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旅する料理人と、「顔の見える」テーブルのこと

倉石 綾子  /  読み終えるまで9分  /  ワークウェア

写真 : 五十嵐 一晴

日本各地を飛び回り、その土地々々で料理を振る舞う料理人がいる。「旅する料理人」として活動する三上 奈緒さんが繰り広げるのは、ただのポップアップレストランや食材めぐりのツアーではない。日本各地の生産地を訪ね、生産者とともに農作業を行い、猟師とともに山に分け入り、そこで出合った旬の食材で料理を振る舞う。自然への畏敬の念をそのまま料理に仕立ててサーブする食事会では作り手と食べ手が相まみえ、都市と生産地である地方が素敵に混ざりあう。そんなアプローチからは、地球にも環境にも自分たちにも健全な、未来の食のあり方が見えてくる。

三上さんが料理に目覚めたきっかけは、栄養士をしていた頃に通っていた「青山ファーマーズマーケット」だった。ボランティアとして運営に携わる中で、自然のサイクルに寄り添ってものづくりを行う生産者たちに感銘を受け、彼らと交流を重ねるように。気がつけば頻繁に郊外の畑に通って農作業を手伝うようになっていた。

旅する料理人と、「顔の見える」テーブルのこと

青梅の有機農家、「Ome Farm」の畑で伝統野菜であるシナガワカブを収穫する。シナガワカブは江戸期から始まる東京の野菜文化を継承する在来種だ。写真 : 五十嵐 一晴

「ちょうどその頃、彼らの野菜を使ってカレーを作り、深夜のクラブで売るようになったんです。三上 奈緒として料理を提供したのはこの時が初めてで、誰かに料理を振る舞って喜んでもらうことが嬉しかったのはもちろん、食べてくれた人の感想を伝えたときの農家さんの笑顔が本当に素敵で。食べる人、食材を作る人、どちらもの笑顔も見られる料理って、なんて幸せな行為なんだろうって。そうした経験が背中を押してくれ、この道を本格的に進もうと決めたんです」

料理の基礎を学ぶため、すぐに渡仏。自然豊かなアヌシー、そしてプロヴァンス地方の星付きレストランの厨房に下っ端として入店した。テクニックはもちろん、地産地消の醍醐味、自然の中で味わう食の愉悦といった真髄を体感することができたのは、さすが本場・フランスの懐の深さといえるだろう。1年の修業を終えて日本に帰国後、今度はインターンとしてカリフォルニア州バークレーの「シェ・パニース」で働くことに。「シェ・パニース」で驚いたのは、とにかく料理がシンプルなこと。その季節に畑にない食材は使わず、そして食材ととことん、向き合うこと。肉を使う場合は一頭の解体から始まる。丸ごと使うからフードロスはほとんどない。野菜もしかりで、野菜くずは堆肥にすべく生産者の元に戻すよう、システムが徹底されていた。
「料理はものすごくシンプルで、だからこそ素材の力強さが際立つものでした。薪を使った直火でグリルした肉、付け合わせの葉玉ネギのフリット、柔らかめに茹でてヴィネグレットと和えたインゲン……。美味しいってなんだろう、とはっとさせられましたね」

旅する料理人と、「顔の見える」テーブルのこと

「Ome Farm」の収穫祭当日。40名を招いてのアウトドアランチのために何日も前から準備に奔走してきた。前日までに収穫した大量の野菜を仕込む。写真 : 五十嵐 一晴

そもそも料理を始めた原点は、生産者と交流する中で出合った食材を使って料理すること。そうして食べる人、作る人に喜んでもらうこと。テクニックを追い求める中で見失っていた原点を思い出したら、料理が心底、楽しくなった。

