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オーガニックを失った日

デーヴ・チャップマン  /  読み終えるまで28分  /  フットプリント, 食品

3世代のオーガニック提唱者たち:レディ・ムーン・ファームを運営する29歳のアナイ・ベダード、オーガニック農業に関する初の報告書執筆のため37年前に米国農務省に手を貸した78歳のパイオニアのエリオット・コールマン、長寿と健康の秘訣はオーガニック食品だと言う92歳のエミリー・デール。写真提供:Keep the Soil in Organic

フロリダ州ジャクソンビルで開かれた米国農務省の会議を振り返ると、憤りと嘆き、そしてこれからも前進をつづけなければならないという切迫感が消えない。この全米オーガニック基準委員会(NOSB)の会議は全米オーガニックプログラム(NOP)の歴史的転機であり、重要な分岐点だった。

近年の大きなスキャンダルや不正行為のあと、この会議はオーガニック認証の信頼を取り戻す最後の機会だった。採決に持ち込まれた規制上の問題は、オーガニック栽培に土壌は必要な基盤か否かを問うものだった。土壌が必要でないならば、水耕栽培が新たな農務省オーガニックの道を先導することになる。だがそれより大きな問題は、全米オーガニックプログラムの正当性だ。これは真のオーガニック食品を表すものなのか、それとも工業的農業のマーケティング手段となってしまったのだろうか。

これはオーガニック運動と水耕産業のあいだに起きた議論であるために、国際的な問題となった。オーガニックとは、これまでつねに土壌に関するものであった。近年の大規模な流通業界のなかでオーガニック食品を購入しはじめた人びとは、土壌のことは簡単に忘れてしまっている。彼らは「オーガニックって、ただ農薬の問題じゃないの」と尋ねるのだ。

その答えは「ノー」だ。

オーガニックを失った日

全写真提供:Keep the Soil in Organic

オーガニック哲学のすべては、土壌の健康を築き上げることだ。健康と気候のための恩恵は、肥沃な土地を基盤に生まれる。土壌が正しく作られていれば、農薬などを使う必要はない。すべての伝統的農業がオーガニックということではない。なかには非常に破壊的なものもあり、現在の砂漠の大部分を発生させる原因ともなった。アフガニスタンは、かつてはよりオーストリアに類似した地形だった。

しかし欧州委員会が水耕栽培を禁止するためにオーガニック基準を強化しているとき、全米オーガニックプログラムは砂上の楼閣のようにもろく崩れている。

ジャクソンビルでの会議はOK牧場の決闘のような雰囲気だった。オーガニック農業のパイオニアと提唱者らは、ヨーロッパなどの遠方から、そして地元のジャクソンビルからやって来た。私たちは土壌と健康に対する共通の理念のもと結束した。水耕栽培を攻撃するためではなく、真のオーガニック農業を称賛し、保護するためにここに集まった。

水耕栽培勢力は、ドリスコール社、ホールサム・ハーベスト社、〈オーガニック・トレード協会〉、〈カリフォルニア州認定オーガニック栽培農家(CCOF)〉、ユナイテッド・ナチュラル・フーズ社らと一団となって私たちに対抗し、水耕栽培を承認させようと手を組んだ。私たちは「オーガニックを守れ」と書かれたTシャツを着ていた。彼らはオーガニック農業ではなく「お金を守れ」が目的で、団体を結束させていたのは収益だった。ホールサム・ハーベスト社は、私の視点からは大企業だが、世界におけるオーガニック食品の2大生産者の1社であるドリスコール社と比べれば小さなものだ。これらの企業は従来農法による世界最大のベリー類の生産者でもある。巨大な企業であるドリスコール社を取り除けば、この紛争はすべて消えてしまうことになっただろう。ドリスコール社は〈オーガニック・トレード協会〉と〈CCOF〉を水耕栽培側につかせた。彼らの存在がなければ、私たちは2年前に勝利を収めていて、「議論」など終わっていたはずだ。

