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重荷

デイヴ・クイン  /  読み終えるまで12分  /  スノー, アクティビズム

炭鉱の操業は雪に覆われていればきれいに見えるかもしれないが、石炭の粉塵は積もった雪のいたるところに見られ、近隣の車や家屋を汚し、地元に生息する魚を毒し、大気を汚染する。にもかかわらず、テック・リソーシズのフォーディング・リバー炭鉱とグリーンヒルズ炭鉱で採掘される石炭はエネルギーを得るために燃焼されるものではないため、「クリーン」なものと分類される。この写真は、約10キロメートルにわたって広がる炭鉱現場のほんの一部を眺めるリア・エヴァンスとデイヴ・クイン。ブリティッシュ・コロンビア州エルクフォードPhoto: Kari Medig

言葉も出ない。尾根で若いオオツノヒツジの寝床の合間を登高しながら、スキーヤーのリア・エヴァンスと写真家のキャリー・メディグと私は見わたすかぎりの炭鉱に絶句する。たとえ言葉があったとしても、それは決して「クリーン」ではない。私たちがスキーを履いて立っている場所のすぐ東、コンチネンタル・ディバイド(大陸分水嶺)上にあるグリーンヒルズ・ピークからマウント・ピアスの麓のあいだに広がる谷は、約10キロメートルにわたる人工の地獄絵だった。

雪に覆われた眼下のボタ山に交錯するオオツノヒツジとエルクの無数の足跡を見て、私たちの悲痛は一瞬だけやわらぐ。石炭のキャンバスに描かれた白い点と線。小さなエルクの群れも炭鉱との境界付近に横たわっている――貨車やベルトコンベアや数十の巨大なディーゼルモーターの音が坑道の壁に跳ねかえって響きわたるヘビーメタルのコンサートには、まったく興味がないかのように。

ペタン氷河の化石化したサンゴと石灰岩のアーチに入り混じる、冷たい滴を源流とするエルク・リバーは、クキン・アマキス(「カラスの地」)を曲がりくねって流れる。そこは何千年も前からクトゥナハ・ネーションが暮らしてきた伝統的な領土である。川は2つの州立公園の原生地域と、送電線に裂かれた森林やブリティッシュ・コロンビアの林業による皆伐域を抜けながら、源流から80キロメートル近く蛇行する。そしてエルクフォードの町とフォーディング・リバーとの合流点に近づくと、すべてが変わる。

川の流域にあるテック・リソーシズのグリーンヒルズ炭鉱の陰では、ディーゼルの臭いと粉塵に感覚が圧倒される。かつて山があった場所は削られてカラス色の傷痕と化し、巨大なベルトコンベアや塔やトラックや貨車が、いやでも視界に入り込んでくる。

一方で、大気と水の汚染は見えにくい。

重荷

魚がいない川なんて、川と呼べるのだろうか。エルク・リバーは古来からクトゥナハ・ネーションの領土であるクキン・アマキス(「カラスの地」)を流れ、ブリティッシュ・コロンビア州エルクフォードにたどり着く。世界級のフライフィッシングで有名だったエルク・リバーは、現在では不健康なレベルのセレン含有量でも知られている。セレンは近隣の炭鉱の操業に直接結びつくもので、魚の生息数を崩壊状態にまで追い込んだ。Photo: Kari Medig

地元住民は黒い雨、車や家屋の汚れ、そして庭の椅子やテーブルを毎日のように拭かなければならない現状を語る。冬はこの粉塵が雪の上に堆積して縞模様の層を成し、毎年春になると雪解けとともに川や湖、そして地下水に流れ込む。

エルク・リバーの支流であるフォーディング・リバーは、グリーンヒルズ炭鉱とそれに隣接するフォーディング・リバー炭鉱とライン・クリーク炭鉱を流れている。そこでの壊滅的な魚の大量死はセレンに起因し、川や地下水中のその含有量は、魚や人間にとって安全とされる値をたびたび超えている。

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変わり果てた大地。テック・リソーシズのフォーディング・リバー炭鉱で日中の爆破作業により立ち昇る石炭の粉塵。地表から数十メートル下に埋れた炭層に到達する必要があるため、「重荷(北米の鉱業界で山を意味する俗語)」が人工的に除去される。Photo: Kari Medig

