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地球が私たちの唯一の株主

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変わらないジャンボ

アレックス・ヨーダー  /  2016年1月23日  /  アクティビズム, スノー, スポーツ, 環境

迷った感覚。救援からはるか遠くの場所にいる感覚。店からもモーターエンジンからも人間からもはなれたところに存在する感覚。僕は理解をはるかに超えた巨大な世界にいる。目に見えるものだけが存在するすべてで、まだ見ることのできない何かを発見するために生きている。1日は明と暗の2種類の時間しかなく、食事は肉体の燃料であり、舌のダンスのためのものではない。寒さは身を裂き、太陽は叱る。それは近代技術が必須でないものや便利なものを紹介しはじめる前がどんな暮らしだったかをうかがわせる。

その一方で、いまは2015年。僕は自分の居場所を知らせる機器を持つ。不慮の事故が起きれば僕の声を宇宙の衛星に反射させて救助を求めることのできる携帯電話を持っている。それでも僕の心にはすべての快適さと非常用装置を抹消させるだけのロマンスが存在する。心のなかでは、僕は自由で野生で迷うただの動物だ。

僕はブリティッシュ・コロンビアのジャンボ・バレーで早朝3時に起床することに同意するやいなや、翌日が興味深い日になることを知っていた。僕のテントが揺さぶられ、「起きろ、起きろ」というガラガラ声が、僕を別のずっと温暖な現実から引きはなした。グースダウンの繭を脱ぎ捨てて冷たい暗闇へと出て行くことが、深呼吸にはじまる仕事の第一歩。食糧、水、ヘッドランプ、ビーコン。出発準備オーケーだ。このグループで唯一のスプリットボーダーとして、早朝4時に前夜ふたたび凍った起伏する南面の深い森林の地形を最初に下降するとき、シールを付けたままにした。スプリットボードでこれほど技術を試されたことはなかった。もちろん自分の領域ではあったが、それはサンフランシスコの坂道を行くローラースケートを履いたゾウのような感覚だった。

夜明け前の斜面との戦いをスプリットボードで生き延びたことは、喜ばしい自信へとつながった。最初に休憩を取ったときはまだ暗く、僕らの目標がかろうじて影絵のように見えたが、そのすべてのフェイスにはライディングのできる顔相に見られる特徴があった。「いい感じだ!」マックス・ハンマーと僕はクスクス笑った(自分の足もほとんど見えないというのに)。樹林が薄くなると、4人チームの半分は荷を軽くするこのチャンスに飛びついた。

さあ、間隔を取って登ろう。ガイドでキャンプのDJとコメディアン役を努めるブローディ・スミスはこのフェイスの東の大きな斜面をジグザグで登高しはじめた。山頂へとつづく尾根へはこれが唯一の安全なルートだ。時間はたっぷりある。尾根へ出ると温かい日差しが僕らを招いた。広大なパーセル山脈が視野に入ると、僕はこの存在についてじっくり考えていた。僕らはなぜ「本当の人生」でこれほどまでに多くを必要とするのだろう。なぜ世界の自然美を利益のためにこれほどまで搾取したがるのだろう。人類として、集団として、持続不可能な存在に慣れてしまったことに、僕たちはいつ気づくのだろう。それから僕はグースダウンのジャケットときれいにパッケージされたオーガニックのスナック、南米産のヤーバ・マテ茶でいっぱいのテルモスを取り出した。今日の世界では矛盾はありきたりだが、真の人格の尺度となるのは、僕らが存在の仕方の規模と前提をどのように選択するかだ。

開発された世界からはほど遠い野生で豊かな場所に身を置くとき、そうした場所がその神聖さにおいて認識されておらず、国立公園などのようなはっきりとした指定を受けていないことが信じがたい。ジャンボ・バレーのある山頂への途上で、僕らは社会から完全に隔離された感覚を感じながらも、このエリアが傷つきやすく、あっと言う間に店やモーターエンジンや人びとで苦悶する場所になる可能性をひしひしと認識している。

ジャンボの場合、世界クラスの氷河スキーが通年楽しめる場所としての開発は1990年代初期から討論されてきた。リゾートは6,250床のビレッジを基盤とし、22本のリフトとゴンドラ、そのうちひとつは壮大なグレイシャー・ドームの頂上の「ティーハウス」へと導く。僕はこの場所が滑るのには素晴らしい場所である事実は保証できるが、この場所が碇を下ろすのに合理的な環境であるという前提に挑戦する理由は数々あるように思える。