オーガニックを失った日

初日の昼休み、65人の農業経営者や消費者が集う「オーガニック保護集会」が開かれた。私たちはブラスバンドにつづいて行進し、広場で演説し、オーガニックの本当の意味を思い出させた。ジャクソンビルに先立った集会が他にも全国14か所で開かれたが、その日ここで起こった集会ほどすごいものはなかった。長年にわたって私たち全員を指導してきた農家エリオット・コールマンフレッド・キアシェンマンらが行動を呼びかけ、もっと若い農家のリンレー・ディクソンダン・ベンソノフトム・バレットなども遠方から参加し、真のオーガニック農業を支援した。

行進を先導したのはレディ・ムーン・ファームを2代目として運営する29歳のアナイ・ベダード。そしてオーガニック農業に関する初の報告書の執筆のため、37年前に米国農務省に手を貸したエリオット・コールマンだった(アナイが生まれる8年前の話だ)。2人に挟まれて行進したのは92歳のエミリー・デール。彼女は長寿と健康の秘訣はオーガニック食品だと言う。

オーガニックを失った日

集会でオーガニック農業の保護を訴えるエリオット・コールマン。彼はオーガニック農業に関する初の報告書の執筆のため、37年前に米国農務省に手を貸した。

全米オーガニック基準委員会(NOSB)の現会員4人と前会員6人、さらに全国の農家多数が集会に参加した。参加者のほとんどがNOSB会員の役割を果たす資格を十分もつ人たちだった。その中には科学者や政策活動家、消費者などがいた。白人、有色人、老若男女などさまざまだった。食品とその栽培について気を配るオーガニック農業運動に博識なリーダーたちだ。

オーガニックを失った日

農家、NOSB前会員、そして〈オーガニック農家協会〉運営委員会の前会員であるジェニファー・テイラー。彼女は何年も前、私に「強くあり代弁者として行動する」よう促してくれた

市民による証言がはじまった午後、なぜオーガニック農業は土壌を基盤とするかについて農家が次々と発言しはじめると、興奮の波が起こった。真のオーガニック栽培農家32人のうち、水耕栽培製品に直接競合するのはわずか2人で、残りはオーガニック栽培を保護するために参加した人たちだった。

講演者のなかにはNOSB前会員であるジェリー・デーヴィスがいた。同氏は〈キャルオーガニック〉のオーナーであるグリムウェイ・ファームのために証言した農学者だ。グリムウェイは世界最大のオーガニック野菜農園である。また同氏は、2010年度の提案時におけるNOSB作物小委員会の議長でもあり、2016年には私が一員を務めた米国農務省水耕栽培対策本部に対して、報告書を提出した。この問題に関して話せば、彼の右に出る者はいない。彼の見解はいまも変わらず、水耕栽培はオーガニックではない。真のオーガニック農業のすべてにとって、土壌が不可欠な基盤であると感じている。

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オーガニック農業のパイオニア、NOSB前議長、フレッド・キアシェンマン

全米オーガニック基準委員会の前議長で〈ストーン・バーンズ基金〉の現委員長である農家フレッド・キアシェンマンは、オーガニック農業保護の必要性について話した。限られた天然資源は時間が経つとますます不足し、土壌と収穫の法律に基づき、オーガニック農業は将来、異なる道を見つけなければならなくなると語った。

マイケル・ブザンソンは、「キープ・ザ・ソイル(土壌保護)」運動を強く支援するパタゴニアのために証言した。同氏はホール・フーズの前シニア・グローバル・バイスプレジデントだが、今回の会議ではパタゴニアのために証言し、土壌を保護することについてパタゴニアがNOSBに送付した書簡を紹介した。この書簡は17人の異なるCEOが連名している。同氏は水耕栽培を許可することが、オーガニック・ブランドに対する大きな脅威となることついて警告した。正当性と透明性が低下すれば、オーガニック作物への信頼を損ない、オーガニック産物の取引と農家の両方を苦しめることになると語った。

アラン・ルイスは〈ナチュラル・グロッサーズ〉を代弁し、オーガニック・ブランドが長年にわたって築き上げてきた顧客との信頼関係を破壊することについて警告した。

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NOSB前議長、〈ロデール・インスティチュート〉理事、2010年度作物小委員会メンバーのジェフ・モイヤー