その気持ちをそのまま日本に持ち帰り、「旅する料理人」としての活動をスタートした。いちばん初めのクライアントは、「シェ・パニース」で出会った愛媛からのグループだ。三上さんの料理をぜひ、自分たちの地元食材で味わってみたいと、30人ほどの食事会を開催してくれたという。
「食事会の前の食材集めの段階でローカルの生産者を紹介してくれたのですが、食事会には彼らも招待されていたんです。生産者の皆さんにとっても、料理人が調理した自分たちの食材を口にする機会はそうそうあることではないのでとても喜んでくださった。その様子を間近にして、改めて私がやりたい料理はこれなんだって、目指す道が見えた気がしました」

旅する料理人と、「顔の見える」テーブルのこと

丹波山村で獲れたシカ2頭を捌く。本日のメインはシカ肉。焚き火でじっくり調理する。写真 : 五十嵐 一晴

そうして全国各地の産地を舞台に活動するようになって3年。今年はコロナ禍による行動の制限を受けながらも、より身近なコミュニティにも目を向けるなど、これまでに培ったつながりを生かして三上さんらしい取り組みを続けている。例えば11月のある日、三上さんは青梅市にある「Ome Farm」にいた。「Ome Farm」は農薬や化学肥料の不使用はもちろん、自然の力と昔ながらの知恵を最大限に生かした農法で伝統野菜や在来の品種を数多く手がけ、シェフや料理家からの評価が高い生産者だ。この日は「Ome Farm」が開催する初めての収穫祭。午前中の援農に携わったおよそ40名をファームの敷地内に設えたアウトドアダイニングに招き、ファームの野菜と地元食材を使った料理を振る舞うという。その調理を担当するのが、普段からここの畑に通ってスタッフとともに農作業を行なっている三上さんと仲間たちだ。

三上さんを評して「ラテン系で、『型』がないのがいい」というのは、「Ome Farm」を率いる太田 太さん。東京の農シーンを代表する生産者の一人だ。
「料理人、特に正統派のフレンチを学んだ料理人って、先にメニューを考えるものでしょう?けれど奈緒ちゃんは食材ありきで料理する。メニューが先行するとどうしてもフードロスが出るけれど、彼女は素材に合わせて料理をするからロスが出ない。人間の都合を優先すると何かがいびつになるけれど、彼女はそれをわきまえている。自然への敬意というのかな、そういうところに僕たちも共感するんだと思う」

旅する料理人と、「顔の見える」テーブルのこと

焚き火でシカ肉のグリルとパエリアを仕上げる。竹のアーチは、三上さんと仲間たちが「Ome Farm」敷地内の竹林から竹を切り出し、加工したもの。薪は三上さんが近隣をまわってかき集めた端材だ。写真 : 五十嵐 一晴

この日の主役は焚き火料理だ。青梅市に近い山梨県丹波山村で獲れた、重さ13kgのシカを2頭、この日のために設えたお手製のファイヤーピットで調理する。1頭は直火にかけ、丸焼きに初挑戦。その横の深鍋ではシカの首と肋骨の部位でスープをとり、その出汁でパエリアを炊くという。採ってきたばかりのニンジン、カブ、ノラボウ菜は、虫食いも不揃いも、根元も葉も余すことなくパエリア鍋に入れて火にかける。束にして吊り下げている立派なニンジンは夏の間、草取りに励んだ作物だとか。

三上さんは料理における火のプロセスをことのほか大切にしている。私たち人類は火を使うようになったからこそ、生活や食文化を飛躍的に深めることができた。それなのに、IHや電子レンジが普及する都会の暮らしでは火を使う機会が減っている……。「だからこそ、料理に欠かせない火の存在にもう一度、光を当てたい」と三上さん。

「私たち人類は自然を恐れてスーパー堤防を作ったりダムを建てたり、暮らしと自然の間に線を引いてきた。けれどそれでは人間と自然の隔絶は進むばかりで、人間は生きる力を失いつつある。そもそも自然って恵みを与えてくれると同時に脅威にもなりうる、諸刃の剣のような存在ですが、火もまったく同じだと思うんです。プリミティブな焚き火調理は人類の生活の中心にあった火のありがたみを思い出してもらえるきっかけの一つになります。これまでの自然との向き合い方をリセットして自然と寄り添って生きる方向にシフトするために、昔ながらの焚き火を通じて自然と触れ合い、五感を研ぎ澄まし、私たちが持っている野生や本能を呼び覚ます。そんな体験を参加者と共有できたらいいなと思います」

