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パリ・プロジェクト:COP21会議、気候に関する歴史的条約と疑問だらけの将来で閉幕

イーサン・スチュワート  /  読み終えるまで12分  /  アクティビズム

2週間の気候会議の終盤にル・ブルジェにおいて即興の抗議行動に参加する〈350.org 〉創始者ビル・マッキベン(めがねとレッドソックスの野球帽)Photo: Kodiak Greenwood

これは、国連主催による気候変動世界会議をパリの現場で取材する『Santa Barbara Independent』紙総合監修者、イーサン・スチュワートがお届けする記事の第2弾です。まだお読みなってない方は第1弾もご覧ください。

パリのパタゴニア

COP21会議中にパリで唱えられたもっとも明確で重要なメッセージのひとつは、国際的なビジネス界が利益マージンよりも母なる大地を優先することのメリットをついに理解するようになってきたということだ。2週間の会議中、CEOやさまざまな内部関係者、監視団体のあいだで交わされた数々の小討論会やスピンオフ・トークでの証言で明らかなように、民間産業は、カーボン・フットプリントの削減、地球に配慮した企業ポリシー、また明確な地球支援のブランド・アイデンティティをもつことがどう最終損益に反映するかについて認識しはじめた。端的に言うと、これはもはやたんに倫理基準に導かれたエコに精通した事業の運営方法ではなく、たんに健全な財政ポリシーになったということになる。

これらの討論のなかでほぼ間違いなく最大と呼べるものは、パリの金融街にあるポトキ・ホテルにおけるニューヨーク・タイムズ誌主催の2日間のそれだった。公式には「未来のエネルギー会議」と呼ばれるこの2日間のおしゃれなイベントでは、世界中のエネルギー分野の大物ならびに各国首脳、そしてイケアCEOのペーテル・アグネフェールとパタゴニアのローズ・マーカリオがいま話題となっているテーマについて話し合った。

マーカリオは、パタゴニアの環境アクティビズム担当副社長リサ・パイク・シーヒーを同伴してパリに向かい、ニューヨーク・タイムズ誌のイベントで講演したばかりでなく、〈1% フォー・ザ・プラネット〉支持者のための会議に参加し、ル・ブルジェでの進展を目の当たりにした。ニューヨーク・タイムズ誌のパネル・ディスカッションのあと、マーカリオは報道関係者との会見中にこう述べた。「いまはとても重要なときです。私はこれが最後のチャンスだと思います。ここで何の成果を見出せないまま終わったら、控え目に言ってもまずいことになるでしょう」

ポトキ・ホテルのステージでイケアのアグネフェールとペアを組んで、企業がいかにして消費者を環境支援の意思決定へと導くのかについて討論したマーカリオは、パタゴニアが収益を犠牲にすることなく、それをいかに実現したかという詳しい状況を説明した。Worn Wearフットプリント・クロニクルなどのプロジェクト、パタゴニアがみずから課した地球税などを強調したマーカリオは、消費者意識がますます成長する現代において、顧客ベースに向けた環境問題重視のメッセージが成長を刺激していることを示した。「当社が実施するすべてにおいて、私たちは環境への影響についての議論を高めようとしています」とマーカリオは説明。「収益と人と環境のあいだには緊張関係があり、ビジネスはそれを認識する必要があると思います。私たちには将来の世代に対する責任があるのです」

つづいてブラック・フライデーにおける「このジャケットを買わないで」キャンペーンを一例として挙げ、討論のテーマは消費へと移行し、人びとを無謀な消費の影響に気づかせるという、ビジネス成長からは逆に見えるモデルについて検討した。「必要以上に物を買ってはなりません」とマーカリオは言う。「地球が再生することのできる資源をはるかに超えた量を消費することになるからです」  さらに重要なこととして、このアプローチは今日、これまでよりさらにうまく機能するようになったと彼女は付け加えた。「人びとはいま、何を買っているのかについて、より強く認識しています。価値観に投資するようになっているのです」

パリ・プロジェクト:COP21会議、気候に関する歴史的条約と疑問だらけの将来で閉幕

「消費者の苦境」と題されたCOP21認可パネル討論で、パタゴニアCEOローズ・マーカリオがイケアCEOペーテル・アグネフェールと登場。ニューヨーク・タイムズ誌の会議兼ライブジャーナリズム担当シニア編集者のチャールズ・デュヒッグが司会を務めた。Photo: The New York Times

パリ・プロジェクト:COP21会議、気候に関する歴史的条約と疑問だらけの将来で閉幕

パリのパタゴニア:環境アクティビズム担当副社長のリサ・パイク・シーヒー、CEOローズ・マーカリオ、グローバルPR&コミュニケーション担当ディレクターのアダム・フェッチャー。Photo: Kodiak Greenwood

