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喪失のアート

ミーガン・ブラウン  /  読み終えるまで5分  /  コミュニティ, アクティビズム

ザリア・フォーマン「リンカーン海、グリーンランド北緯82度32分30秒3036西経59度54分50秒3814」ソフトパステル/紙 (アーティストの許可を得て掲載)

ザリア・フォーマンが氷について語る話はじつに魅力的です。とくに氷が奏でる音。何も見えないときでも雷のように轟き、崩れ、割れる氷。朝食のシリアルのようにパチパチと弾ける音が大音響で聞こえてくるのだと、彼女は描写します。そしてその音を、シリアルのライスクリスピーをもじって「アイスクリスピー」と呼び、「本当に美しい音色です」と言います。

極氷が解ける様子は、おそらく最も明確でありながら最も抽象的な、気候危機の視覚的暗喩かもしれません。氷河が割れ、氷山が漂流し、氷床が後退する様子は、急速に温暖化が進む世界の脆弱性を瞬時に感じさせます。それはよく目にする映像ですが、身近なものではありません。感情的に遠く、人間の行いの届かないところにある力だからです。

そこで鍵となるのがアートの力です。

フォーマンはここ10 年以上にわたり、あらゆる形態の水のイメージを対象とした、大規模で写実的な絵画を制作しています。そのなかでも氷河は、彼女の最も顕著なモチーフです。「アーティストの観点からいえば、氷はかぎりないひらめきの源です。氷にはたくさんの表面や質感があるからです」と、彼女は語ります。しかし彼女にとって絵を描くことは、象徴以上の存在でもあります。彼女は客観的な事実を感情的なものに移し変えるために、こうした巨大な氷床を気候科学者とともに間近に体験し、氷が受けると同時に与える世界的な影響についての理解を得てきました。

喪失のアート

フォーマンはソフトパステルを使って水と氷の形態を詳細に描き上げる。Photo:Tim Davis

ニューヨーク州ブルックリンにあるフォーマンのスタジオは青い粉の層にうっすらと覆われています。パステルのトレーからあふれる色素が靴の表面や底に付着し、白いラバーを淡いアイスキャンディーのような色に染めています。彼女がパステルを使う理由は、その媒体の物性。「パステルには間違いの余地があまりないのです。私はとてもなめらかな紙の上に描きますが、たいていのパステルアーティストは好まない材質です。それは色素を吸収しづらいからです」と、彼女は説明します。彼女は指のさまざまな部位を使って、氷や水の異なる表情をとらえます。親指はぼかしや薄づけに、中指はより細部を描くときに使います。そして描く視点は目の高さ。「いちばん扱うのが難しいのは白です」と、彼女は言います。

喪失のアート

細部を精密に描写するフォーマン。Photo: Tim Davis

銀髪混じりの頭を短く切りまとめ、地球の環境破壊からアクロヨガまで何でも語るフォーマンの口調には、希望に満ちた情熱が感じられます。ピンク色のNASA のスウェットシャツにブラックジーンズ姿の彼女は、「ホットピンクが大好きなんです。おかしいですよね、私が描くほとんどのものはブルーなのに」と言います。

スタジオ内にはさまざまな制作段階にある、大きな絨毯サイズの作品が3つ掛かっています。最大の作品は飛行観測から北極と南極の氷を地図化するという、10年越しのNASAの科学ミッション「オペレーション・アイスブリッジ」に由来するもの。フォーマンの作品を見初めたこの計画のリードナビゲーターが、彼女を飛行への参加に招いてくれたのだそうです。自分も芸術家の家庭で育ったというその人物は彼女を招待する際、無機質な数字では伝えることのできないデータを伝達することのできるアートの重要性を理解している、と語ったそうです。

喪失のアート

リンカーン海のこの区域にある氷は通常、北極圏で最も古く厚いもの。NASA の「アイスブリッジ」チームはこの氷を計測し、その厚さの長期的な変化を研究する。普通は、海洋の循環によって氷が海岸に押し上げられ、その圧力が大きな隆起を形成する。夏季に表面に現れる鮮やかな青の池は、粗い氷が形成する氷解水の水溜まり。この区域の地形では、こうした水溜まりはたいてい数十センチメートルと、北極圏の他の区域よりも深くなっている。Photo:Tim Davis

彼女は氷の地形を観測する研究者たちとともに過ごした3週間、天候さえ許せば毎日南極の上空を飛んだそうです。「いままで見慣れていたのは氷河の側面や水に浮かぶ氷山の姿ですが、それは氷解する直前の最終的な姿です」と、彼女はつづけます。「ですから、それがどうやって大きくなり、みずからの重みで分裂して氷河へと動き出し、海へと流れていくのか、その様子を実際に氷床を見て知ることができたのは、まさに目からウロコが落ちる体験でした」

2015年のTEDトークで、フォーマンは行動心理学の理論についてふれました。感情は他の何よりも私たちに行動を促すものであると。百万分率や海面上昇の数値について何度耳にしたとしても、何も感じないかぎり、私たちは行動を起こしません。しかしアートには私たちを動かす力があると。少なくとも、それがフォーマンの構想なのです。アートは私たちにゆとりを与え、その抽象に個性や魂を見つけ、何が起きているのかに気づかせてくれます。気候変動ははるか遠くの途方もない現象に思われたとしても、アートとして表現することで、少し身近に感じることができるのではないでしょうか。

このエッセイは、November Journalで取り上げられました。

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