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生き残りをかけた訴訟

ヤン・エバーハーター  /  2023年11月1日  /  読み終えるまで9分  /  フライフィッシング, アクティビズム, コミュニティ

スカジット・リバーのサーモンに法的権利はあるのか。

スカジット・リバーはタイヘイヨウサケ属の5 種すべて(チヌークサーモン、コーホー サーモン、チャムサーモン、ピンクサーモン、ソックアイサーモン)だけでなく、スティール ヘッドとコースタルカットスロートの故郷でもある。天候が涼しくなってサーモンが産卵を はじめると、川は腹を空かせた500 羽ものワシ(アメリカ本土48 州における最大の越冬 個体群のひとつ)を迎え入れる。 Photo : Edmund Lowe

法廷で魚が証言台に立ったとしたら、どうなるのでしょうか。魚にとって証人席はおそらく居心地が悪いはずで、陪審員の姿を見ることもできないかもしれませんが。

しかし最近ワシントン州で起こされた訴訟では、サーモンには彼らの同盟であるアメリカ先住民族のサークスアトルの助けがありました。同部族は「Sahkuméhu(サークスアトル族の人びと)は、Tsuladxw(サーモン)とStulekw(川)、そして私たちが生きていくうえで欠かせないすべての生き物たちと、聖なる誓約を結んでいます」と論じ、近年台頭しつつある「自然の権利」を法的戦略として行使しました。それは〈シアトル・シティ・ライト〉がスカジット・リバーに所有する3つのダムが、魚たちの『存在し、繁栄し、再生するために備えている権利、また彼らの先祖代々の水域に行き来する権利』を侵害している、という訴えでした。

ワシントン州のスカジット・リバーは、この地方のすべての生き物とのつながりを長いあいだ保ってきました。カナダのブリティッシュ・コロンビア州に源流をもち、険しいカスケード山脈の心部を240kmにわたって走るこの川は、ピュージェット湾へと流れる淡水の30%を供給し、同地方の原生のサケ・マス類(絶滅危惧種のピュージェットサウンド・チヌーク、ブルトラウト、スティールヘッドを含む)全種が生息する唯一の川です。そして、前述の訴訟の中心となっている3つの水力発電用ダムのおかげで、シアトルの電力の20%が生み出されています。しかしダムは発電を担うだけでなく、サーモンがかけがえのない産卵地へたどり着くことを妨害しています。

サーモンの遡上は太平洋沿岸部のいたるところで100年以上にわたり減少をつづけ、数十年におよぶ復元の取り組みの多くもむなしく、これらの魚の未来はいまだ、彼らが産む卵のひと粒ひと粒にかかっています。セイリッシュ海のキーストーン種であるサーモンは、この地方の生態系に欠かせない存在です。そしてチヌークは、この地方で愛されるもうひとつの絶滅危惧種サザンレジデント・オルカが好む主食です。サーモンは、クマやワシの餌ともなり、死んだあともその残骸が川や森に栄養分を与えます。その過程は、複雑で、精巧で、美しく、母なる自然が何千年もかけて創りだしたとしか思えません。

シアトルは持続可能な未来の構築を謳い、積極的な政策を実行してきた長い歴史を誇りにしています。だからこそ、市の公共電力会社であるシアトル・シティ・ライトの「クリーンな」電力がその土地の最も象徴的存在である魚と伝統的なコースト・セイリッシュ族の文化を犠牲にしているというのは、憂慮すべき、そして腹立たしい矛盾として残ります。「ものごとの大枠で見れば、私たちが危機に瀕していると考えているのは、私たちの生活様式であり、生き様なのです」と言ったのは、サークスアトルの部族議会長を務めるニーノ・マルトス二世です。「もしサーモンが絶滅してしまったら、これから何世代にも受け継がれるべき教えが崩壊することになります。すべてが変わってしまうのです」

魚が証言台に立つべきときが来たのは、2022年の初頭。アメリカ先住民族のサークスアトルはシアトル市を相手に訴訟を起こしました。その部族裁判所での起訴内容はTsuladxw(ルシュツィード語でサーモンの意)の声を代弁したもので、そこには「部族民はTsuladxw を守り、彼らの存在する権利を妨げる障害物なしにTsuladxw を支える水域を守るための、権利と公益信託を所有する」と宣言されていました。シアトル・シティ・ライトのスカジット・リバー水力発電計画による 3つのダムは、地元の先住民族共同体と同意を得ずに建設されたものであり、サーモンの遡上を完全に塞いでいるとも述べられていました。「この川はシアトル市を養いつづけてきました」とマルトスが言ったのは、2023年1月。「だから今度は彼らが川を養うべきだと思うのです」

生き残りをかけた訴訟

ピンクサーモン(カラフトマス)は、タイヘイヨウサケ属の5種の中で最小ながら最も豊富な魚。 オスは産卵のために母川を遡る過程で背中に大きなこぶを発達させるため、あまり聞こえのよくない 「ハンピー」というあだ名がつけられた。 Photo : Eiko Jones