もう1人の講演者は〈ロデール・インスティチュート〉の理事、〈IFOAM(国際オーガニック農業運動連盟)〉の委員であるジェフ・モイヤーだった。2010年度作物小委員会の活発なメンバーでもあり、その後NOSBの議長となった彼は、オーガニック農業は土壌で行われる必要があるという姿勢を断固として変えていない。2010年度の推薦は、その目的において明確だったことを強調する。現在もそれを支持し、〈ロデール・インスティチュート〉も同じ立場を取っている。

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NOSB前議長および〈オーガニック栽培農家協会〉運営委員会の現議長を務めるジム・リドル氏

もう1人は、NOSB前議長および〈オーガニック栽培農家協会(OFA)〉運営委員会の現議長を務めるジム・リドル。〈OFA〉の第一の立場は、NOSB作物小委員会からの土壌に関する提案を支持することだと述べた。

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レディ・ムーン・ファームの農家トム・ベダード

もう1人はレディ・ムーン・ファームの農家トム・ベダードで、彼はなぜオーガニック農業の基準を正しく守ることが必要なのかについて力説した。

またもう1人は〈全米オーガニック農業連盟〉のアビー・ヤングブラッド。オーガニック農業の正当性のために何年も闘ってきた非営利の 13団体のため、オーガニック農業を支援する証言をした。

もう1人は農家で「キープ・ザ・ソイル(土壌保護)」の主催者、デーヴィッド・ミスケル。今回の会議までに開催された14回の「オーガニック農業保護集会(Rallies To Protect Organic)」からの短編ビデオを紹介した。

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〈NOFA〉 VT政策ディレクター、マディ・ケンプナー氏

もう1人は〈NOFA(米国北東部オーガニック農業協会)〉VT(バーモント支部)の政策ディレクター、マディ・ケンプナー。これまでの3年間、彼女は集会をまとめる重要な存在だった。

もう1人は〈Next 7〉のリサ・ストッケで、彼女はNOSBに土壌を守るように促す市民8万6千人が署名した嘆願書を提出した。これらの署名のほとんどはこの2日間で集められたものだった。2つの嘆願書は以来、10万以上の署名を得ている。

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〈Next 7〉のリサ・ストッケ

またジョージア州の農家、NOSB前会員のジェニファー・テイラー。NOSB前会員、〈Beyond Pesticides(農薬を超えて)〉理事のジェイ・フェルドマン。ハワイの農家、NOSB前会員のコールアワー・ボンデラ。〈欧州IFOAM〉を代表するマリアン・ブロム。同団体は水耕栽培を禁止するようNOSBに促した。Oファームの農家、ジョン・ボビー。〈ニューイングランド農家労働組合〉の農家ロジャー・ヌーナン。〈コルヌコピア・インスティチュート〉の農家リンリー・ディクソン。〈オーガニック種子栽培者・事業者団体〉のイザウラ・アンデュレス。他にもアナイ・ベダード、 サラおよびライアン・ビオランド夫妻、ジム・ガリットソン、マーク・カステル、ジャック・アルジェ、ジム・フルマー、パット・ケリガン、シャーロット・バレーズ、カール・ハマー、マイク・ブラウンバック、ウルワシー・ランガンなど、参加者は枚挙にいとまがない。

オーガニックを失った日

初日の証言が終わったあと、雰囲気は本当に軽快で、その夜、協力的な委員の1人がエレベーターを降りると大きな笑顔を見せた。「これまで私が参加したNOSB会議で最高のものだった」と彼女は語った。

証言は翌日もつづき、投票開始までには、頑固な悲観主義者である私のような人でも十分な票が得られると信じるようになった。委員らは耳にする発言をどのようにしたら否定できるのか。この運動が証言されるときがやって来たのだ。証言は明確で真実を伝えていた。いったいどうすれば委員会はオーガニック農業を保護しないことができようか。

