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広い海、広い心

ショーン・ドハーティ  /  読み終えるまで7分  /  サーフィン, デザイン

オーストラリアの荒れる冬の日に「ライフ・アンド・デス」と適切に名づけられた飛び込み岩の前で、新しい5'9"マレットのペースを保つダン・ロス。 Photo: Al Mackinnon

フレッチャー・シュイナード・デザインズ(FCD)では、どのような状態の海でも楽しめるよう、丈夫で高性能のギアを作ることに焦点を置いています。

フレッチャー・シュイナードにとっての1日は24時間では足りません。サーファー、シェイパー、カイトボーダー、そして新米パパとして、彼は本当に奮闘していました。そこへさらにフォイルボードが加わり、ものごとはいっそう複雑になりましたが、同時にパーフェクトとは呼べない波で楽しむことについて、新たな視点を得ることにもなりました。

フレッチャーの仕事について詳しく知るため、彼とはカリフォルニア州ベンチュラにあるFCDのサーフボード工房で会いました。飾り気のないそのかまぼこ形のプレハブの小屋は、パタゴニア・サーフの精神的な原点でもあります。フレッチャーと彼のスタッフはここでボード製造の最初から最後までを手がけており、これは現在のサーフィン業界では稀なことです。壁にはステップアップ、ビッグウェーブ用のガン、小波用の万能ボード、フォイルボードなどがずらりと並び、彼らの海に対する大きな愛情と、ボードのシェイピングとデザインに対する広い心が映し出されています。

良い波と風に恵まれる場所から目と鼻の先にあるFCDのサーフボード工房が建っているのは、フレッチャーの父イヴォン・シュイナードが1960年代にクライミング用のピトンを鍛造していた、最初の「ティン・シェッド」のすぐそばでもあります。モノは異なりますが取り組み方は同じ。機能して長持ちするギアを作り、それでアウトドアを楽しむというパタゴニアが大切にしてきた信念は、FCDとパタゴニア・サーフにも深く通じています。そしてフレッチャーが言うように、今日の多様なデザインを考えると、それに取り組むためにはゆっくりと休む暇などほとんどない、ということを意味します。

広い海、広い心

シェイピングしたら、すぐサーフィン。自分の工房から数分の場所で、即座にデザインのデータを集めるフレッチャー・シュイナード。カリフォルニア州ベンチュラ郡 Photo: Scott Soens

シェイパーそしてデザイナーの仕事に自分の人生を捧げるようになったきっかけは?

FC:最初は高校生のときに、ただでボードが手に入ると思ってはじめた。何本か作ってみると、ボードにほんの少し調整を加えただけで、波に乗るとものすごく違うのが面白くて、その工程の虜になった。ボードを改良するたびにサーフィンが上手くなって、経験自体が広がった。中毒みたい辞め、フルタイムのシェイパーになったんだ。

この25年間で取り組み方は変わりましたか、それともほとんど同じでしょうか?

FC:僕は最初からどちらかと言うとハイブリッド的なやり方で、長年それをつづけてきた気がする。ガンのシェイピングにさえもね。ボードに幅と厚みがある方が個人的には合っていて、それが僕が関心を寄せてきたデザインの特徴かな。いまではコンピューターでデザインして、CNCやCADもたくさん使うけど、それには長所も短所もある。素晴らしいツールだけど、自分を見失いがちにもなる。些細なことにとらわれずに自分に正直でいるために、ときには基本に戻ってハンドシェイプすることもある。おかしなことに、よく自分がコンピューターでデザインしたものをどうやったらハンドシェイプできるか考えていたりする。それもいい方法だよ。

パタゴニア・アンバサダーのラモン・ナバロがこの工房で一緒にボードを作っていますよね。あなたのハイブリッド的な手法はそれにも影響しているのでしょうか?