エルクフォードは自称「ブリティッシュ・コロンビアの原生地域の都」だ。町が成立したのは1971年、近隣のフォーディング・リバー炭鉱(現在1,400人以上を雇用)で働く炭鉱労働者に住居を提供するためだった。フォーディング・リバーとグリーンヒルズ(もはや両炭鉱を区切る緑地はない)は世界最大級の露天掘り炭鉱で、どちらもブリティッシュ・コロンビア州バンクーバーに拠点をおくグローバル採鉱企業のテック・リソーシズが大部分を所有し、町の誰もが炭鉱と何らかの直接的なつながりをもっている。グリーンヒルズとフォーディング・リバーは合わせて1,650万トン以上の年間石炭生産量を有し、両炭鉱の操業は尾根や谷に、まるで癌のように広がってひとつの巨大で破壊的な坑を形成している。ロッキー山脈のこの地域から掘り出された石炭は、一般的な自転車や自動車の車体、あるいは職場の建造物の鋼鉄の製造にも使われる。ここで生産される石炭はエネルギーを得るために燃焼されるものではないため、業界では「クリーン」な石炭として分類される。

ここで実践されているように、石炭採掘は「重荷(北米の鉱業界で山を意味する俗語)」の除去からはじまり、それから地表から数十メートル下に埋れた炭層に到達できる。この地域で重荷扱いされる山々は、しばしば希少種や絶滅危惧種の生息地となってきた。テック・リソーシズの炭鉱はそのすべてを破壊し、またエルクフォードや近隣の町の住民への脅威も増大させている。

住民が生計を立てる方法そのものが、ここでの暮らしの魅力を奪っているのが現状だ。しかし石炭と縁を切るのは容易な話ではない。エルクフォードも、そしてそのスキー場も、炭鉱があるからこそ存在しているのだ。また多くの住民は仕事に関しては現状維持を望んでいる。したがってエルクフォードの住民は私たちの誰もが直面しなければならない課題に突きあたっているが、それは彼らにとっては少なからずさらに厳しい選択となる。地球の未来のために経済を脱炭素化するとしたら、自分の町全体が石炭事業に従事している場合、どうやって実現したらよいのだろうか。炭素に依存することがみずからの経済的な生命線であるとき、どうやってその習慣から抜け出せというのだろうか。

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地元の積雪に見られる通常の深さの白い帯の上にかかった石炭の粉塵の層は、テック・リソーシズのフォーディング・リバー炭鉱に近い尾根での冬の嵐と風を記録している。この土地一帯でこれほどの量の石炭の粉塵が水質に及ぼす影響は広範には調査されていないものの、雪に含まれている物質は、それが何であろうと、地元の水域に混入することは避けられない。また、表面が黒くなった不自然な雪は太陽光を反射しにくいことから、白い雪よりもずっと早く解けることがわかっており、石炭の粉塵は積雪の健全性にも影響を与える可能性がある。Photo: Kari Medig

「あそこに見えるのが私のオフィス」と24歳の鉱山技師であるアビー・ピーターソンが、ワピティ・スキークラブのパトロール小屋の上の方の階からグリーンヒルズ炭鉱を指差して言う。ピーターソンはワピティでスキーパトロールの代表を務め、スキー教室も運営する。ワピティは1970年代初期にフォーディング・コール社からの18,000ドルの寄付をもとに炭鉱労働者によって作られた、ボランティア運営のスキー場だ。

「いまは発破班にいるけど、最高よ」とピーターソンは言う。ブルーのリップスティックを塗った笑顔とファクションのモノスキーを履いた姿は、下の駐車場に並ぶリフトアップしたピックアップトラックと野球帽をかぶった炭鉱労働者の部隊とつり合わない。「エルクフォードが大好きよ。家賃は安いし、山は最高だし、ダートバイクに飛び乗れば自宅からエルク・レイクス公園まで80キロもつづくトレイルをずっと走れるのよ!」

石炭の粉塵混じりの空気について聞くと、「たしかに毎年春になると家を高圧洗浄している人も見かけるし、しょっちゅう埃を払わなきゃならないけど」とピーターソンは言う。「でもそんなの、最高の場所で最高の仕事をするための小さな代償でしかないわ」

