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山葵四重奏(ワサビカルテット):ルース氷河での38日間と4つの新しい登攀

谷口 けい  /  2014年12月1日  /  クライミング, スポーツ

この春訪れたデナリ南麓ルース氷河最上流部で、幾度かの偵察行をしつつ、自分たちらしい4つの登攀をすることができた。何よりも贅沢だったのは、多くの人が集うアラスカの地で、この間はまったく人に会わなかったことかもしれない。そのことは、自分とパートナーと自然(山も空も大地も)とが純粋に向き合うことができる環境を作り出してくれたと思う。だから、より雑音無く、自分たちのラインに向かうことができたと思うし、美しくも厳しい自然の姿を受け止めることができた気がする。

前奏曲 ”Prelude”プレリュード
―Dan Beard南壁バリエーション / V, snow & ice / 7hrs.

我がBCから約1時間半のアプローチ。南壁に向かって右端のベルクシュルントを越えて壁に取り付く。広いクーロワール状から三角岩を回り込んでトラバース、壁のほぼ中央を上部へと向かう。上部ヘッドウォールを右上し、チムニー状の隙間に導かれて頂上プラトーへ。氷と雪の広い頂上に着くころには雪雲に包まれてしまったけれど、氷河上での生活第一歩としては上々の、楽しい登攀となった。

第一楽章

予想より早く上部からの雪崩がはじまった。下部雪壁をコンテで伸ばし、いよいよガリーに入ってお楽しみのアイスミックスがはじまるというころ、デカい雪崩が襲ってきた。 志半ばにして今日もまた諦めねばならないのか……。悔しすぎてスグには「下ろう」と言葉を発せられない。しかしリスクはとれない。逃げるように下降する。恐れていた最後のシュルント越えで巨大雪崩に追いつかれた。雪崩が先か、自分が飛び降りたのが先か――。運良く偶然にもシュルント内に入り込んだ私は雪崩の直撃から逃れ、まるで滝裏から瀑布を見るようにシュルントの内側から、視界を真っ白にうずめながら流れていく雪崩を見ていた。

ルース氷河West Fork(西支流)に座すDan BeardとPeak11,300に未踏ラインを求めて偵察をしているなかで、私たちは4本のラインを描いていた。Dan Beard南壁と東壁、そしてPeak11,300東壁(実際は東稜南東壁)に2本。前奏曲として登ったDan Beard南壁につづき、どこからもその全景を見ることのできないPeak11,300東壁に1本の美しいガリー(P3ガリー)を認めてトライするが、ひとたびアラスカの澄んだ大気のなかに強い日の光が差すと、ガリーは雪崩のリスクで覆い尽されてしまった。この自然の脅威に抗うためには気温の低い夜間に登るか、太陽の出ない曇った日に登るかしかなかった。2本目に登ろうと考えていたこのP3ガリーは、2度の試みのあとしばらく保留となり、結局は終章まで封印された。

第二楽章 ”Concerto”コンチェルト
―peak11,300 East Spur, 東壁~Point KJ / AI4+, M5+R / 18.5hrs.

午前4時40分。下部雪壁の登攀開始。クーロワール内の核心、ボロボロの氷と岩と、スカスカの雪を騙しだまし登る3ピッチ。これを越えるころ、上部に朝陽が差して雪崩がはじまる。雪崩のラインを避けつつ、クーロワール上半の雪壁をコンテで登る。12時30分。クーロワール終了点まで登りつめるころにはガスが濃くなり、視界がほとんどなくなってしまった。ガスのなかに見え隠れする上部岩壁帯は想像したより傾斜がある。ここから先へ進んだらもう戻ることはできないね、と話しながらも、戻るという選択肢はどこにもないようだった。

ガスのなかに次々と現れるその姿はオフウィドゥスあり、チムニーあり、それにスラブ、チョックストーン、スカスカの雪、そして積木のような不安定に重なり合った岩や砂利の混じった硬い氷と、私たちをたっぷり楽しませてくれた。大奮闘の末、上部雪壁と雪稜を越えて頂上に出たのは23時過ぎだった。

トワイライトのなかに繰り広げられた360度の円形劇場そのもののような景色に、私は幸せに包み込まれた。闇にならないアラスカ初夏の夜、少しずつ空と地平線の色が変わってゆく。半月が次第に輝きを増してきた。その月はRooster Combの右肩にあり、その右にはHuntingtonとたどり着けなかったPeak11,300、そしてDenali。世界が美しいほどに我々は寒く、頂上プラトーの窪みでツエルトを被って座ると眠気と劇的寒けが闘う。温かいものを食すると身体は温まるが眠気は増し、足先は凍っていく。宵の空が暁へと移り変わり、地平線が曙色に染まり出すころ、凍った足は下降への一歩をはじめた。

第三楽章 ”Nocturne”ノクターン
―Dan Beard東壁 / WI4, AI5, M5 / 12hrs.

頂上プラトーからの懸垂氷河の脅威に触れずに登れそうなラインを東壁に探る。右寄りのV字ガリー右俣をコンテで登り、どん突きから左上するガリーへ入る。流水氷と岩と雪のミックスを9ピッチ、東岩稜沿いのコーナーから上部スノーリッジへ。アラスカらしい両雪庇と氷のリッジを高度感いっぱいに登る。上部はセラック帯。氷河の割れ目をつないで頂上プラトーを目指す。頂上直下で大きな割れ目(クレバス)に遭遇するが、アイスクライミングで突破。Dan Beardの広い頂上でまたまた雪雲に巻かれて視界は最悪。散々彷徨した挙句、幸運にも広がり出した青空の下に南壁への下降路を見出して、無事に東壁から南壁への縦走を完成させることができたのは、満月の夜のことだった。

終章 ”Sonatine”ソナチネ
―peak11,300 East Spur, 東壁~P3 / WI4, M4 / 10hrs.

何処からも全景を見ることの出来ないpk11,300東壁。ルース氷河上流部を偵察していたなかで遠目に認めた一本の明らかな氷のライン。しかし取り付きが分かりづらく、また陽が当たるとルートそのものが雪崩の通り道と化すため、なかなか近づけなかったライン。夜中、と言ってもヘッドランプ無しでも大丈夫な自然の明るさがあるなか、ガリーの登攀開始。闇じゃないのに月が神々しく明るかった。下部ガリーはコンテで駆け上がる。上部ガリーは流水氷とS’Niceと、ときどき岩。薄い氷の支持力はすべてあやしい。コル(稜線)まで上がるとクラックと雪稜の上部岩稜帯の登攀へ。業務用冷蔵庫くらいの大きなキノコ雪がアックスの一刺しで崩壊したり……とビックリの連続の末に頂上で待っていたのは360度の大景観だった。

追記:この一連の登攀と38日間2人だけの氷河上生活に、第9回ピオレドール・アジア賞をいただきました。

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