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プンタ・アレンでの恐怖と自己嫌悪

マイク・トンプソン  /  読み終えるまで10分  /  フライフィッシング, コミュニティ

暗い空と雨具がこれから起こる何かを予言しているようだ。Photo: Matt Jones

プンタ・アレンでの恐怖と自己嫌悪

暗い空と雨具がこれから起こる何かを予言しているようだ。Photo: Matt Jones

「ボタンを押して」

「いや、あなたが押して」

「ちくしょうエレン、押すんだ!」

そして彼女は押した。

税関検査官の目をごまかして通過させようとしたのは麻薬とはほど遠いものだったが、麻薬密輸人だと疑われるのは目に見えていた。実のところ、それはメキシコのフライフィッシングの名所プンタ・アレンにあるパロメタ・クラブで懸賞となる、フィッシング関連のものだったのだが。

パーミットという魚にちなんで名付けられたこのロッジでは、〈Bonefish and Tarpon Trust〉と地元の学校の基金集めのためのトーナメントを催していた。なぜかはもう記憶にないが、僕は友人でクライアントのデービッドのために懸賞品を運ぶロバの役割に同意したのだった。パタゴニアのフィッシング用シャツ、偏光サングラス、そしてロッドとフライボックスの入った荷の重さが重量制限を超えていたので、その一部を運ぶのを手伝ってもらおうと、友達で隣人のエレンを徴集した。エレンは無邪気にこれに同意した。

税関検査官は持ち込まれるすべての荷物を検査したくはないので、ランダムなチェックのシステムが用いられる。口頭かつ書面でタバコや麻薬、1万ドル以上の現金またはメキシコで売られる商品を携帯していないことを誓った旅行者は、最後の検査官1人だけのチェックで済む。すべては関税のため。輸入品には関税を払わなければならないのだ。

運の悪い僕のことだから、すぐに捕まるだろうというのは分かっていた。エレンと僕は同じカートに荷物を積んであり、想像できるけれどその量は膨大だったので、僕は彼女にボタンを押してもらいたかった。そして彼女は押し、緑色が点灯した。入れた。税関監査官はどちらがボタンを押すか口論している僕らを見て、結婚したカップルだと思ったのだろう。彼女は自分の任務を遂行し、「あなたたちは結婚しているの?」と聞いた。

「いいえ、してません」とエレンは即座に答えた。おおっと。監査官は僕を見ると「ボタンを押しなさい」と言った。僕はそれに従った。もちろん、結果は赤色だった。

悪運というものがある。しかし、それは時として幸運がつづく前触れだったりもする。これはそのような時のひとつだった。禁制品とともに個人用のフィッシング・ギアが入った、検査官の目の前で山積みになった荷物にタバコがないことを確認すると、彼は比較的お手柔らかな質問をして、バッグの深みを検査することなく通してくれた。

プンタ・アレンでの恐怖と自己嫌悪

さあこれで目の前の仕事に集中できるぞ。パタゴニアは毎年恒例となったパロメタ・クラブのパーミット・トーナメントの第二回目をスポンサーすることに同意し、僕はマーク・ハーボーと一緒にコンペに参加することになったのだ(初回だった昨年のイベントの詳細はパロメタ・クラブのブログでどうぞ)。同ロッジは経営開始から8年のあいだに、フライで釣る海水魚としてはほぼ間違いなく最も困難な魚を1,000匹以上も取り込んできた。

プンタ・アレンという場所は、ギリシャ神話のセイレーンのように、大人になってからずっと僕を誘ってきた。2年前僕は4度目の訪問でパロメタ・クラブのガイドと釣りをし、はじめてフライでパーミットを釣った。海水のゲームフィッシュはどれもフライで釣るのは困難だが、パーミットは僕ら一部の人間にとっては最難関だった。それはたいていの場合、結果の出ない探求なのである。