およそ50年前の1973〜74年の冬シーズン、小さなロープトウを設置しようと地元住民はゲレンデを作りはじめた。夏にボランティアたちが汗だくになってTバーリフトと滑降コースを加え、1983年にはロッジも建った。スキークラブは圧雪用に中古の雪上車を購入したが、エンジンが付いていなかったので炭鉱労働者のロッド・フーパーが修理して使えるようにした。

フーパーはフォーディング・リバー炭鉱の重機整備士の仕事に就き、1975年にイギリスから若い家族を連れてエルクフォードに移住した。2006年に定年退職してからは発展をつづけるワピティ・スキークラブに余暇とエネルギーを注ぎ込み、会長を務めた時期もある。

「クラブの運営は皆の協力で成り立っている。以前は自分の番になると圧雪もリフトの操作もゲレンデ管理もやったよ」とフーパーは言う。

膝を痛めてからスキーはしなくなったが、いまでも週末はたいていスキー場に来て、孫たちが山で滑ることに夢中になっているあいだロッジでコーヒーをすすっている。

40人以上の子どもたちが連なって揺れているTバーリフトを眺めながら、笑みを浮かべて言う。「これぞエルクフォード、そしてワピティの醍醐味だ」

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ブリティッシュ・コロンビア州エルクフォードの近くにあるフォーディング・リバー炭鉱で、石炭が満載されるのを待つ貨車。大量の石炭はエルク・バレーからバンクーバーへ鉄道で約1,000キロメートルも移動し、そこからさらに世界中(おもに中国)へと運ばれて製鋼に使われる。Photo: Kari Medig

住民のほとんどは町に何の変化も望んでいない。変化を求める少数派は、懸念を抱くことは内々に話すだけにするか、フォーラムで偽名を使って発言するだけ。そうでなければ炭鉱で働かない人たちだ。

40年近くエルク・バレーで働き暮らしてきた59歳のリーアン・ウォーカーは、水質改善のために闘いつづけてきた。草の根団体であるエルク・リバー流域同盟の創設者であり上級顧問で、多くの住民が依存し、深く愛する川の水を守るため、「業界と環境保護主義者の有毒な関係」の修復に努めてきた。

2010年、ウォーカーは地元地域と鉱業界と政府の協働を目指してエルク・リバー流域同盟を設立し、この10年間を両者の信頼と尊敬を築くために費やしてきた。

「業界も大部分においては状況の改善を望んでいます」と彼女は言う。「私が会うテック・リソーシズの人たちの多くは、収益を上げると同時に環境面での向上を目指すことに熱心に取り組んでいます。それは成功したかと聞かれれば、まだです。そしてたぶん、そうなることはないのかもしれません」

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ワピティ・スキークラブでスキーパトロールとスキー教室の代表を務める、エルクフォードの住民アビー・ピーターソン。Photo: Kari Medig

監視地点のいくつかで有害物質の値がひんぱんに許容レベルを超えるにもかかわらず、異常を是正する厳格な期限が定められる気配はない。テック・リソーシズ独自の報告書は、炭鉱のすぐ下流の水質が基準値を超えることを詳述し、さらに採掘活動に結びつくコバルト、亜硝酸塩、ウランの値が許可指標を超える事実にも言及している。

しかし鉱業界が多大な影響力をもつブリティッシュ・コロンビアでは、執行力のある法律はほぼ皆無で、数値が基準を超えても「法的制限」の強要はない、と採鉱法改正の支持者たちは論じる。

スイスチーズのように穴だらけのカナディアン・ロッキー山脈の石灰岩の基盤では、地下水はまた別の危惧となる。テック・リソーシズは住民の井戸水がブリティッシュ・コロンビア州の水質基準以下になると、ペットボトル入りの飲料水を支給する。そして近年では、スパーウッドの自治体にある井戸水のひとつのセレン値が季節ごとにブリティッシュ・コロンビア州の許容制限を超えることに対して、同社の「クリーン」な石炭による収益から500万ドルを、町の新たな井戸に費やした。

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ロッド・フーパーの息子フィル・フーパーは、スキー場に対する父の熱意を受け継ぎ、現在ワピティ・スキークラブの会長を務める。Photo: Kari Medig

