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古代の森を撮る

ジェイミー・モイエ  /  読み終えるまで14分  /  コミュニティ, アクティビズム

バンクーバー島南部のケイキューズ川流域で、かつてベイスギの原生林があった幅3.7メートルの切り株の上に立ち、最近の皆伐地を見下ろすワット。Photo: Jeremy Koreski

カナダのバンクーバー島南部、原生の沿岸温帯雨林には、登山道はない。スグリの腐臭が漂う深い茂みを再びかき分け、ワットの後を追いかけながら、私は自分がカメラ機材を運ぶ立場でなかったことに密かに感謝した。藪を漕ぎ小川を渡り苔むした岩や倒木を乗り越え、大木を迂回する。1キロ進むのに1時間はかかる。

ワットは、狩人のような執念で進んでいる。疲れを感じさせない。彼のその目的は、樹齢数百から数千年の穀物サイロ級の巨木の原生林を探し出し、それらを撮影して自身の非営利団体Ancient Forest Alliance(AFA)を通じて、これらの原生林を守るために人々を集めることだ。彼は人生のほぼ3分の1に当たる10年以上を費やして保護活動に取り組んできたが、ここにきて、にわかにその活動が注目されている。

最新の科学によると、沿岸温帯雨林の原生林は、南米のアマゾン熱帯雨林を超える量の炭素を大気中から吸収し蓄えており、地球温暖化に対する世界で最も優れた自然の防御力があることが明らかになっている。しかし、ブリティッシュコロンビア州の製材業者は、原生林を伐採し続けており、その勢いはとどまる様子はない。この地域の樹木は、種類にもよるが、航空機のフレーム部品から屋根板にいたるまで、さまざまな建築資材になっている。家具、キャビネット、室内の木工品に使用されることもある。さらに、ギターの共鳴板のような楽器の部品を作るために、専門の工房へ送られるものもある。ワットが暮らすバンクーバー島南部では、谷底に沿って豊かな原生林があり、そこには最大級の巨木が生えているが、すでにその96%が伐採されている。「木材産業にとって大木は大金になる。ただし環境という大きな代償を払ってね」とワットは言う。

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左:バンクーバー島南部のケイキューズ川流域では、多くの原生林が保護されることなく、伐採の危機にさらされている。「ケイキューズの巨人」という異名を持つ直径5メートルほどのこの巨木もその1つだ。
右:原生林では、巨木が倒れた後、林冠に隙間ができることが多く、そこから光が林床に降り注ぎ、さまざまな種類の植物が繁茂する豊かな下層植生を作る。Photos: Jeremy Koreski

ワットは、ブリティッシュコロンビア州の原生林保護活動では、ある意味で新顔の方だ。90年代、バンクーバー島は「War in the Woods(森林戦争)」の中心地として知られていた。当時の運動で多くの逮捕者がでたが、最終的にはそれが島の西海岸にあるクレイオクォット・サウンドの保護につながった。この数か月の間にも、数百人の反対者がフェアリークリークに集まり、それはまたたく間に、この数十年間で最大規模の伐採抵抗運動になろうとしている。しかし、ワットはそれらとは違うアプローチで、最後の原生林を救おうとしている。さまざまな層の支持者を集め、メディアを通じて波紋のように広がる、明確でフォトジェニックなメッセージを発信している。彼のビジョンは、ブリティッシュコロンビア州政府に、州内で危機に瀕する原生林を保護するために、科学に基づく条例を制定させるというものだ。

「1回に1つの森を勝ち取るのではダメだ。もっと大規模にやらなきゃ」と彼は言う。

ワットは20歳になるまで原生林とは何であるかを知らなかった。父親はバンクーバー島南部のコールドウォーター・サーファーの草分けだった。ワットは波を見つめたり、地元のスケートボードのコンテストに参加するような幼少期を過ごしていた。「おそらく、その頃にも原生林を見たことがあったけど、当時は何を見ているのか理解していなかったんだ」

2005年にワットは、自然保護団体ウィルダネス・コミッティーのビクトリア支部が企画した市民ツアーに申し込んだ。行き先はカナダで最も壮大なレッドシダーの森を育むウォルブラン谷。その旅で、木の壮大さやそれらの惨状を目の当たりにした。

