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粘土によって形づくられるもの

アテナ・スティーン  /  2021年12月1日  /  読み終えるまで5分  /  ワークウェア

次の世代に受け継がれるプエブロの伝統。

豊かなテロワール:かび臭いような土と植物の根の深い香りは、粘土とシルトを日干しすると乾いた藁の芳しさに変わり、すっきりとした石のような仕上がりで、アドベの自然な構成が生まれる。

全ての写真:Forest Woodward

母が亡くなる数週間前のこと。彼女は私を起こし、マドリッド・メサに行かなければと言った。心臓が弱っていた母は、これが最後の機会だと悟っていた。私たちは簡単な昼食を用意し、母の家の扉を閉めた。この小さくもかけがえのないアドベの家は、ニューメキシコ州北部のサンタクララ・プエブロに彼女が孫(私の息子)のベニトとオソと一緒に建てたものだ。

両親は長年を費やして、マドリッド・メサに広がる大空の下に2つの小さな小屋を建てた。父の小屋は木材、母の小屋は泥を使っていた。彼らにとって、四輪駆動車でないとたどり着けない険しい道の先にあるこのメサは、俗世間の多くの問題を忘れて自由になることのできる魔法の場所だった。

でこぼこした地面を通るたびに母の顔が苦痛にゆがむので、急勾配の坂を上る前に休憩を取ることにした。すると、1台のピックアップトラックがメサから降りてきた。トラックが私たちの横で止まると、母はその運転手が数週間前に出会ったばかりの、新しい隣人となるらしき土地所有者であることに気づいた。このときはパートナーと訪れ、彼らの本宅があるアメリカ東部に戻る前に、別荘を建てる場所の様子を見ていた。私たちは彼らに別れを告げ、メサの上へと車を走らせた。

粘土によって形づくられるもの

起源の循環。「母が、母の曽祖母に聞いたことがあるそうです。大きな割れ目が入った家をなぜ直さないのか、と」とアテナは思い出す。「すると曽祖母は母の前で指を横に振って言ったそうです。『あなたは心配しなくていいことよ。この家は役目を果たしたの。長いあいだ手入れをしてもらって、愛されて、何度も直されてきた。だからいまは大地へ、それが生まれたところへ還るときなの』」

いつものように野ネズミやガラガラヘビや風による被害がないかを確認してから、太陽で温められたアドベの空間に入った。母は即座にベンチの上に横たわり、遠くにそびえる山を見つめて、深呼吸した。母は山が南向きの窓のちょうど真ん中にくるように設計していた。「中心を築く」ことの大切さは母がつねに気にしていたことで、私もそれを意識するよう教えられた。すべての古代プエブロ遺跡が世界の中心であることを意識して、選んで築かれていたように。

移動の疲れが癒えるにつれて、母の沈黙のなかに長く引っかかる不安を感じ取ることができた。彼女は新しい隣人がどういう人なのか、そして彼らの建物が作り出すかもしれない空間の不均衡さについて恐れていた。すると、ある啓示を受けた——ベニトならできると!そうだ、完璧だ。私の息子は彼らの家を建てることができる。彼なら何をどうすべきかを知っている。そして何よりも重要なのは、メサへの深い敬愛とつながりを基礎に建てることができる。ベニトには間違いなく「中心を築く」ことができる。

でもどうやって彼らと連絡を取ればいいのだろう。電話番号どころか名前すら知らず、次にいつ彼らが戻ってくるのかもわからない。すると、またしても素晴らしい解決策を思いつく。ボトルメールである!子どものように興奮した私たちは、手紙を書き、それを入れるのに適したボトルを探した。それから戸締りをして小屋をあとにすると、道の脇に積み上げられた石の上に手紙入りのボトルを残そうと向かった。

それから2週間後、母は息を引き取った。だが亡くなる前に、隣人から連絡があった。彼らはボトルを見つけたのだ。飛行機で母の葬儀に駆けつけてくれた彼らは、そのあとベニトと彼らの新しいアドベの家について話し合った。ベニトがメサで作業をはじめ、粘土を集めているのを見た私に、昔の思い出がよみがえった。それは8歳のベニトがここを訪れたときのこと。母はベニトにコテと粘土の漆喰が混ざったものを手渡すと、何もない壁に向かって言った。「やってごらん」

このストーリーは、パタゴニアのFall 2021 Journalに掲載されました。


これらの写真は、ニューメキシコ州にある19のプエブロのひとつ、ケワ(サントドミンゴ)プエブロ族の未譲渡地で撮影されました。さまざまな国から入植者が到来したにもかかわらず、そこで土地と水を守りつづけているプエブロの人びとからは、私たちが学ぶべきことがたくさんあります。

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