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世界が注目したCOP26、勝負の10年

宮原 桃子  /  2021年12月3日  /  読み終えるまで12分  /  アクティビズム

本気で気候変動を食い止めるため、脱炭素に向けて何が話し合われたのか。世界の潮流をつかみ、私たちにできる行動を考える。

COP26会場の一部。イベントやメディア中継のスペースや、ミーティングスペースがある。

写真提供:地球環境戦略研究機関

地球温暖化の問題が叫ばれるようになって、すでに40年以上。気温上昇や豪雨災害、森林火災など、気候変動の影響を日々実感するようになりました。こちらの映像は、10月31日~11月13日に英国で行われたCOP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)で、各国リーダーに向けて流されたものです。気候変動ではなく、今や「気候危機」であることが、誰の目にも明らかです。

待ったなしの緊急事態の中、COP26 で気候変動を食い止めるための話し合いが行われました。現地で参加した「日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)」事務局の高橋慶衣さんに、臨場感あふれるお話を伺いました。

高橋慶衣さん プロフィール
地球環境戦略研究機関(IGES)研究員/日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)事務局スタッフ。欧州の大学院で政治倫理と社会政策を研究した後、内閣府で「子どもの貧困」分野の政策研究員として従事。深刻化する気候変動問題に取り組むため、IGESに参画。

世界が注目したCOP26、勝負の10年

COP26のプレナリー会場。

勝負の10年、スタートを切ったCOP26

今回のCOP26には、世界中の注目が集まりました。なぜでしょう?

2015年に合意された「パリ協定」では、「気温上昇を2℃より十分に下回るようにし、1.5℃以内に抑える努力を追求すること」が掲げられました。1.5℃目標を達成するためには、2050年までにCO2排出量を実質ゼロ(カーボン・ニュートラル)、2030年までに約45%削減しなければなりません。これからの10年の行動が、とても重要なんです。

COP26は、この「決定的な10年(decisive decade)」の初めの会議であり、2030年に向けてどれだけ野心的かつ具体的な行動計画を打ち出せるかという意味で、世界が注目しました。

参加している人びとの間には、どのような意識や空気感がありましたか?

会期を通じた合言葉は、「1.5℃目標を保とう(Keep 1.5℃ alive)」。今のペースで進めば、1.5℃目標には届かないという緊張感があったと思います。ただ、届かないとばかり言い続けていると、もう2℃でいいやという話にもなりかねないので、実現可能であることを事例やデータによって示し、不可能な夢物語ではなく、あともう少しだと語りかけるリーダーも多かったですね。

高橋さんは、今回どのような立場でCOP26に参加されたのですか?

日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)の事務局として参加しました。JCLPは、脱炭素を目指す200社以上の日本企業が集まるグループです。脱炭素に向けた経営の実践や企業間連携を進めるほか、日本政府に対しては「2030年までに再エネ比率50%を目指す」ことを提言するなど、政策提言にも積極的に取り組んでいます。

COP26では、日本の脱炭素をリードする企業集団として、JCLP共同代表がビジネスセッションに登壇し、今後の取り組みに向けて情報収集や意見交換を行いました。私は事務局員として、こういったビジネスセッションの運営の補助や、他国の先進企業の取り組みに関する情報収集・意見交換などを行いました。

COP26で何が動いた?1.5℃と脱石炭

COP26の成果として、どこに注目されていますか?

まずは、今回採択された「グラスゴー気候合意」で、1.5℃目標を追求する決意が強い言葉で明記されたことです。

もう一つは、石炭の段階的な削減が合意されたことです。当初案の「段階的な廃止」ではなく、「段階的な削減」という文言での合意になったことを議長が涙ながらに謝罪したことが、日本でも多く報道されました。しかし、私はこれを完全な失敗とは思いません。半歩前進です。これまでのCOPでは、石炭という特定の燃料を名指しし、その削減についてこれほど明示的に議論することは政治的ハードルが高いことだったので、一定の評価はできる成果だと思います。