ビデオ:ニューヨーク・タイムズ会議

パリ協定

先週土曜日の夜、空がもう暗くなってかなりの時間が経ったころ、COP21議長を担当するフランス外相ローラン・ファビウスがパリから北へ数分の場所にある、改造された旧航空機格納庫において会議用の小槌を振り下ろし、歴史が誕生した。運命の小槌の音が、強く喜びに満ちた一斉の拍手でル・ブルジェの総会1号室全体を沸きあがらせ、ファビウス外相の交渉団、何十名の国連役員、そして出席していた何名もの外務大臣らが跳ねるように立ち上がり、新たに生まれた世界史上もっとも重要かつ広範な地球志向の国際法制定を祝った。その直後、集まった代表らに対してフランソワ・オランド仏首相は、情熱的なスピーチでさらに大きな喝采を浴びた。「フランスはこれまで数々の革命を体験してきた。しかし今日、最も美しく最も平和な革命を目撃した」と。

だが実際には、どういった種の革命が起きたのだろうか。ほぼ200か国の外相や国務長官が、39ページのパリ協定の批准に際して苦闘の末に手に入れた譲歩を記念したが、本当には何を達成したのだろうか。もっと簡単に言えば、これで十分なのだろうか。私たちの知っている自然の世界をさまざまな化石燃料依存による着実で明らかな劣化から救う枠組みを、この協定が提供するのだろうか。

残念なことに、広範囲で数世代にわたるすべての重要な事象と同じように、その回答は時間が経ってみないことには分からない。しかし、悲観的な予想はさておき、いまこの場でこの条約から具体的に得られるものもある。適切な観点でみるとき、それは希望を奮い起こす祝賀と心を痛める狼狽の両方を(しかもしばしば同時に)生み出す、実際かつ具体的なものだ。優れた適切な妥協がつねにそうであるように、肯定面と痛みの両方を兼ね備えるパリ協定は、その内容を読む偏見のない人を精神的不協和へと導く。

パリ・プロジェクト:COP21会議、気候に関する歴史的条約と疑問だらけの将来で閉幕

COP21のローラン・ファビウス議長とチームが夜遅くの交渉を統括。Photo: Kodiak Greenwood

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「100% Renewable」行動中に手をつなぐアクティビストたち。Photo: Kodiak Greenwood

まず、最も重要なことだが、楽観的な世界観を好む人にとって、この合意は近代における歴史的な転機となることは疑う余地のない事実だ。地球上のほぼすべての国が、次世紀のいつかに化石燃料を使わない未来へ向けて炭素排出量を削減することを史上はじめて誓約したのだから。それ自体においてこの約束は、化石燃料に明らかに依存している世界の住民にとって歴史的だ。端的に言えば、この協定の包括的目標は、2100年末までに地球の2℃の気温上昇を「十分に下回る」レベルに抑えるという公式の指令で具体化され、さらに気温上昇を「1.5℃にまでに制限するよう努める」というおまけまで付いている。後者の目標はとくに、海抜の低い島国や海岸沿いの街を飲み込んでしまう海水位上昇の激増を起すことなく、地球が絶えることのできる産業革命後の最大限の気温上昇であるということを科学が広く裏付ける数字であるため、この交渉プロセスに参加した多くの人にとって大勝利だった。また「カーボンニュートラル」の惑星を約束する追加文もある。つまり地球規模で作られた排出量は、今世紀半ばまでに自然界がそれを処理できる能力を上回らないようにするというものだ。

2つ目に、この協定はアメリカや欧州連合の国々のような先進国が、化石燃料の不要な未来へと世界が総合的に推移するための資金供給を助ける責任をもつと概略している。さらに、発展途上国および気候関係の混乱で最も影響を受ける国々は、気候変動による損害を軽減し、二酸化炭素削減目標の実施、そして変化をつづける世界に適合するために財政的支援を受ける。この資金の少なくとも一部は、大小の国によるさまざまなレベルの寄付から成る年間1千億ドルの「世界気候基金(Global Climate Fund)」から出される。さらに、この毎年1千億ドルという数字は同協定が望むところの「下限」であって、「上限」ではないことを明確に説明する文章がある。

3つ目に、パリ協定は2018年を初年として5年おきに審査する各国が温室ガス削減の目標をいかに達成するかについての国別の計画、ならびに達成された事柄の正確性と有効性の調査を義務づけている。文書化されたこれら3つの基本要素を考慮するとき、歴史的重要性があることに反論するのは困難である。とくにわずか前まで気候変動が現実であることさえ認めなかった世界的背景を考えるとなおさらだ。国連事務総長の潘基文が日曜日夕刻にこう総括した。「歴史上はじめて、世界中すべての国がガス排出を抑制し、回復力を強化し、気候問題に対処する共通の目的に参加を誓い合った。かつて考えられなかったようなことが、いまや止められない勢いとなった」と。

