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コロンビア川のパワー・シフト

ジム・ノートン  /  読み終えるまで9分  /  フライフィッシング, アクティビズム

アイダホ州ボイシーのはずれにある孵化場では、サーモン川上流で捕獲した絶滅寸前のベニザケの成魚を「おかえりなさい」と歓迎する。Photo: JIM NORTON

2019年夏、アイダホ州ソートゥース山麓サーモン川上流の谷に、絶滅危機に瀕する20数匹のベニザケが帰ってきた。1,450キロメートルも離れた海から、疲れ果て、傷ついた繁殖間近のサーモンたちは、レッドフィッシュ湖下方の小川で網にかかり、トラックで225キロメートル先のボイシーの人里離れた巨大な倉庫に運ばれる。クーラーで麻痺させ、小槌で頭部を一撃し、魚精を絞り、魚卵を取り出し、ジップロックの中で混合する。この漁業生物学者のせわしない手さばきによって、次世代の命はプラスチック水槽と通気装置とPVCパイプが備わる孵化場で始まる。壁に掛かるホワイトボードが、黒マーカーで「ベニザケ、おかえりなさい」と虚構の世界から呼び掛けている。

ふるさと?

27年前、私はスネーク・コロンビア水系上流のリバー・ガイドとして働き始めた。その山域の核心部は、地球上で最もサーモンの漁獲量が多い場所だ。まだ若く、教育や経験の矛盾という重荷を知るよしもなく、原野に生息する野生生物の図解本を熱心に読み聞かせていた。海の王様が山々に囲まれた玉座に帰還する状況はどのような状況であったか、本を読み、話を聞いた。しかし、そのような過去の豊かさは逸話であり、白黒写真の、だれかのおぼろげな記憶であった。

昨今、ガイドという行為は基本的に余暇をサポートするものであるが、この自分の経験が、実はアイダホのサーモンとそれに因んで名付けられた川は、川が魚で溢れていたころの共生関係の貴重な名残であると気付くまでには、しばらくの時間を要したのだった。しかしそれに気がついてからは、自ら関わりをもつようになっていった。流域の生物学的健全性を回復し、アイダホ農村部の資源が基盤となる経済を復興しようと、川の上で、時には川から離れて、主張し、陳情し、呼び掛けた。世間への働きかけは、ある種の自分探しの代償行動だったが、太平洋岸北西部の広域で抱えている矛盾を解決したかったのだ。その矛盾とは、豊富なサーモンに由来する自然的・文化的遺産のイメージがこの地域のアイデンティティであるにもかかわらず、実はその遺産自体が失われているという矛盾である。

私たちの世代はこれまでとは異なるエネルギー・システムを受け継いだ。コロンビア川とその支流の周辺には300カ所以上のダムがあり、おそらく地球上で最も水力発電が発展した水系だ。コロンビア川の米国内の非感潮域は1,198キロメートルで、そのうち自由に流れるのは80キロメートルほどである。主要な支流でダムが建設されていないのは、オレゴン州のジョーン・デイ川とアイダホ州のサーモン川のみである。スネーク・コロンビア水系の本流沿いでは、川がほぼ完全に取水されている。機械処理以外の目的での下流への放水は「漏れ」と呼ばれ、不運な一時的事故であることをうかがわせる。

コロンビア川のパワー・シフト

稚魚採取施設のスチールヘッドとチヌークの稚魚、まもなく艀(はしけ)やトラックに積まれて下流へ運ばれる。Photo: STEVE PETTIT

私たちが受け継いだのは、野生のサーモンやその騒々しい生命の営みではなく、集約化された養殖業の広大なネットワークである。州や連邦政府による170以上の養殖計画によって、年間平均1億5,000万匹のサーモンの稚魚が量産され、コロンビア川とその支流に放流されている。次第に創造性に富んだ高額なサーモンの代用品が川を泳ぎまわるようになったが、それらがもたらしたものは、環境管理された養殖タンク、追跡用デバイスのインプラント術、トラックや艀による海への輸送、サーモンを捕食する野生生物の抑圧・殺戮である。帰ってきた成魚は、孵化場のラボに捕らえられ、低温殺菌された凍った死骸が森に廃棄されるため、小川は栄養分を失い枯渇する。

人間は河川を、そこに住むサーモンを、「代わりのもの」に変えてしまった。

コロンビア川のパワー・シフト

孵化場の理論はあらゆる要因を正確にコントロールすること、サーモンの理論は故郷の水固有の条件に適応する中で多様化していくことだ。ワシントンの孵化場では、不自然な調整トレイの中でサーモンの稚魚が孵化する。Photo: JIM NORTON

コロンビア川のパワー・シフト

機械産業的な方法でサーモンを生産したことが、変化し続ける環境条件に対してサーモンをより脆弱にした。孵化場ではウイルスで全滅した稚魚が袋詰めにされ、捨てられるのを待っていた。Photo:STEVE PETTIT

この方法は傲慢であり非効果的である。継代飼育計画は、滅びゆく集団に生き延びる道を与えたが、機械産業的な緩和策は、コロンビア川のサーモンを「救う」戦略としては、明らかに失策である。この米国史上最も高額な生態系回復プログラムは、これまで決して功を奏したことはなく、すべての独立系の漁業生物学者グループが今後もうまくいくことはないと私たちに語っている。野生のサーモンの数は95%以上減少し、企業に160億ドルを投じても絶滅寸前のサーモンの遡上は1回も復活せず、そして放流魚が野生のサーモンに及ぼす悪影響を列挙する調査研究が増加している。