一方で日本は、石炭火力を廃止する意思がないとして、気候変動対策に後ろ向きな国に贈られる「化石賞」を会期中に受賞しましたね。

COPに参加する世界のリーダーたちからは、「Coal is history(石炭は過去のモノ)」という言葉が聞かれました。すぐには石炭から脱せない開発途上国の現状を踏まえ、先進国はいち早く電源の脱炭素化を達成すべきという認識が共通のものとなっているように感じました。IEAの分析も、先進国の電力セクターは2035年までにネットゼロ排出を達成すべきと示しています。

しかし日本は、2030年目標で全体の約2割を石炭でまかなうことを掲げており、電力セクターの脱炭素化の目途は立っておらず、世界の流れとは別のところに向かっていると感じます。現地では、日本の存在感が感じられる場面には遭遇しませんでした。

世界が注目したCOP26、勝負の10年

若者による気候マーチの様子。

「気候正義(Climate Justice)」がますます重要に

COPに参加されて、特に印象に残ったことはありますか?

「気候正義(Climate Justice)」が強く打ち出されていたことでしょうか。気候変動問題は、非常にいびつで不公平な構造の上に成り立っています。主に先進国が化石燃料を大量に消費してきた結果として、気候変動が引き起こされている一方で、異常気象や自然災害などの影響をより大きく受けているのは、これまで化石燃料をあまり使ってこなかった途上国です。同じことが、今まで排出をしてきた従来世代と、その影響を受ける将来世代についても言えます。よりカーボンフットプリントの多い生活をしている富裕層と、カーボンフットプリントが相対的に小さいにも関わらず自然災害などによって生活により大きな打撃を受ける貧困層についても同様です。気候正義とは、こういった不公平さを是正すべきという考え方です。

COP26では、気候変動の影響を受けやすいが、適応したり損害・損失から回復したりするための財政基盤がない脆弱な国、マイノリティ、若者などの声に耳を傾けようという姿勢がよく見受けられ、各国代表のスピーチでも多く触れられていました。先住民への支援がテーマのイベントや、若者たちと各国リーダーが対話するようなイベントもありました。

若者たちの反応や動きは、どうでしたか。

存在感は大きかったですね。会場の外で若者によるマーチも規模が大きかったですが、同時に会場内にも多くの若者が見られました。ただ、若者たちは、建設的な意見や根拠を持って訴えているにも関わらず、メディアによってただ怒っている姿だけが断片的に切り取られることに、苦しんでいるという声も耳にしました。

世界が注目したCOP26、勝負の10年

COP26におけるビジネスリーダーらによるパネルディスカッション。

脱炭素に向けた技術やビジネス、予想以上のスピード感

ビジネスに関わる動きで、印象的だったことは?

印象的だったのは、ビジネス関連のイベントで複数回触れられていた「The Paris Effect: COP26 edition」で示された、脱炭素技術の進展の早さです。技術の普及率は、ある一定のところから指数関数的に伸びていくものですが、その臨界点はもうすぐそこまで来ています。例えば再エネはすでに臨界点を迎えていて、電気自動車(EV)なども数年後です。同報告書は、多くの脱炭素技術が、10年以内にこの臨界点を迎えると予想しています。

日本では、「いかに新しい技術を生むか」という技術のイノベーションがよく議論となるように感じます。しかしCOPの会場で耳にした論調は、大抵の技術はもう存在するため、これをいかに早く実用化・商用化するか、そのための政策や市場のイノベーションをどう起こしていくか、というものでした。

また、2030年までに官民連携で脱炭素技術を広めることを目指す「グラスゴーブレイクスルー」に、日本を含む40ヵ国以上が署名したのも、注目ポイントですね。今後、官民のパートナーシップが進んでいくことが期待されます。

COP26では、民間企業の動きも活発だったのでしょうね。

各国の企業ネットワークが集まり、今後どのように政府に訴え、産業全体を巻き込んでいくかという議論が活発に行われました。ただCOP26では、化石燃料関連の企業の代表団が、どの国の交渉団よりも大きかったという報道もありました。気候変動に前向きに取り組んでいる企業こそ、積極的にCOPに参加すべきだと感じています。

世界が注目したCOP26、勝負の10年

COP26の会場には青い地球のモニュメントが掲げられていた。

残された課題、足りない途上国への支援

これからに向けて、残された課題はありましたか?

