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いつだって行く価値はある

フレッチャー・シュイナード  /  読み終えるまで21分  /  サーフィン

Photo:  Rodrigo Farias

いつだって行く価値はある

Photo:  Rodrigo Farias

編集後記:ザ・サーファーズ・ジャーナル(英語版)を購読されている方は新しい20周年記念号(2011年2・3月号、Vo20、No1)に掲載されているパタゴニアの広告を目にすることと思います。今回のクリーネストラインでは、カリフォルニアからチリへ旅したフレッチャー・シュイナードが、エル・ブイーで人生最大の波をサーフしたときの様子をお届けします。

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土曜日
コール:「フレッチ、どえらいことになるぜ!チリで会おうぜ!」

日曜日
コール:「フレッチ、これはかなりすごいぞ!いまヒューストンだ。明日には着く。来いよ!」

月曜日
昼食後に行くことを決め、渋々と荷物をまとめはじめる。

火曜日
昼食までパニック状態で荷物をまとめる。ネットで航空券を購入。〈キープ・ア・ブレスト・ファンデーション(乳がん撲滅団体)〉のために、ブランクスにハナレイ・レポンティの胸をワンダー・ウーマン風に描いて、仕事を終える。荷造りをつづける。トーイン・ボードとショートボード、カイトを取り出して、荷物をまとめなおす。飛行機に乗るとき預けるのは面倒くさい。荷物をまとめなおす。Tシャツとジーンズを何枚か入れる。臭くなるし、寒くなるかもしれないから。早めに空港へ向かう。短期間用駐車場に車を入れ、ボードをチェックインして、長期間用駐車場に車を移す。空港に戻り、気持ちを落ち着かせるためにビールを飲む。「俺はバカで無駄なことをしているのか?俺のクレジットカードで支払いができるのか?波は大きくなるんだろうか?いちばん小さいボードは6”8”だ。ちくしょう、ファークが必要だ。波は大きすぎやしないか?3月以降は1か月に1回以上はサーフィンしていないんだから。パドリングだって怪しい。俺の肺の状態は大丈夫か?仕事がたまってしまうんじゃないか?グラッシング部門はボードが足りなくなるんじゃないか?向こうに着くまで25時間もかかるのか・・・まったく俺はいったい何を考えているんだ。行く価値はあるんだろうか?」

機内
睡眠薬でノックアウト。これで7時間かせいだ。朝食を食べて、映画を見る。

リマ
乗り換えた記憶はないが、乗り換えたに違いない。

機内
ふたたび(さっきよりひどい)朝食を食べる。

ブエノスアイレス
「サンティアゴへお乗り継ぎのお客様は、そのまま機内にお残りください」 オッケー。それならしっかり座ってるさ。おい?!俺のボードが降ろされてるぞ!なんで俺のボードを降ろすんだ?荷物を降ろしてから、ボードを積み直すんだろう、きっと。

「セニョール・チョイーナルドですか?お客様、ただいま搭乗中の7番ゲートから別の便にお乗り継ぎください」 なんてこった!

機内
映画を見る。バターとハムのサンドイッチ(ここは1963年か?)。寝る。

サンティアゴ
ボードを受け取って通関。ボードを引きずりながら上階の出発ターミナルへ。「セニョール、なぜかお客様のアリカ行きのチケットはキャンセルになっています。乗り継ぎに間に合わなかったのですか?」 間に合わなかったかだって?だったらなんで俺はいまここに立っているんだよ・・・ 「お客様が5時間早く到着していて良かったです。でなければ大変なことになっていましたよ!」

ストレスがたまる。バーガー、ビール、ビール、ビール。 今チリのバーで見ているジャイアンツの試合について、メルボルンにいる親しい友人にメールしていることが、おかしく思えてくる。世界はこんなに近いのに、なぜどこへ行くにもこんなに時間がかかるんだろう。

