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熱湯のなかで

イヴォン・シュイナード  /  読み終えるまで4分  /  アクティビズム, フライフィッシング

上流へと急勾配(標高差1,200 メートル)の遡上を終え、ダークウッズ保護区内の産卵場所で泳ぐ雄マス。ブリティッシュ・コロンビア州セルカーク山脈 写真:Bruce Kirkby

私は科学者ではない。だが、70年以上世界各地で釣りをしながら、冷水魚が直面する無数の脅威をこの目で見てきた。なかでも地球温暖化はとくに深刻だ。

気候変動により、地球のあちこちで水温が上昇し、冷水魚が重大なトラブルに陥っている。

「気候変動は起きている。人類が引き起こしているのか、それとも自然発生なのか、どちらを信じるかによって、大きな違いを生む」

地中15メートルの温度は摂氏13度前後あたり(これは新鮮な湧水の温度であり、ちなみにワインの貯蔵に最適な温度でもある)。冷水魚には冷たい水が必要だ。サケやマスは13 度前後の水温で最もよく育つ。水温が20 度を越えるとサケ科の魚はストレスの兆候を見せはじめ、24度以上になると致命的になる。

2007年、イエローストーン国立公園ではイエローストーン川とその多くの支流の水温が26度以上にまで達し、魚の大量死をもたらした。同年6月、私はロシアの北極圏でサケ釣りをしていたが、そこでは32度以上の気温が何日もつづいた。川は短く、その水源は浅い湖のため、数日後にはリンダ川の午後の水温が20度強まで上昇した。私がキャッチ&リリースした5キロのサケはその場で30分ほど空気を求めてあえぎ、その後ようやくゆっくりと泳ぎ去った。数年後の2015年、アメリカ太平洋岸北西部では水温が上がったコロンビア川のベニザケの死亡率が80〜90%にのぼり、250,000匹のサケが産卵前に死んだ。2016年8月、イエローストーン川と支流を合わせた約560キロメートルでは、ホワイトフィッシュとマスに腎臓病を引き起こした寄生虫のせいで、ボートの使用、釣り、水泳が禁じられた。モンタナ州政府はそのウェブサイトに「大量死の規模は州の魚類専門家がかつて見たことのないレベルである」という報告書を発表した。寄生虫の発生と過去最低の川の水位、それに20度以上の高水温が重なり、魚類に破壊的な状況を生み出したのだ。そして言うまでもなく、釣り経済に依存する地元のビジネスも大きな打撃を受けた。

私の地元カリフォルニアでも、カリフォルニア南部のスチールヘッドはこの5年間産卵できない状態にある。旱魃のせいで川の水位があまりに低く、魚が砂州を越えられない。カリフォルニア北部では熱波によって致命的な青緑の藻が異常繁殖し、多数の湖が閉鎖された。致命的というのは、もし飼い犬がその湖の水を飲んだら死ぬ可能性があるということだ。

淡水藻のディディモスフェニア、通称「ディディモ」または「ロックスノット(石の鼻糞)」は、水温の上昇とともに川を占領しかねない。ディディモは川から川へと移動する釣り人がそれを運ぶために広がると考えられていたが、最近では科学者は水温の上昇が引き起こす繁殖によって拡散すると見ている。私はこの現象を、普段は澄み切ったケベックのボナヴェントゥラ川で体験したことがあり、藻が密集した箇所はウェーディングできないほどだった。ディディモはさらに、サケやマスに骨格奇形と神経障害を引き起こす回転病の宿主であるイトミミズ科の虫の拡散も助長する。

気温の上昇はもちろん海にも影響する。海は人間がもたらす多大な二酸化炭素を吸収し、酸化しつづけている。その結果水中のミネラル含有量が不足し、食物連鎖全体の基盤となる微生物の多くが殻や骨格を形成できなくなる。さらにいまではサバなどの温海水魚が北上できるようになり、サケの未成魚を捕食する。

冬のはじまりは遅くなり、その終わりは早くなる。ブリティッシュ・コロンビアのコースト山脈に点在する氷河や万年雪原は、冷水魚に夏中冷たい水を提供する必須の水源だが、私自身も生涯を通して、これらの氷河が30パーセント縮小したのを目撃してきた。冬が短くなり、雪の代わりに雨が降り、流去水がひんぱんにあふれるようになる。そしてその結果大洪水が起きて川筋が変わり、サケやマスの産卵場所が破壊される。

気候変動は起きている。人類が引き起こしているのか、それとも自然発生なのか、どちらを信じるかによって、大きな違いを生む。自然のサイクルだとしたら、私たちにできることは何もない。しかし原因が私たちだとしたら、私たちはまた解決策でもある。鬱病の治療法はとにかく行動することだという。私たちにできることは何だろうか。それは愛するものを守ること。地元の団体の活動に参加し、自分の川を守ろう。気候変動を否定する愚かな政治家に投票するのはやめよう。そして釣りに行くのだ、子供を連れて。

このストーリーの初出はパタゴニアの2017年Fallカタログです。

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