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レッド・デザートを走る

ケイティー・クリングスポーン  /  2020年11月24日  /  読み終えるまで12分  /  トレイルランニング

ハニカムビュート原生地調査区域南部の断崖から撮影した日没。写真:スコット・コープランド

レッド・デザートは風に削られた荒涼とした美しい場所で、ワイオミング州南西部の脇腹あたりに広がる国有地・州有地・私有地の広大なパッチワークだ。境界線は話す相手によって移動するが、概算では約600万エーカー(約243万ヘクタール)の広さがあり、ほとんどが土地管理局(BLM)の管轄地である。手つかずの野生と人間の散発的開発が併存していることが特徴的で、資源開発にリースされ、人間に利用されてきた長い歴史の傷跡が残る大地に、連邦政府が指定した十数カ所の原生地調査区域が保存島のように点在している。ある人々はこの地をアメリカ大陸最大のフェンスのない連続した地域と呼ぶ。情報や詳細な地形図が少なく、でこぼこしたクモの巣状の未舗装路のため、この場所へのアクセスは困難だ。けれどレッド・デザートに足を踏み入れた人の心には、たいてい永久的な愛が育まれる。

「ワイオミング州と言ってまず頭に浮かぶ、あの荒々しさや野生がそこには凝縮されている。」この地域でホース・トレッキングを運営する国立アウトドアリーダーシップ・スクールの環境管理コーディネーターのジョナサン・ウィリアムは言った。人工的な痕跡が十分にある。未舗装路が低木地を横断し、セージの繁茂地に石油基地が点在する。土地管理局は数百ないし数千エーカーもの土地をエネルギー開発に貸与し、南部は州間高速道路80号線によって隔てられている。それでも束縛を免れた美や景観もある。荒れ地や岩柱がゴツゴツと続くアドビタウン、東ショショーニ族がかつて使用したバッファロージャンプ(バッファローを狩るために追い詰めて突き落とす断崖)のあるスチームボート山、移住者が鉄道で平原を横切る際に眺めたという平坦な山頂の双耳峰オレゴンビュートなどである。レジャー客はホーストレッキング、狩猟、ハイキング、キャンプを楽しみ、この土地に点在する美しい風景の中でその歴史を知る。ところどころ赤いのは、鉄分を含んだ土の酸化作用によるものだ。そして砂漠と表現できる一帯もある。だがレッド砂漠は一言では定義できない。そこはアスペンの木立に縁どられたゴツゴツした露頭が、別世界のような荒れ地に変わる場所だ。孤立した火山の残片が入り組んだ砂丘に大きく噴火口を開け、希少なデザートエルクの群れが山ヨモギの大草原に吠え声を響かせる。

2019年9月、雲が頭上に重く垂れ込め、みぞれ混じりの雨が降る曇りの日、サウスパスシティのゴーストタウンに200人以上の人々が集まっていた。ランダーや花こう岩の尖峰が連なるウィンドリバー山脈から約1時間南下したところにあり、かつて鉱業の中心地として栄え、20以上の酒場が集まる盛り場だったこの街は、レッド・デザートの北境界上の標高約2,300メートルのアスペン木立の中に位置している。その日、それらの木々は金色に輝いていた。頑健なランナーたちと、ワイオミング州の小規模ながら一筋縄ではいかない自然保護団体の公有地支持者らが、今年の第6回「ラン・ザ・レッド」レースのためにサウスパスに集結した。このイベントは2014年、「原生地域法」制定50周年を記念して企画され、遠く人里離れたワイオミング州の砂漠のアクセスを促進し、称賛を煽り、ひいては支持者を募ることを目的とする。そしてそのためにはできるかぎり多くの味方が必要だと支持者は言う。「ラン・ザ・レッドは実際にそうした主旨で誕生したの。人々がこの場所を体験し、そして『野生は体験すべきもの』と実感するような活動や展示をどうしたら企画できるだろうってね。」長いこと原生地保護活動の主催者を務め、イベント企画を得意とするシャリース・ハリソンは言った。「ランニングはそうしたアクティビティの1つよ。」

レッド・デザートを走る

北にハニカムビュート原生地調査区域、コンチネンタルピーク、南ウィンドリバー山脈を望む。前景に広がるセージの大平原には野生の馬、エルク、プロングホーンが生息していることが多い。写真:スコット・コープランド

