未来のために選択しよう

一般社団法人コンサベーション・アライアンス・ジャパン  /  読み終えるまで9分  /  アクティビズム

写真:NPO法人日本フリークライミング協会

“地球にとって最大の脅威は、誰かが救ってくれると信じていることである。”by ロバート・スワン、史上初めて南北両極点を徒歩で踏破した探検家

日本のアウトドア産業に関わる45社/ブランドが加盟する一般社団法人コンサベーション・アライアンス・ジャパン(以下、CAJ)は、2021年秋の衆議院議員選挙を前に、新しいイニシアチブ『Vote the Outdoors – 未来のために選択しよう』および『Our Outdoors Our Choice – 未来のために選択しよう』を発表しました。

CAJではこれまで、各社が売上額に応じて拠出した会費で設立した「アウトドア自然保護基金」を通じて、日本のアウトドアフィールドとして、貴重な自然環境を保護する活動を行なっている草の根の団体やプロジェクトに対し、活動資金の支援を行なってきました。このたび日本のアウトドア産業に関わる多くのユーザーやコミュニティ、若者に対して、今回の衆議院議員選挙を通し、これからの日常において、健全な気候と自然環境のもとアウトドアを楽しみ、活気あふれる地域社会や人々の多様性とインクルージョン、そして、それらに根ざした未来を持続するための「選択」をすることを広く呼びかけます。

なぜ、アウトドア事業者の集まりであるCAJが、「未来のための選択」を呼びかけるのでしょうか? 現在の気候危機は、日常生活はもとより、私たちがこよなく愛する山岳や森林、そこにアクセスするための登山道や山小屋、スキー場やキャンプ場などのフィールド、そして、私たちのビジネスにも確実に影響を及ぼし始めているからです。

短時間で局地的に大量の降雨をもたらす、線状降水帯の発生や暴風雨の頻発化による洪水など。それに起因する土砂崩れや倒木等による登山道やフィールドへのダメージは深刻で、利用機会の制限や喪失につながります。フィールドを維持管理するための労力や資金は増加し、最悪フィールドが閉鎖、消失してしまうことも。さらに、温暖化の影響による冬季の気温上昇は、降雪不足によりスノースポーツに影響をもたらします。また、海水の高温化や海水面の上昇は、台風の巨大化や海洋生態系に影響を及ぼし、マリンスポーツへも著しい影響を与えます。さらには、高温や乾燥化などの極端な気候やフィールドの変化は、山林火災を誘発し、生態系にも著しい変化を与え、シカやイノシシなど野生動物や害虫などが、従来の生息範囲を超えて拡大することによって、アウトドア・ユーザーのケガや疾病リスクの増加にもつながります。

また、これらはすべて、ブランドや小売店はもとより、山小屋やスキー場、ガイドなどの個人事業主を含むアウトドア産業全体、ひいてはフィールドを抱える地域社会に悪影響を及ぼします。さらに、もう少し広く製品サプライチェーンまで目を向けると、異常気象は、原材料の生産地や生産工場の稼働にも影響を与え、たびたび市場に混乱を引き起こしています。

今、人々は、コロナ禍によってステイホームを余儀なくされ、心身にストレスを感じることによって、新鮮な空気や自然がもたらしてくれる精神的、身体的な恩恵を求めています。これは、本能的ともいえる必要性からの行為であり、レジャーといった娯楽的な行為を超え、あらゆる人々にとって、自然で過ごす時間が、かけがえのない「必需品」と認識する機会となっています。環境省が募集した「自然公園法の施行状況等を踏まえた今後講ずべき必要な措置について(答申案)」対するパブリック・コメントへの回答の中で、CAJが提示したアウトドア・レクリエーションが提供している5つの多面的な恩恵、「健康とウェルネス」「青少年育成」「地域社会の発展」「環境保全」「社会的公平」を促す機会も失われてしまいます。つまり、アウトドア体験は危機に直面しているのです。

“地球にとって最大の脅威は、誰かが救ってくれると信じていることである”。これは史上初めて南北両極点を徒歩で踏破した探検家ロバート・スワンの言葉です。

そこで、CAJは2021年秋の衆議院議員選挙を前に、新しいイニシアチブ『Vote the Outdoors – 未来のために選択しよう』および『Our Outdoors Our Choice – 未来のために選択しよう』を発表しました。選挙での候補者の「選択」も、日常のさまざまな場面での「選択」も、こうした未来を形づくることにつながっているからです。

CAJがめざす未来とは、気候を含む自然環境や人々が暮らす地域社会が健全で、そうしたステークホルダーとの良好な関係によって成立しているアウトドア産業が繁栄している未来です。健全な森林や草地、河川や海洋などは、私たちにとって大切なアウトドア・フィールドであり、人類にとって必要不可欠な生態系サービスを提供してくれる生物多様性のゆりかごです。そこは、気候を安定させるための重要な炭素吸収源でもあり、自然環境が適切に保全、修復、維持されていくことで、誰もが自然とふれあう機会が得られ、その恩恵を享受し、活気あるコミュニティが営まれていくはずです。

では、何を基準に「選択」したら良いのでしょうか?