水耕栽培を支援するロビイストの証言は活気がなく退屈で、賃金をもらって発言しているものも多かった。〈オーガニック・トレード協会(OTA)〉の主要なロビイストの1人は簡単な質問にすら答えることがでなかった。その質問はNOSBメンバー、フランシス・シックがした「ココナツの繊維でできた容器で栽培して、すべての肥沃が栄養液で与えられたとしたら、それが水耕栽培なのか」というものだったが、そのロビイストはただ呆気に取られた様子だった。彼は質問がよく分からないと言ったため、その質問が繰りかえされると、ロビイストは「分からない」と回答した。これが文字通り何百時間もかけてこの問題ついて研究した、知性ある人から発せられた言葉だとは信じがたい。彼はドリスコール社は容器で栽培しているので水耕栽培ではないと何度も主張してきた。ところが公の場で直接質問されると、彼の論拠は完全に崩壊してしまった。彼はずっと分かっていたと思う。こうして問題を不明瞭化する〈オーガニック・トレード協会〉のキャンペーンの虚偽が暴露された。

水耕栽培をどう定義するのかが、この会議において最も根本的な問題の1つだった。ドリスコール社、ホールサム・ハーベスト社と〈オーガニック・トレード協会〉は水耕栽培を禁止するという2010年度の推薦を支持すると主張するにもかかわらず、ドリスコール社とホールサム社のそれは水耕栽培ではないと断言しているからだ。彼らは水耕ではなく「鉢植え」だと主張するのだ。

オーガニックを失った日

「水耕オーガニック農業」についてのすべてが偽りだった。

中心となったロビー活動団体(The Coalition For Sustainable Organics=持続可能オーガニック農業連合)の名前は虚偽。じつはそれは水耕栽培でオーガニック農業をやる団体の連合だった。

ドリスコール社とホールサム社の鉢植え生産は水耕栽培ではないというのは嘘である。事実上すべての栄養は水溶液の形で供給される。そのような作物に対するほとんどの標準的な生産は「鉢」で行われるのだ。

消費者が喜んで水耕栽培の作物を購入するというのも嘘だ。それが事実なら、水耕栽培農家は自信をもって水耕栽培だと認めるはずだ。隠す必要などない。作物が水耕栽培だということを宣伝して、皆にその作物を選んでもらうだろう。水耕栽培を支持する消費者10万人が署名した嘆願書もない。キンボール・マスクによる水耕栽培の概要を聞いたあと、ダン・バーバーは言った。「それじゃ食欲がわかないな」と。

世界の貧しい人びとに食物を与えたい、という希望がおもな動機だというのも嘘だ。彼らはビジネスマンであり、オーガニック・ブランドで利益を得て、さらに金持ちになることが動機である。最近他界したホールサム・ウェーブ創設者のガス・シューマッハは、貧しい人や十分な福祉を受けていない人びとに食べさせてあげたい、という強い願いに動かされていた。ホールサム・ハーベスト社のセオ・クリサンテスの動機は違う。そんなことで人を判断したくはないし、シューマッハのように全員が聖人になれるわけではない。ただ、それについて正直であってほしいのだ。

水耕栽培がすでに受けている認可証を奪うのは間違っているというのも嘘だ。集中家畜飼養経営体(CAFO)は何年も「オーガニック」だとされているにもかかわらず、認証を取り消しにすべきだということは、皆が合意している。それに値しない生産者に認証を与えつづけるべきではない。そんなことをすればオーガニック農業の認証は生き残ることができない。

水耕栽培が2010年度の推薦に合致しているというのも嘘だ。2010年度の推薦は明らかに水耕栽培を禁止するものだった。現在の水耕生産の大部分は2010年度の推薦が通過した「あとに」はじまった。ドリスコール社は全米オーガニック基準委員会(NOSB)の既存の推薦を妨害していることを確実に認識していた。それは彼らが社員を「農家」だとして委員会に参加させていたことでも明白だ(これも虚偽)。