ツイッギー、ラモン、ヒーリー、そしてグレッグ・ロングがターミナルに到着。彼らはコールのボードをもっていたが、コールの姿は見えない。ツイッギーは平然と言う。「あぁ、今日は本当にでかくなったよ。かなり良くなった。何本か乗ったよ」 ヒーリーは俺がミッションを終えて戻ってきたところだと勘違いし、うねりの初日がどうだったか知りたがる。そう思われているのは、なんか気持ちいい。だが、コールとアリカに行く予定だと伝える。「おぉ、あっちはすごいことになってるぞ!きっといいのに乗れるよ。俺らはこれからペルーさ」 世界有数のサーファーたちはこのうねりに興奮している。俺は緊張してくる。

コールが姿を見せる。「すげーことになってるぜ!フレッチ」 コールはその午後に10’6″(厚さ3.35インチ、デッキ3×4オンス、ボトム3×4オンス)のボードを折ってしまい、他のボードを取りに町まで戻らなくてはいけなかったそうだ。ヒーリーも新しいボードを折り、ラモンは最悪の水中ホールドダウンを経験。「明日はでかくなるぞ!すごいよ・・・けど自分が何を望んでいるのかに気をつけた方がいいぞ」 フォトグラファーのロドリゴがその日の写真を見せてくれた。急なレッジ、面はぐちゃぐちゃ、15〜18メートルの壁、そして写真の半分はワイプアウトだ。あぁぁぁ。これは俺がよく知っている夏のうねりじゃないぜ。

機内
意識を失う。本を読むことができないみたいだ。眠りに落ちてしまう。ドスン!着陸で目を覚ます。アリカの現地時間は午前1時30分。俺が覚えているかぎりでは、世紀末を迎えた木星のような土地をシャトルと車で20分くらい移動。草一本、薮一本生えていない。ホテルに到着して車から降りた瞬間、潮の香りが空気に漂っているのを感じた。ものすごくでかい音がする。波のひとつひとつが打ちつける、はっきりした爆音が鳴り響いている。

2:30AM
ベッドにもぐり込んだものの、窓はガタガタと音をたて、15分ごとに打ちつける波が車の防犯アラームを作動させる。俺は寝なくちゃいけないんだ!

ビーッ、ビーッ、ビーッ・・・。目覚まし時計が6時に鳴る。まだ外は暗い。服を着て、足を引きずりながら食堂へ。そうと気づく前に、胃を溶かすようなブラックコーヒーを2杯、パン、ハム、チーズ、フルーツ、ヨーグルトをかき込んでいた。胃がムカムカする。コールは言う。「大丈夫。なんせこれから5〜6時間は海にいるんだから、燃料が必要だって」

外は灰色。俺たちはよろめきながらパティオから外へ出る。曇り空の下、油をひいたようなグラッシーな面がひろがる。パーフェクトだ。沖にAフレームのリーフがあり、両サイドにチューブを巻いている。3メートルくらいだろうか?俺の期待はしぼむ。

「おいコール、どのぐらいのサイズだ?あそこがどれくらいはなれているのかわからない」 海上には何もないので、距離を測る基準が何もないのだ。

「ものすごくでかい。見たこともないぐらいでかい。パーフェクトだ!行こうぜ!」

また緊張してくる。

ウェットスーツを着ていると、胃がむかつきはじめた。忍びよる恐怖。コーヒーの飲み過ぎだ。9’6”のマーヴェリックス・ボードを手に窓をくぐり抜け、ポイントまで歩く。これは本当にサウススウェルのせいなのか?どうやらパドルアウトは岩場にある小さな鍵穴みたいなスロットからのようだ。セットの間でも3メートルのティアフポスタイルの波が襲ってくる場所だ。しかし、他にパドルアウトのポイントはない。なぜならこのキーホール(鍵穴)を過ぎたところから、愚かにも新しく建設された桟橋に向かって、溶岩を引きはがすような勢いの流れがあるからだ。タイミングを見極めないと、桟橋に激突すること間違いなし。

