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失敗それとも成功? チリの夏スキーでのギアテスト

読み終えるまで8分  /  スノー, デザイン

クロワールの近くのロビン・マッケルロイ。思ったより悪いコンディション。Photo: Frank Shine

失敗それとも成功? チリの夏スキーでのギアテスト

クロワールの近くのロビン・マッケルロイ。思ったより悪いコンディション。Photo: Frank Shine

皆さんはどうやって通勤していますか?うだるように暑いニューヨークの地下鉄にすし詰めになっていますか?ロサンゼルスの405号線の交通渋滞でノロノロ運転していますか?どちらにせよ、私たちの朝の通勤はそれらよりストレスがたまるものでした、まちがいなく。なぜなら太陽を追いかけて、ポルティージョのインカ湖を渡ったのですから…。

編集者記:今日はフリーランス著作家のグレッグ・フィッツシモンズがチリでの夏スキーとパタゴニア製品のテストについて報告します。

私はパタゴニアのシニアデザイナー、グレン・モーデンとスキーアンバサダーのロビン・マッケルロイ、そしてその他数人に付き添いました。ホテル・ポルティージョの私たちの部屋はパタゴニアのギアであふれていました。クローゼットは色鮮やかなテクニカルギアで埋もれ、スキーのセッションの合間はフィールドレポートを書いていました(あるいはホテル・ポルティージョのスキーショップで働くチリ人スタッフにサッカーの試合を挑んだりしていいました)。この1週間ずっと、まもなく発売となるスキージャケット、パンツ、レイヤーがパタゴニアの水準を満たしていることを確認するため、ウェアの機能をテストしました。朝の空気は突き刺すように冷たく、午後はどんどん温かくなっていく真冬と春のようなコンディションは、ギアのテストと研究開発にはもってこいの条件でした。

失敗それとも成功? チリの夏スキーでのギアテスト

トレス・ヘルマノス・クロワール。Photo: Frank Shine

この1週間、私たちはまるで子供のように頭をキョロキョロさせてこの場所に浸りました。険しく不吉なアコンカグアが6,962メートルの高さにそびえ立ち、その尾根、壁、切り立った岩、湖はすべてその影に隠れていました。私たちはシェーン・マッコンキーアーン・バックストロムが滑降した険しいラインをひっきりなしに指差しては、「あれはどう思う?」と尋ねました。ポルティージョのベテランは私たちの熱意あふれる質問にどれも同じように答えました。「アーンは簡単そうに滑ってたよね・・・」と。どこも滑降できそうに見えました。雪さえあればの話ですが。

今年は赤道下に積雪が少なく、通常なら何メートルもの雪をもたらす嵐も脆い頁岩の斜面にほんの少しの雪を降らしただけでした。幸運にもベンチュラ、アスペン、ジャクソン・ホールとスコー・バレーを拠点とする私たちのチームは高い意欲と軽卒さにあふれていました。ネオン色のヘッドバンドと80年代式のブレイド・サングラス(パタゴニアにこれをデザインしはじめるよう、皆が働きかけています)が長いハイクアップを軽快にし、核心部を登っているときにはとりとめもない質問が笑いを巻き起こし、自虐的ユーモアがつらい場面を癒してくれました。インカ湖を渡るその朝、星と三日月がまだ空を照らしている時間に目覚まし時計が鳴りました。目標は湖の向うにあるめったに滑降されないクロワール。それは(アコンカグアの手前にある美しく不吉な3連峰)トレス・ヘルマノスの一峰の頂上に発しています。

私たちはひとりずつ、なるべく遠くまで行けるようにできるかぎりスピードをつけようと傾斜の低いスロープを直滑降しました。アスペン在住の写真家フランク・シャインのあとにまるでアヒルの子どもたちのようにつづき、朝日がアンデス山脈に昇るなか、湖をスケーティングしました。背景ではホテル・ポルティージョの象徴的な黄色の壁がどんどん小さくなっていきました。