言葉を好き勝手に再定義する著名なロビイストらの屁理屈にもかかわらず、水耕が「土壌」だというのも嘘である。

水耕栽培は農薬を使用しないというのも嘘だ。農務省対策本部にプレゼンテーションを行った水耕栽培の2大事業では、害虫管理戦略の一環として農薬を常用している。

オーガニック認証がなければ水耕栽培が繁栄しないというのも嘘だ。マリオン・ブロムが証言したように、ヨーロッパにおける何千エーカーもの従来型温室栽培野菜の100%は水耕栽培で生産されている。ヨーロッパに残る土壌を利用した温室栽培野菜はオーガニックのみだ。土壌栽培を置き換えているということ以外に、水耕栽培に画期的なことは何もない。従来型の水耕栽培は、トマト、キュウリ、ピーマン、ベリーを畑で栽培する農家をあっという間に倒産させている。これは全米オーガニックプログラム(NOP)が何をするかにかかわらず起きている、新たな世界秩序だ。NOPにおける水耕栽培を禁止すれば、その代替法を、土壌利用の生産にとっての最後の安全な場所を生み出しただろう。それが土壌で栽培された作物を買える最後の場所だった。

温室栽培がエネルギー消費を節約するというのも嘘だ。オフシーズンに作物を栽培できるという利点はあるものの、温室栽培のほぼすべてが、屋外栽培よりもカーボン・フットプリントが大きい。輸送を考慮したとしてもだ。カーボン・フットプリントを削減しようと懸命に努力している温室栽培者の私自身がこれを言っているのだ。正直に話そう。温室栽培者は全員がこれについて懸命に努力せねばならない。私たちが起こす影響について嘘をついていては、これを達成することはできない。

水耕栽培の方が水の使用量が少ないため環境にいいというのも嘘だ。土壌のカーボン・スポンジを増大させることにより、崩れた水循環を修復することが真のオーガニック農業のおもな利点の1つだ。雨が大量に降れば雨水の流出を防ぐことができるばかりでなく、雨が止んだあと、必要に応じて植物を持続させるための水を維持することもできる。これは豊富な被覆植物を作り出し、それは雨滴の形成に必要な微生物を放出する。砂漠の拡大は水耕栽培の温室が不足してるからではなく、土壌のカーボン・スポンジの破壊が原因だと考えられる。水耕栽培事業は非常に局所的な形で水をリサイクルすることに優れてはいるが、地域の生態系の水の循環にはまったく役立たない。不良な農業慣行は地球の砂漠化を引き起こしている。水耕栽培がそれを逆転することはない。また、大規模な水耕栽培(ドリスコール社の1,000エーカー強の農場など)は、そのほとんどがブルーベリーやトマトのような作物を栽培することに非実用的な砂漠気候の下で行われている。そういった作物はやがてトラックで何千キロも離れた、ずっと温暖な気候に住む人びとに輸送されている。

水耕栽培のみが私たちを食べさせていけるというのも嘘だ。集約農業は土壌でも可能だ。空中に吊り下げたココナツ繊維の容器による栽培よりも収穫量は少ないが、それでもかなり高い収穫を得ることができる。私たちを食べさせるためにそういった集約農業が必要であるなら、それは可能なのだ。ヨーロッパでは温室野菜の真のオーガニック生産が拡大している。そこにはそれを保護する確実な基準があるからだ。

連邦プログラムは真のオーガニック農業基準を維持することができないというのも嘘だ。ヨーロッパはそれをやったし、現在も継続している。米国農務省が全米オーガニックプログラムを最高値の入札者に売却しようとしていることに反して、ヨーロッパはすでに整っている基準をさらに強化し、そこでの「すべて」のオーガニック生産が確実に土壌で、地中で行われるようにしている。

あまり資金のない若い農家を農業に参加させる方法は水耕栽培しかないというのも嘘だ。若い農家は群れを成してオーガニック農業プログラムを離れていく。その正当性をもはや信じていないからだ。彼らは土壌栽培作物をマーケティングする、みずからの代替システムを作り出そうとしている。

水耕栽培の討論は小規模の農家を支援することに関するものであるというのも嘘だ。ロビイストの言い分にもかかわらず、この討論は小規模農家についてのものではない。巨大な企業数社、おもにドリスコール社とホールサム社によって資金が提供され、動かされている。〈オーガニック・トレード協会(OTA)〉が、〈カリフォルニア州認可オーガニック栽培農家(CCOF)〉が、ユナイテッド・ナチュラル・フーズ社(UNFI)が闘う理由はここにある。