スキー場が大好きな僕がそのアイデアを嫌うというのは完璧に偽善だ。素早くリフトで頂上へ行けること、1日中登ったり降りたりして重力と戯れる超自然的なぜいたくを好まない者がいるだろうか。リフトは体力がつづくかぎり滑ることを可能とし、多くのスキー場で、エリア外の高い尾根へのアクセスやバックカントリーへの巨大な優先スタートを得ることもできる。自分の技を磨くことを可能にしてくれたジャクソンホールのリフトがなければ、僕はジャンボには訪れなかっただろう。それでも「なぜ」と問わないわけにはいかない。スキー場のように、私たちが十分もっている何かがすでに存在すること、そして他方、保護地区のようにもっと必要なものがあることに、僕らの社会はいつ気づくのだろうか。

尾根は一歩進むごとに「下を見るな」の領域にまで斜度を増していった。僕らが到着する前にこの尾根を訪れた風はその形跡を隠そうともせず、美しい雪紋を残していたが、破壊槌のような僕らのつま先がその表面のクラスト雪を壊してしまう。ひとつひとつ振り付けされたダンスのようにステップする。上を見上げ、ステップ、ステップ、パンチ、パンチ、そしてその繰り返し。山での危険の可能性を受け入れるのは車を運転することに似ている。ビーコンはシートベルト、無作為の望ましくないものに遭遇することへの唯一の盾は自分の意識だ。

キャンプ地を出てから5時間が経過した。はじめて山頂からフェイスを見下ろすと、見えるのは斜面が切れ落ちる前の3メートルだけで、そこから先は僕らの飢えた目で称賛することもすべてのカーブと危険を研究することもできない。その向うにはクレバスで斜線に刻まれた氷河のうえに雪崩の堆積物の月面が横たわっているのが見える。懸垂下降して地形を研究し、雪質を確認するために、ブローディとマックスは尾根の反対側にスキーでデッドマン・アンカーを作った。ラインは僕にとってテクニカルかつバックサイドで、向かって左側のフェイスは露出している。前日、積雪から反応を最低限に抑えて同様の斜度を滑っていた僕らは、懸念すべき雪の層を発見することは予期していなかった。マックスが雪に足をとられながらロープで登ってくると彼の顔には不機嫌さがうかがえた。かなりの不安定さを見つけたのだ。反応はしないだろうが、もし反応したら……。

僕らは困難な決断に迫られた。このフェイスを滑るためには大きな努力を費やしていた。ここにたどり着くために使った時間があれば、もっと近場のそれを3度は滑ることができただろうし、写真家は特定の背景のもと、遊び心のある人間と重力のインタラクションの画像を捉える期待を抱いていた。しかしその場所を考えるとき、そこに居る理由や、僕らのグループや個人としての目標には悲劇的な経験は含まれていない。僕らは自然のなかに存在し、楽しみ、バックカントリーで2週間過ごし、ストーリーをもって帰るためにここに居るのだ。

振り返れば、この残念な努力は僕の人生で最高の1日のひとつだった。目標まで歩き、それを目の当たりにしながら(そして99%の仕事を完成して、あとはお楽しみが残されているだけというとき)撤退し、苦労して稼いだステップをまたやり直すことがこれほど充実したことであるということを、その瞬間に理解することは困難だ。だが真実はシンプル。そのフェイスは滑られるべきものではない。そのまま押し進めば、悲劇的な結果にみずからをさらす危険を冒していただろう。

リゾート開発者についていえば、彼らは20年以上この尾根にステップを刻みつづけている。この建設案には巨大な自然崩壊の驚異が存在するが、その結果を知ることは不可能だ。結局のところ、リスクは巨大なものであり、どのリスクにも決定的な結果というものはないのだから。僕は開発者が今日の世界ではジャンボ・グレイシャー・リゾートよりも巨大な問題を提示したことを知り、その目標を手放すことができることを期待するのみだ。

アレックスはスウィートグラス・プロダクションが制作した、ブリティッシュ・コロンビアの象徴的なジャンボ・バレーをめぐる何十年にもわたる闘いの真実の物語を語る映画『ジャンボ・ワイルド』でフィーチャーされた数多くのライダーのひとり。本映画の完全版はVimeoおよびiTunesでご覧いただけます。

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