ストックホルム・レジリエンス・センターのヨハン・ロックストローム所長は、気候危機を解決するための唯一の方法として、「すぐに排出量を減らし、10年間で半減させ、さらに、大気中の二酸化炭素を取り除くこと。温暖化を1.5℃に抑えることは、氷床やアマゾンの熱帯雨林のような生態系など、地球システムの転換点となる要素をさらに悪化させるリスクを抑えることができるため、あらゆる努力をする価値がある。」として、「思考の転換」の必要性を呼びかけました。

そして、同センターでは、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の「1.5℃報告書」で評価された400以上の気候シナリオのうち、大幅なオーバーシュートを回避でき、かつ、緩和策の選択肢について現実的な想定をしている20のシナリオの分析結果として、「気温を1.5℃前後で安定させることに成功するシナリオの特徴は、二酸化炭素の排出量が約半分になり、農業やその他の土地利用(林業など)が、二酸化炭素の主要な排出源から、全体的に二酸化炭素を貯蔵し始めるようになること」であると述べています。

つまり、私たちが「未来のための選択」する基準は、選挙であれば、この成功シナリオにあるように、エネルギーシステムの脱炭素化、農業や林業が炭素吸収源へと転換するための、自然に根ざした、かつ人々にとって公平な解決策を推進することを約束している候補者かどうか、また、日常における「選択」であれば、そうした取り組みを積極的に実践しているビジネスや自治体かどうか。さらには、私たち自身の行動変容という「選択」も必要です。

CAJに加盟しているブランドや企業は、アウトドア用品メーカー、アウトドアショップに留まらず、キャンプ場や自然学校、天然素材のソープやアウトドア情報を提供するWEBサイトなど多種多様ですが、まだまだ小さな団体です。しかし、私たちメンバーは、アウトドア産業自身もその行動に対して責任を負う必要あることを認識しています。なぜなら、アウトドア産業の持続性、さらには私たちひとりひとりの日々のアウトドアにおける楽しみは、自然環境が健全であることが不可欠だからです。

ただし、メンバー企業によってその「選択」は千差万別です。まずは自社の従業員に広く、このたびのキャンペーン内容を周知するための社内勉強会を開催し、投票に行くことを奨励するという「ドクターブロナー」。三重県伊勢市のアウトドアショップ「バッドパームス」の店頭では、キャンペーン・ステッカーをレジ前に置いて購入者に配布します。また、ステッカーやポスターを社内でも配布展開し、当日投票に行けない従業員に期日前投票を呼びかける「キーン・ジャパン」など、自社の従業員からエンドユーザーまで自社のHPやSNSも駆使して、「未来のための選択」を内外に広く呼びかけてきます。また、パタゴニア日本支社では、独自の選挙キャンペーン「Vote Our Planet」を展開、正規取扱店を含む取引先にも参加を呼びかけるなど、つながりのあるアウトドアスポーツ・コミュニティやアスリートと共に投票を促すアクションを展開するなど、各社各様です。さらに、CAJのメディアパートナー、「Akimama」と「フィールドライフ」は選挙当日、原宿・代々木公園で開催されるイベントGear Loop Marketに出典し、来場者の若者に「まだ間に合う!」と選挙に行くようにステッカーを配布して呼びかける予定です。

「Vote」や「投票」という言葉を使うのが会社のルールやいろいろな理由で難しいメンバーは、もうひとつのコアメッセージ『Our Outdoors Our Choice – 未来のために選択しよう』を活用し、このたびの選挙だけでなく、これからの日常的な場面でも、アウトドアや自然環境、地域社会の未来を意識した「選択」を呼びかけます。

アウトドア産業は、根本的なところで、十分な情報に基づいた計画の力を大切にしています。なぜなら、自然環境の中で行なうアクティビティには様々な場面にリスクが隠れています。クライミングやハイキング、キャンプなどでより良いアウトドア体験をするためには、事前に目的地の状況や天候を調べ、装備を準備し、自分自身だけでなく、一緒に行動する仲間の体力やスキルの限界を超えないシナリオを描く必要があります。

しかし、残念ながら、今回の衆議院議員選挙については、投票日に「未来のための選択」をする上で、CAJが皆さんに提供できる情報は、じつはあまり多くはありません。私たち自身、そこが、このキャンペーンの課題と認識しています。ぜひ、有効な情報を見つけたら、以下のハッシュタグを活用して、私たちの「未来のため選択」するために必要な、ポジティブな情報の共有をお願いします。

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