「トミー」のメイキング

「トミー」のメイキングからキャプチャーした静止画。
偉大な人物はどうやって偉大になったのか考えたことがあるかい?もちろん、簡単で決定的な答えはないし、その公式もない。彼らは人間であり、人間的な要素が無限に絡み合うからだ。つまり機会、持って生まれた才能、先天的な/身につけた意欲、精神力、視点、思考過程、影響、献身、勤勉さ、そしてその他の何かが、さまざまに、かつ神秘的に組み合わさり、そして人生という時空の継続を通して……。これでおそらく全部がカバーできたかな。分かったかな? ああ、僕もさ。
それは非常に興味深いテーマで、優れたフィルムメーカーのクリス・オルストリンが作ったパタゴニアのアンバサダー、トミー・コールドウェルの短編ビデオで、史上屈指のロッククライマーの人生を垣間見ることができる。トミーは僕の隣人、つまりコロラド州エステス・パークの仲間の一員で、僕の英雄の一人でもある(ここで僕がこのビデオの著作とストーリー開発に一役買ったことをお伝えしておかなければ)。
僕らがどうやって現在にいたったのか、そして自分の潜在能力をどう開発するのかは、人によってそれぞれだと思う。それは僕らを人間らしく、ユニークな存在にする一要素だ。クライマーと過ごしてきたすべての時間、そしてそれ以前に、大学までに知っていたその他の競技スポーツ選手を考えても、僕の人生のなかで見るかぎりでは、トミー・コールドウェルほどがんばる人間には出会ったことがない。
さらに、いくつかの興味深いことがトミーという人間の形成に貢献している。たとえば、テーブルソーで指をあやまって切断したことから(え?クライマーが指を失うってことはアスリート生命の終わりだよな。いや、彼はさらに上手くなったんだ)、キルギスタンでイスラム過激派に拉致されたこと、そして彼の父がクライミングに熱心だったというもっと「普通の」ことなんかだ。
とにかく、トミーがどうやってトミーになったのかは分からない。でも僕は彼が彼であることがうれしい。僕のSLF(もちろん、スペシャル・レディー・フレンド=特別な女友達のことだよ)と僕は最近話していたんだけど、トミーは知れば知るほど、感心させられるような人間だということを彼女は察するようになった。「そうさ」と僕は言った。「トミーへの尊敬の念は、彼をよりよく知るにつれて増していくのさ」 期待に満たなかったり、裏切られる危険性があるから尊敬する人物と出会うことを警告する僕らの世界からすると、それはとても新鮮なことだ。トミーはその逆だから。
僕のミーハー的な称賛はこのくらいにしよう。ここでトミー・コールドウェルの世界をちらっと覗き見してほしい。
トミーのドーン・ウォールのプロジェクトについての詳細は、『Spring2013』カタログに掲載されたフィールドレポート「終わりなき挑戦」をお読みください。