FC:そう、かなり幅広い種類のボードを作っている。沖に立つ大きなスウェルをキャッチするための10’6″から、小波用の小さな万能ボード、それからトウイン用まで。ラモンはフィジーでのサーフィンから帰ってきてから、トウインの新たな可能性にハマっている。彼はクラウドブレイクのイカれた波に15年モノのボードで乗った。以前トウインが流行っていたころのボードだよ。15年も彼の物置に眠っていたそれで生涯最高の波に乗ったんだ。その一方でショートボードで小さめの波を楽しむことにも興奮していて、若返るようだと話しているよ。

フォイルボードは、そのような小さくて誰でも乗れるような波に当てはまるんですね?

FC:まあ、いい波のバレルに匹敵するようなものはない。でも通常のほとんどのサーフィンではフォイルボードはすごく面白いと思うよ。フォイルボードは確実に「感じる」スポーツで、観るものではない。サーファーが浮いたり沈んだり、ちょっと格好悪く見えるかもしれないけど、本当に直感的なものだよ。グライドを感じると「ワオ、もっと乗りたい」って思う。ターンするたびに、減速するどころか加速するんだ。海の上を矢のように飛び回る感覚なんだ。

広い海、広い心

ボードのデザインの進歩はつねに、創造力に長けたシェイパーとサーファーの緊密な協働を頼りにしてきた。ロサンゼルスの北で離陸するクインテン・ルバルカバ。カリフォルニア州 Photo: Scott Soens

フォイルボードによってサーフィンの他の要素に対する興味が湧きましたか?

FC:そう思うよ。夏のベンチュラはフラットになることも多いけど、フォイルでならサーフィンできるからね。子供に戻ったように興奮して、ただ楽しくて仕方ない。いまでは夏が待ち遠しいよ。僕にとっては、原則はすべて同じ。カイトサーフィンも、フォイルサーフィンも、フォイルボードでのカイトサーフィンも。どれも同じ体験の一部なんだ。いつでも何かしら乗るものがある。でもそのおかげで暇な時間がなくなっちゃうけどね。

ボードの素材の展望についてはどう考えていますか?

FC:環境への影響を抑える製品について考えるシェイパーがいることは嬉しい。彼らのほとんどはラボなんてもっていないし、環境科学者のチームがついているわけでもない。でも彼らは自分たちにできることをやっていて、それが素晴らしい。僕がはじめたのは1994年、クラーク・フォームとポリエステル樹脂の時代。あの時代には簡単に入手できる代替品はなくて、ひと握りのシェイパーが主流から脱しようとしていただけだった。1997年には代替品の徹底的なテストを開始して、エポキシが僕たちの標準になった。最初は耐久性がおもな理由で、正直言って、健康や環境への配慮というのはあとからだった。それ以来僕たちは素材や工程を何度も改良して、だいたいにおいてエポキシとEPSを使う。この組み合わせは機能するし、強度があって、軽量で、毒性が低く、リサイクル可能。世間には見せかけだけで誤解を招く「環境に優しい」製品がたくさんあるけど、機能性に妥協せず、可能なかぎり長持ちするボードを、入手できる毒性の最も低い素材を使って、地元で作る、というのが自分にできるすべてのことだと思う。使わないときは棚にしまっておくなら、僕にとっては機能性と耐久性が最も重要な要素となる。作るものが何であれ害を及ぼすのだから、できるだけ少なく作るのが目標。

「どのボードも自分のボードだと思って作る」とよく言っていますが、最後に自分のために作ったボードについて話してもらえますか?

FC:正統派のチューブ用のボードを何本か作った。とても気に入っている。クラウドブレイクやミクロネシアに対応するような、とても尖った5’10″や7’のステップアップで、ショートボード風のロッカーやコンケーブをもたせている。いい波のためのボード。いまでもでっかい波でショートボードみたいにガンを乗りこなしたいと思っている。ただそのためには時間を見つけなきゃ。

このエッセイはMay Journal 2019に掲載されたものです。

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