「そこにはこうした川や美しい滝、そして直径がたぶん16フィート、つまり4、5メートルくらいの木があった」

ワットはカナダ人がよくやるように、インペリアル法とメートル法を換算しながら振り返る。「森が伐採の危機にさらされていることを知って、とにかくショックだった」

写真に興味を持ち始めたのは、母親のカメラを借りるようになった高校時代だ。卒業後、3か月をかけ、写真を撮りながら東南アジアをバックパックで旅したが、当時はそれを職業に結び付けるすべを知らなかった。結局、故郷に戻り、大工である父の仕事を手伝った。やがてウィルダネス・コミッティーのために写真を撮るようになり、その影響でウエスタン・アカデミー写真専門学校に入学した。コースを修了したのは2007年だ。

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当時ウィルダネス・コミッティーのビクトリア支部の理事だったケン・ウーは、ワットが事務所をたずね、ボランティアで写真を撮りたいと言った日のことを振り返る。「何せこのとおり、腰まであるドレッドロック・ヘアで、スケートボードに乗ったヒッピーでしたからね。でも、一通り写真を見せてもらって『おっ、なかなかいい』と思いましたよ」当初、ウーはワットを市街地で行われている環境デモの撮影に行かせたが、まもなくワットのスキルや興味が、野生の中で発揮されることがはっきりした。「彼には抜群のバランス感覚がある。それは野外ではすごく重要なんです。原生林は世界で最も過酷な景観の中にありますから。」ウーは、原生林を探索してマーケティング資料やプレスリリース用の写真を撮影するという契約で、ワットを雇った。その後2010年に、この2人はバンクーバー島の原生林保護を専門とする新たな非営利環境団体AFAを共同で設立することになる。

「まさに僕にぴったりの仕事だった」とワットは言う。「僕は冒険が好きだし、アウトドアも好きだ。それに、たぶんスケートボードの経験があるからだけど、森林地帯をあちこち飛び回るのは、ゲームみたいな感覚だったよ」

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左:ベイスギの古木のほとんどは、自然に中心部が空洞になるが、それには共生菌が関連している可能性がある。しかし、そのような木は病気でも死にかけているのでもない。実際、そういう木こそ、クロクマの巣穴になるから、伐採しないでおくことが重要だ。
右:ケイキューズ川流域の最近皆伐されたベイスギ原生林の跡地を林道が蛇行する。そっとしておけば、樹木類は千年以上は生育することができる。Photos: Jeremy Koreski

「これは倒木更新」倒れた木から若木が芽吹いているのを指差し、ワットが言った。私は立ち止まり、原生林が朽ちてもなお、生態系に貢献しているかに驚愕した。私たちは被写体に打ってつけのレッドシダーやダグラスファーが林立するアバターグローブを散策した。ワットが初めてここを発見したのはパチェーダート族の保留地で古木を探し出していた時で、ポートレンフルーの集落からそれほど遠くないゴードン渓谷にある。

2012年、ワットはポートレンフルー商工会議所と協力し、この50ヘクタールの土地を伐採から守った。AFAはボランティアを募って木道と、木を眺めるための展望デッキを作り、そして抜群のセンスをもって、この場所に大ヒット映画にちなんだ「アバターグローブ」というニックネームを付けた。まもなくして、同じ地域で、ワットは最近の皆伐地の中にポツンと立っている高さ70メートル、周囲12メートルのカナダで2番目のダグラスファーの巨木に遭遇した。ワットが撮影した「大きなひとりぼっちのダグ」の写真は、痛ましい光景だったが、効果はあった。

数々のニュース記事に取り上げられ、ついにはカナダ人ジャーナリストのハーレー・ルスタッドが、2018年にこの木のことを『Big Lonely Doug: The Story of One of Canada’s Last Great Trees』という本にした。ブリティッシュコロンビア州の森林・土地・天然資源管理・農村開発省は、この木のほか、ブリティッシュコロンビア大学が作成したBC Big Tree Registry(巨木リスト)の53本の木を恒久的に保護する条例を制定した。

かつて林業で栄えたポートレンフルーの町は「カナダの巨木の街」としてブランドを改めた。その成果は上々で、パンデミック以前には、地元のホテルやB&Bが2012年以降、毎年需要が75~100%急増していると報じられていた。新たなビジネスも立ち上り、繁盛している。エコツーリズムリゾート&アウトドア用品の「Wild Renfrew(ワイルドレンフルー)」や、20年前に町ができて以来最初のガソリンスタンド「Pacheedaht Pit Stop(パチェーダート・ピットストップ)」などだ。かつて伐採だけが唯一の経済成長策とされていた場所で、原生林が少なくともこれまでと同じくらいの利益を観光業の一環としてもたらすことを住民たちは認識するようになった。