しかしワイオミングはエネルギーの州である。その地下には古代の海底が残した潤沢な化石燃料が眠っている米国の主要なエネルギー産出地域だ。その堅調な石炭・石油・ガス生産量は、9.11以降ブッシュ政権がエネルギー自給策を推進したことから、COVID-19の前まではずっと右肩上がりだった。州内で消費される15倍以上のエネルギーを産出しており、差し引きすると米国最大のエネルギーサプライヤーになる。次なるドナルド・トランプが率いるホワイトハウスは、エネルギー支配を推進しており、多くの市民がレッド砂漠の運命に関わる改定を懸念している。そこでは開発業者によって既に数千もの油井・ガス井が掘られているからだ。レッド・デザートを巡る自然保護闘争はこれが初めてではない。100年以上前の1898年、ランダー出身のハンターが、この地域を冬季競技会の保護区域に指定させようとキャンペーンを立ち上げたが成功しなかった。1935年には当時のレスリー・ミラー知事が国立公園を作ろうと企てたが、やはり失敗。その後も1960年代にワイオミング州アウトドア協議会の創設者、トム・ベルが保護を試みている。保護活動には失敗だけでなく成功もあった。1990年代、1年間にわたる整理、調査、意見募集を経て、重視すべき12の大まかな区域が原生地調査区域に指定され、これらの区域については、自然保護指定区域とほぼ同様に、その野生の質を管理し、道路建設やエネルギー開発のような行為から保護することにした。それらのうち10区域が、北レッド・デザートとして知られる一帯に該当し、州内ではここに最も集中していると、ウィルダネス・ソサエティー(公有地保護団体)でワイオミング州公有地・エネルギーを担当するジュリア・スタブルは言う。原生地調査区の設立・公布は議会制定法によってのみ実施できるため、その点ではやや安心できる。しかし時おり、その運命を危うくするような提案がなされる。例えば郡政委員がこれらを再分類して一部をさまざまな目的で管理しようと企てたり、ワイオミング州共和党リズ・チェニー下院議員が、多くの指定を解除する法案を提出したりした。こうした企ては失敗したが、それでもハリソンは「将来的に原野研究区は条例にますます脅かされることになる」と言った。

保護活動におけるもう1つの成功は、スタブルによると、土地管理局の管理下でジャックモローヒルズをはじめとするいくつかの重要な区域がエネルギー開発に不適合と見なされ、行政による保護やその他の規制が適用されたことだ。「結果としてこの地域(北レッド砂漠一帯)には多くの保護が適用されているわ。」スタブルは言った。彼女によると、リースに対するこうした厳しい規制に天然ガス価格の暴落が合わされば、この地域はそっとしておいてもらえる。「ところが」である。土地管理局は現在、ロックスプリングス資源管理計画を改訂しているところなのだ。それはレッド砂漠内の350万エーカー(約142万ヘクタール)の土地を管理する指針となる膨大な技術文書だ。トランプ政権が掲げる「エネルギー支配」の課題は、国内エネルギー生産の拡大を急がせており、多くの人々はこの計画によって、現在封鎖されている地域でリースが再開され、そして制限されている地域ではリースが増加するのではないかと懸念している。

「こうした保護の一部をかなり露骨なやり方で白紙撤回することがあり得るから、僕らは心配なんです。」ワイオミング州アウトドア協議会の擁護者、ジョン・バローは言った。スタブルによると、原生地調査区では保護が継続されそうだが、このように野生が島のように点在する地域ではトラブルは宿命だという。「リスクがあるのはこの景観の連続性。全部の原生地調査区が変わることはないとしても、その間を結ぶ区域はすべて変わるでしょうね。」レッド・デザート保護の擁護者らは、ここがあまり知られていない、アクセスしにくい場所であることが、エネルギー開発にゆっくり侵されているのに、自然保護団体に見過ごされてしまう一因であろうと言う。「この土地の問題は、言わば1つの致命傷ではなく無数の擦り傷なんです」ワイオミング州アウトドア協議会の擁護者、ジョン・バローは言った。「それは長年かけて累積したものだから、ある意味で擁護するにも手強い問題です。」

レッド・デザートを走る

4月中旬のレッド砂漠は寒く、新緑にはまだ早い。写真:スコット・コープランド

こうした認知度の決定的な低さに触発され、草の根保護活動グループはラン・ザ・レッドを立ち上げた。レッド・デザートのむき出した岩肌やセージの繁茂地を走り抜けるウルトラマラソン、フルマラソン、ハーフマラソンにランナーを送り出すこのイベントは、レッド・デザートを人々に紹介し、注意を喚起し、ひいてはこの砂漠を保護するためだけに開催される。

