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おがくずは僕のきらめき

ジェフ・マッケルロイ  /  読み終えるまで8分  /  ワークウェア, コミュニティ

「ブラインド・ウッズマン」(盲目の木こり)ことジョン・ファーニスはワシントン州ワシューガル市にある仕事場のどこに何が置いてあるかを正確に知っている。またこんな風に書かれたTシャツも所有。「はっきりしゃべってくれ。目が見えないんだから」Photo: Anni Furniss

編集者注:この投稿では不安と自殺について論じています。

ワシントン州ワシューガルにある質素な仕事場で、視覚障害のある職人が地元で産出された丸太を手にし、それをマイター鋸でブランク材に作り上げる。手で回してみて、その形と重さを感じ取る。寸法を測り、印を付けては、また測り、印を付ける。スイッチを入れると、電気がブンブンと音を出して旋盤が鳴り響き、それが朝の静寂を破る。作品の上に注意深くかがみ込み、このブランク材をリズミカルに回転させる。多くの偉大な美術家と同じように、彼もすでに完成した作品を頭のなかに描いている。ただ多くの偉大な美術家とは異なり、彼の作品は永遠に彼の心のなかに留まる。ジョン・ファーニスにとって、満足感が得られるのは作業自体から、そして彼の名作が他の人たちに鑑賞され、大切にされることを知ることからだ。

迷宮への転落

いまとなってはまるで別人の人生のようだが、ジョンは深刻な不安を抱えたティーンエイジャーだった。「どんな集まりにも受け入れられてもらえないと感じていました」と彼は回想する。孤立は彼の内部で狂暴な感情となって現れ、それはついに彼自身に向けられた。16歳のとき、彼は頭に銃を突き当て、引き金を引いた。ほぼ7時間後、医師は彼が一命をとりとめながらも、失明したことを告げた。それ以来毎年、彼はこの「人生の日」を祝う。闇が光明を示した日。彼はこの4月、21回目の人生の日を祝った。

しかし光明がすべて一度に輝いたわけではなかった。ジョンはこの新たな失明というものに絶望するなかで、麻薬に手を出した。彼は友人のブルーフォード・「バッド」・ドットソンに感謝する。バッドはこの間、ジョンに援助の手を差し伸べてくれたのだ。「彼は僕より40歳ほど年上でした」とジョンは語る。「20代前半、麻薬にのめり込んでいたとき、バッドが与えてくれた麻薬から逃れる場所を、いつも頼りにしていました。いつも温かいスープやシチューを作ってくれて、僕らは一緒に古い映画を見るのが大好きでした。僕が最も必要としていたときに、彼は助けてくれたのです」

おがくずは僕のきらめき

過去を振りかえるとき、ジョンは助けてくれた友人や指導者への感謝の気持ちでいっぱいだ。近所に住むラルフ・クレイグは地元産のカエデ、クロウメモドキ、イチイ材をもってきてくれる。Photo: Anni Furniss

そのあとユタ州の職業リハビリテーション学校で長い年月を過ごし、退屈な点字やその他の技能を学んだ。木工を教えていた視覚障害者の講師クリス・ハサウェイは、こと細やかにジョンの面倒を見て、道具の使い方やさまざまな木材を手触りで判別する方法を教えてくれた。ジョンは目が見えていたころ木工に手を出したことがあったが、それは新たな意味をもつものとなった。彼はこのライフワークとなる有形の挑戦にすべてを注いだ。しかし木工職人として生計を立てるまでの道のりには、まだいくつかの驚きが待ち構えていた。

おがくずは僕のきらめき

ジョンはベルトサンダー(愛称「カーネル・サンダース」)を使用して板材を整え、接着してブランク材を作る。Photo: Anni Furniss

木目に沿って

ハサウェイはジョンに、ワシントン州バンクーバーにある視覚障害者のためのエミール・フリーズ・ピアノ・テクノロジー・スクールで、ピアノの再生について学ぶ機会があることを教えてくれた。29歳のジョンはユタ州を去り、太平洋岸北西部に向かった。2年後には同校を卒業し、友人とともにピアノ再生の仕事をはじめた。彼はこの新しい仕事によろこんで取り組んだものの、おがくずの匂い、そしてカエデ材やクログルミ材が回転する旋盤の振動への渇望は消えなかった。

ピアノ・テクノロジー・スクールに通っているとき、ジョンはアンニ・ベッカーという名の女性と出会った。優れた画家のアンニは、同校の募金プロジェクトの一環としてピアノに絵を描いていた。ジョンは絵具がまだ乾いていないことを知らずに彼女に近づき、ピアノに手を置いてしまった。はじめてのデートで、2人はジョンが担当するコミュニティ・ガーデンの区画で、月明かりの下、一緒にエンドウ豆を摘んだ。ジョンが個性と笑窪を見せると、彼女は「自然を愛し、土泥を崇拝する私の心よ、落ち着いて」と自分に言い聞かせていたのを憶えているという。ジョンは彼女がどんな顔なのか知るため、触れてもいいかと尋ねた。それは彼女が聞いた最高の口説き文句だった。「ブラインド・デート」と名付けたそのときから3年後、2人は月明かりの下、まさにそのエンドウ豆畑で結婚した。

