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大根からグリーンピースへ:インターンシップ・プログラム活動報告

寺倉 聡子  /  2014年1月9日  /  アクティビズム, 環境

東日本大震災のあった年の秋、気仙沼の仮設住宅へ、つづく道を歩いていたとき、民家の庭先に青々とした葉を茂らせた大根を見た。新鮮で、いかにも美味しそうだった。しかし、放射性物質で汚染されているのかもしれない……と考えた。五感で察知できない放射性物質という危険物を右脳が理解した。その瞬間、身の毛がよだつような恐怖に襲われた。あのとき、再生可能エネルギーを増やして脱原発へ向かう、自分にできる行動を「実際にやらなくては」というエンジンがかかった。

その後、地元鎌倉で地域からエネルギーシフトを目指すサークルに参加し、節電のためのアンペアダウン活動やミニ太陽光発電キットを作るワークショップなどにも参加した。しかし平日はフルタイムでパタゴニア社での勤務がある。脱原発を目指すさまざまな活動のニュースを横目に見ながら、「いま、私はこの仕事をしていて、いいのだろうか?いま、やらなければならないことが他にあるのでは?」と自問することもあった。そして国際環境NGOグリーンピース・ジャパンで活動するためにパタゴニア社のインターンシップ・プログラムに応募し、同団体での勤務が承認された。申請が受理されたというメールを見たときの喜びはいまでも忘れない。これで平日の昼間であっても再生可能エネルギー普及のための活動をすることができる。大げさなようだが、心が解放され、気持ちが楽になった。

通常のインターンシップ・プログラムの取得者は、休暇を取得してNGOやNPOで働くケースが多いが、私の場合は、基本的に自分の日々の業務は遂行しつつ、並行して年間にわたって週の数時間をインターンシップの活動に充てることにした。自分の業務を補充要員にすべて委ねることが現実的にむずかしかったこともあるが、短期でプロジェクトに取り組むのではなく、細く長く、グリーンピースの一員として活動できるのも良いなと思ったからである。そして実際インターンシップの活動をはじめてみると、インターンの活動よりも通常業務を優先するため、インターンの活動には当初自分が想像していたほど多くの時間を割り当てることができなかった。しかし時間が取れそうなタイミングに合わせてプロジェクト単位で勤務ができ、またグリーンピースの上司の温かい心遣いにより、気持ち良く仕事をさせていただけた。

私が関わったプロジェクトでとくに面白かった仕事に、自然エネルギーが活用されている現場を取材して、現状をレポートするものがある。最初の取材は、東伊豆町役場が運営する風力発電設備だった。建設費や維持費がかかり、赤字になることもある風力発電だが、成功している事例として紹介した。実際、それを支えていたのは職員の方の熱い思いと、たゆまぬ努力だった。不具合が起きて風車が安全のために停止すると発電量が減ってしまう。そのため休日でも管理用のPCを持ち歩いたり、夜中でも暗い山道のなかを風車まで行って運行を再開させたりすることもあるそうだ。情報公開を行い、積極的に視察を受け入れるなどの活動も素晴らしいと思った。海風に吹かれながら眼下に広がる街を眺めると、風車から繋がる電線が街の方へ伸びていて、各家庭で使う電気が作られているのを実感した。いつの日かこんな光景が珍しくなく、風力発電のメンテナンスは町の工務店が請け負う、そんな時代が来るといいなと思った。東伊豆町ではまた、風力発電に反対する市民団体の方々にもお話しを伺った。風力発電所が市民との合意なしに建設され、周辺住民が被害に遭っていることや、環境破壊に繋がっている現状を知った。自然エネルギーといえども、結局は日本のもろもろの構造が変わらないかぎり、発電所建設には原発建設と似たような問題がともなうのだ。合意形成が大切だと感じた。

長野県飯田市では太陽光発電の現状とマイクロ水力発電機器の開発メーカーを取材した。飯田市といえば自然エネルギー先進都市といったイメージがあるが、取材した「おひさま進歩エネルギー」の原さんはまさにそのきっかけとなった人物なのだと思う。まず一人の市民が動きだし、さらに他の人たちを巻き込んでうねりとなり、それが行政にとってプラスと判断されれば自治体も動き出す、といったお手本だ。原さんのところには各地の地域エネルギーをはじめたい方々から問い合わせがあるそうだ。同じような志を持つ人たちが連携して各地で地域エネルギーが起こっていく未来を想像するとワクワクする。

