グランド・キャニオン、ウラン採掘禁止令を勝ち取る
オバマ政権は原生地区と野生動物に贈り物をすることで新年を迎えました。その贈り物とは、今後20年間グランド・キャニオン国立公園周辺の国有地100万エーカーで新しい採掘を禁止する法令です。これは新しいウラン採掘鉱区が急増するなか、新たな鉱区を取り止め、現時点で「有効な採掘権」のない鉱区での試掘と採掘を禁止するものです。そしてこの地域の鉱区の大半はこの「有効な採掘権」がありません。河川を汚染から、そして多数の動植物を採鉱廃棄物から守るこの決断は、グランド・キャニオンというアイコン的景観にとって歴史的な出来事です。
この決断が好評なのは明らかです。内務省へ禁止を要請した人の数は、90か国から約40万人に上ります。成立以降、この禁止令はグランド・キャニオンの環境や観光面での経済効果を重要視するインディアン部族やビジネス、議員、科学者、アウトドア愛好者のあいだで高い評価を得ています。
ウラン産業のこれまでの歴史を考えれば、この禁止令は非常に重要な意味をもちます。グランド・キャニオンの東に位置するナバホ・ネイションは、放棄された採掘地からの汚染に嘖まれてきました。またグランド・キャニオンのサウス・リムにあるオーファン採掘場からは、いまだに国が定める限度の10倍のウランがホーン・クリークに流れ出ています。そして2010年に連邦政府の科学者たちが訪れたグランド・キャニオン北部のすべての採掘場で、基準より高いウラン値を記録しています。
新しい禁止令が適用される範囲は、グランド・キャニオン北部のカナブ・クリーク流域からサウス・リム沿いのカイバーブ国立森林の一部、そして公園の北部と東部のハウス・ロック・バレーにわたります。
採掘禁止令により、アイコン的存在であるこの原生地区を産業化しようとする動きが抑制されるとともに、グランド・キャニオンの貴重な泉や河川に水を供給する帯水層をウラン汚染から保護します。ウラン汚染はいったん起こってしまえば、除染は不可能です。エルブス・カズム、シャワーバス・スプリング、ハヴァス・クリークなどの泉や河川には、隣接する高原にくらべて500倍の動植物種が生息しています。そしてこれらの動植物には絶滅危惧種や地球上の他にどこにも存在しないような固有種が含まれているのです。
しかしながら、1872年に鉱山企業に与えられた財産権のおかげで、いくつかの古い採掘場は新法令の適用から除外されています。実際、土地管理局は1990年代に閉鎖された4つの採掘場の1つに、24年前に作成された環境評価を改訂することなく、再開発を許可しました。この問題は、現在インディアン部族と環境保護団体によって法廷論争となっています。
重要なことは、この戦いは完全に終わったわけではないということです。この新法令は連邦議会や未来の政府によって覆されないという保証はありません。この新法令を恒久的なものにするためには、法律制定か新規の国定史跡指定が必要です。またこの法令は極端に時代遅れの1872年の鉱業法の改正に取って代わるものではありません。これはこれまで改正を実現しなかった連邦議会にとって、非常に重要な今後の課題です。
それでも、国有地管理の歴史のなかで修復不可能な被害に対する予防措置が取られるというのは、とても稀な出来事です。グランド・キャニオン周辺のウラン採掘禁止令は明確なビジョンをもった、祝うに値する決断なのです。
タイラー・マキノンは〈センター・フォー・バイオロジカル・ダイバーシティ〉の国有地キャンペーン・ディレクター。
この問題に取り組んできたタイラー、Q、そして数えきれない人びとの尽力に感謝します。