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海上生活に学ぶ自己隔離

リズ・クラーク  /  2020年8月5日  /  読み終えるまで7分  /  サーフィン

スウェル号に揺られて、キャプテン・リズとトロピキャトのふたりだけの午後。Photo : Liz Clark

大人になってからほとんどというもの、自分のヨット、スウェル号で敢えて隔離された生活を送っている。最初こそ、孤独や未知なるものが、欠乏や寂しさへの恐怖を膨らませたが、そこを乗り越えてしまえば、こうした恐怖には何の根拠もないことが分かり、よりスローで、より隔絶された生活が、私と環境の両方にとって無数のメリットをはらんでいることを知った。まもなくすると、人生で大切なものがはっきりしてきた。私の家族、私の健康、食べ物、隠れ家。こうして人生は楽しいくらいシンプルになった。

店に駆け込めないから、手元にあるもので工夫し、クリエイティブになるしかない。ゴミになるはずの物を有効的にリサイクルし、完璧な用途を見つけることに大きな満足感を得た。例えば、「トロピキャット」ことアメリアのトイレは、ボートヤードに捨てられていたモーターオイルのプラスチック容器だ。古いドラム・ブレーキを利用して、ゴムボート用にサンゴを傷つけないアンカーを作り、捨てられていた漁網は1本のフロート・ロープになった。古い帆布は日除けになったし、破れたウェットスーツはロープが擦れないよう保護布にした。レジ袋は洗って何回も再利用するし、壊れた備品は修繕し、そして船にある物を利用して自前でアップグレードする。再利用は金銭的節約になるだけでなく、心を刺激し、環境負荷を軽くする。

ふつうの物への愛着が増した。特に食べ物だ。いつも近くに店があるわけではないから、食べ物を廃棄するなど論外。食事ではまず、何が最初に腐るかを考え、備蓄を最大限に生かすことが重要になる。あまり貯め込むと、食べきれないうちに鮮度が落ちるか、カビることをすぐに学んだ。供給過剰よりも、より少なく、より有効に利用するのがよい。だから、魚は余すところなく使うし、ブロッコリーの茎もありがたくいただく。腐ったバナナはバナナ・ブレッドになり、堅いポテトクランチはオーブンでちょっと再加熱すればチップスに生まれ変わった。もちろんデッキに不時着したトビウオの死も無駄にはしなかった。

それでも、クルーが同乗している時は、よくダーク・チョコバーを下着の引き出しにこっそり隠したもので、さりとて自分だけ食べるには良心の呵責があり、結局はダメにしてしまう。食品や日用品の買いだめは、一時的な安心感をもたらすかもしれない。でもそれは、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を乗り越えるために持つべき連帯感や思いやりの精神に反している。しかもその多くは無駄になる可能性が高い。食品ロスは気候変動の原因である世界的な温室効果ガス排出量の8パーセントを占め、そして米国人の9人に1人は食べ物を満足に買うことができない。買いすぎてしまった時は、地元のフードバンクに献品するのもよい選択肢だ。みんなで一緒にこの困難を乗り越えよう。

海上生活に学ぶ自己隔離

「必要なものだけ買って、フル活用する」リジー船長には持論がある。Photo : Tahui Tufaimea

より少ないものをより有効に使う術が身に付くだけでなく、ひとりの時間には多くの個人的なメリットがある。孤独によって、私はこれまでになく自分自身を知った。自分の気分や体調に気付き、それに応じて日常を組み立てるようになった。自己認識が高まり、邪魔が入らない分、直感は冴えてくる。かくして、疑いだしたら何かせずにはいられないという私のキャラクターが際立ってきた。毎日、スウェル号の航海日誌をつけていたが、これもセルフチェックに役立った。改善できる点、将来の目標や夢をリストアップする。こうしてゆっくりと、けれど確実に、座って瞑想し、物理的世界を超えた次元につながることが心地よくなった。外に出られない時は、内へ向かえばよい。

孤独に惹かれたり、インスピレーションが弱っている時、自然の中にいるといつも気力がわいてきた。新鮮な空気でリフレッシュし、渦巻く雲に鼓舞され、海面になだめられ、太陽光線に元気をもらい、果てしない地平線に希望を取り戻す。野生の中での孤独は、自分を取り巻く大いなる神秘との精神的なつながりを開いてくれた。すべてが一体化するようで、何かすばらしいものの一部になった気がした。できるなら、近所の山道の探検に出かけたり、人里離れた夜空の下で一晩過ごしたり、長い海岸線を散歩してはどうだろうか。裏庭に腰掛けているだけでも気分がよいものだ。ただそこにいて、細部に溶け込み、自然の不思議な修復力に身を任せよう。

長いこと狭い場所で過ごして、自分の空間を手入れする大切さも分かった。スウェル号をいつも清潔にし、整理整頓し、正常な機能を維持することは、船が航海に耐えるためにも、私が正気を保つためにも必要だった。家を片付け、ギーギーいうヒンジに油をさし、クローゼットを整理してリサイクル品をまとめ、サーフボードの凹みを修理する。いずれも自分をコントロールできていると実感できる。もちろん、自分自身の手入れも忘れてはならない。シャツを替えたのはいつか、歯磨きをしたのはいつか。経験上、孤独は衛生観念を低下させやすい。白状すると、ヘアブラシはスウェル号で私が最も使わない物の1つだ。でもその時になれば、いくら私だって…「その時」になればね。泳げないし、サーフィンもできない時は、運動不足にもなりやすい。狭くて揺れるヨットではエクササイズが容易でない。1日1回でも動ける機会があると常に気分がよかった。何かをひらめいて、絵を描いたり、新しいレシピに挑戦したり、クリエイティブなことをするのも有効だった。

海上生活に学ぶ自己隔離

スマトラ島北部の碧海の波壁でハイラインを走るリズ・クラーク。Photo : Tim Davis

孤独が長引くと時に試練になるが、クルーがいて絶えず一緒に隔離された状態が続くのも、それなりに大変だ。人との接触は増えるが、誤解が生じる機会も多々ある。愛情をもって率直になり、頻繁に互いを確認し合えば、良い雰囲気が育ち、不安が解消し、些細な誤解が感情の爆発につながるのを避けられることを即座に学んだ。そして毎日何か「ひとりの時間」を持つ。例えば、ちょっと本を読んだり、イヤホンで音楽を聴いたりするだけいい。それだけでも充電できて、再びクルーに向き合う心理的な余裕ができた。

そして、隔絶されている時にこそ、いっそう豊かに感じられる贅沢な時があった。今を生きている時、反省する時、夢見る時、じっとしている時。現代のめまぐるしい生活の中で、新型コロナウイルスによって一部の人々が経験している「中断」は、平常時以上に、ひとりあるいは愛する人々と、今という時を過ごすチャンスである。せわしない日常を離れ、小休止する希少な機会は、自分が人生のどこにいて、これからどうなるかを考える瞬間をもたらすだろう。今こそ私たちの習慣について考えよう。パターン、信念、目的、人としての視点を。人類の軌跡を。私たちは進路を変えたいのか。どうすれば夢に描く生活に向かって舵を切り、もっと他者を支え、この地球の自然な調和を回復できるだろう。どうすれば私たちは、あらゆるものが繁栄できるように世界を創り直せるのだろうか。

キャプテン・リズのストーリーをもっと読みたい方は、彼女の著書『Swell: A Sailing Surfer’s Voyage of Awakening』(スウェル:覚醒するサーファーのセーリング航海記)をご覧ください。

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