その波はポイントから真っすぐ海に向かったところにたっていて、凪いだ海に囲まれている。スピード全開でパドルすれば、髪を濡らさずにあの安全な海までたどり着けるだろう。2分ぐらい様子を見ていただろうか。すると急にコールが言った。「オッケー、良さそうだ」 俺は良さそうではない。コールは全速力で、ホワイトウォーターで覆われた流れをパドルしていく。俺は暗いセットが沖に迫っているのを見て一瞬戸惑ったものの、ひとりで入水するのも怖くて素早くコールのあとを追う。この5か月間で見たことのないような大きさの波が、キーホールの外に吸い戻されては炸裂している。でもこれも考え方次第。それにまだこれはセットの波じゃない。行くとするか。

ゲットアウト。ホワイトウォーターを1回、2回、そして3回ドルフィンし、異様にパーフェクトなダブルオーバーヘッドの波を、リーフに炸裂する前に何とか乗り越える。あれを乗り越えられていなかったら、俺らは絶対にやられていたに違いない!

安全地帯。他には誰もいない。波にも、ビーチにも、パドリング中も、誰もいない!その波は5メートルぐらいに見え、出口からエアーを吹いている。パーフェクト、でもヘビーだ!

俺たちは保守的に少し沖にパドルアウトする。コールは以前のラインアップの場所を見せてくれたが、このサイズではそこが適当とは思えない。5メートルより大きいものの、これらはまだセットの波じゃないのでは?とこっそり思っていた。俺たちのラインアップが手前過ぎるのか遠過ぎるのか、全然分からない。少しのあいだそこで待っていると、巨大なうねりが通り過ぎ、45メートルほどインサイドで大きな音を立てて割れていった。コールは手持ち無沙汰になり、インサイドへ向かう。1本乗ったコールは泥酔状態。次の何本かはパドルアウトの流れまで乗っていく。俺はだんだんと自分が弱虫のように思えてきた。すると本当のセットがやってきた。2010年2月にマーヴェリックスで見たようなでかい波。俺が何とかその波を乗り越えると、コールがその波にやられた。でかい。本当に。自分の選択肢を考えてみる。もしでかい波に捕まったら、インサイドのリフォームセクションまで一気にもっていかれて、俺の1日は終わる。アウトに戻ることはない。リーシュがちぎれたら、ボードをなくすだろう。残された選択肢はアウトで待ち、でかくクリーンな1本に乗って成功することを祈るだけ。

この波のスピードに慣れるのは大変だ。でも何本か試しては逃げを繰りかえしたら、大きいレフトの波にラインアップ。懸命にパドルし、レッジの向こう側へ自分を投げ出す。真っすぐ下を見ながら一瞬の無重力を体験し、俺は時速1,600キロで突っ込んでいった。フェイスの真ん中にこぶがあって速度が落ちたものの、予期していたとおり、パーリングすることはない。体勢を立て直し、あまり落ちてしまう前にボトムターンを決めようとする。見上げると4階建てのビルが頭上に壊れ落ちてくる。でも俺のボトムターンからしぶきは出ていない。遅すぎた。減速しはじめている。ちくしょう、間に合わない。どどーん!あっという間に水の中・・・。反転、回転、アップ、ダウン。どっちが上か分からない。ここはどのくらい深いのか?真っ暗だ。泳ぐ。急流と泡のなかに頭を出す。息が切れる、そしてまた水中へ飲み込まれる。ふたたび水面へ。また波が襲ってくる。もうダメだ。パドルアウトの流れへ向かって数メートルほど稼ぐ。深呼吸をして、潜る。深く、潜る。しっかりしろ!リーシュが切れていなくてほっとする。