水耕栽培、集約的家畜飼養事業、土壌での作物栽培者すべてが大きなオーガニック農業コミュニティの一環であるというのも嘘だ。水耕栽培はオーガニック・コミュニティの一環ではない。教会にただ足を踏み入れたからといって、その信徒になれるわけではない。昔はそういう人たちを「ウィンター・シェーカー」などと呼んでいた。1年の農作業がすべて終わると、米国の宗教団体シェーカーのコミュニティに参加し、また農作業ができる時期になる春まで、そのコミュニティのスネをかじっていた人たちだ。そして春が来ると彼らは出て行ってしまう……。

オーガニックを失った日

水耕栽培をオーガニック農業と呼ぶことを許すことで、全米オーガニック基準委員会(NOSB)は全米オーガニックプログラムを偽りのものにした。

水耕栽培が主張するもののなかで真実があるとすれば、それは彼らがテントを大きくしたいということだ。テントを巨大にしたい。大きければ大きいほどいい。だがテント内に誰が入るかはどうでもいい。「すべて」の作物をオーガニックだと呼びたければ歓迎する。そして宣伝広告写真用に真のオーガニック農家がカメラの端にいてくれることを願っている。そうすれば「ほら、私たちは皆協力している。皆一緒に頑張っている」と言えるからだ。だが現実にはテントは大きくなっていない。ただテント内に誰が存在するかを変えているだけ。真のオーガニック農家は離れていくからだ。1年経てば、または10年経てば、彼らは出ていく。

オーガニックを失った日

土壌栽培の農家で唯一、水耕栽培認証を支援している人がいた。それはCCOF会長だった。それ以外の土壌栽培農家は、全員が水耕栽培を除外するよう証言した。

2日間の証言のあと、委員会は審議に移った。私たちはソイル・セブン(土壌栽培支援7人)やハイドロ・エイト(水耕栽培支援8人)の意見を聞くことができた。ソイル・セブンは7人のNOSB会員で、最初からオーガニック基準を保護しようとしてきた人たちだ。彼らは通過に必要な10票を獲得するため、妥協案の作成に骨を折った。彼らはオーガニックとは何を意味するかについて雄弁に語った。私はそのひとりひとりの言葉に感動した。デーヴ・モーテンセンが話し終わったとき、私はただ優れた農家だけでなく、もっと良い人間になりたいという刺激を受けた。彼らはオーガニック農業運動への誇りをもたせてくれた。

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オーガニック農業保護に立ち上がったNOSB会員、ソイル・セブンの面々。エミリー・オークリー、デーヴ・モーテンセン、ジェシー・ブイー、ダン・サイツ、フランシス・シック、スティーブ・エラ、ハリエット・ベハー

ハイドロ・エイトが話はじめたとき、その内容は分かりにくく支離滅裂だった。彼らは自分たちが話してる言葉を信じていないようだった。自分たちの行いを恥じているようにも見えた。彼らは自分の投票にいろいろと奇妙な理由をこじつけた。それは水耕栽培を禁止する2010年度の推薦を支援したからだと言う人もいたのだ。 これほど奇妙なことがあろうか。ある者は環境を保護したいからだと言った。明らかにコンクリートを敷き詰めることによって……。ある人はミズーリ州ファーガソンで発生した射殺事件のあと、水耕栽培で「オーガニック」作物の価格を手ごろにし、貧しい人たちも購入できるようにしたかったと語った。もう1人はアメリカ先住民族がその土地に強いつながりをもっているため、水耕栽培を支援すると述べた。また1人は消費者から何も聞いていないと言った。おそらく先に提出された8万6千人の署名を集めた消費者嘆願書について聞き逃したに違いない。

