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つながる海森川里:種子島の子供たちとの「うみとも」プロジェクト

 /  2016年10月24日  /  アクティビズム, 環境

地球の70パーセントという広大な面積を占める海。その海にはミクロレベルのプランクトンから、地球上で最大の生きものといわれるシロナガスクジラまで、多種多様な生きものたちが暮らしています。一般的に、水深約200メートルまでの海は「沿岸域」と呼ばれ、砂浜や干潟、磯やサンゴ礁など、さまざまな環境が広がっています。沿岸域は海全体の面積からするとたった8パーセントですが、太陽の光の届く浅瀬の海は生きものの量も多く、その数パーセントのなかに、夥しい数の生きものたちが暮らしています。

陸地からすぐの沿岸域に暮らしている生きものたちは、当然ながら川を通じて海へと流れる下水や農薬や土砂など、陸からの影響を大きく受けながら暮らしています。けれども、直接目に触れないものへの関心はどうしても集まりにくいもので、そうした陸と海のつながりに注目されることはなかなかありません。身近な森の木がすべて枯れ果て、突然砂漠のような状態になれば、いったい何があったのだろうと大きな注目を集めることになるかと思いますが、もし仮に海のなかで同じような状況が起こっても、その現状が実感をもって受けとめられることは、なかなかむずかしいかもしれません。実際のところ陸から海への影響は、農地にしみ込んだ化学肥料や農薬など、その発生源を特定しにくいものが多いという現実もあります。

そんななか、普段の暮らしのなかではなかなか触れることのできない、海、森、川という自然のつながりや私たちの生活との関わり、そして循環を損なうことなく自然からの恵みを受け取っていくための知恵や技術などを、体験をもとに学ぶことができる場を生み出したいと、今年はじめに種子島で「うみとも」プロジェクトとよばれる取り組みがはじまりました。それは豊かな自然の残された種子島をフィールドに、海と森、海と畑のつながりを実感してもらうプロジェクトです。

この夏「うみとも」プロジェクトが企画した特別プログラムは、大人篇と子供篇のふたつ。種子島の自然を存分に活かしたその特別プログラムの、大人篇には全国各地から参加者が集まり、子供篇には種子島の子どもたち約50名が参加しました。今回はその子供篇の様子をご紹介しましょう。

午前は「うみとも」プロジェクトの発起メンバーでもある「なかわり生姜山農園」のオーガニック農園を訪問。畑に撒いたものは土にしみ込み、川に集まり、海に流れていく。そのことを意識して、農薬を一切使うことなく野菜の栽培に取り組んでいるなかわり生姜山農園。一言で「農薬を使わない」といっても、その決意は雑草や害虫の管理のほか、日々畑を保っていくための気の遠くなるような地道な作業に支えられています。子供たちは有機しょうがの雑草抜きなどを手伝いながら、そんな現場の苦労の一端に触れていきます。その後は畑のすぐそばに広がる森の小径を抜けながら、畑や森の土にしみ込んだ水が集まり、沢になっていく様子を、目の当たりにしました。

午後は海辺へ。海へと流れ込む川の河口には、マングローブの群落が広がっています。マングローブは淡水と海水が混じり合う、汽水域に生息することのできる木々の総称で、他にはない貴重な生態系を生み出しています。河口にはハゼ、エビ、カニ、天然のウナギなど、さまざまな生きものたちが暮らし、少し覗いただけでも、たくさんの生きものたちに出会うことができます。

川が海へと流れ込んだ先には、サンゴの海が広がっています。子供たちは海辺に打ち上がったサンゴのかけらを探します。白いサンゴのかけらは大波などで壊されたサンゴの骨格が打ち上がったもの。サンゴの骨格はいわばサンゴの“家”です。岩のように動かないサンゴも、じつはクラゲやイソギンチャクと同じ仲間の動物。自分たちのカラダを守るために堅い骨格で「家」を作り、そのなかで暮らしています。サンゴは触手を伸ばして海中のプランクトンを食べながら生きていますが、それだけではエネルギーが足りないので、カラダのなかに褐虫藻という小さな藻類に共生してもらい、彼らが光合成で作る産物に頼って生きています。サンゴはとても繊細な生きもので、土砂などで海水が濁ったりすると、窒息したり、共生している藻が光合成できなくなったりしてしまいます。

ひとつひとつよく見てみると、サンゴにもいろいろな形の家があります。小さな家、大きな家、平べったい家、棒のような家……。形の違いはそれぞれのサンゴが、太陽の光をなるべく浴びられるように、土砂がたまらないようになど、生き残っていくためにとった戦略の違いです。

サンゴの形を夢中になって、スケッチする子供たち。それぞれが見つけてきたサンゴに紙を当て、色鉛筆でサンゴをなぞっていくと、さまざまに異なる模様が浮かび上がってきます。色とりどりに写しとったサンゴの模様を、東京から駆けつけてきたプロジェクトメンバーでもあるデザイナーと一緒に組み合わせていきます。少しずつ少しずつ、組み合わされていくサンゴから写し取られたさまざまな模様。最後には50人が持ち寄った絵柄が合わさり、モザイク模様のウミガメが浮かび上がる素敵なアートができ上がりました。

子供たちはその後、地元の有志の皆さんが準備してくれたシーカヤックで海に漕ぎ出し、沖に浮かぶヨットまでの小さな海旅へと出掛けます。クラゲに苦戦しながらも、ボランティアメンバーたちに支えられて普段はできない冒険を味わった子供たちは、海から満面の笑みで戻ってきてくれました。

普段、島に暮らしながらも、深い森に入ったり、水源を辿ったり、サンゴについてじっくり触れる機会がなかなかない子供たち。畑の土に水が染み込み、沢へとなっていく様子を見るために訪ねた森で、「こんなところはじめてだ!こんな森あるんだ!」「ここ秘密基地にする!」と次々に歓声が上がったのも印象的でした。

海では、いつも身近にあるサンゴも、その生きものとしてのしくみや、思った以上にたくさんの種類があることに驚きの声が上がりました。「サンゴや海や畑のこと、もっと知りたくなった!」という子、「いろんな場所の水がひとつの川になって、海に流れて、それがまた雨になって戻ってくるっていう、水のめぐりがわかってきた!」という子。自然のつながりやおもしろさは、手と足を動かし、五感を総動員してこそ味わえるものなのかもしれません。

海、森、川、里のつながりがぎゅっと凝縮された島ならではのプログラムを通じて、安全域である屋内から出て屋外の野生へ向かい、互いに深く関わり合い、影響しあう自然界の大きなめぐりに触れた子供たち。この体験は、身近な自然のしくみへの関心や、自分たちの暮らしとの関わりへの意識へとつながっていくことでしょう。

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