ラインアップへパドルアウトするコールが、俺のことを笑う。「いまのはでかかったな!あれに乗っていくのかと思ったよ!」

ではコールはどうなのかといえば・・・

コールは決めまくっていた。波を背にリップの下でテイクオフし、何度もライトのピークを攻める。俺が何とか生き抜こうとしているところを、やつはバレルを決めようとしていた。俺は緊張して髪を逆立て、沖に出過ぎて波を見送るだけ。あまりいい気分じゃない。すると、巨大なサウスウェルが入ってきた。ショルダーが張っているようにみえる!「戻れ!」と叫ぶ自分の直感に逆らって、セットの最初の波をつかむべくパドリング。レッジから下を見下ろす。一瞬、いやだ、絶対に無理だ、という気持ちが襲う。が、気づけばボードに立っていて、無重力状態、グリップもない。調整しようとすると、こけるぞ!まるで、自分の速度を確認する暇もなく傾斜50度のモーグルを真っすぐ滑り降りているようだ。ボトムに近づき、ゆるい弧を描いてターンし、 ためてはリリース。俺のひどく小さなクワッドフィンはダウン・ザ・ラインでしぶきをあげ、巨大なキャッチャーのミットが俺を捕まえようとしているところを駆け抜ける。リフォームした波がクローズするまえに、パドルアウトの流れに27メートルぐらいまで進む。やった!

1時間に1本の調子で何時間も過ぎる。ようやく若い男がパドルアウトしてきた。そいつも俺と同じように興奮状態だ。こっちに向かって何かスペイン語で叫んでいる。

「ごめん。えっと、スペイン語はあんまりわからない。カリフォルニアから来た」

「あぁ、そうか、でかいだろ!」

「こわいよ」

「俺もだよ」

俺たちは緊張した笑いをかわす。するとコールがセットに捕まって消えていった。1時間前は長時間リフォームセクションをパドルして何とか戻って来ていたが、今回は戻ってくる様子はない。

「お前のアミーゴは死んだか?」

「いいや、大丈夫だ。やつはハワイ出身だから」

「おお、そうか」

その言葉だけですべてが伝わるっておかしい。

残ったのはビビっている俺たちだけ。リラックスしてリズムに乗ることができない。モンスター級のセットが不規則な間隔で襲ってきているからだ。たまに南の水平線に暗いラインが現れると、のっぺりとした砂漠から海に向かって突き出た巨大な岸壁を通り過ぎる。死の恐怖を超えて、あと少しで南極へ到達してしまいそう・・・というのは嘘。深く潜ればおそらくは難を逃れることはできるだろうけど、リーシュは絶対にもたない。それにこれでは泳ぎづらい。

それから、俺はどういうわけか動いた。まるで催眠術にかかったように、フェイスの途中で方向転換して、ずっと待っていた今日最大の波に乗るべくパドリングをはじめた。その波は僕を比較的簡単に乗せてくれた。俺は人生最大の波に、飛び落ちていくように乗っていた。クレイジー。センスのない比喩表現や決まり文句以外で、この加速と止まりそうのない勢いをどうやって表現すればいいのか分からない。失敗していたらまったく別の話になっていたのはもちろんだが。そのまま真っすぐ乗っていって、ビールを飲みに岸に上がろうかとも思った。だがそうするには事は重大すぎる。インサイドが跳ね上がるまえに、大きくて急なショルダーを駆け上ってプルアウト。でかいし、間に合うとは思わなかった。いい判断だった。・・・現状打破その1。ラインアップに戻る。

岸の方を見るとトウイン・サーファーが3チームやって来て、パドルアウトの流れで準備をしていた。ばかげている。蛍光カラーのウエットに、蛍光カラーの救命胴衣、その上ヘルメットまで装着している。ひとりは片方の目の下に白くペイントまでしている。何人かは、ほとんどサーフィンできない。ジェットスキーはラインアップ付近で360をかまし、口笛を吹きながら騒いでいる。やつらはショルダーを走っているだけ。ボトムに降りていくことも、ましてやチューブに入ろうともしていない。ひとりがボードを失うと、ジェットスキーの他のチームにもう1本よこせと要求し、まるで自分が重要人物かのように振る舞っている。降参した彼らは岸から400メートルもはなれたアウトの流れにその意気地なしたちを置いていく。嫌気がさした俺はもう出たくなったが、ジェットスキーに轢かれないように何とか1本乗らないことには帰れない。

ガンで突っ込んでいった最初の1本でインサイドで捕まっていたエルマンと俺は、言葉の壁にも関わらず互いを理解していた。俺たちは「もうこんな状況はたくさん。ここに残る最後の1人になりたくない」と共感。エルマンにここからの脱出方法を聞くと、インサイドの岩壁と新しい桟橋に挟まれた小さな入り江を、漠然と指差して肩をすくめる。ここから480キロ南にあるイキケから来たやつは、どうやらここでサーフしたのはほんの数回で、しかもこんなにでかいのははじめてだった。それはのちに何人ものサーファーが繰りかえす言葉だった。