その推薦が分かりにくいとか、推薦が水耕栽培を許可するために利用されるかもしれない、と言った人は誰もいなかった。オーガニック栽培は土壌で、地中で行うことを求める人は誰もいなかった。彼らは断固として水耕栽培を認める方向のように見えた。大半の人は土壌を大切にしたいと言いながらも……。

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NOSB理事のトム・チャップマン。彼の指導下で、水耕栽培を禁止する推薦は敗北した。同氏はクリフ・バーの食品材料調達マネージャーである

オーガニックを失った日

集会で話すストーン・バーンズの農場マネージャー、ジャック・アルジェ

ここで、NOSBが水耕栽培を許可するための採決をしたのではないことに言及しておく価値はあるだろう。それを禁止する新たな推薦を通過させることができなかっただけだ。マイルス・マクエボイによると、変更が求められ、3分の2の投票がなければ、実施可能な採決にはならないとのことだ。ということは、全米オーガニックプログラム(NOP)に対する継続的推薦は2010年度の提言のままとなる(これは水耕栽培を禁止する2016年度の非拘束決議でさらに支えられている)。NOPはいずれの推薦に対しても無視/反対をつづけるだろう。

結局、問題だったのは論拠が十分強固でなかったとか、明確でなかったことではない。こちらの主張の正しさを説明できなかったわけでもない。それはたんにこのように重要な決定を下すのにふさわしくない人びとがそれを担当していたにすぎない。委員の多くは、アメリカ全体のために「オーガニック」という言葉を再定義する資格がなかっただけだ。彼らはアルバート・ハワードの重要な書籍『土壌と健康』など読んだこともなければ、この運動を刺激したイブ・バルフォアの書籍『生きている土』も読んだことがない。私たちが話していることについてもほとんど理解していない。「土壌がなぜ重要なのか」その質問に彼らは答えることができない。人間の健康は土壌の健康を基盤とするという観念について、あきれた表情を見せる者もいた。彼らはオーガニック運動を保護し、擁護するために農務省長官のトム・ヴィルサック(彼自身、オーガニック農業については何も理解していない)によって選ばれた人たちだ。しかし彼らはその役割を果たすことができなかった。そのなかで最も優秀な人たちは、これから先何年も自分たちが起こした危害に悩まされることになるだろう。

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最終的には多くの人たちは投票自体をしたくなかったが、私は清き1票を投じる権利があることを主張した委員、スー・ベアードに敬意を表したい。彼女は悲劇的にも間違った方向に投票したが、少なくとも延々とつづく曖昧さに終止符を打つことを主張した。私たちがついに前進することができるように。

NOSB表決の勝者は圧倒的に水耕業界だった。オーガニック作物として販売される水耕栽培作物の川はこうして激流となる。彼らは自分たちの作物を「オーガニック認定」と不当に表記することで、何百万ドルもの収益を上げることになる。

彼ら以外はすべて敗者だ。

当然のことながらオーガニック農業運動は敗北した。もはや農務省との協力関係はない。これまで以上にオーガニック・コミュニティのリーダーシップを必要としている世界で、これは真に悲劇的な出来事だった。この危機的な時期に、私たちの手からマイクロフォンが奪われてしまった。農務省はひとつの方向に進み、オーガニック運動は別の方向に進むだろう。

オーガニック認定を構築するため懸命に働き、力を費やした農家らは敗北した。

〈オーガニック・トレード協会〉を信頼した真のオーガニック農業の支持者は敗北した。同協会は彼らをひどく裏切ったのだ。

私たちのために農務省へと、何年も運動を提唱してきた非営利団体は敗北した。

反対派のほとんどでさえ敗北した。〈CCOF〉はその魂を失い、間もなくその農家のいくつかを失うことになるだろう。彼らは次世代の多くをも確実に失うことになるだろう。

〈オーガニック・トレード協会(OTA)〉は、オーガニック・ブランドに莫大な危害を加えた。この表決の結果オーガニックの売り上げは、これからの10年間に数十億ドルの売上を失うことになるのではないかと思う。もちろん「オーガニック認定」作物の売上は成長をつづける。皆が工業的食品システムに取って代わるものを必死に探しているからだ。多くの人たちは、「オーガニック認定」作物がそのような代替品だと勘違いするだろう。そして不用心な消費者に対して「オーガニック」だと偽って通用させることで、水耕栽培作物の売上は急上昇する。水耕栽培作物の成功に勇気づけられて、集中家畜飼養経営体(CAFO)による「オーガニック」は急成長する。CAFO組み入れを強制した「新オーガニック農業」支持の上院議員は大勝利を収めた。しかし消費者が不信感を抱くようになるにつれて、他の〈OTA〉の利害関係者はビジネスを失うことになるだろう。