「古木を伐っても利益は1回だけさ」

カナダで一番いかめしいと言われる原生林の展望デッキを目指して、シダで覆われた斜面に付けられた階段を上りながら、ワットが言った。

ワットは大きなコブがを覆う60メートル近い奇妙な姿のスギに向かって言う。「けれどこのスギは、街に無期限に持続可能な経済をもたらすことができる」

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左:古木の側面にコブが形成されている。なぜ一部の木にこうした丸い突起ができるのか、科学者にもまだ分からないが、こうしたコブが木の健康と無関係であることは確認されている。写真家にとっては、おもしろい構図だ。
右:このベイスギの原生林の1つの年輪は1年に相当する。ワットは全部数えたことはないが、写真の部分だけでも、この木が数世紀にわたって生きていたことが分かる。Photos: Jeremy Koreski

アバターグローブでのAFAの初期の成功にワットは手応えを感じたが、それは過酷な仕事でもあった。この偉業を成し遂げるまでに、ワットとウーは2年間休む間もなく、現地ツアーを何十回も主催し、保護を求めて数百件もの記事を発信した。さらに、ワットに言わせれば、ポートレンフルー商工会議所や地元ビジネスリーダーらによる「英雄的な奮闘」もあった。「同じことをどこでもやれるわけじゃない」歩いてバンに戻る途中、ワットは言った。

「この場所は、ある瞬間にこの州のどこかで伐採されている数千の木立の1つにすぎない。僕らがたまたま見本にすることができた1つにすぎないんだ」

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ワットは古木を捜索する遠征の計画や記録にGPSを使用している。写真のMotionX-GPSアプリは、ワットのケイキューズ川流域での最新の森林の状況を表示しており、目立つ大木にタグが付けられている。Photo: Jeremy Koreski

2020年の晴れた夏の日、ワットはAFA事務所のコンピューターの前に座っていた。ビクトリア中心街のセントラルビルディングにある、窓に囲まれた簡素な部屋だ。政府が無償で提供する地図アプリケーションiMapBCで、ワットは一般公開されている地理データにアクセスし、伐採保留中の区画、現在伐採中の区画、そして(アバターグローブのような)保護された「原生林管理の保護区」を確認できる。このアプリケーションを使用して、ワットはそれらのデータを衛星画像に重ねることで、木材産業と同じように一帯を俯瞰することができる。

私たちは、バンクーバー島南部のポートアルバーニという小さな町の近くにあるナーミント谷にズームインしてみた。ワットは長いこと衛星画像を分析し、梢の形状や輪郭から森林の種別を判読した。二次林は明るい緑色で、まるで芝生のように均一に見える。原生林は緑が濃く、荒れて雑な感じで、先端は円錐形で、影が濃い。それはとても高く、とても古い木の梢であることを示しているとワットは言う。「緑の枠で囲われているところは全部、BC Timber Sales(州の木材販売局)による計画的な伐採区画だ」ワットが地図をスクロールすると、20数か所の計画伐採区画が谷を傷つけているのが分かった。「全部合わせると、サッカー場600面分以上の原生林が伐採されようとしている」

ワットがナーミント谷の伐採地を初めて訪れたのは2018年で、原生林伐採の進行を撮影するためだった。彼の写真は口コミで広まった。その中の1枚に、同僚のアンドレアがテラスのように大きなスギの切り株に立ち、背後の地面にその巨大な幹が横たわるという写真があり、それが掲示板サイトRedditの国際ニュース欄に掲載された。写真は「カナダ最大の木、ナーミント谷で伐採」という見出しと共に、イギリスのEU離脱やトランプ大統領に関する投稿と並んでいた。

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ワットのお気に入りの場所、バンクーバー島南部の原生林にて。彼はこの木々を守ることをライフワークにしている。Photo: Jeremy Koreski

