自分の声を出す
サーフィンは自分の時間を自分勝手に過ごす方法、だと決めつける傾向が昔からあります。オーストラリア人のベリンダ・バグスは10年以上、良い波や撮影の機会を追いながら、聞き飽きたこの決まり文句どおりの生活をしていました。けれども2011年に息子のレイソンが生まれると、彼女は目を覚ましました。「地球が置かれている状況と、次の世代に残された環境を考えると、心底恐ろしくなったんです」と、現在38歳の彼女は言います。
ベリンダはその後の数年間、オンラインでの活動に専念する「アームチェア」アクティビストになりました。「ネットでいろいろ調べて、あらゆる嘆願書に署名して、すべてを他の人と共有しようとしました」それが、赤ちゃんのいる彼女にできる精一杯のことだったからです。しかしカテゴリー4のサイクロン「デビー」がクイーンズランド州におよそ10億ドルの被害をもたらした2017年、彼女は〈オーストラリアン・マリン・コンサベーション・ソサエティ〉のグレート・バリア・リーフの調査に参加しました。「海中はまるでこの世の終わりのように荒れ果てていました」と、ベリンダは語ります。「それまで私は海の上で生活してきましたが、海の下について考えたことはほとんどありませんでした。オンラインでの活動は、それしかできないのであれば良いことだと思いますが、私にはそれ以上の時間がありましたし、もっと何かをしたいという衝動にかられました」
そして彼女は有言実行し、まもなくコンピューターから離れ、より大きな闘いに加わるために準備をはじめました。クイーンズランド州に提案されている炭鉱や危険をともなう海洋での地震探査、太陽が降り注ぐ南部沿岸の掘削を狙うノルウェーの石油企業、そしてエクイノール社によるグレートオーストラリア湾への大脅威などに反対しようと立ち上がったのです。*
ときどきベリンダの新しいライフスタイルは、エドワード・アビーの『爆破—モンキーレンチギャング』の終幕のように思えることがあるかもしれません。彼女はアクティビズムの名のもとに拘置所に放り込まれることの費用対効果を比較したり(結論:戦略的に行えば価値があり必要)、その一例として〈エクスティンクション・レベリオン〉のメンバーたちと一緒に小さな街のメインストリートで死んだふりをして、政治家たちに行動を要求しました。
パドルアウトやデモ行進に参加したり、そしてもちろん、人びとに嘆願書への署名やデモへの参加を促すためにコンピューターの前で過ごす時間もたくさんあります。さらにベリンダにとっては最も苦手な活動、つまり、スポットライトを浴びて発言を期待されることもあります。「何百あるいは何千もの人の前で話さなくてはいけないときは」と、彼女は言います。「緊張して震えたり冷や汗をかいたりしながらも、自分自身に言い聞かせなければならないんです。正しい目的のためにやっているんだから、って。私が学んだ最も重要な教訓は、他の人がどう思うかを恐れないこと。自分が信じて闘っていることについて知識を固めれば、敵対者のことを心配する必要はないということです」
*オーストラリア政府から石油探査の許可を得たエクイノールに対する一般市民の抗議活動は何か月もつづき、今年2月、同社はついにグレートオーストラリア湾の掘削計画を放棄しました。