サークスアトルの訴訟のように、自然の権利を法的戦術とすることは、川や生物や生態系のような自然界を構成する要素にも法的地位が認められる、という概念に基づいています。2008年に、エクアドルは自然の権利を守ることを憲法の条項として追加しました。2017年には、ニュージーランドがワンガヌイ・リバーの「物理的および形而上学的な要素」の法的権利を公式に認めました。それ以来、この運動は大きく前進しています。2022年後期には、ワシントン州のポート・タウンゼンドとギグ・ハーバーが、主食源としてサーモンに依存するサザンレジデント・オルカの権利を認める声明を掲げました。そして〈センター・フォー・デモクラティック・アンド・エンバイロメンタル・ライツ〉によると、現在アメリカ国内では30以上の先住民部族政府や地方政府が、自然の権利を守る法律を制定しています。

スカジット・リバーとその源流は、有史以前からコースト・セイリッシュ族とサーモンの故郷でした。その共存は数えきれないほどの世代にわたって繁栄をつづけた末に、植民地主義による壊滅的な変化を受けました。1800年代半ばには当時のワシントン州知事アイザック・スティーブンスが、土地と引き替えに先住民族の自治権や保護、そして先祖代々の土地での狩猟や漁の権利を継続的に与えるという約束のもと、この地域の部族と多数の条約を結びました。しかし皮肉にも同州はこの同意を見過ごしてきました。100年以上つづいた征服と虐待、そして条約によって保証されているべき漁権のための闘いが頂点に達した1960年代後期から1970年代初期にかけては、それは無数の抗議という形で現れました。

そこで連邦政府はこの問題に対してワシントン州を訴え、「ボルト判決」として知られる1974年の判決により、全漁獲量の半分を先住民部族に分配する条約が支持され、部族は州の衰退する漁場の共同管理者となることが定められました。サークスアトル族だけでなく、スウィノミッシュ族とアッパー・スカジット族も、スカジット・リバー流域を故郷と呼んでいます。連邦政府公認のこれら3つの部族はそれぞれ独自の管理方法をとっており、地元の関連団体と連携することで、議論の余地のある政策決定を引き起こす可能性があります。

サークスアトルの訴訟は、市がダムを操業するための連邦許可(2025年に期限切れ)を更新しようとしているときに起こされました。新たなライセンス契約は典型的に保証されているも同然で、その契約期間は30年から50年有効となります。しかしこの機会によって、公衆からの関心が寄せられることになりました。そして訴訟の「自然の権利」戦術と同地方のサーモンとの深い結びつきのおかげで、この過程はシアトル・シティ・ライトの環境政策に対して新たな監査をもたらしました。「これは法的な根拠に基づいた行動であると同時に、公的な手続きであり、市民への周知を通じて変革を起こし、企業に責任をもたせる目的もあります」と語るのは、部族の弁護士を務めるジャック・フィアンダーです。

それは、試す価値がありました。

ライセンス更新の締め切りだった4月28日の9日前、シアトル・シティ・ライトは最終許可申請書に魚道プログラムを含めたことを発表し、それが訴訟の和解を導きました。そこで提案された「トラップ&ホール」というプログラムは、サーモンを捕獲してトラックで運搬することで3つのダムすべてを迂回させるものですが、その完全な実施までには最長20年もかかる可能性があります。これはスカジットでサーモンが直面する現在進行形の危機を解決するわけではありませんが、ダムの周囲に魚道を設けるということがサークスアトル族の最大の関心だったからです。

シアトル・シティ・ライトの自然資源/水力許可部長を務めるクリス・タウンゼンドによれば、この魚道プログラムの包括の理由の一端は「気候変動にまつわる状況と下流に残されている生息地を考慮したうえで、魚の回復に貢献するため、未来の生息数の維持の重要な一部となり得るため。また、下流の部族のために漁獲できる魚をもたらすため」だということです。

「たとえ和解や同意という形であっても、部族がサーモンを守るためにこのような方法で訴訟を解決できたことにより、自然の権利を真に擁護する事例が将来的にも提示しやすくなります」とフィアンダーは言います。

これがアメリカ合衆国において、自然の権利にまつわる訴訟としては2例 目でしかないということを考えると、このムーブメントはまだ初期段階で、法 的な判例を確立させようとしている最中です。そしてたとえ判決が出なかった としても、この思想は地域レベルの草の根のイニシアチブや部族共同体から、 州や国のレベルへと動きつづけます。このたびの和解がスカジット・リバー とサーモンにとって有益である一方で、人間が建設した頑固な3つのセメン ト問題は存在しつづけます。ライセンス更新の過程では、少なくとも下流の ダムを撤去すべきであるという要望にはほとんど反響がありませんでした。ス カジット・リバー水力発電計画のダムが近いうちに撤去されることはなくとも、 サークスアトルの訴訟はその体系を崩すべく入った小さなひびであり、やがて は川を再生する全水域にまで広がるものであることを願います。

「サークスアトル族はこの訴訟から非常に実用的な結果を得ただけでなく、 何が可能でそれをどのように実現するかを示しました」と述べるのは、セン ター・フォー・デモクラティック・アンド・エンバイロメンタル・ライツの事務局長マリー・マーギル。「そのすべては、自然の権利にまつわる法律の発展に はもちろんのこと、他の部族だけでなく、先住民族ではない共同体にとっても、 かなり重要です。『これで自分たちにもたどるべき道が見えてきた』という希望 を与えてくれるからです」

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