魔法の国

ライアン・ダンフィー  /  読み終えるまで5分  /  マウンテンバイク

バーモント州イースト・バークを囲む山稜に差し込むやさしい光が、そこに吹きつける風速22メートルの風をまやかす。ライダーのブルックス・カランは、茂った木々が壁となり、最悪の風から守られていたが、近くの火の見やぐらからこれを撮った写真家は、嵐の猛威を存分に経験した。Photo: Dave Trumpore

ニューイングランドの夏空を独占してきた太陽が次第に低くなると、この地方にあるほぼすべての木は、日照時間が短くなるのに合わせて葉を落としはじめる。葉は栄養分を生成するのが負担になり、身勝手な木は、冷酷にも、夏じゅう緑一色に酔わせてくれていたクロロフィルの合成を断つ。まもなく落ち葉は森の地面を覆い、彼らを見放した樹幹の栄養となるべく謙虚に朽ちていく。

だがカバノキ、カエデ、オーク、アッシュ、ヒッコリーなどの葉が、大人しく冬の安眠に就くことを拒むひとときがある。いたずらに美しいこの瞬間、それぞれに反逆的なありとあらゆる色彩で、自己の存在を見せびらかそうとするのだ。

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10月には珍しく、雪が30センチ積もったバーモント州バーク・マウンテン。ジョー・カヴァラロは黄色とオレンジの落ち葉の上のパウダーにスキーでターンを刻んで朝を始め、夢のような土質の山麓の斜面でのバイクライディングでその日を終えた——これぞまさに季節の混沌の満喫。Photo: Dave Trumpore

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湿った土、ところどころにローム、そして微かに埃も混ざったこのタイヤが、完璧なニューイングランドでの極上の日を語る。Photo: Dave Trumpore

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トレイルの問題は、速度を上げて吹き飛ばすだけ。ニューハンプシャー州ノースフィールドの郊外で、落ち葉が詰まった排水路を一掃するエヴァン・ブース。Photo: Dave Trumpore

遠くからでは、こうした色のコントラストは視覚的なものでしかない。しかし地球の表面を二輪のタイヤで突き進むと、移りゆく季節は感覚の全ベクトルを刺激する。低下する気温と肌寒い湿気が、ふたたび土を潤す。木々は恵みを落としはじめ、カエデの赤やオレンジの葉が毛羽立った帯のように土を覆う。頭上に揺らめくさまざまな黄色や黄金の天井は、気候に負けるまでポプラやニレやシラカバにしがみつく。秋の青空は夏の青空よりも鋭く澄み、日没前の2時間は景観にさらなる活力を与え、琥珀の結晶のような光が黒い影を背景に浮き上がらせる。誰の目から見ても悲惨としかいいようのないびしょ濡れの日々でも、灰色の雨がパレットの色彩を刺激的に引き立てる。そして気まぐれな10月の雪が散らつけば、もはや考える余地はない。そこにあるのは骨の髄まで感じられる、本能と畏敬だけ。

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秋の夕日がバーモント州バーク・マウンテンに口づけし、最も背の高い木々の梢——とひとりの小さな人間——を紅葉のなかに照らし出す。太陽が沈むとともに山頂から下りはじめたジェイク・インガーにとって、冬が訪れる前の夕焼けのライドのひとつひとつは、たとえ暗い帰り道になってもやる価値がある。Photo: Dave Trumpore

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ブルックス・カランはバーモント州イースト・バークの燃えるような紅葉を見るためにシダから飛び出す。Photo:DaveTrumpore

タイヤは地面の変化をひとつひとつ事細かに伝える。雨のなかでさえ、カエデやカバノキの葉の絨毯は驚くほどのグリップ力を与えてくれる。薄い葉は地面とタイヤを密着させ、重い空気のなかに漂う腐葉土の匂いを嗅ぎながら、陽気な気分でのんびりと進むことができる。それが合間の晴れの日で一気に乾き上がると、今度はオレンジや黄色の川へと飛び込むことになる。見えなくなったトレイルを感じながら、タイヤの下でポップコーンが弾けるような音の交響曲に耳を傾ける。トレイルが黄金の池に沈んだかと思うと、カーン!と、前輪のリムが落ち葉に埋もれた花崗岩に激突する。その瞬間に体はハンドルバーの上を飛び、手と肩と胴が木の根の上に放り投げられるが、その衝撃はカバノキの落ち葉のクッションが和らげてくれる。

