パタゴニアのプラスチック梱包:衣類配送の課題に関する調査報告書
パタゴニアでは工場の最終段階で個々の製品をプラスチック袋で梱包します。そしてカタログやウェブサイトから直接購入されるお客様から、プラスチック袋によるごみの量に失望しているとの声が寄せられました。こうしたお客様のご意見をきっかけに、私たちはパタゴニアの製品梱包から出る不要なプラスチックの削減方法を調査することにしました。
編集者記:今回の投稿は、社内のケーススタディであることから、少し改まった文章になっています。私たちの会社の仕組み、そして顧客満足と環境への負荷のバランスの難しい課題について一瞥していただけることと思います。
パタゴニアのサプライチェーンにおいてプラスチックごみをどのように減らすことができるかを評価するため、私たちのサービスセンターではいくつかのテスト、そしてお客様へのアンケートを実施しました。この調査を通じて、衣類が工場やサービスセンターから配送される際にそれらを清潔に保つため、プラスチック袋は欠かせないものであると判断しました。もしプラスチック袋を使用しなければ、衣類は損傷し、それはつまり経済と環境コストの増加に繋がります。それぞれの製品の製造には、エネルギー、水、その他さまざまな資源が使用されます。そして私たちはパタゴニア製品を着ていただきたいと思っています。着用不可能になってしまった製品は、プラスチック袋の製造より、はるかに大きな環境的コストがかかります。
私たちの製品を確実に無傷でお客様の手元に届けながら、流通過程の分野で環境への影響を軽減する可能性を吟味する。そのための私たちの進捗状況をお読みください。
調査の背景
パタゴニアが販売する個々の製品は、工場で完成品となった時点でプラスチック袋に梱包され、私たちのサービスセンターに段ボール箱で配達される。工場から送られてくる段ボール箱は、損傷したり、開いたりした状態で届くことがよくある。これは完成品をゴミや湿気などの被害に晒すことになる。
プラスチック袋は製品が工場内やサービスセンターへの経路、そしてサービスセンターでの保管中や作業中、包装中に汚れたり損傷したりするのを防ぐ。さらに、プラスチック袋があれば卸売店や小売店での保管中も製品が清潔に保たれる。
こうしたサプライチェーンの各段階で製品が保護されることは不可欠である。現在パタゴニアでは工場で使われるプラスチック袋のサイズや種類について特定の条件を課しておらず、使われているプラスチック袋はリサイクル素材を含んでいない。そしてプラスチック袋の機能性にも関わらず、多くのお客様や社員がそれを廃棄物とみなしている。
目的および結果の概要
目的:製品を販売不可能にさせるような損傷を引き起こすことなしに、プラスチック袋の使用を完全除去することが可能かどうかを見極める。
結果:リノの発送システムを通過する際、プラスチック袋に入れられていない製品は損傷してしまった。テストではプラスチック袋なしに発送システムを通過した衣類の30%が、販売可能の線を下回る損傷状態だった。これはリノのサービスセンターでプラスチック袋を使わずに製品を取り扱うことは不可能であることを表している。
目的:プラスチック袋の使用を削減するため、紙製の封筒が有効的な梱包資材であるかどうかを判断する。
私たちが現在使用している梱包用プラスチック袋は、消費者から回収された廃棄物を40%含み、厚さ3.5ミリから2.5ミリへと薄くしたものである。その結果プラスチックの使用量が30%減少。私たちの梱包用プラスチック袋はリサイクル可能だが、スーパーなどに設置されているプラスチックフィルム専用の特定受け口に持っていかなければならない。
結果:リノから出荷される前にテストに使用した2種類の紙製封筒の両方に大きな損傷が認められた。いくつかの製品からは、縫い目の損傷、裂け目、宛名ラベルの剥離が見つかった。
目的:リノのサービスセンターで、製品を損傷することなく、注文品を発送する前にプラスチック袋を取り除くことが可能かどうかを判断する。こうすればパタゴニアがプラスチック袋を保持し、より多くの袋をリサイクルすることができる。
結果:注文品の発送の前にプラスチック袋を取り除くことは可能だが、プラスチック袋から製品を取り出すのには時間がかかる。その作業時間を推定すると、発送する製品ひとつひとつをプラスチック袋から取り出す作業のために、1年で5,555時間の労働が発生することになる。
目的:お客様がプラスチック袋で梱包された製品と、そうでない製品のどちらを好むかを調べるため、顧客アンケートを実施。
