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2度目のインターンシップ・プログラム、6年目のジュゴン食み跡調査

土屋 彰  /  2012年11月29日  /  アクティビズム, 環境

「台風接近、調査予定日の後半は影響するかもしれませんね…」、沖縄入りの前日深夜、現地から連絡が入った。9月の沖縄は台風の影響を受けることが多く、今年も天候が不安視されるなか、沖縄へ向かうこととなった。9月11日~14日の4日間、2008年以来、2度目のインターンシップ・プログラムを利用して、沖縄県名護市東海岸で行われるチーム・ザン主催のジュゴンの食み跡調査に参加するためだ。

思い返せばはじめて調査に参加した2007年の夏も台風が沖縄本島を直撃し、調査は延期となった。海は荒れて調査を行うことができず、台風の残していった瓦礫や砂の除去など、スコップと荷車を手に清掃活動に終始したのを思い出す。ジュゴンの食み跡調査は天候に左右されることが常であり、日程調整も非常に難しい。そんななか、5年間継続して調査への参加・協力を継続してきた。そのあいだにジュゴンを取り巻く環境が改善されたわけでもなく、課題が山積しているのが現状で、地元の調査メンバーは目標を見失うこともあったと聞いている。地元の調査メンバーは10名に満たないため、パタゴニア日本支社からのサポートを受けて調査活動の継続、地域への理解を深めるためのイベントなどを行ってきた。春と秋の広域調査を活動の主軸とし、夏休みの時期には地元大学生や若者を集めてジュゴンの餌となる海草の観察会やジュゴンの食み跡をシュノーケリングなどで観察するなど、さまざまな取り組みを通じて調査活動への理解を深め、さらには調査協力をしてくれる仲間を集めてきたのだ。この5年間でパタゴニア日本支社として約10名強のスタッフが調査活動に参加してきた。私の1度目のインターンシップ・プログラム参加報告の影響を受けて活動をともにしてくれたスタッフや、沖縄が好きでシュノーケリングが得意なスタッフなど、さまざまな意思をもった仲間たちが調査に協力。それぞれの得意なスキルを活かして労力を提供してきた。そして今年も2名の新たなスタッフが調査協力の要請にみずから参加、ジュゴン調査も6年目を迎えた。

今年の調査海域もこれまでと同様、ジュゴンが生息する海域では最も重要といわれているポイントである。およそ1キロメートルほどの長さの海岸線を50メートル毎にラインで区切り、浜から400~500メートル沖まで、動力を使用せずシュノーケリングで2時間ほど海のなかで調査を行う。1チームは4名で構成され、調査目印・指標となるラインを引く係、食み跡を探す係、海草を同定する係、そして安全対策として昨年から新設したカヤック担当という構成で調査を進める。海のコンディションが刻々と変化するなか、浜で監視する陸上担当者とカヤックが無線で交信をしながら、安全対策を徹底して行われるが、今年の調査は台風が近づくなかでの予断を許さない状況となった。

毎年、数十本の「ジュゴントレンチ」と呼ばれるジュゴンが海草を食べた跡が見つかる海域ではあるが、ここ数年は海域のなかでも発見される場所に偏りが出る結果となっている。いわゆる海草藻場と呼ばれる海草の群生エリアに変化が生じているのである。海草がたくさん自生しているエリア、海草がまったくないエリア、ガレ場のような底質のエリアなどさまざまな海底の状況により、ジュゴンが餌を食べるエリアにも偏りが出てしまっているのである。その昔、海草藻場は沖縄本島の周辺海域には多く存在していたため、ジュゴンの生息頭数も多かった。第二次世界大戦後は貴重なタンパク源として捕獲され、食用としていた。乱獲も原因のひとつではあるが、周辺海域の環境悪化により餌となる海草が減少、藻場環境の悪化により生息頭数も激減してきたことが大きいといわれている。我々が調査する名護市東海岸は沖縄本島の北部の「やんばる(山原)」と呼ばれる地域だが、昔は海岸線に近い小高い丘からジュゴンが泳ぐ姿がいつでも見られたと聞く。昔は人間の生活圏に近いところ、身近なところでジュゴンが生活できる環境があったのだ。調査海域である浜では、いまや日中ではジュゴンの姿を目にすることはなくなり、食み跡(ジュゴントレンチ)だけが縦横無尽に走っている。