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バーモント州バーク・マウンテンの「ルード・アウェイクニング」は、何十年も「DHトレイル」としてだけ知られていたが、2018年に人気となった映画のワンシーンで「エンデューロ・ワールド・シリーズ」チャンピオンのリッチー・ルードとともに紹介され、彼を称えて改名された。著名なトレイルビルダーのナイト・アイドがその撮影のために元のトレイルの大部分を改修。それから3年が経っても、彼の特徴的な石組みはそれまでと同じように美しい。しかし世界的な評判をよそに、ブルックス・カランのような地元の人たちにとってはここはいまも「DHトレイル」だ。Photo:DaveTrumpore

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アメリカ北東部の典型的なスキーの町であるバーモント州ストウは、毎秋ハイカーや紅葉狩りの人たちが押し寄せる。その人混みから離れる術を知っているのがアニー・ヘンダーソンのような地元の人たち。適切なトレイルを選べば、最も混雑する日でさえそこを独り占め。Photo: Dave Trumpore

よくあるやっかい者はオークだけ。葉をつけたままでいる最後の種族であり、それがばらまく硬い葉やどんぐりの山は、ともに足場を妨害する歩兵隊だ。その手強さに、シーズンを早めにお開きにしてしまう者さえいる。しかしそれは、他の者にとってはたんに賭けを面白くする理由でもある。滑って尻をつく最初のコーナーはオークの葉が濡れて押し固められているのか、あるいは乾き切ってどんぐりだらけなのか。仲間は猛烈な歓声を上げて走りつづけるのか、自分と同じように尻を泥まみれにするのか。

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メイン州の11月の雨の日に、北東部流の「黄昏のレンガ路」を縫い進むコリンヌ・プレヴォ。ニューイングランド地方のトレイルの感触は10月から11月にかけて毎日のように変わり、落ち葉の絨毯はつねに色を変えながら地面を覆うため、慣れ親しんだトレイルにもまったく新しい感覚を与える。Photo: Dave Trumpore

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10月のニューハンプシャー州北部では、衣替えをするのは木だけではない。野生のブルーベリーの低木は緑から鮮やかな真紅へと色を変え、さらに彩りを加えて熟れた果実を落とす。Photo: Dave Trumpore

しかしその賭けに勝てば……来たる冬を乗り越えるのに十分な楽しい思い出ができるだろう。お気に入りのトレイルの土埃を吹き飛ばす風。タイヤの跡を縁取る、明度を失いながらもまだ美しい秋の落葉。バイクが地面と戯れる音に満ちた、平和な11月の冷たい空気に包まれた穏やかな午後。いずれにしても雪は訪れ、春は何か月も先。無駄にする時間はない。

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「10月は寒さと雨の季節の始まりであることが多いが、しばし夏が続いて雨が降らないこともあり、完璧な状態のトレイルで金色に輝く景色を楽しむことができる」ーデイブ・トランポア。バーモント州ケンブリッジ、ブルックス・カラン。Photo: Dave Trumpore

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「時には、細かな埃も舞い散り、夕方の「ゴールデンアワー」をよりいっそう黄金色になる」ーデイブ・トランポア。バーモント州イースト・バーク、ブルックス・カラン。Photo: Dave Trumpore

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「シダが黄金色に変わり、葉が混ざり合いはじめる魔法のような時期、丘やトレイルが燃えているように見える時期」ーデイブ・トランポア。バーモント州イースト・バーク、ブルックス・カラン。Photo: Dave Trumpore

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「しかし、このような日々は限られており、この色は長くは続かない。夏のアンコールであり、グランドフィナーレのようなものだ。葉が落ちれば、自転車を片付けてスキーにワックスをかける時期になる」ーデイブ・トランポア。バーモント州イースト・バーク、ブルックス・カラン。Photo: Dave Trumpore

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「夏が長続きしないときは?降雨量が増えたり寒波がきてしまうと見事な色が出ないこともある。でも、仲間と共に森の中で自転車を走るということは、楽しいことに変わりはない」ーデイブ・トランポア。ニューハンプシャー州ノースコンウェイ、コリーヌ・プレヴォット。Photo: Dave Trumpore

山でバイクライディング(あるいはクライミング、ランニング、自然観賞)をするとき、私たちはしばしば先住民族の土地へとつづく道をたどります。私たちが楽しみ愛する、このような場所の本来の守り主であった人びとに感謝を捧げます。そのような土地から彼らを追い出して排除するという不正を認識します。この物語に掲載している写真は、アベナキ族の人びとの未譲渡地で撮影されました。

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