次に取材したマイクロ水力発電機器を開発中のメーカーでは、地域の中小企業が連携して各社がすでに保有する部品や技術を提供しあい、低価格で高性能な水力発電設備を共同開発するというプロジェクトを実施していた。不可能と思われる厳しい条件を次々にクリアしていく開発ストーリーは、まさに「プロジェクトX」のようだった。環境技術では大きく遅れをとってしまったといわれる日本だが、このような素晴らしい技術者たちが真剣に取り組める状況になれば、エネルギーは近い未来にもっと簡単に作り出せるようになるかもしれないと思った。

取材内容の詳細は下記のグリーンピース公式サイトのブログをご覧ください。個人的な関心を満たしつつ、ブログを通じて同じように関心のある方々に現状を伝えるお手伝いができたことがとてもうれしい。

自然エネルギー現場紀行 風力 in 静岡編

自然エネルギー現場紀行 太陽光 in 長野編

自然エネルギー現場紀行 小水力発電機 in 長野編

グリーンピースならではの「企業に働きかけて、現状を変えていく」プロジェクトにも少しだけ関わらせていただいた。私たちが何気なく毎日利用しているクラウドシステムの電力を全世界で合わせると、なんと、インド一国分よりも多い電力消費をしているのをご存じだろうか。 これは“COOL IT”というキャンペーンだが、私はこのセミナーの告知用ちらしを作るお手伝いをした。セミナーでは世界のIT企業の動きを紹介するだけでなく、デロイト・トーマツのコンサルタントの方が講演、とても説得力ある内容だった。NGOが企業を変え、世界を変えていく可能性を感じた。 議事録の書記もした。「子ども・被災者支援法」の基本法案に関連する衆議院内集会を傍聴したときには、被災者の方々の切実な現状を伝える発言を一字一句、聞き逃さぬようにタイプした。爆発のとき、黄色い牡丹雪のようなものがふわふわと空から降ってきて、先祖代々つづいた土地をはなれて、いまは九州で被災者の受け入れに尽力する若いお母さん。線量は高いのに県境という理由で保障が受けられない酒屋のお母さん。子供の線量を下げるため、毎週末ごとに線量の低い地域へ子連れで出掛ける弁護士のお父さん、などなど。それぞれの発言はまったく他人事ではなく、涙があふれた。一日も早く、しかるべき支援や保障が実施されるようにと祈った。

一年間を振りかえってみると、受け入れ団体にとっての私の働きたるや、微々たるものだった。しかし私はかけがえのない体験をさせていただいた。心の声がやりたい、と言っている活動、それが実際にできた満足感は大きい。さらに個人的な満足にとどまらず、インターンシップ活動を通じて得た知識や経験は、私自身の知識やスキルに蓄積され、間接的ではあるがパタゴニアでの業務にも生かされているとも思う。たとえば、グリーンピースの具体的な目標設定や戦略の組み立て方は素晴らしく、参考になったし、独特なミーティングのスタイルは自分の所属する部でも有効だと思った。他の組織で働くことで、自分の組織には無い、良い点やアイデアを発見することができた。

この機会を与えてくれたパタゴニア日本支社と、理解のある現職場の上司と、グリーンピース・ジャパンの皆様方に感謝を捧げます。ありがとうございました。インターンシップ活動は終わりましたが、再生可能エネルギーにシフトするための活動は個人的につづけていきます。できることをやる。ひとりひとりの動きが世界を変えていくと信じています。

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パタゴニアは環境保護に取り組む活動家たちに金銭的な援助だけでなく時間や労力も提供しています。そのひとつにパタゴニアの社員が有給で環境保護グループの活動に参加できる「インターンシップ・プログラム」があります。現在までに900人以上の社員がこのプログラムを通してボランティア活動をしてきました。これは2012年5月から2013年4月にわたり国際環境NGOグリーンピース・ジャパンでインターンシップ活動をした寺倉聡子のレポートです。

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