「水耕オーガニック」ラベルの提案をして、「CAFOオーガニック」ラベルや、「GMOオーガニック」ラベルの表記も検討されるようになるかもしれない。いずれにせよ、これらはどれも農薬の使用を禁止しているのではない。

いちばんの敗者は消費者だ。工業型農業の一団がこぞって参入すれば、本物の食品を見つけることはますます困難になる。私たちは皆できるかぎり「オーガニック認定」商品を買おうと努める。だがいま、そのような認証に対する信頼感は薄くなりつつある。私たちから信頼を得る資格は薄らいでいるのだ。

委員の1人、エミリー・オークリーは会議でこう語った。「2016年、オーガニック認定農場の73%は180エーカー以下の小規模農場だった。同じ年、水耕/養液栽培/「鉢植え」は、合計でも農務省認定オーガニック農場のわずか0.4%だった」つまり認定オーガニック農場の1%以下が水耕栽培だったことになる。

わずか少数のためにこれほど多数の人びとが、こんなに多くを失うことはめったにないことだ。

オーガニックを失った日

次世代のオーガニック農業のリーダーの1人、農家アナイ・ベダード

多くのオーガニック農家と消費者は現在、米国農務省がパートナーとしては無価値であることを確信した。多くの人たちがこのニュースをまだ耳にしていない。私たちは全米オーガニックプログラムを懸命に救おうとしたが、失敗に終わった。

私たちはいま何か別のラベル表記を作ることを協議している。真のオーガニック作物を示す、追加のラベルを付けたいと考える人たちがいる。別の人は全米オーガニックプログラムとは無関係の独立したラベルがいいと言う。〈ロデール・インスティチュート〉が推進している再生型オーガニックのラベルを追求したらという人もいる。だが行動を起こすときが来た。私たちは努力したが失敗に終った。いまは前進するときだ。私たちの相違を尊敬しながら、真のオーガニック農業運動を共に築いていくことにしよう。米国農務省を相手に闘うよりも、より楽しいものになるだろう。農務省は私たちがそれを必要とするよりも、ずっと私たちを必要としてきたのだから。

オーガニックを失った日

表決が終わって帰路につこうとしていたとき、過去2年間、水耕栽培を支援して全米各地の会議に出席していたフレンドリーなロビイストの横を通り過ぎた。彼はNOSBを説得して、水耕栽培を許可するよう懸命に働いた。彼と私はいつも口論していた。彼は少し同情しながら「厳しい表決だったね」と私に言った。

私は返事をした。「全米オーガニックプログラムを台無しにしたことは分かっているんだろうな?」と。

彼はしばらく考えてこう言った。「どっちにしてもあのプログラムを信頼していたわけじゃないからね」

オーガニックを失った日

長年にわたる指導と努力を分かち合ってくれたエリオット・コールマンに大きな感謝の意を述べたい。コールマンとレッド・ファイヤー・ファームのサラ・ビオランド

オーガニックを失った日

頑張って、失敗して、また頑張る。これまでよりうまく失敗する。全写真提供:Keep the Soil in Organic

オーガニックで土壌保護

オーガニック農業は土壌の肥沃を改善することを基盤としています。デーヴ・チャップマンやオーガニック農業パイオニアの面々と手を組み、オーガニック作物は土壌で作るよう、また水耕栽培作物をオーガニック認定と表記することを拒否しましょう。

嘆願書に署名する

この記事はeメールのアップデートとして初出しました。さらに詳しい内容をご希望の方、この問題についてお知りになりたい方はkeepthesoilinorganic.orgをご覧ください。

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