土壇場でルートを変更しなければならない悪天候にもかかわらず、主催者は今のところ最高のレースだと考えていた。ウルトラマラソンの走者は約90キロにわたり冷たい雨に耐え、その他のランナーはマラソンやハーフマラソンの距離を選んだ。イベントの最後には群衆が集まり、トーク、音楽、応援でこの景観を称えた。参加者の中には自身の意見をポストカードに走り書きし、ワイオミング州マーク・ゴードン州知事に送る者もいた。「今年はランナーに支援活動への参加を促すことが何より重要だった。もう単なるレースではなく、まさに自由な空間を求めるためのレースになったよ。」レースの主催者であり、ウルトラランナーのゲイブ・ジョエスは言った。プロのウルトラランナーであるクレア・ギャラガーもコロラド州から車で駆け付け、レースに参加した。レッド砂漠のことはあまり知らなかったが1マイル1マイルその土地を知るために走り抜けるのは最高だと言った。「ずっと心に残るほど、レッド砂漠との本当の一体感を感じられました。とてつもない価値を感じさせる、まさに秘宝のような未知の国有地です」とギャラガーは言った。保護活動家、ミュージシャン、ランナー、家族、政治家、この土地に縁のあるネイティブアメリカンなど、多種多様な群衆も強みになるとギャラガーは言った。

東ショショーニ族の一員で、国立野生生物連盟の部族パートナーシッププログラムのために活動するジェイソン・バルデスも講演者の1人だった。バルデスは子供時代のほとんどを、地質マニアで生物学者だった父親と一緒にレッド・デザートの探検に費やした。馬に乗り、キャンプをし、先祖が見た景色を探検した。彼の指摘によると、1863年の最初のブリッジャー砦条約では、白人移住者の安全な通行を確保しようとする米国の企ての一環として、ショショーニ族インディアンに4,000万エーカー(約162万ヘクタール)を超える土地を与えることが約束され、レッド・デザートもその中に含まれていた。しかし条約が改定された際にショショーニ族はレッド砂漠を含むその土地の大半を失った。彼らにとって今もそこはとても大切な場所であり、石器の断片、キャンプ跡、バッファロージャンプは、東ショショーニ族が何世紀にもわたって使用していたことを伝えている。「レッド・デザートの保護に参加したいいくつかの理由があります。私にとってそれは、部族がこの土地に持つ歴史的・文化的なつながりに関わることなのです。」バルデスは言った。

レッド・デザートは万人向きではない。風が唸り、太陽が照り付け、くすんだこげ茶とベージュの大地が広がる。「ただ広大で空虚で多様」とジョエスは言った。「だからちょっと辛口に評価され、なかなか好きになってもらえない場所なんだ。」しかし勇敢にもあのでこぼこ道に耐え、ペトログリフの解読に挑戦したり、アドビタウンの岩柱と断崖の荒野に踏み入った経験のある人々にとって、レッド・デザートはしばしば、愛すべき、戦うべき価値のある場所になる。結局のところ、保護活動は、そこに何があるかを知ることから始まることがよくある。「全くもってワイオミングらしい、まさにワイオミングを強調するような風景」とバローは言った。「ほとんど開拓されていない荒涼とした広大な風景や透き通った美しい夜空を人々は話題にするでしょうね。顔に感じる風、高く伸びるセージ。そこにこの景観のある種のパワーがあります。」「ここは500年前と変わらない姿をしているわ。そう言える場所がこの世界にいったい幾つあるかしら。」ハリソンは言った。人間の行為の痕跡があちこちに散見されるが、ハリソンが言うには、彼女や他の擁護者は、レッド・デザートにポケットのように、でも確かに残存する強烈な美と純粋な野性を手付かずのまま維持したいという。

ラン・ザ・レッドは、ランニングサーキット上での有名イベントになることを意図していない。その目的はこの景観を人々に少しずつ、風の便りで知ってもらい、レッド・デザートには地下資源をはるかに超える価値があることを証明し、そして目下危機に瀕しているものに光を当てることだ。「果たしてビッグな競技会になるかは分からないし、それを目指しているわけでもないしね。全体的目標はこの土地を称えることなんだ」とジョエスは言った。

2020年のラン・ザ・レッドは中止になりましたが、このレースの詳細情報や2021年の予定についてはWyoming Wilderness Association(ワイオミング州原野協会)ウェブサイト上のレースのページでご覧になれます。

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