ジョンの天職の木工業に戻りたいという願望を聞いたとき、アンニは彼のために最初の旋盤を買った。ジョンは木製のボウル、皿、乳鉢と乳棒、トレイの制作に専念するため、ピアノ再生の仕事を辞め、これらをオンラインや地元のクラフト・フェア、小売店などで販売している。アンニは画家としてのキャリアをつづけながら、2人のビジネス「ファーニス・スタジオ」の運営をソーシャルメディアとテクノロジー面で支える。さらに書類の整理、商取引の手伝い、木材の色別整理なども彼女が担当する。「妻の愛と支援がなければ、いま自分がやっていることはできませんでした」とジョンは言う。「僕たちの関係を通して、自分がこれまでの人生で最も大きく成長したと感じています」

おがくずは僕のきらめき

「どんなものに関しても『完全』とは、加えるべきものがなくなったときにではなく、取り去るものがなくなったときに達成されるのである」と言ったのはアントワーヌ・ドゥ・サンテグジュペリ。インドカリンとイエローハートの木材で作られたボウル。Photo: Anni Furniss

おがくずは僕のきらめき

このクルミ材とイエローハート材のボウルを制作するため、ジョンは4×12インチのブロックを3枚作り、それらを接着してブランク材を作成。接着剤を一晩乾燥させたあと、旋盤でこの形に削り出した。Photo: Anni Furniss

視覚なしでの木工業:その実現方法

「聴覚はとくに鋭くなりました」とジョンは語る。「一般的な活動の90%は手触りではなく、音に頼っています。ところが木工に携わっているときは、それが逆になります。道具の音は非常に大切ですが、僕はおもに触感に依存します。旋盤で木材を回転させているとき、手で触れて感じています。お薦めできる行為ではありませんが」 仕事場での彼の最良の道具は、ロートマチック測定ツールだ。一般的な巻尺の目盛に対応する隆起した溝を備えたねじ式の金属片に、鋲が付いたものだ。鋲を溝にそって回すと、カチッという音がして、測定値を感じる取ることができる。

視覚障害のある木工労働者への彼のアドバイスは、「みんな、指に気を付けて!」の一言。どんな仕事場でも安全第一だが、ジョンは自分の指を失わないよう、実際に削するときまで電動工具のプラグを抜いておく、作業中はラジオを消すなど、さらにいくつかの手順を盛り込んでいる。

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ジョンのノミには、「ビッグ・ジェイク」や「カーバー・ファミリー」などの愛称が付けられている。この2本は「バトル・アックス」(戦斧)と呼ばれるもの。Photo: Anni Furniss

ジョンの仕事には環境保護のための要因が大きく取り入れられている。彼が使う外国産の硬材のほとんどは倫理的な方法で調達されており、またワシューガル地域の地元から収穫された木材を多く利用する。友人や近所の人は、倒れた木から木材を手に入れたら彼に知らせ、それをたびたび仕事場にもってきてくれる。「使用している防腐剤と仕上げ剤はすべて食品に対して安全で、アレルゲンがありません」と彼は言う。「蜜蝋、カルナバ蝋、オレンジ、レモン、鉱物油をすべて混合し、使用する方法が気に入っています」

ジョンの指先は作品制作でタコができて硬くなってしまったので、もはや点字を感じることができない。ただし米国議会図書館の会員権を利用して、オーディオブックをダウンロードして聴くことができる。ジョンとアンニの楽しみは、ジェンガで遊ぶこと、お気に入りの自然遊歩道を犬と一緒に散歩すること、ビールの自家醸造、そしてパンを焼くことなどだ。彼の目標は、旋盤にとどまらず、宝石箱やテーブルのようなものへと幅を広げ、より多くの小売店で作品を紹介してもらうこと。視覚障害者への彼のメッセージは、「絶対にあきらめないで。自分がやりたいことをする方法は必ず見つけることができるはずです。周りの人たちに自分の目が不自由であることを伝えれば、他の人とそう変わらないことが分かってもらえます。目の見える人たちとあなたの観点を分かち合うことによって、認識を広めることができます」

ジョンは自分の話を共有することに情熱を傾けており、定期的に学校や教会や美術家の集まりなどで、自殺防止の講演を行っている。彼はこう語る。「昔のことを振りかえるとき、若かったころの自分自身に対して、『そんなにひどくないよ。また明日がやって来る。ものごとは常に変わっていくのだから』と伝えたいのです。また、助けを求めることも。それは友人や専門家など、誰でも構いません。助けが必要だと認めてもいいのです」

悩んだり、自殺を考えたりしていませんか。あなたと同じ人は大勢います。そんな人たちはよろこんで手を差し伸べてくれます。まずはここからはじめてください。

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