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奄美大島の海岸より

パタゴニア  /  読み終えるまで7分  /  サーフィン, アクティビズム

手広海岸は年間を通してコンスタントに波があるポイント。センターはリーフで、手前と奥はビーチブレイクになっている。ベストシーズンは3月~5月、9月~12月。写真:碇山勇生

奄美大島の海岸より

手広海岸は年間を通してコンスタントに波があるポイント。センターはリーフで、手前と奥はビーチブレイクになっている。ベストシーズンは3月~5月、9月~12月。写真:碇山勇生

パタゴニアから新しいカタログが届いた。表紙をめくると「ローカリズムの新たなかたち」という言葉が目に飛び込んできた。そこには自分たちのお気に入りのサーフスポットやリーフを保護しようというようなことが書かれている。環境問題への取り組み。世界中さまざまな場所で、たくさんの環境問題が起こっている。そこで、僕が経験した小さな南の島のできごとと、その後の活動についてお伝えしようと思う。

2013年11月、鹿児島県の南西諸島に位置する奄美大島の龍郷町手広海岸に立案された「手広海岸園地整備計画事案」に対し、僕たちは工事内容である砂浜部へのコンクリート工事の中止および駐車場舗装工事の変更を求め、行動を起こした。

奄美大島は人口約7万人の東洋のガラパゴスと呼ばれるほど、自然豊かな希少動植物が沢山生息する素敵な島だ。龍郷町にある手広海岸は奄美大島の北部、東海岸に位置する。太平洋側で唯一人工物のない綺麗な海岸で、空港から車でわずか約15分でアクセスできる。海岸にはハマヒルガオ、アダン、浜ゴボウ、ハマユウなど、奄美固有の浜辺の植物が自生し、浜辺にはウミガメが毎年産卵のためにやってくるほど美しい海岸だ。海のなかは色とりどりの魚でいっぱいで、夏期には沢山のウミガメやイルカ、冬期にはクジラなどが沖合を通過していく。近年ではサーフィンの世界大会が行われたり、フィッシングやスキューバダイビング、シュノーケリングなど、人々の笑顔がいっぱいに溢れるマリンスポーツが盛んな海岸でもある。僕も小さい頃からこの海岸で沢山の事を学んだ。泳ぎの練習をしたり、魚釣りや魚突き、朝から晩までサーフィンをしたり、楽しいときや嬉しいときも、悲しいときや辛いときも、自然を通して喜怒哀楽を学んできた。いまになって思えば、本当に素晴らしいことだと思う。未来を創る子供たちにも、この自然のなかで喜怒哀楽を全身で感じ育ってほしい。

そんななか、「手広海岸園地整備計画事案」が立ち上がった。事案のなかには、河口から海岸にかけて護岸整備も含まれていた。小さいころから思い出がいっぱいの海岸が僕の世代でなくなってしまうかもしれない。将来、僕の2人の子供たちに「昔の手広海岸は、すごくきれいな海岸だったんだよ」なんてことを絶対に言いたくない。それより「みんなでお前たちのために守ってきた素敵な海岸なんだよ」と伝えたい。この想いが、僕の行動の原動力になった。

奄美大島の海岸より

手広海岸園地整備計画図(案)

この事案を知って、提出日の期限までわずか5日、あまりにも短過ぎる絶望的な日数。まずは現地調査と情報の発信と、専門家を招いて現地の生態系の調査を行った。そして、工事の内容とその影響とともに、
・どのような動植物が生息しているのか
・手広海岸はどのような海岸なのか
・浜辺や海辺の生態系に影響はないのか
・手広海岸の素晴らしさを知る人々への発信
ということを、手広海岸の素晴らしさを知る全国の仲間へ的確にそして迅速に伝えるようにした。最近は、世界中の人々と情報を瞬時に共有できるツールがたくさんあるので、それを利用して拡散した。誤った情報を流していないか、届くべき人へ届けられているか、情報が錯乱していないか、情報の拡散ではたくさんの注意を払った。次に手広海岸で色々な活動をしている方々や手広集落、そして自然保護団体と連携を取り、「手広海岸を守る会」を発足させた。

そのなかで僕が心がけたことが、誰とも対立をしないこと。公共工事をしたい側はどんどん対立へ導こうとしてきた。しかし、僕たちの目的は子供たちに何を残すのか、それはお金では買えない自然であり、この事案をいかに対立を避けて工事内容を変更し、全員が納得できる形を模索しつづけた。過去に同じような工事が行われた場所でどのような問題が起きたのか、生態系への影響は大丈夫なのか、30年経って護岸工事は適切だったのかを地域の人たちへ聞き込みをした。それからは、何度も行政から地域住民への説明会を開いてもらい、未来の子供たちに何を残すべきなのかを考える時間へと変わっていき、その結果、護岸工事は中止となった。駐車場の舗装工事も環境に優しいハニカム舗装に変更されたのである。

大切なことは、最後まであきらめないこと、すべての自然は当たり前ではないこと、争いや対立をしないこと、自然に生かされていること。いま世界中で生きている人々の1分1秒、その瞬間が未来を創っていると僕は思う。このことを、決して忘れずにひとりひとりが未来を創る行動を意識し、日々の生活のなかから自然を次の世代に残す動きをすれば、未来の子供たちが笑顔で暮らせる世の中へ変わっていくのではないだろうか。

奄美大島の海岸より

写真:碇山勇生

奄美大島の海岸より

地元サーファーと地域住民が一緒になって毎月ビーチクリーンを開催。写真:碇山勇生

先日、ハワイで人生初のワイメアのビッグウェーブを滑ることができた。そのときに命綱であるリーシュコードが切れ、大波のなか泳いで命辛々ボードをキャッチした。あきらめて岸へ戻ろうとしたとき、同じパタゴニアのアンバサダーであるマウイ島出身のハンク・ギャスケルが、「ユウセイ、ワンモア・トライ!」と声をかけてくれた。この一言でノーリーシュで再度パドルアウトし、恐怖心に打ち勝ってワイメアの大波をメイクすることができた。このときにあきらめて岸へ戻っていたら、本当の自分と向き合えないままだっただろう。このできごとと重ねて伝えたいのは、世界中にはたくさんの環境問題がある。あきらめかけられたり、もう無理かもしれないという場所もあるだろう。しかし、「ワンモア・トライ!」 あきらめず、小さなことからでいいので、5年後、10年後、3世代先を見据えて未来を創る行動を取るのは楽しいことではないだろうか。

皆さん僕と一緒に楽しみませんか。


Surf2015
5月の連休が近づくと、海を思い浮かべる人も多いはず。サーフィンをはじめとする海でのアクティビティに最適な、あるいは海を求める旅にぴったりの、そして日々海を感じるためのウェアの数々を豊富に掲載した最新カタログをお手元にお届けします。

本カタログでは、海でのさまざまな動きにも信頼できる水着やボードショーツはもちろん、水中で過ごす時間を増やすためのウォームウェアや、身軽に旅するための軽くて速乾性を備えたウェア、また紫外線を防ぐUPF50+を備えたウェアもご紹介。海心をくすぐる製品をラインアップした楽しいコレクションページもご覧いただけます。

さらにはローカリズムの新たなかたちとして海の大切さを、声を上げ、行動し、戦っているパタゴニアの3人のアンバサダー、スピアフィッシャー、セイラー、サーファーのインスピレーションあふれるストーリーをご紹介します。

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