旅する料理人と、「顔の見える」テーブルのこと

「ただ味わってもらうだけでなく、その日の食卓の裏側にある物語を伝えたい」と三上さん。たくさんの参加者と語らうのは、生産者のこと、郷土の食のこと、未来の食のありかたのこと。話題は尽きない。写真 : 五十嵐 一晴

そんなことを話しているうちにパエリア鍋からいい匂いが漂ってきた。
「ファーマーズマーケットでの気づきからずっと、私の活動の中心には自然を敬い、自然を搾取しない方法で食材を生み出す生産者がいます。それが私の原点だから、私は彼らへの敬意やその姿勢への共感、そして自然を思う気持ちを料理で表現しているんです。だから料理を振る舞うテーブルには食材に携わった生産者にも来てもらいたい。一緒に盛り付けてサーブしたり、食材の説明をしてもらったり、そういうひとときが生産者と生活者をつなぎ、地方と都会の架け橋になると思うから」
おいしい一皿の裏側には、こんな素晴らしいものづくりを行っている生産者がいるということを、その人たちの物語や作物ができるまでの背景を、料理を通して伝えたい、と三上さん。そうやって「顔の見える」テーブルを作ることが未来の食文化を育むことだと信じている。

旅する料理人と、「顔の見える」テーブルのこと

「Ome Farm」の旬の野菜を、丹波山のシカのスープで炊いたパエリア。仕上げに添えた柑橘は、この数日前に訪れた高知の農家からいただいたもの。「旅する料理人」の名にふさわしい、各地の食材の魅力と出会いが詰まったパエリアが完成した。写真 : 五十嵐 一晴

シカ肉の香ばしい匂い、バターナッツのとろけるような甘み、口の中いっぱいに広がる野菜の滋味。畑の恵み、命の巡りをいただきます!

旅する料理人と、「顔の見える」テーブルのこと

焚き火料理に欠かせないのは、ガンガン使っても直火で焦げてもへたらない、丈夫で使い勝手のいいワーク・エプロンだ。愛用の一枚を身に着けて。写真 : 五十嵐 一晴

ワークウェアについて

ダイナミックなアウトドア料理のシーンで重宝するのが、タフで着心地が良くて汚れが気にならないワーク・エプロン。三上さんの愛用品はワークウェア・シリーズのシェフズ・エプロンだ。産業用ヘンプとオーガニックコットンの混紡で仕立てられたこのエプロンは、キッチンツールをザクザク収納できる大型のポケットが特徴的。前面は二重仕立てになっていて、焚き火やオーブンの熱に対するプロテクションとなってくれる。

「膝まですっぽりカバーしてくれる丈の長さが焚き火料理にはちょうどいい。中央にスリットが入っているので、作業中の足の動きを妨げません。タオルループもついているのですが、私はストラップを前結びにしてそこにタオルを引っ掛けることが多いかな。タフな素材でできていますが、特に中央の『ヒートゾーン』は生地が二重になっていて安心感があります。鍋つかみの代わりにすることもあるくらい」

自然に敬意を払う生産者と行動をともにするからこそ、自分が身につけるものも環境に配慮したものを選びたい、と三上さん。

「使い勝手は大事だけれど、すぐにダメになってゴミになるようなものは使いたくない。長く使えて汚れが味わいに変わり、私だけの一枚になってくれる。そんな道具がいいんです」

煙は目にしみるし、涙と鼻水と煤で顔はぐちゃぐちゃになるし、ファイヤーピットに膝をつくから泥汚れもつく。そんな焚き火料理をこよなく愛する三上さんを、丸ごと受け止めてくれるエプロン。煤で汚れたエプロンを身につけた涙目の三上さんは、とびっきり輝いて見えた。

旅する料理人 NAO MIKAMI:https://www.naomikami.com

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