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ウエストコーストの真の秘宝

マイルズ・マスターソン  /  読み終えるまで9分  /  サーフィン

大規模な採鉱によって海岸線は寸断され、南アフリカ有数の手つかずのビーチと波に近づくことができない。あまりにも手のつけようがないありさまだ。

ケープ・ウエストコーストのあちこちで砂堆は自然の完璧な造形を見せてくれる。写真: Alan van Gysen

南アフリカのケープタウンから北に数百マイルも続くケープ・ウエストコーストは、人口は少なく、手つかずの自然が残る印象深い場所だ。東にシダーバーグ山脈がそびえ、西に冷たい大西洋を望むその海岸線は、自然環境、海岸沿いのコミュニティ、世界有数の波があり、ダイビングやフィッシング、トレイルランニング、サーフィン、カイトなど、さまざまなレクリエーションや観光の可能性を秘めている。また、この地域は先住民族の歴史も深く、生物多様性のホットスポットでもある。

しかし今、ここでは有力な採鉱会社が違う意味の秘宝を発掘しており、そのせいでウエストコーストは、ケープタウン市民と、政府を後ろ盾にする大手採鉱会社の戦場に変わろうとしている。

オーストラリア系企業のMineral Sands Resources(MSR)のトーミン採鉱場は、オリファンツ川河口近くの孤立した海岸に位置し、そこは湿地帯や希少な生物が生息する地域だ。最近、MSRはオリファンツ川北側での現在の採鉱事業の拡張を許可され、物議を醸した(それは「10ビーチの拡張」と呼ばれている)。そのせいで、いくつかのビーチや質の高いサーフスポットへの市民の立ち入りが禁止されるからだ。

「MSRが採掘しているビーチでサーフィンをやろうとしたら、そこらじゅうに『立入禁止』の看板がある。あそこの警備は常に厳戒態勢だよ」と南アフリカのビッグウェーバーでパタゴニアのアンバサダーのマイク・シュレバッハは言った。彼はそれをきっかけに、非営利組織「Protect the West Coast」(PTWC)を立ち上げた。破壊行為とビーチへの立入規制に激怒した僕も、PTWCのメディア担当として活動に加わった。

ウエストコーストの真の秘宝

南アフリカの貴重な海岸線を掘り起こす不愉快な機械を見つめるサーフ・アンバサダーのマイク・シュレバッハは。写真:Xavier Briel

PTWCをはじめとする複数の活動団体が主導し、地域住民は、海岸線の砂浜に含まれる貴重な重鉱物を取り出そうとする採鉱会社の攻勢に抵抗している。これらの鉱山会社は、海岸然の広大な範囲を閉鎖し、景観を破壊し、地下の資源を手に入れようとしている。

「アクセスが断たれ、今では市民よりも採鉱に与えられる海岸線の方が増えているわ」とウエストコーストの反採鉱活動家スザンヌ・デュ・プリシスは語る。彼女は何年にもわたってこの脅威と戦っている。

かつて、採鉱場のほとんどは、1平方キロ当たりの人口が3人に満たないようなもっと北の過疎地域にあった。しかし、採鉱会社は次第に欲深くなり事業を拡大している。ウエストコースト南部の比較的人口の多い土地で新たな採掘権や試掘権を申請しており、スザンヌはその状況を「雪崩のような申請」と呼んでいる。

世間の目を避けて、採鉱会社は重機でビーチを崩し、トラックいっぱいの砂を処理工場へ運び、そこで砂粒を鉱物から分離する。ビーチにとって、それはもう紛争地さながらの大惨事で、沿岸の地形は取り返しのつかない不毛な砂山と溝に成り果てる。

ウエストコーストの真の秘宝

見えず、入れず。採鉱会社は宝石や鉱物を輸出し、市民を追放している。写真: Alan van Gysen

そればかりか、採鉱会社は一般市民が海岸へ立ち入る法律上の権利だけでなく、先住民の地権も無視するつもりらしい。現在、採掘や試掘が行われている地域の多くは、南アフリカのサーファーだけでなく、世界屈指のサーファーが頻繁に訪れるサーフポイントだ。採掘が広がれば、これらのポイントは広範囲にわたって封鎖され、サーファー、漁師、一般市民に対し、厳戒態勢が敷かれる。

「鉱業権が市民権よりも重んじられている」海岸沿いに土地を所有する地元の農夫で、活動家であり、PTWCのメンバーでもあるジャン・エンゲルブレヒトは僕に言った。

外資系採鉱事業が最近、クラインジーの郊外にある古い農場の鉱業権を買収し、海岸の一画から市民を締め出したが、そこには最高のライトハンドポイントブレイクと手つかずのビーチがいくつか残っている。それらも今ではウエストコーストの別の場所へのアクセスも武装警備員により禁止されている。こんなことが、いったいどこまで続くのだろうか?