5年前は地元のコアメンバー数名によるハードな調査を行っていたため、ボランティアとしてサポートに来た我々は足を引っ張る状況となっていたのかもしれない。我々はジュゴンの食み跡などはもちろん、海草自体を見たことがなかった。沖縄の海といえばきれいなサンゴ礁に囲まれた海を想像していたが、調査海域の状況はまったく違っていた。温暖化によるサンゴの白化減少や、調査海域に隣接する米軍基地から出動する水陸両用車が海底を走るキャタピラ跡に衝撃を受けた。とてもジュゴンやウミガメが生息できる環境ではないのではと疑うほどであった。それでも我々は客観的に調査内容を見たうえで、期待を込めて改善点を提案した。地元での活動メンバーを増やすことや、理解を深めて地元の協力を得てほしいというものだった。その成果が見えはじめたのは調査協力をはじめて3年目の2009年だった。我々のような本土からのサポートには限界があり、効率が悪く、このころから調査活動のサポートを身近な島内に求め、仲間を集まる努力をはじめていたのだ。当時は地元の雇用問題や政治的軋轢のなか、ジュゴンを守る活動に参加できないという意見もあったと聞いていたが、少しずつ理解を求める活動が実を結び、「純粋にこのすばらしい海を守りたい」、「ジュゴンの生息環境を守りたい」という声が集まっていた。そのころからコアメンバーによる調査運営委員会も発足し、市民調査としても軌道に乗りはじめた。

6年間も活動をともにしてきた現地のコアメンバーとは、言いたいことが何でも言い合える仲になった。ちょっとした喧嘩もすれば、一晩飲み明かす間柄でもある。しかし当初はほとんど沖縄の文化も知らなければ、海に潜ることも得意ではなかったため、最初に参加した2007年にはよそ者扱いをされ、本気で調査に参加しているのか疑われもした。いまだに沖縄の気候や食事が体質に合わない。本土から移住をしたいエリアとして上位にあがる沖縄だが、私自身はまったくそうは思わない。江戸前の寿司も食べられなければ、食べ慣れたダシの蕎麦屋もない。「なんで沖縄の調査に毎年参加するの?」、「ジュゴンが見れるわけでもないのに楽しいの?」などといろいろ聞かれることが多く、なぜだろう?なぜ沖縄に足を運ぶのだろう?と考えても答えは見つからない。唯一答えがあるとすれば、現地のコアメンバーたちがいまでもどこか心配なのかもしれない。調査を継続する大変さや現地での調整が必要な出来事を見ていると、やはり手助けしたくなるのだ。大きなお世話だといわれるかもしれないし、あるいはこちらが足を引っ張っているかもしれないから、どれほど力になっているかは疑問である。しかし自分の家族を心配するのと同じくらい心配なのである。でもやはり大きなお世話かもしれない。

今年もジュゴントレンチ(食み跡)をいくつも見ることができた。彼らはたしかに生きている。それは間違いない。少ない頭数で繁殖できるのか?絶滅してしまわないか?と心配されるが事実として生きている。できる限りのことをしなければならないと思っているが、私たちにどこまでできるのか不安も感じている。多くの人へ伝えなければならないし、耳を傾けてもらえる工夫も必要だと思っている。多くの人にジュゴントレンチをみてもらいたいし、ジュゴンの棲む海に潜って肌で感じてほしいとも思う。我々にできることは限られているかもしれない。でもその限られたこと、限られた時間、限られた役割をあきらめずに全うするため、これからもできる限りつづけていきたいと思う。

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土屋 彰はパタゴニアの神田ストアで約5年勤務したのち、昨年プロセールス・プログラム担当としてパタゴニア日本支社に異動。神田ストア勤務時代にパタゴニアの環境インターンシップ・プログラムを通して沖縄に生息する絶滅危惧種であるジュゴンを守る調査活動に参加。今年、2度目のインターンシップ・プログラムに応募。プログラムを利用し、ジュゴンの食み跡調査のため沖縄を訪問。ジュゴンの保護活動以外にはトレイルランニングに情熱を捧げている。今年はすでに10レースほど大会に出場。

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