファミリーマン), 5.14」:初登の物語

お父さんを木からビレイするリディアとテイタム。Photo: Sonnie Trotter

「Family Man(ファミリーマン), 5.14」:初登の物語

森のなかで快適なお昼寝から目覚めたテイタム。Photo: Sonnie Trotter

残念ながらこのトリップではルートを落とせなかった。未解決のムーブがひとつ残ったのだ。ふたたびそこに戻るときこのムーブをどうすればよいか、一夏中考えつづけた。そしてこの秋、友人のジャレット・ネルソンと一緒に5〜6日このルートにトライを重ね、ついにこの謎解きに成功した。

右手のホールドより上に右足のニーロックを決め、とても悪いホールドをもつ手の負荷を減らしてリーチの先にある細い割れ目に、スタティックに手を届かせることができたのだ。それまではシームにランジしようとしてことごとく失敗していた。あとは下部と上部の核心をつなげ、途中にしっかりとカムを設置して全力を尽くすだけだ。

最終日、天候が崩れてこのオカナガンに厳しい冬がやって来る前の、最後のトライをすることにした。リディアとテイタムと僕はもう一度ルートの基部へと登っていった。励ましてくれるために顔を出した数人の地元クライマー、そして妻と息子が基部で見守るなか、僕は火事場のばか力で何とかアンカーにたどり着き、このひどくオーバーハングした手ごわく美しい新ルートに成功した。まさに月に飛んでくような気分だった。

「Family Man(ファミリーマン), 5.14」:初登の物語

「ファミリーマン」の下部の核心を登るソニー。Photo: Sam Eastman

「Family Man(ファミリーマン), 5.14」:初登の物語

次のホールドに狙いを定めるソニー。Photo: Gabriel Zamorano

「Family Man(ファミリーマン), 5.14」:初登の物語

上部の核心の指先のフィンガーロックを決めるソニー。Photo: Jared Nelson

友だちが下からこの登攀のビデオを撮ってくれた。実際には腰のチョークバッグが逆さになって揺れているのを見るまではこのルートの傾斜を実感できないが、僕にとってはこうしてムーブが繋がってルートが完成していく様子を見るのは素晴らしい。僕が開拓した他のルートと同じで、グレードはあくまで目安だ。他のクライマーが刺激されてトライしたくなるような新しいラインを作ることは、僕にとってはグレードなんかよりもはるかに意義あることだ。下記のビデオを楽しんでもらえたらうれしい。

Family Man from Sonnie Trotter on Vimeo.

ビデオ:ソニー・トロッターの「Family Man 5.14」on Vimeo

「Family Man (ファミリー・マン)」に関しての詳細は『ロック&アイス』誌掲載のクリス・パーカーの記事をお読みください。

ソニー・トロッターはブリティッシュ・コロンビア、スコーミッシュ出身のパタゴニアのクライミング・アンバサダー兼カメラマン。彼の功績はデイープウォーター・ソロからビッグウォールまで多岐に渡る。ソニーについての最新情報は彼のブログsonnietrotter.com/blogをご覧ください。

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