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「レッドライン」抗議運動が凱旋門からエッフェル塔に移動。アクティビストらは交渉者に超えてほしくない線を象徴した赤を着用した。Photo: Kodiak Greenwood

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15,000人の威力。 フランス政府は安全保障上の懸念により会議初頭に公共での集会を禁止したが、それがこの集会をさらに感銘を与えるものにした。Photo: Kodiak Greenwood

パリ・プロジェクト:COP21会議、気候に関する歴史的条約と疑問だらけの将来で閉幕

時代の象徴。Photo: Kodiak Greenwood

もちろん、諺にもあるように、「悪魔は細部に宿る」であり、この場合そのような細部、あるいは細部の欠落が、たしかに最も「悪魔」であると言える。事実、パリ協定の最終草稿が把握・翻訳されて日曜に承認を受ける状態にあるときでさえ、気候に対する公正を訴える1万5千人から2万人のアクティビストがパリの路上に乗り出し、この取り決めは明らかに不十分だという懸念を表明した。その中核にあるのは、COP21までの活動の一部として186余りの国々が提出した個々の温室ガス削減計画では気温上昇目標を達成することが絶対できないという問題だ。2週間の会議中、その数字を処理しているさまざまな科学者たちは、達成目標には程遠いものだと述べた。現在公約されているすべての誓いが数年のうちに忠実に守られるなら、世界的な気温上昇は最終的に2.5℃〜3℃となり、1.5℃という希望からはかけはなれた危険な数字となる。

さらに、協定は概して法的拘束力のあるものではない。少なくとも最も重要な箇所においては法的拘束力がない。多くの国々、とくに発展途上国や欧州連合の国々は、上述の具体的な二酸化炭素排出削減の国家的計画が法的に執行可能で、数年のうちに約束を順守するよう国々に強制できるようになり、そうでなければ厳しい制裁を与えるなど、取り決めに真の執行手段を持たせることを期待していた。しかしながら、そのような文に対するアメリカ主導の強力なロビー活動のおかげで、約束に関連する拘束力のある規定は存在せず、したがって誓約はまったく実現されないのではという懸念が残っている。ただし、上述の削減計画の作成、ならびにこのような削減をいかに達成するかという詳しいロードマップ提供を義務づける拘束力のある文が存在することは指摘しておかなければならない。だが、これらの目標を達成できなかった場合でも、国は本当の処罰を受けることにはならない。

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シャンゼリゼ通りを進むレッドライン抗議デモ。Photo: Kodiak Greenwood

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凱旋門において。Photo: Kodiak Greenwood

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協定が成立したいま、本当の仕事がはじまる。Photo: Kodiak Greenwood

明らかに理想的とは言えない協定の要素としては、他にも、海運や航空運輸関連の排出についての取り組みがないこと、二酸化炭素制限に関する具体的な用語を定義する文がないこと、価値判断や、国と国のあいだでの将来の通商活動、化石燃料の段階的廃止や気候変動の現実への適応に努力する必要のある国々に対していかに資金提供を行なうかなどの具体性に欠けていることなどがある。はっきりさせておくが、この協定には、そのような財源を整えること、概算として2020年を初年に毎年1千億ドル見積もること、そして先進国およびアメリカのような歴史的に大量の公害を発している国は、マーシャル諸島やバングラデシュのような十分に発展していない他の国や財政的余裕のない国より、もっと出資する責任をもつことは求めている。だが、その工程がいかに起きるのかは何も具体化されていない。その代わりに協定は、11月にモロッコで開催される次回のCOPまでそのような詳細の決定を遅延させている。

ということで、台帳のプラスとマイナスの両面を同時に考えると、パリ協定はたしかに祝賀に値するものとはなったが、同じく慎重な現実主義を要求するものともなっている。この取り決めが来るべき世代にわたって真に歴史的な影響を及すためには、取り決めを調停した国々が妥協プロセスの本質的部分としてみずから作成したいい加減な抜け穴に身を隠すのではなく、編さんを手伝った条文の大望に向けて前進しなければならない。その序文に明確かつ情熱的に記述された目標を本当に達成するためには、この合意の本当の仕事は国全体および地方レベルで起きなければならないのだ。欧州連合の交渉責任者および気候委員であるミゲル・カニェテが土曜の夜にこう総括した。「この歴史的瞬間を楽しまなければならない。しかし、厳しい仕事ははじまったばかりだ。これから約束されたことを達成しなければならないのだから」と。

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Photo: Robin Howson

イーサン・スチュワート(左)は『Santa Barbara Independent』紙の総合監修者でThe Cleanest Lineのゲスト投稿者。ケープコッドで生まれ育ち、1998年のエルニーニョの冬以来サンタバーバラを第二の故郷と呼ぶ。インスタグラムは@thelast3daysで。

コディアック・グリーンウッド(右)はカリフォルニア州ビッグサー出身の写真家。インスタグラムは@kodiakgreenwoodで。

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