直線的な大量生産は、結局、再生型繁殖の代用ではない。この誤算が残したものは、大陸棚の飢えるシャチと、大陸分水嶺の苦戦するアイダホの地域社会である。川からサーモンを引き離したことで、どちらも崩壊が確実になった。

自力で保たれている生息数に、極めて複雑な仕組みと多額の資金を投じて、永続的欠乏を作りだす不条理、それが保護のための制度だというからなおさらだ。しかし孵化場を通じた連邦政府の管理計画は、サーモンについて科学が私たちに教えてくれることよりも、都合の良い作り話を反映することで、効果的な回復策や現在の権力構造の本質的課題を回避しようとしている。それは現体制の枠内で危機をギリギリかわそうとしているにすぎない。この緩和策は本来、今すぐ激しい非難を浴びてしかるべきだが、逆にサーモンの頑強なサバイバル力に救われている。

運命の不思議ないたずらで、この茶番の莫大なコストが、コロンビア川流域の水力発電とその販売を担う機関に多大な経済的影響を及ぼす可能性がある。西洋のエネルギー市場が激変する中で、サーモンを陥れてきた計画自体が、結局はサーモンを部分的に解放するカギになりそうである。

米国エネルギー省ボンネビル電力局(BPA)は、31基の連邦ダムと1基の非連邦系原子力発電所の電力を販売しており、これらを併せて連邦コロンビア川電力システム(FCRPS)と呼ぶ。BPAは1930年代中頃の農村電化のニューディール政策の一環で、太平洋岸北西部の約3分の1の農民を電力網につないだ。ダムは米国の陸軍工兵隊と内務省開拓局が提携して運営し、BPAは電気や関連サービスを140の電力事業者、地方自治体、その他の顧客に長期契約で販売することで自らの経費を賄わなければならない。

80年以上の間に、BPAは太平洋岸北西部のエネルギーと生態系に影響を及ぼすようになり、この地域で発電される電力の約25%を供給し、高圧線の75%を運用し、この地方の魚や野生生物のプログラムを指揮し、その無秩序に拡大する緩和策の経済規模は年間5億ドルを超える。リポーターのジェレミー P. ジェイコブスは、Greenwireに発表した最近の連載で「BPAは政府機関ではない。あれは帝国だ」と鋭く指摘している。

BPAの設立以来、関係者は具体的な料率設定方針や種復活計画という課題を与えられてきた。BPAはこの地域でかなりの支持を獲得しており、実際、ほとんど説明責任を果たすことはなく、つまりは政府の官僚主義と独占企業の奇怪な申し子である。漁業の復活、クリーンで強靭な電力網、経済的機会の分散化という豊かな未来を実現するボンネビルの役割が、持続的に見直されたことはかつて一度もない。
しかしそうした対話が今始まっている。

FCRPSの発電量は、BPA顧客が20年契約で購入を約束している電力量の約2倍である。従来、BPAはこの余剰電力を、卸売市場(特にカリフォルニア州)で販売することで多額の収益を上げていた。しかし最近では、安価な天然ガスと急速に普及する再生可能エネルギーの両方に押され、コロンビア川の発電力の全般的需要とその収益性の両方が落ち込んでいる。BPAのエリオット・メインザー局長に言わせれば「大不況」だ。

結果として、2008~2017年にBPAは電力事業部の約9億ドルの準備金を使い果たし、料金を30%引き上げたが、負債総額は約160億ドルまで膨んだ。BPAの顧客数社は契約期間が満了したら電力供給源を多様化するだろうとし、「解約の殺到」を警告していた。

こうした不確実性の中で、メインザー局長は、遠隔地に新市場を求めるなど、戦略的な5カ年計画を繰り返し推進し、「競合ポジション」を強化しようとしている。BPAは企業のように振る舞える幅広い権限を持っているが、政府機関である。太平洋岸北西部の多くの住民は、BPAが暗黙的にも明示的にも、まずこの地方に対して義務を負っており、この一帯が犠牲になるはずはないと考え、したがって旧式の集中型発電施設の電力販売に依存する、この予算配分のない政府機関が、メインザー局長の言うように「選択すべき電力事業者であり続ける」ために戦えると信じている。私たちは、再生エネルギーを敵にし、孵化場という虚構を利用することで、生態系を破壊する巨額のダムを守るのではなく、分散型エネルギーの未来を積極的に取り入れることで、河川の再連結と漁業復活のチャンスを生み出すことができるはずだ。

そのためには、十分生かされていない再生可能なパワーの「源」を活用しなければならない。それは私たち自身である。

この4月に、アイダホ州ボイジーのマイク・シンプソン下院議員は、力強いスピーチで、北西部電力法の改正を呼び掛けた。この法律はBPA、連邦コロンビア川電力システム、魚類・野生生物プログラム間の関係を統制するために40年前に発布された。また最近ではオレゴン州のケイト・ブラウン知事が、スネーク川下流のダム撤去の前提条件として、エネルギー再編を支持する投書を行っている。この地方がこうした重要な対話に参加することは、緊急の課題である。コロンビア川での1世紀にわたる攻防を経て、サーモンと電力という2つの象徴的なエネルギー・システムの運命は、今では絡み合っている。その生産形態は、集中型から分散型へ、官僚主義から創造性へ、均質から多様性へ、没地域性から地域別へ移行している。こうした変化が米国史上最大の河川復興を促進し、クリーンで近代的な電力網を保証し、そして、よりよい未来の中で、失われた遺産を取り戻すことになろう。

アイダホ州の魚を守ろう

ブラッド・リトル州知事とマイク・シンプソン下院議員に、アイダホ州をサーモン達にとって健やかに泳げる場所に戻すことの必要性を伝えましょう。

行動する

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