理論的には、パーミットをフライで釣ることは他のフライフィッシングと変わりはない。魚が食べたい餌に似せたフライを選び、そういった魚の目/口の近くにプレゼンテーションして、魚をそれに食いつかせる。アングラーはフックをセットし(「トラウトセット」と小馬鹿にして呼ばれる)、魚と戯れ(または喧嘩し)て、手中かネットに取り込まなければならない。リリース、あるいはストリンガーに下げる前に適切な時間で獲物の写真を撮ったあと、アングラーはしばしのあいだ満足感を楽しみ、喫煙や放尿、または釣れたあとに行うその他の無数の、脅迫性障害者に見られるような儀式にいそしむ。

しかしながら、パーミットをフライで釣るには、それ以上の執着を要する。上に述べた段階のそれぞれをたどる以外の別のチャレンジがあるのだ。アングラーは数人の協力があっても1日中魚を見ないかもしれない。もしパーミットにキャストするチャンスがあったとしても、高まる期待と不安で魚の近くにフライをキャストできる可能性はかなり低い。

プンタ・アレンでの恐怖と自己嫌悪

捕らえどころのないパーミット。Photo: Matt Jones

コンペには6チームとソロのアングラー1人が参加した。彼らは医者、弁護士、ディベロッパー、IT専門家などで、つまるところ成功した人ばかりだ。そのうち数人はすでに海水でのフライフィッシングにかなりの経験を積んでいたし、幾人かはパーミットを釣った経験もあった。ほぼ全員が好条件のもとで恥をかかない程度にフライをキャストできた。6日間釣りをし、優勝チームはトーナメントのディレクターが編み出した難解な公式で決まる。僕はコンペなどはどうでもよく、ただ魚を捕まえるチャンスだけがほしかった。

初日から天気が要因となることは知っていた。到着した日は25から40ノットの北風が吹いていた。もちろん、予告無しに天候の変化が訪れることはない。風は最初から吹いていた。僕はいつも長旅の初日は無駄日だと思っている。キャスティングはなまり、ラインはねじれ、バッキングラインは何年も日の目を見ていず、ノットはガイドの確認を要し…と問題のリストは尽きない。だから初日という無駄日が必要なのだ。でもこの日はその典型だった。「ダブルホールをはじめたのはどこでだったか。ちくしょう。風は容赦ない。ガイドは僕が見た目どおり下手だと思っているんだろうか」懸念は多々あったが、それは払拭しなければならない。そうすればあとはすべてが順調に進むだろう。初日はどのチームも釣れなかった。

2日目と3日目はほぼ全面的にならし運転だった。2人のアングラーがパーミットをフックしたが取り込めなかった。イライラはつづいた。魚はフックセットがハードすぎて逃げるか、最初からきちんとフックされていなかった。ストリップストライクセットもトラウトセットもハード過ぎ、ラインのループはリールやファイティングバットにもつれて、魚は逃げた。程度の違いこそはあっても、ありとあらゆる失敗をおかした。

しかしながら、幸運なことに、マークと僕はありきたりの拒絶以外の経験もした。本当のことを言うと、ふたりとも上に述べた失敗のひとつかそれ以上で魚を逃がしていた。だが2日目、ボートに幸運が訪れた。そして僕は傷ついた自尊心の一部を修復するのに十分な大きさの魚を取り込んだ。マークも頑張り、ボートに魚を取り込んだ(魚にキスするお決まりの写真を取るのに十分な長さだけだったが)。そのとき僕らは、誰かが次のパーミットを捕まえるのに2日を要するとはまったく考え付かなかった。

プンタ・アレンでの恐怖と自己嫌悪

パーミットにさよならの口づけをするマーク。Photo: Mike Thompson  

4日目は予報どおり北風が吹いた。とても平穏にはじまったこの日は、港へ戻るために何時間も要するボートでの壮大な旅に変わった。僕はこの日を「プンタ・アレンでの恐怖と自己嫌悪」と呼んでいる。僕らはそれを予期すべきだった。クラシックな「朝明けイコール船乗り警報」は、早起きをしていれば誰の目にも明らかなはずだったし、実際ブラッドと僕は起きていた。彼は朝のジョギングを終えるところで(何て頑張り屋なんだ)、僕はコーヒーの最初の一杯を飲んでいた。僕らは同時に「赤い空…」と言った。船乗りは警告を受けていたのだ。

