聖なる源流
ブリティッシュ・コロンビア北部の遠隔の山岳地に「セイクリッド・ヘッドウォーターズ(聖なる源流)」が存在します。そこはブリティッシュ・コロンビアのサケの生息地として最も重要な3つの川、スティキーン、ナース、スキーナが生まれる場所です。北米最大の弱肉強食の生態系のひとつを支え、ファースト・ネイションズのタールタン族の伝統的な領土でもあります。その大部分は保護されておらず、提案されている無数の鉱山開発計画が、いま、この土地の水、野生動物、そして文化を脅かしています。
提案されている最大のものはシェル社の石炭床メタン(CBM)プロジェクトです。セイクリッド・ヘッドウォーターズの中心におよそ100万エーカーの借地権をもつシェルは、大量な水試用を要するハイドロフラッキング(水圧破砕法)工程でメタンガスを採掘します。それはヘッドウォーターズを汚染し、水のレベルを変えてしまう恐れがあります。また迷路のように入り組んだ道路とパイプラインが抗口を結び、現在手つかずの野生動物の生息地をバラバラにしてしまいます。
信じられないことに、タールタン族長老から成る小さなグループは、世界第二の企業であるシェル社のCBM計画の阻止に成功しました。長老たちの逮捕につながったバリケードを含む彼らの抗議は、ブリティッシュ・コロンビアの州政府にCBMプロジェクトの一時停止命令を課すことを説得しました。しかし、タールタン族の故郷の運命はこの猶予期間が切れる2012年12月にはまた危機に陥ります。
シェル社のCBM借地権から20マイル以下の場所、おそらくストーンシープの世界最大の生息地であるトダジン山では、銅と金の露天掘鉱山が提案されています。「空にそびえる野生生物保護区」としてしられるトダジン山は、このストーンシープの群れが知る唯一の生息地であり、これまで、忍び寄る工業開発からの避難所でした。ブリティッシュ・コロンビア州政府はこの群れの価値を認識し、2001年に「トダジン・サウススロープ・プロビンシャル・パーク」を設立、冬の生息領域を保護しました。しかし2010年には、群れの春、夏、秋の領域を囲むこの台地のほぼ全体にわたる採掘許可を発行しました。この借地権が採掘につながると、群れは生息地の大部分を失い、この台地から追い出されてしまいます。
しかしながら、セイクリッド・ヘッドウォーターズを目にした人はほとんどおらず、その近くに住む人びとはごくわずかなため、その保護を訴える人びとの集まりは、情熱的で効果的ではあっても、小さなものです。過去3年間にわたり、私はこの声を高め、この地域に注目をうながすためにセイクリッド・ヘッドウォーターズの地形、野生動物、文化を写真に収めてきました。私はこの土地を愛しはじめ、自分の第二の故郷だと考えるようになりました。自分自身で経験できない人のためにセイクリッド・ヘッドウォーターズの写真をもたらすべく、移動展示会を開催し、〈International League of Conservation Photographers〉に所属する他の写真家と共同でウェイド・デイビスの本『The Sacred Headwaters』のための画像を制作しました。
この地域での私の仕事はつづき、現在トダジン山のストーンシープに焦点を当てています。去年の夏、私は3か月間にわたってこの群れと生活すべく、ヘリコプターにドロップオフしてもらいました。私のゴールは群れの物語と脅かされている生息地を写真に撮り、台地を移動する群れの動きを特別なカメラ器材を使って記録することでした。群れの動きはこの山の地図上に書き込まれ、鉱山活動と借地権のうえに重ねられます。これで土地の使用が群れを脅かすことが一目で明らかになります。
この台地に数か月間一人でキャンプすることの最大の難点は天気でした。大きく開かれた台地はその強風で知られていますが、昨年この地域は過去50年間で最悪の天気に見舞われました。最初の嵐が台地を襲ったとき、私のキャンプは破壊され、テントは切り裂かれ、私の器材は1マイル下の谷間に吹き飛ばされました。器材を修理して、ふたたびキャンプを設営すると、2つ目の嵐が襲いました。その威力は私の下約1000メートルで木をなぎ倒すほどで、避難を余儀なくされました。今年は天気が良いことを期待しながら、この群れの撮影を完了させるため、私はまたそこに戻って、11月の発情期まで滞在する予定です。
セイクリッド・ヘッドウォーターズの保護のためのご支援はhttp://www.sacredheadwatersjourney.com/をご覧ください。請願書に署名し、石炭床メタン開発禁止の猶予期間が切れてトダジンの開発が起動しはじめる今年により緊急になってくるこのキャンペーンへのご支持をお願いします。