ウエストコーストの真の秘宝

噛んだ後はポイ捨て。大手採鉱会社はたいてい、自らの与えた被害に対する解決策をもっていないし、そもそも気にもしていないようだ。写真:Alan van Gysen

案の定、これらの採鉱場は地域の紛争の種になっている。干ばつの多いウエストコーストは、経済的に厳しく、点在する市街地や農村は、農業、漁業、観光業で辛うじて生計を立てており、社会的にも多様な場所だ。この地で長年にわたって採鉱を正当化してきた理由は、経済の活性化である。しかし、採鉱会社による地域社会への有意義な投資を裏付ける証拠はほとんどなく、見たところ環境と地域住民に関して無視を決め込んでいる。さらに酷いことに、地元を犠牲にしてこの土地で利益を得るにもかかわらず、情報公開や市民の承認プロセスへの参加を抑えるために、コソコソと申請を行っているのだ。

南アフリカには、アパルトヘイトの後遺症が残っている。それは内陸部の大半は農民が土地を所有しているのに対し、沿岸一帯はアフリカ民族会議が管理する公有地になっているということだ。かつて農民は、他人が敷地内でキャンプをしたり、海岸へ出ようと横切ったりすることを阻止していたが、その後、そのような行為が公平性や持続性がないことに気付いて、よりソフトな対応をするようになった。ジャンによると、問題の1つは、市民の合法的な地役権をもって通行を可能にすべき地方自治体が、それをしないことである。「自治体が道路を作り、管理し、フェンスを築き、海水浴やキャンプの施設を建設すべきだが、そのための資金がない」と彼は言う。採鉱会社は、一般市民が立ち入る権利のある場所に通路を設ける代わりに、フェンスで海岸を封鎖し、警備員を雇ってパトロールさせている。汚職疑惑の拡散、自国民よりも採鉱会社の収益を優先する政府、問題は困難で複雑だ。

ウエストコーストの真の秘宝

躍動しながらも、いずれ尽きていく資源は、はるか沖のライトハンドの波だけではない。写真:Alan van Gysen

それでも、採鉱に対する地域社会の抵抗は、アパルトヘイトの名残で分断されていた地元の人々を、新たな形で団結させた。祖先の土地へ立ち入る権利を断固保護しようとする先住民コイサン族の代表者は、市民集会で環境活動家、漁師、農民と肩を並べて砂浜の採掘・試掘の申請に反対し、こうした集会は次第に参加者を増やしている。「この土地は我らの遺産だ」コイサン族の長老ヨハネス・リンクスの言葉は、ランバーツ湾の漁村で開かれた満員の白熱した集会で、拍手喝さいで迎えられた。「ウエストコーストのどこにおいても、我々は採鉱に『ノー』と言うのだ」

「採鉱会社は、不法侵入禁止法を盾に、漁猟で生活を営む我らから海を遠ざけようとしている」長老リンクスは続けた。「私たちが力を合わせれば、私たちの環境が欲望から守られ、そして私たちの子孫が今後数世紀にわたってそれを享受できるようにしようではないか」伝統漁法を守っている漁師も、数年間免れていた遠い北での強引な規制を、次第に近づいてくる採鉱場が課そうとすることを危惧している。「それは漁村の生計と食糧確保を脅かすだろう」地域の漁師を支援する地域施策「Masifundise(マシファンダイズ)」のプログラムマネージャー、カーメン・マナリノは言った。

ウエストコーストの真の秘宝

Protect the West Coastはビーチに赴き、声を上げる。写真:James Lowe

2021年4月、僕らは最初の抗議行動を起こした。マイクが指揮するピケラインとトーミン採鉱場を通り抜ける無許可のトレイルランニング。注意を喚起し、立入規制の合法性を問うためだ。ランナーを先導したドム・ジーザスは、雇われ警備員と対決したそうだ。「激しい言い合いになり、すべてのランナーをビーチから追い出せと言われた」という。さもなければ拘束するとも。ドムによると、トーミン採鉱場は海岸線の30~40kmにわたって、実質的に市民の通行を遮断している。そこには、最高のサーフブレイクがいくつかあり、やがて破壊される運命の素朴な風景が続いている。

8月、ケープタウンで最も人気のある13のビーチで、僕らは再び行動を起こした。トーミン採鉱場をまねて、砂浜の一画を封鎖して「立入禁止」の標識を設置し、市民に注意と支援を呼び掛けた。さらに最近では、トーミン採鉱場の近くで特別なサーフ・イベント「Namakwa Challenge(ナマクワチャレンジ)」を開催するAmandla Surf Foundation(アマンドラサーフ基金)と提携した。生粋のウエストコースト・サーファーの中には、このイベントが「秘密のスポット」で開催されたことを嘆く者もいたが、マイクはもっと現実的だった。「サーフィン、観光、スポーツ、フィッシング、保護活動、農業などはいずれも、この地域で鉱業に代わる現実的でサステナブルな長期的選択肢だ」と彼は言った。「鉱業はウエストコースト全域を奪おうとしている。これらの選択肢を推進しなければ、将来そこにはサーフィンどころか、何もなくなるだろう」

これまでに、PTWCはその活動やメディアによる報道の甲斐あって、この問題をめぐり広く知られるようになり、市民の強力な支持とソーシャルメディアでフォロワーを獲得している。最近、この問題をテーマにした映画「Ours, Not Mine」も公開した。また、さらなる活動や採鉱場に対する訴訟を支援したりする計画もある。しかし、この先何があろうと、天然資源の搾取に抵抗し、海岸へ立ち入る権利のために立ち上がらなければならないのは、この地域の人々だ。

さいわい、僕らのやる気は満々。戦いはまだ始まったばかりだ。

ボランティア、寄付、ソーシャルメディアのフォロー、陳情書の署名を通じて、このすばらしい海岸線の保護に協力してください。詳しい方法はProtect the West Coastのウェブサイトをご覧ください。

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