一般市民の抗議が激化し、AFAが数年をかけて築いた勢いに拍車を掛けた。同時期、ブリティッシュコロンビア州の商工会議所(3万6,000社の代表)は、州政府に対し、ポートレンフルーの例を引き合いに出し、観光業を目的に原生林保護を改善することを求めていた。これに応えて州政府は、一般市民が原生林の問題に参画し、森林・土地・天然資源管理・農村開発省に報告書を提出できるように、第三者委員会を設置した。この報告書によって、州政府の原生林管理の体制が劇的に変わると期待された。

ワットは、2020年4月30日発行の「A New Future for Old Forests」という全72ページの報告書のリンクをクリックした。第三者委員会による14の提言の1つに「州は管理方法を改善できるまで原生林の開発(つまり伐採)をただちに延期すべき」とある。ワットはこの報告書によって、絶滅寸前のブリティッシュコロンビア州原生林の伐採がきっぱりと止むことを願っている。そうした政府によるトップダウンの保護を求めて彼は戦ってきた。「変化を求めているのは、もう環境主義者だけじゃない。企業や労働組合、科学者、信仰集団、アウトドア愛好者など、これまでとは違うあらゆるタイプの支援者がいる。」

それから1年経ったが、ワットやウーをはじめ、ポジティブな変化を期待したすべての人々は、今も待たされている。州政府は全力を尽くして14の提言をすべて実施すると言っておきながら、その動きはワットの言葉を借りると「カタツムリのペース」だ。その間も、製材業者による原生林の伐採は、バンクーバー島の内外で続いている。だからワットは今もカメラと共に現場に向かう。

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ティールジョーンズ・グループによって切り倒されたレッドシダーの原生林に寄り添うワット。ブリティッシュコロンビア州バンクーバー島、ディティダート族保留地内のケイキューズ川流域で。Photo : TJ Watt

写真に収めてきた木の多くがカナダから失われることを、ワットは理解している。その木がどれほど古かろうと、どれほどカリスマ的であろうと。伐採は林業にとってとにかく儲かる仕事だ。新しいビジネスモデルや政府による支援策でもないかぎり、これらの業者には変わるべきさしたる動機がない。10年経っても状況は少しも緩和されていないとワットは言う。最近、彼はケイキューズ川流域のお気に入りの「掘り出し物」を再訪しようとした。樹齢千年はありそうな堂々としたレッドシダーの巨木だ。しかしそこで彼が見たのは、森林の皆伐だった。その体験は衝撃的だった。

「一度失えば、もうそれきりだ。二次林は50~80年おきに伐採される。決して古木になることはない」

自分の役割はすべての木を救うことではないと、頭では分かっている。むしろ、木の代弁者となり、写真を通じて人々の心を動かし、選ばれた担当官に原生林保護の制度を徹底させるよう圧力をかけることだ。ワットの(そしてAFAの)最終的な目標は、科学に基づいた条例の下で原生林をトップダウンで保護し、代わりに持続可能で付加価値のある二次林産業へ移行することだ。だがやはり、感情的にはつらい。「原生林を何よりも愛する人間にとって、僕がやっていることは世界で最高の仕事であり、最低の仕事でもある」

ワットと最後に話をした2021年6月2日、彼はポートレンフルーに近い、アバターグローブに隣接するフェアリークリーク谷の古木の捜索から戻ったばかりだった。フェアリークリークは、バンクーバー島南部で最後の、まだ手付かずだが保護対象になっていない原生林渓谷である。しかし今やそれも風前の灯だ。この瞬間も、製材大手のティールジョーンズ社は、フェアリークリーク流域で同社が伐採を計画する12.8ヘクタールの区画にアクセスしようとブルドーザーで道路を整備しており、その区画の大半は原生林である。現場では環境活動家が、とにかく身体を何かに結び付けたり、木を占拠したり、道路を封鎖したりしている。2021年6月初め時点で、RCMP(王立カナダ騎馬警察)は185人の活動家を逮捕した。ワットは新たな手法に挑戦している。空中撮影だ。彼はヘリコプターからフェアリークリークを撮影した。勇敢なワシとほぼ同じ目線でその全景を見せることで、彼はこの唯一無二の渓谷の雄大さを伝えようとしている。

ワットのドレッドロック・ヘアは、なくなるかもしれない。彼の心はこの戦いで何度も傷ついてきた。それでも彼は、世界で最も威厳に満ちた木々の一生を記録するチャンスを追いかける。

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Photo: Jeremy Koreski

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Photo: Jeremy Koreski

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Photo: Jeremy Koreski

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