世界全体で温室効果ガスの排出を削減するためだけでなく、すでに起きている気候変動の影響に対処する上においても、開発途上国への資金支援は欠かせません。先進国は、2009年に掲げた公約に基づいて、2020年までに年間1000億ドルの支援を達成しなければならなかったのですが、約200億ドル足りていません。

資金支援が滞ると、交渉も進まなくなります。資金支援の目標が達成できていないということは、さらなる排出削減策を講じるための資金がないということであり、その状態で「1.5℃目標に向けてもっと削減を」と要求されれば、途上国は不満を持って当然と言えます。インドはCOP26で、2030年に再生可能エネルギー比率を50%に、2070年にはカーボン・ニュートラルを目指すと表明しましたが、実現のための資金が必要だと強く訴えました。しかし、COP26では、インドが望むような資金面での大きな前進は見られませんでした。

このような背景は、石炭の「段階的な廃止」という文言を含めることに対し、最後に中国とインドが待ったをかけたことにもつながっています。中国とインドが悪いというような印象が残る報道もありますが、片方が悪役で、もう片方がヒーローという単純な構図ではないんです。先進国もやるべきことをやらないと、世界を良い方向には引っ張っていけないですよね。

企業は、より厳しくスピーディーな行動を

勝負の10年、企業の本気度が試されますね。

2050年ネットゼロ排出目標を設定する企業が増えていますが、2030年に向けた取り組みをもう一段厳しく、スピード感を持って進める必要があります。これは、政府に政策提言をする上でも、重要なカギとなります。例えば、ただ再エネ促進制度を要求するのではなく、企業として再エネ調達にコミットし、さまざまな取り組みをしてこそ、そこに足りないものを効果的に提言できるのです。これを体現しているのが、積極的にRE100に参加し、自身の試行錯誤を踏まえて政策を提言しているJCLP会員企業かと思います。

ネットゼロ目標を掲げる企業は、増えていますが…

国レベルの目標は、国連などがその内容と達成度合いをチェックしていますが、企業の目標をチェックする組織やメカニズムがない点は問題視されています。グテーレス国連事務総長もこの点を懸念しており、企業の目標の質を担保するため、明確な基準を検討する専門家会合の立ち上げを発表しました。また、SBT(Science Based Targets/科学的根拠に基づく目標)がネットゼロ基準を発表しました。今後はこの基準に基づき、企業は名ばかりのオフセットではなく、実質的な排出削減がより一層に求められていきます。

11月に「脱炭素経営入門 気候変動時代の競争力」という書籍が発刊となりました。気候変動がトレンドだから取り組むということではなく、気候変動の緊急性や必要とされる対策、その中で企業が具体的に取り組むべきことを示した本で、JCLPの知見が詰まっています。企業の皆さんには、ぜひ読んでいただきたいです。

「声を上げること」の大切さ

これから本気で脱炭素に向かっていくために、私たち一人ひとりは何ができるでしょうか。

米国のピュー研究所が、個人の意識・行動に関して先進国16ヵ国で実施した調査によると、気候変動に対する危機感が下がっていたのは、唯一日本だけです。気候変動に立ち向かうために、自分自身の行動を積極的に変えると答えた人の割合も、最も低くなっています。この結果には、大きな危機感を覚えます。

2030年までに45%排出削減をするためには、社会経済システム自体が大きく変化しなければなりません。これを踏まえると、ペットボトルの使用をやめたり、家庭の電力を再エネに変えたりといった行動変化に加えて、「変化を求める声を上げること」が重要だと思います。

脱炭素に向けて、国民の意思をどう強く示していけるかが、これからのカギです。選挙で投票する、マーチに参加する、政治家に書簡を出す、新聞広告を出す…など、声の上げ方はたくさんあります。市民団体やNGO/NPO、労働組合などを通じてでも、気候危機を懸念する声、解決に向けた効果的な施策導入を求める声を、政治家に届けられるといいと思います。

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2050年、私は70代、私の子どもたちは30代です。子どもたちは、果たして人生を謳歌できているのでしょうか。未来のカギを握っているのは、これからの10年。一人ひとりが日々できることは小さくても、本気で取り組み、そして声を上げていけば、必ず世界は変わっていくはずです。

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