俺たちはインサイドで待ち、小さめの波をキャッチした。波が消えはじめたので腹這いになり、小康状態のリフォームセクションを掻き進む。穏やかなインサイドでボードに座り、休憩を取る。だが岸からはまだ遠い。インサイドはさらに激しくなっているようで、俺のまわりはホワイトウォーターだらけだが、ここは深くて安全なスポットのようだ。けれども気がつくとリフォームセクションの端に流されていて、同時にアウトにはでかいセットがやってきた。アウトにもインサイドにも、どうやったって逃れられない。

セットの最初の波が崩れて消え、そして次のリーフでふたたび作られる。頭の上で割れないようにと、出来るかぎりの力でパドルして逃げるが、そのトリプルオーバーヘッドの波は俺の両脇90メートルでリーフ上から水を奪いながら襲ってくる。バーン!5メートル先で崩れる。ここから何とかして脱したかった俺は、深く潜るよりも、やられるのを覚悟することに決めた。

頭を沈めて体を丸める。衝撃的なエネルギーと破壊力が襲う。メインのピークよりも激しくたたかれる。反転、回転、暗闇。耳抜きをする。深いようだ。水面はどこだ? おっと海底だ。自分がどこにいるかはやっと分かったが、ここが水面からどのくらい遠いのかは分からない。海底を思いっきり蹴って、水面へ向かって泳ぐ。水面はどこだ?肺が焼けそうだ。光だ!やっと空気を吸い込む。けれどもまた波に押しつぶされる。何とか空気は吸い込めたものの、息を吐き出している途中だった。何とか残った酸素を吸収しようと何度も空気を行ったり来たりさせた。ここは少し浅いみたいだ。回転しながら底の岩の上を引きずられていく。起きられない。水面へとリーシュをたぐる。腕はしびれ、うまく動かない。やっとのことでボードに座り、異様な泡のカレントに流されると、60センチの波に落とされて、またたたきつぶされる。

速い流れに乗って桟橋を通り越し、岩壁と道路を保護する防波堤へと流される。カレントに逆らって15分間必死にパドルする。ボードがなかったら、ものの数分で海のリサイクルごみになっていただろう。

地面だ。やったぜ!最高の気分だ。ビーチを歩いていると、安全ヘルメットをかぶった男が俺の方に走ってきて言う。これから4日間、チリ海軍が海を閉鎖して人や船の侵入を制限するために、パトロールしているとのことだ。

ポイントまで戻ると、キーホールの前の駐車場にサーファーが何人か集まっていた。 イキケのエルマン、地元でサーファーのための宿を経営する男性、アルゼンチンのチャンピオンとコールの知り合い数名。彼らは頭を横に振りながら、俺たちのことを笑っている。

「人生最大のビッグ・デイだな!」

「ここで見た最大の波だよ!」

「俺がパドルするにはでかすぎる。こんなこと15年間ではじめてだよ!」

誰かが俺の人生最大の波の写真を見せてくれ、皆が俺の反応を見て笑った。ビールを飲もう。

水曜日
サイズダウンするはずだったが、波の音はまだ大きい。起きたら、寒くて疲れていた。昨日よりは少なめの朝食を取るが、胃を溶かすようなコーヒーとグレープフルーツにつられてしまう。学ばない奴!

