ヴィダ・イ・アレグリア
パタゴニアプロビジョンズのタイセイヨウサバは、スペイン北部に古くからつづく漁村、サントーニャの沖で捕獲され、ミゲル・フェルナンデス・ペレスから調達しています。
全ての写真 : Amy Kumler
午前4時にサントーニャの港に来ると、あたりはまだ真っ暗で静まりかえっています。カモメもまだ眠っています。船は全長40メートル弱と比較的小さく、6~8人が乗れるほど。乗組員はだいたい父と息子、あるいはいとこやおじなどの家族だけです。
寒いし、眠いのですが、すぐにすべての準備を整えなければなりません。そしていざ海へ!他の漁船と無線連絡を取るのは極めて重要で、もし前日にある特定の場所でサバが見つかったことがわかればそこへ向かい、そうでなければサバを探しながら沿岸を移動します。船長が舵を取るあいだ、誰かがコーヒーを淹れて朝食を作り、別の誰かが釣り糸とリールを確認して、すべての準備を万全に整えます。シーズンはじめの2月はたいてい雨ですが、最悪なのは風です。ひどい荒波になると船が転覆しかねないため、そんなときは自宅にとどまります。
漁場にたどり着き、空が明るくなってきたら船を減速させ、一定の間隔で釣り針を付けた糸を仕掛けます。それぞれの釣り針の上にはサバの好物である甲殻類を模した小さな赤い毛糸を結び、生き餌は使いません。釣り針は大型の成魚だけを狙うものを使います。生殖前の小さなサバを捕獲するのは将来的な個体数に弊害をおよぼすからです。釣り針はサバだけを捕獲し、鳥やウミガメやその他の種に影響を与えることもありません。私たちは、思い出せるかぎり昔から、この方法で魚を獲ってきました。昨今では魚の群れを包囲する巾着網を使う漁師もいます。注意深く責任をもって使えば混獲を最小限に抑えることは可能ですが、釣り針と糸だけを使う方法にはおよびません。あらゆる魚種と周辺の生態系にとって真の脅威となるのは、航路にあるすべてを捕獲するトロール網です。
大漁の日にはサバの群れが、まるで水を射る銀の矢のごとく炸裂します。魚が糸に当たりはじめると、大急ぎでリールを巻き上げます。これぞまさにヴィダ・イ・アレグリア!漁師にとって「人生の喜び」の瞬間です。魚を船縁に引き寄せると、金属製の棒で釣り針から魚を外します。そしてすばやく魚を容器に並べ、船倉で冷蔵します。
ほんの数時間で漁獲規定量に達することもあります。遠いところで漁をすると地元以外の港で水揚げすることになり、そんなときは町で夕食を食べて船で眠ります。家に帰りたいのはやまやまですが、海に逆らうことはできません。私たちにはしたがうことしかできないのです。何年も前にチョウザメなどの魚種の数が減りはじめ、私たちは持続可能な方法で漁をしなければならないことを学びました。さもなくば最大の敗者となるのは自分たちだからです。もう何年も水産資源を守る方法でやってきたいま、漁場は大いに安定しています。
協会は地元の漁師の面倒もみます。サントーニャを含むスペイン全域の漁師協会であるコフラディアは、500年以上にわたり漁師を守り、仕事の質を改善し、協力しあうよう漁師をまとめてきました。私たちのコフラディアは魚のせり、その支払い、買い手への受け渡し、そして港の職員や設備(箱から荷台、秤、手押し車、コンピューターまで)をまとめています。また、漁船に必要なあらゆる公式書類の処理という大仕事や、方針を改善するために公共漁場の管理者との交渉などもこなしています。
いまでは息子たちも漁に出るようになりました。私は彼らに海を愛し、尊敬することを教えてきたつもりです。海は私たちにすべてを与えてくれますが、ひとたび怒らせたら移り気で危険な存在です。漁師は決して自信過剰になってはいけません。漁は命がけの仕事だからです。また金儲けのためにあと先を考えず、海からすべてを搾り取ろうとする輩に屈服してはならない、ということも伝えてきました。
きちんと伝わったかどうかはわかりませんが、そう願っています。