天候が最悪になる前に僕らは数時間の猶予をもらった。マークはキャストし、かなり大きなパーミットにフックしたが、逃した。雨と稲妻に満ちた雲がついに僕らを飲み込み、最悪が訪れる前に他のボート落ち合って、マングローブの小島の風下に避難した。何百年ものあいだ、マヤ人はアセンションベイのこの辺りで釣りをして暮していた。だから天気には驚かされない。より安全な帰り道があったので、僕らはそれを選んだ。萎えた神経と士気以外には怪我もなく、戻ったのは門限のあとだったが、ありがたいことにバーはまだ開いていた。

プンタ・アレンでの恐怖と自己嫌悪

腕を広げ、稲妻の真似をする船長。Photo: Mark Harbaugh

コンペの最後の2日は4月の熱帯にしてはかなり涼しい20℃前後で、その最初の日は浅瀬から魚が逃げていて数が少なく、捕まえるどころかキャスティングすらできなかった。あと1日という時点で、マークと僕はトーナメントのトップにいた。最終日は涼しげながらも美しい日となり、条件は完璧だった。魚が釣れるだろうと思った。

トーナメントに勝つためにここに来ていたのではないが、僕らはリードしていた。それを頭から払拭し、心を込めてキャスティングをしながら、禅僧のように集中しなければならなかったが、順位を気にする醜い考えが忍び寄る。マハリシにもらったマントラを思い出そうとしたが、どうしても駄目だった。

ガイドがオンにしていた無線から、ブラッドが大きな魚を捕まえたというニュースが流れた。勝てない。だからどうだっていうんだ。だがそれはどうでもよくはなかった。僕は欲と後悔、そして最後を締めくくる能力の欠如に自己嫌悪を覚えた。ただ純粋な思考で、賞ではなく過程に集中するんだ。だがそれもうまくいかなかった。

いい魚がもう一匹、僕のフライを追い、食いつくと僕に向かって泳いできたが、フックをセットできなかった。これが最後。これでおしまい。マークと僕は互いを見つめ合った。そしてこの他のチャンスも逃したあとは、パーミット釣りはクレージーかつ欲求不満と失望に満ちたものであることに同意した。テンカラ・ロッドをつかみ、アイダホの小さなトラウト釣りに戻るべきだろう。ああ、それがいい。

だが、何てこった。2日目に捕まえた2匹の魚のスコアが高く、僕らはトーナメントで優勝した。小さなトラウトという考えをしかるべき場所に追いやり、ふたたび未来に高い期待を抱く塩まみれのアングラーに復帰。頑丈なフライロッドとハイキヤパシティーのリールを売らなくてもよくなった。このタイトルを保持するため、来年もここに戻ってくるぞ。

ダブルホールを練習して、あのマントラを思い出すときだ。

プンタ・アレンでの恐怖と自己嫌悪

魚を見送る方法。Photo: Matt Jones

パロメタ・クラブの才能秀でたガイドチームに感謝することなく、この話を締めくくることはできない。彼らの忍耐と僕らの失敗を大目に見る能力に感謝。

カルロスとアーロン(アバター)
オロンゾとファビアン
コリアノとトニー
ホーヘーとジョナサン
チャーリー(ラ・ガルト)とフリオ(ニーニョ)
ヘラルドとフリオ
フィリとクリスチャン

最後になったが、僕らのホスト、ケイとディック・カメロンに大感謝。

そしてもちろん、このイベントの開催に一役買ったテイルウォーターズ・フライフィッシング・カンパニーのディレクター、デービッド・リークにも感謝。テイルウォーターズ・トラベルは世界最高の釣り場の多くを代表するだけでなく、パロメタ・クラブのセールスとマーケティング、そしてアメリカのオフィスも兼ねる。アセンションベイへの旅行の予約はデービッドまで。

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