同時に、フォーディング・リバーの魚も消滅しつつある。魚のセレン中毒の兆候は100万分の0.002(0.002ppm)を示すが、カナダ環境・気候変動省(ECCC)は2014年の報告書で、0.03ppmから0.113ppmのレベルを発表した。ウエストスロープ・カットスロートトラウトの卵ではセレン値が魚の有害基準値のほぼ10倍に達し、非常に高い割合で成魚の体に発生する奇形(エラの異常など)はこの毒性に起因している。ECCCの報告を査収した独立専門家は、フォーディング・リバー上流におけるセレン中毒によるトラウトの死は、ゼロに戻すことができなければ生息数の完全崩壊に直面すると締めくくった。

そして2019年、テック・リソーシズはフォーディング・リバーの魚が90パーセント消滅した事実を公表したが、そのとき驚く人は誰もいなかった。

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ブリティッシュ・コロンビア州ファーニーの近くにあるリザード・クリークで、濁度の検査を行うエルク・リバー流域同盟の理事長リーアン・ウォーカー。リザード・クリークは、エルク・リバーの支流の中でほぼ未開発の数少ない川のひとつであるため、比較の基準点として使われる。Photo: Kari Medig

当然ながら、大気質も同様の道をたどっている。テック・リソーシズは7か所の監視地点で収集した大気質のデータを参照するが、吸い込む空気が安全であることを住民に確信させるため、その7か所のほとんどは炭鉱の風上の住宅地内かその付近にある。2019年のある報告書は、ブリティッシュ・コロンビア州の大気質目標において226項目の「超過」があることを指摘し、これに対してテック・リソーシズが原因に挙げたのは夏の森林火災と、冬の地元住民が使用する薪ストーブから発生し得る煤だった。

住民の懸念を緩和するため、テック・リソーシズは大がかりな粉塵管理プログラムを実施している。それには道路に水を撒く何台もの給水車、ボタ山の噴霧器、貯炭山や貨車の積荷のコーティング処理などがあり、さらに住宅の並外れた粉塵を取り除くために同社がプロの清掃者を雇うという報告もある。しかしテック・リソーシズ主催の大気質フォーラムでは、洗車したすぐ翌日に車に積もるほど大量の粉塵にさらされることによる健康への長期的な影響に関して、住民からの質問が絶えない。

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ワピティ・スキークラブのTバーリフトの上で、ボランティアのスキーパトローラーとして働くブレイデン・ソレンセン。Photo: Kari Medig

川の汚染や大気中の有害物質にもかかわらず、エルク・バレーでは新たに提案された3つの露天掘り炭鉱がそれぞれ異なる承認審査段階にあり、それ以外にテック・リソーシズのフォーディング・リバー/グリーンヒルズ炭鉱におけるキャッスル拡張案も存在する。2020年秋、増長しつづける環境汚染に対応できないブリティッシュ・コロンビア州政府に不満を抱くファースト・ネーションズ、環境保護団体、さらにはアメリカ合衆国環境保護庁からの圧力により、連邦政府によるキャッスル拡張案の環境アセスメントが実現した。

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ワピティ・スキークラブを訪れたあと、駐車場へと歩いて戻る老夫婦。Photo: Kari Medig

しかしたとえ連邦政府のアセスメントがキャッスル拡張案を阻止しても、エルクフォードはゆっくりと汚染されている。現在のエルク・バレーの水と空気の危機が放置されたままになれば、スキーヤーである炭鉱労働者たちと彼らが故郷と呼ぶようになった土地は、対立を強いられつづけることになる。

未来の不確かな名も無い尾根で茫然としていた私たちは、最初で最後になるかもしれない滑降をはじめる。ここはテック・リソーシズのキャッスル拡張案の中心地であり、早ければ2023年に工事前の発破がはじまる可能性もある。これが「重荷」として認可されてしまえば、木材となることを免れた樹木(絶滅危惧種のアメリカシロゴヨウを含む)が帯のように並び、若いオオツノヒツジの寝床と足跡が所々に残された南向きの草の斜面に覆われた山塊は、またひとつの砕かれた坑と成り果てるだろう。

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フォーディング・リバー・ロードにかかる石炭のベルトコンベアの下を横断するエルク。Photo: Kari Medig

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