結果:私たちの梱包が環境に配慮したものであるとみなしていたのは、わずか22%のお客様。だがプラスチック袋から出して紙製の封筒を利用した場合、顧客満足度は14%増加した。両方のアンケートから見られる一般的な傾向は、1)現在の梱包は99%の衣類が完璧なコンディションで届けられているという点で非常に効果的である。2)お客様は私たちの梱包材をリサイクル、もしくはリユースしようと心掛けている。3)梱包材がリサイクル可能なものなのかどうかが不明である。4)お客様は梱包材をリサイクルしたいと考えている。
目的:製品がプラスチック袋に入れられずにお客様のもとへ発送された場合、リサイクル可能になるプラスチック袋の追加数を計算する。
結果:リノのサービスセンターに残るプラスチックの年間推定量は2,268キロ。プラスチック袋の大きさを小さくすることが可能であれば(次の目的を参照)、そのプラスチックの量も削減できる。
目的:パタゴニアで現在使用されている梱包材に含まれるプラスチックの量をどうすれば削減できるかを調査する。
結果:製品をさらに小さくたたむことにより、それぞれの製品に使用されるプラスチック袋の大きさを小さくすることが可能である。初回の調査ではこの方法により、ひとつの製品につき50%近いプラスチック量の削減が可能であることが判明した。
提案
ご覧のように、将来的にパタゴニアでプラスチックごみの量を削減できる方法がいくつか判明しました。現在以下の提案の実現可能性を検討し、そして新しい代替手段を模索しつづけています。また特有の流通システムに適応した解決策を見出した、さまざまな規模の会社が存在することも分かりました。prAnaなどはその好例です。このような会社からも是非学びたいと考えています。これからの進捗状況についても随時お知らせしていきます。
1. 工場レベルでのプラスチック袋の使用は継続する。リノの選定システムでの調査を通じて、プラスチック袋は発送の過程で起こりうる損傷に対して効果的な保護策であることが判明しました。損傷された着用不可能な製品は、プラスチック袋の製造よりも、はるかに大きい環境コストがかかります。
2. 使用するプラスチック袋のサイズを小さくする。私たちの製品の多くは、製品自体よりもはるかに大きなサイズのプラスチック袋に梱包されています。プラスチック袋のサイズを小さくするため、最終工場での梱包および折りたたみに関するガイドラインの実践を提案します。
3. 紙製の封筒は使用しない。テストに使用した2種類の封筒はサービスセンターを無傷で通過することもままなりませんでした。これでは製品が確実に無傷のままお客様のもとへたどり着くことは不可能であることが予測されます。
4. サービスセンター内で発生するすべてのプラスチック袋のリサイクルを続行する。リノで収集されるプラスチック袋をリサイクルすることは、私たちが出す廃棄物を最小限に抑えることへの鍵です。
5. お客様へ周知活動をする。アンケートの答えはお客様にプラスチック袋のリサイクル方法についての情報を提供するという、思いがけない提案につながりました。
6. 再生プラスチック袋を調達する。再生プラスチック袋を使用することで、私たちが梱包に使用する石油の量を削減することが可能です。再生プラスチック袋を調達するための調査に乗り出しました。
7. 卸売店でのプラスチック袋のリサイクル率を向上させる。卸売店と協力し、プラスチック袋のリサイクルを確保することで、ごみとなるプラスチックの量を大幅に削減できるチャンスがあります。
「いい調査だけど、私のパタゴニアのフリースを保護してくれたプラスチック袋はどうやったらリサイクルできるの?」
プラスチック袋を資源ごみとして収集する市町村にお住まいでない方には、次のような方法があります。
1. リサイクルのためにパタゴニアに返送する: Patagonia Service Center ATTN: Common Threads Recycling Program 8550 White Fir Street Reno, NV 89523-8939
2. お近くのパタゴニア直営店に届ける: 環境への影響を抑えるため、ついでのあるときに届けていただくのが理想的です。
この2つの方法は、パタゴニアのウェアのリサイクル方法と同じです。
3. 多くのスーパーでプラスチック袋を引き取っており、私たちの使うプラスチック袋もスーパーのリサイクルシステムでリサイクル可能です。このリンクを参照し、郵便番号を入力すれば、お近くのプラスチック袋収集場所を調べることができます。
パタゴニア製品責任分析担当のネリー・コーエンと、製品責任マネージャーのエリッサ・ローマンは、企業の責任と環境アセスメントに関する特別なプロジェクトを担当。