灰色の空の下、昨日と変わらないサイズの波を見て驚く。昨日と違うのは、トップからボトムまで、さらにしっかりとホレている。そして油がひかれたようにグラッシーなフェイス!キーホールの波はさらにでかくなっていたが、タイミングさえ見極めれば頭を濡らさずにアウトできる。昨日より水温はずっと低く、ブーティーを履いてくれば良かったと後悔。

俺はすぐさまトラブる。波を見極めるのがむずかしく、今日はテイクオフスポットが2つある。カレントはさらに深く俺を引きこみ、昨日のメインのテイクオフスポットからは、でかいレフトが巻いている。コールは歓喜し、大声で騒いでいる。彼はライトのチューブをきめ、ホレたレフトをフロントサイドでドライブしながら駆け抜けている。インドネシア級の5メートルチューブが180メートルもつづいている。

俺はミディアムサイズのライトをきめたが、次の3本は食らった。トップでこぶにつっかかり、前進する勢いを最後の瞬間で失って、そこからは垂直に地球の真ん中までフリーフォール状態。クアッド・フィンがもつヤモリの足のようなホールド力のおかげで、何とかそこここで乗れたものの、遅かった。弱気になって疲れ、いい波からははなれはじめた。コールいわく、俺はチューブセクションにドロップしようとしているから、もっと深い場所でテイクオフする必要があるらしい。「ピークのもっと手前からテイクオフしろ!」

少し深いところからパドルして、大きい波を狙う。良さそうだ。グライド感もある。立とうとするとスピードを失う。こうなると完璧に手遅れだ。「努力すれば何でもできる」的な幼少時代のばかげた洗脳がよみがえって何度かストロークをつづけると、ほとんどレッジからひっくり返ってしまう。ヒュー!空中に浮く。ボードに立ったころには波はほれて、真っ逆さま。フェイスの真ん中に尻から落ちるが、水中に沈まず跳ねかえる。まったく流体力学に逆らった尻だぜ。波のリップが落ちてきて俺は沈み、そしてまた吸い込まれて落ちる。水面に出てこられたとき、俺はただ浮いていた。パドルアウトの流れまで戻る気もなく、それから2つの波に飲み込まれてしまう。気分は良くない。

そのころアルゼンチンのチャンピオンと地元サーファーがひとり、パドルアウトの流れにいた。彼は俺に行くなと叫んだらしいが、ヘッドキャップを被っていたから聞こえなかった。コールと俺はボードを取り替えて比べてみたが、彼のボードは俺には幅も厚さもありすぎる。次の2本はターンを失敗し、フェイスをボディーサーフィンすることになった。そのうちの1本は実際にリップを超えてショルダーを乗ることができたのだが・・・。とにかく過酷な朝だ。

昨日のジェットスキーのやつらがやって来たので、その地元サーファーに簡単な戻り方を聞いた。するとキーホールから戻るのがいちばんだと言う。なんだ。俺はコールの板で最後の1本を乗り、キーホールへパドルした。サンドビーチには頭を濡らさずに戻ることができた。・・・現状打破その2。

その夜、ピスコ・ビールを飲みながら、俺たちは自分たちのパーフェクトウェーブの乗り方について書き記し、映像を見なおした。俺は立つのが早すぎで、少なくともあと4〜8回はフェイスに向かってパドルしなくてはいけないことが分かった。俺はあの急なレッジは立って超えなくてはいけないと、無意識のうちに推測していたのだ。次の2日はサイズダウンしたため、俺たちはリラックスして飲み食いし、書き物をする時間もあった。

月曜日
またサイズがあがった。この日分かったことは、パドルを長めにしてフェイスの途中で立つことを恐れなければ、テイクオフは簡単だということだった。レッジがたつまえにダウンヒルに向かっている状態だ。ほとんどすべての波を乗りこなし、人生最大のバレルをきめた。最後に潰されたが、なんて景色。驚異的な洞窟だ!・・・現状打破その3。

その日は帰路につく日だった。6日間の旅だったが、サーフィンした量を考えると1か月のようにも感じた。今年の冬いち早く取り組んでいたガンの研究開発のために、俺はたくさんの新しいアイディアを持ち帰ることができた。この旅に行くべきかどうか考えていたときのいらだちを思い出し、わかったことがある。それは、いつだって行く価値はある、ということ。

−フレッチャー・シュイナード

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フレッチとコールの2人はこのセッション以来、ビラボンXXLビッグ・ウェーブ・アワードに参加したいと考えている。コールはオレゴン州ネルスコット・リーフとチリのアタウドでのライディングの様子も投稿している。

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