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ライフ・オブ・パイ

ダイアン・フレンチ  /  読み終えるまで4分  /  コミュニティ, マウンテンバイク

ココペリ・ループの「ピザ・ポイント」で、ライディング後のビールを楽しむアン・ケラーとジェン・ズーナー。 Photo: Carl Zoch

金曜日の夜に〈ホット・トマト〉へ行くのは、急いでいる人にはおすすめしない。お腹を空かせた客たちがビール片手にその日のライディングを語り合い、その列は駐車場までつづくからだ。音楽が騒がしく流れ、従業員はカウンターのうしろで忙しく駆けまわり、小麦粉だらけのピザ生地を投げ、互いをからかいながら、キッチンにオーダーを叫ぶ。雰囲気はまぎれもなく楽しく、やがて焼け上がるピザは待つ甲斐あって、最高に美味しい。

オーナーのジェン・ズーナーとアン・ケラーは、いまとなってはフルータ市の一員だが、2002 年にはじめて引っ越してきたとき、ここは彼女たちの第一候補ではなかった。ユタとの州境のすぐ東側、コロラド・リバー沿いに佇むこの街は、もともとは果樹園や牧場などが広がる農業地帯だった。のちに鉱山や原油や天然ガスなどの採掘産業に移り変わり、今世紀のはじめ、ここは州で最も保守的な街として知られていた。

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しかし、若い2人は現実と向き合わなければならなかった。そこから南にあるマウンテンバイクの聖地デュランゴや隣のユタ州モアブは、物価が高すぎた。資金のなかった彼女たちには、ダートバッグなライフスタイルをつづけられる場所が必要だった。フルータの物価は安く、新しいシングルトラックがいたるところに開拓されていて、その当時は明らかではなかったが、そこには物理的にも比喩的にも青空が広がっていた。

写真家のケラーと元BMX/ダウンヒルレーサーのズーナーはこの場所に落ち着くことに決め、バイクショップで仕事を見つけた。そして驚いた。ここでは3つの仕事を掛け持ちすることなく、1つの仕事だけで生計を立てることができ、マウンテンバイクを楽しむ時間さえあることに。その当時、増えつづける観光客が店に来ては、食事ができる場所について尋ねた。「私たちは単純だったわね」と言うのはケラー。「そのとき思ったの。ねえ、私たちがレストランを開きましょうよ。何人か人を雇って、そしたらずっとマウンテンバイクを楽しめるじゃない、って」彼女たちは一緒に笑う。「甘かったわね!」

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列がないということは、早朝に違いない。出だしはかよわくも、2 人の文無しマウンテンバイカーたちが蒔いた種はたくましい多年生植物〈ホット・トマト〉へと成長し、フルータの地域社会の皆のお腹を満たす。Photo: Carl Zoch

彼女たちがニュージャージー流のピザパイ屋を開店したとき、必ずしも温かく歓迎されたわけではなかった。ズーナーとケラーは、ある地元の人を思い出す。彼はマウンテンバイクが嫌いで、彼女たちがレズビアンなのも気に入らない、そしてその彼女たちが店を開き、何よりも気に入らなかったのが、彼の娘がその店で働きたがったことだった。「でも年月を重ねるうちに、彼は常連客になったわ」とズーナーが言う。「いまでは子供やお孫さんたちと一緒に来てくれる。私たちももうここに来て長いから、地元の人たちも私たちがただの善良な人間だとわかってくれている」

「私たちは何事に対しても、とくに大胆というわけではないわ」と、ケラーはつづける。「だからといって、私たちがレズビアンである事実を隠そうとしたこともないし、純粋に私たちがそうあることで、〈ホット・トマト〉にはいつも少し反逆的な主義があるのかもしれない」 このレストランとここで働く「トマトたち」は、リベラルな車中暮らし(#vanlife)のスノーライダーも、保守的な牧場主も、平等に歓迎するよう意識している。「皆を受け入れるという才能は、持って生まれたものじゃない」とズーナーは言う。「そうするように訓練しなくちゃいけないのよ。私たちのドアを開けて訪れるすべての人を受け入れたい。純粋に受け入れるの」

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ピザばかりで遊ぶ時間がなかったら、誰でも気が狂う。バイクライディングの1 日のためにドレスアップするズーナーとケラー。Photo: Carl Zoch

ビジネスを経営し、可能なかぎりマウンテンバイクにも打ち込むケラーとズーナーに、空いている時間はほとんどない。それでもトレイルを作ったり、街のアウトドアレクリエーション開発に関わる機会をなんとか見つけている。また彼女たちは、価格の上昇しつづけるフルータの市場から同志の新興ビジネスが追い出されることにならないよう、自分たちが所有する店の裏に安価で賃貸スペースを提供するなどして援助に取り組んでいる。「もっと地元に根差したビジネスが増えることを願っているの。これからこの街の人口が増えていく前に、住民に良いサービスを提供できるようにね」と、ズーナーは言う。

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