失敗それとも成功? チリの夏スキーでのギアテスト

早朝、インカ湖を渡ったあとシールを付ける。Photo: Greg Fitzsimmons

インカ湖を半分渡ると22センチの氷の下で、水が波打つくぐもった音と私たちのスキーが凍った表面を滑る音が、私たちを軽快なリズムに導きました。まだ先頭を行くフランクを見上げると、彼は湖岸に向けていつもより早いスピードでスケーティングしていました。彼のあとには氷の亀裂ができ、その割れ目で私たちは彼から隔離されてしまっていたのです。次につづくのはモーデンでした。彼は亀裂に向かって突進し、オーリーのムーブで氷をかわしました。グレンのスキーのテールが凍った水を弾き飛ばし、ブーツは沈みかけ、ビンディングは浸水していました。この亀裂の向うに渡ってしまうと、モーデン(カナダ出身で氷に対する典型的な親しみと畏敬の念を持って育った彼は、湖をスケーティングで渡る前に不安を表明していました)はオリンピックのスピードスケーター、アポロ・アントン・オーノのように耳をうしろに抑え、反対側の湖岸に向かって猛進しました。残った私たちは亀裂の手前で急ブレーキをかけました。氷が割れていく音が聞こえ、端から水が浸透してきました。私たちはあざやかな色のヘッドバンドをうしろに垂らしながら凍った水面を猛スピードで進むモーデンを見て笑いました。

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湖のトラバースが完了。シールを付けるときがきた。Photo: Frank Shine

結局、亀裂のホテル側に残った私たち3人は湖を迂回し、反対側へ安全に飛び越えた2人と合流しました。シールをつけながら私たちは緊張の笑いを漏らしました。ほとんどのバックカントリーでの行動と同じように、朝日が山を照らすと私たちの心も晴れました。パタゴニアのレイヤーを脱ぎ、日焼け止めを塗ってクロワールを登りはじめましたが、すぐに雪のコンディションが良くないことが明らかになりました。鉄板のようにツルツルの硬く薄い雪を目的地に向かって斜めに登るのはとても困難で、疑似山頂のおかげでクロワールは思ったより遠く、暗闇のなかで冷たく感じた空気はすぐに温かくなっていました。ジグザグの横向きの登りは傾斜が増すにつれて最終的にはスキーブーツでの登りに変わり、気温は時間が経つにつれて上昇すると、クロワールの上の雪屁から落石が起こりはじめました。

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シールなど必要ないことを証明するグレン・モーデンとロビン・マッケルロイ。Photo: Frank Shine

お昼ごろ、私たちは頂上までもう少しという所で、「もうここまで」という決断を下しました。コンディション、準備、言い訳はさておき、山頂とは縁がなかったのです。

谷間に足をぶら下げて座り、下の湖を見下ろしながらチーズサンドを食べていると、まぎれもないヘリコプターの騒音が聞こえました。このうるさい鳥は映画を撮るために有名スキーヤーとハリウッドのカメラ器材を乗せてこの汚れない場所へ進入し、私たちの頭上を飛ぶと、その日早くに私たちが目撃した巨大なアンデスコンドルのように旋回して尾根の向うへと消えていきました。私たちはヘリに乗るようなアスリートたちがどんなに甘えたやつらかを野次りましたが、ヘリコプターが向かった場所の雪は私たちの滑降を待っているカチカチの雪よりも良いことを本能的に理解していました。

ですが最終的には、どんなスキーもスキーに変わりありません。ビンディングを付けた途端に私たちはこの旅の本来の目標、「楽しむこと」を思い出しました。この先には早いスーパーGの「アーン・バックストロム」ターン、トレス・ヘルマノスを背景にした数枚の想い出に残る写真、帯状の小さな壁と下にぱっくりと開かれたフィールドが待っていたのですから。私たちは皆、谷底へ向かって大きな笑顔でゆっくりと滑降しました。

湖をスケーティングで戻るのは比較的に平穏無事でした。さらに大きくなっていた亀裂を迂回し、氷が協力的かどうかをたしかめるために振りかえることもせず、反対側の湖岸へと突進しました。

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与えられたものをありがたく頂戴するグレン・モーデン。Photo: Frank Shine

結果的には私たちのスキーの目標を達成することはできませんでした。凍っているはずの湖には大きな亀裂ができ、雪の状態は悪く、そして頭上のヘリコプターは私たちが探そうと乗り出した雪をどこかで誰かが実際に見つけたことを思い出させました。このトリップを失敗だと見なす人もいるでしょう。けれども私たちは皆、成功だと思いました。アコンカグアに昇る朝日を眺め、巨大なアンデスコンドルが完璧な弧を空中に描くのを目撃し、愉快な仲間とスキーをすることが失敗のはずはありません。そしてその日は週日だったのでビールとエンパナーダを楽しみながら来シーズンのパタゴニアのスキーウェアについて討論しました。皆の意見は同じでした。「まったく隙がないよね!」

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グレッグ・フィッツシモンズはアスペンを拠点に活動するフリーランス著作家。彼は毎日スキーをし、『The Ski Journal』、『Powder』、『GQ』、『ESPN』とhttp://skiresorts.com/に寄稿して家賃を払っている。

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