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日本支社30周年に寄せて:私たちの鎌倉・身近な自然を慈しむ幸せ

市川 節子  /  読み終えるまで5分  /  アクティビズム

Photo: フレンズ オブ カマクラ・台峯

古都・鎌倉といえば、多くの方が思い浮かべる「鶴岡八幡宮」。じつは、東京オリンピックが開催された1964年、その後背部にある緑地を宅地開発する計画が持ち上がりました。その緑地の保全活動には多くの市民が参加し、「御谷騒動(おやつそうどう)」と呼ばれるほどでした。これを機に、いまでも鎌倉の自然の風光と豊かな文化財を後世に伝えるために活動している「鎌倉風致保存会」が発足し、開発対象となっていた緑地を買い取り、緑地が守られることになります。これが日本ではじめての「ナショナルトラスト運動」になりました。

しかし、海と山々に囲まれて自然が残りながらも、東京からアクセスがしやすい住宅地としての魅力を備えた鎌倉は、1960年代、御谷以外の丘陵地でも多くの大規模な開発がはじまり、緑地は大幅に減少していきました。そのなかで奇跡的に残り、鎌倉市民がその保全に全力を挙げてきた「三大緑地」が、広町、常盤山、そして、北鎌倉駅の西500メートルに広がる標高90メートルの尾根筋とその西側の倉久保の谷戸から形成される約28ヘクタールのエリア、台峯(だいみね)緑地です。台峯緑地の魅力のひとつはシイやカシの樹林や、クヌギやコナラの明るい樹林がある尾根筋の自然と、斜面を下った谷戸底の池や湿地の自然とが、小規模な範囲で多様に見られるところにあります。そこにはかつて日本のあちこちにあった自然が残されています。

しかし、1970年代に開発計画が発表されたものの手はつけられていなかった台峯緑地にも、危機が迫っていました。台峯緑地に隣接する町内会や、台峯保全を目的としたNPO団体の会員として反対運動、説明会開催や市役所への陳情書の提出などはしていましたが、2001年1月には事業者から開発の届け出がされ、その流れを止めることができずにいました。そこで私たちは、より多くの市民を巻き込むための別働組織「フレンズ オブ カマクラ・台峯」を立ち上げることにしました。

そのような状況にあった私たちは、世界中の自然保護に関心をもち、市民グループにサポートを提供し、鎌倉にオフィスと店舗を構えていたパタゴニア日本支社に保全活動のアドバイスをお願いしていました。そもそも私たちの会の名前も、パタゴニア鎌倉が作成してくれた10以上の団体名候補のリストから、私たちの価値観を表している名前として「フレンズ」を選んで決めたのです。

2002年2月、いまにも雪になりそうな冷たい雨が降る日でした。当時のパタゴニア日本支社長ビル・ウァ―リン氏をはじめ、数人のスタッフが台峯緑地を実際に歩き、その自然の豊かさをたしかめ、その日のうちにパタゴニアはこの運動の支持を決めました。私たちはその素早い意思決定プロセスに仰天しました。それに前後して、当時の環境担当の篠さんを中心に、パタゴニア鎌倉に集う保全活動の知識や知恵を蓄えた方々の力を本格的に借りて、フレンズはたんに何かを「要求する会」から「仲間に考えを伝える会」に進化していきました。

具体的には台峯を知っていただくため、パタゴニアが提供してくれたオーガニックコットンのキャンバスバッグに故Keyさんデザインの「SAVE DAIMINE KAMAKURA」をプリントし、ステッカー 「NO GREEN NO LIFE」は、自然や生き物をテーマとする数多くの著書を創作されている、絵本作家の松岡達英氏のご協力のもとに作成しました。お二人とも、パタゴニアのスタッフが繋いでくれた方です。パタゴニア鎌倉は店頭でキャンバスバッグを販売し、ステッカーで募金を集めてくれました。それは活動資金の大きな助けになりました。その他にも、鎌倉市民だけでなく、多くの方を四季折々の台峯の自然に案内するイベントを共同で定期的に開催し、緑を残したいと思う市民の輪を広げていきました。

そして2005年、フレンズだけでなく、台峯緑地の保全に取り組んできた市民の活動が実り、鎌倉市は地権者の協力のもと台峯緑地を買い取り、自然公園として保全することを決定しました。これはそのときにパタゴニアへ送った感謝状の抜粋です。

「…この間パタゴニアに集う方々のしなやかなボランティア精神を肌で感じました。その精神の持ち主はまた知的好奇心と陽気な遊び心持ち魅力的なため、それに憧れる人々をひきつけ明るい輪を作っているのです。今後も台峯の素晴らしい自然を次世代に残していけるように微力ながら保全活動に参加してまいります。ありがとうございました。」

このメモでお約束したとおり、フレンズは2004年から年数回、パタゴニア鎌倉が企画する歩く会を、2008年からは緑地の手入れの会をはじめ、毎年6回ほどクヌギの苗の植え付け、カナムグラの除去、マダケの除去、外来植物の除去などに力を注いでいます。緑地保全とは緑地を損なう住宅などの開発を止めることだけではありません。さまざまな生き物が豊かに暮らす緑地を、試行錯誤しながら次の世代に残すことだと思います。それはまさにパタゴニア鎌倉とそれに連なる人たちが行っていることです。

最後に。フレンズ の立ち上げ当初から、パタゴニアと同じように私たちの活動に欠かすことができない存在がいます。鎌倉自主探鳥会グループの池さんと久保さんです。お二人は台峯をはじめ、鎌倉の緑とそこに棲む鳥たちをこよなく愛し、いまでも歩く会、手入れの会のガイド役として、台峯緑地の魅力を誰よりも伝えつづけてくれています。2005年に自然公園となった鎌倉の台峯緑地。そこを歩く会、そして手入れの会に、ぜひお越しください。かつてはどこにでも、日本人の生活の近くにあった原風景とも言うべき里山的自然が、ここ鎌倉にあります。

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