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プラスチック問題についてパタゴニアが行なっていること

パタゴニア  /  2019年10月1日  /  読み終えるまで11分  /  フットプリント

アメリカのペットボトルの回収率は30%以下。リサイクル施設に到達したこれらの幸運なボトルは、溶かされてリサイクル・ポリエステル製のギアに変身する。この秋、パタゴニア製品ラインの対重量比の69%はリサイクル素材に由来するもの。Photo: Lloyd Belcher

私たちの故郷である惑星はプラスチックという深く憂慮すべき蔓延する問題を抱えています。この4月、海の最も深い場所、マリアナ・トレンチについて学ぶ研究者のグループは、太平洋の表面下10キロ以上付近で浮かんでいるプラスチックの袋とお菓子の包装紙を発見しました。

世界中で毎年4億5千万トンのプラスチックが製造され、年次950万トンのプラスチックが海に捨てられています。ほとんどが使い捨てです。そしてこれら両方の数字は増加しています。〈エレン・マッカーサー財団〉の報告によれば、2050年には、海には魚よりもプラスチック(重量比)の方が多く存在するとのことです。

パタゴニアもつねにプラスチック問題を抱えていますが、私たちの最高の製品の多くに使用される高品質のポリエステルとナイロンのリサイクルについては、大きな前進を遂げました。1993年、パタゴニアはアウトドア衣料製造会社としてははじめて、ゴミをフリースに変身させたからです。私たちは継続して新しい素材を評価し、既存のそれを再評価しています。入手可能な最善の素材が私たちのニーズを満たすのに十分でない場合、私たちはサプライヤーと密に協力して、卓越した生地を新たに開発します。

プラスチック問題についてパタゴニアが行なっていること

製品を洗濯する際に抜け落ちるマイクロファイバーの解決策として、私たちは生分解性の化繊繊維を調査している。私たちのテストでは、生分解性の複雑さは、製品の寿命が尽きた場所の環境によって決まることが示されているが、それはまた繊維に適用した加工の種類および使用するテスト方法にも依存する。Photo: Jim Hurst

テクニカル・キットや適材および飾り付け部門の素材と研究開発マネージャーのライアン・トンプソンは、ポリエステルには否定できない恩恵があると言います。「歴史的にアルパインのインサレーション・システムにおいては、一般に好まれる素材はほぼつねにウールでした。ポリエステルへ移行した理由は、それが同様のパフォーマンスと快適さという特徴を備えながら、ウールの経済的な代替えとなるからです」とトンプソンは語ります。ウールは乾くまでに何日か必要ですが、ポリエステルはバックカントリーでの天候の悪化時に、体を安全でドライに保つことができます。「レイヤリングには素晴らしい素材です。ポリエステルは水への親和性を管理することができ、軽量ながら丈夫で、洗濯機も乾燥機も使えるので、維持するのもより簡単です」とトンプソンは言います。

今日、パタゴニアの素材チームが衣類用の新しいポリエステル繊維を製造するために使用するのは、使用済みのペットボトルや使用不可能な製造廃棄物から再生されたリサイクル・ポリエステルです。そして私たちの広範囲なフィールドテストで、それはバージン・ポリエステル製のギアに勝るとも劣らない機能性を明らかにしています。原料素材源としてリサイクル生地を使うことは、石油への依存を削減し、焼却炉から出る有害な排出物を減少させながら、埋立て地の寿命を延長します。この秋、パタゴニアの全素材の69パーセントはリサイクル素材に由来するものです。バージン素材をリサイクルに切り替えることはまた、二酸化炭素換算で1万3千トンのカーボンフットプリントを削減することも意味します。私たちの目標は2025年までにパタゴニア製品に使用される素材すべてを再生可能またはリサイクル素材にすることです。

パタゴニアのプラスチック問題を根底から解決するために、私たちは科学者、研究者、そして他のアパレル企業とパートナーシップを組んでいます。パタゴニア製品のお手入れガイドでは、ギアをより長く使っていただくための情報をお客様に提供しています。パタゴニアのサプライチェーンのストーリーでは、衣類を製造するために何が起きているのかの現実をお伝えし、より情報に基づいた購買決定を下していただくためにお客様に情報をお伝えする努力の一貫です。影響を削減するためのパタゴニアの試行錯誤についてオープンに語ることにより、私たちは解決策およびアパレル産業内での協働を促すことを期待しています。

マイクロファイバー

マイクロファイバーはポリエステル・フリースやナイロン・ショーツなどの化繊衣類から洗濯時に流出し、排水処理場のろ過システムを通過、あるいは回避して、海やビーチ、河川や湖、そしてときには魚の胃の中など、あるべきでない場所に到達する5ミリ以下の極小繊維です。

パタゴニアがはじめてマイクロファイバーについて知ったのは2011年、カリフォルニア大学サンタバーバラ校の海洋生物学者マーク・アンソニー・ブラウン博士の研究により、世界中すべてのビーチで高濃度のマイクロプラスチック、とりわけファイバーが発見されたときです。当初はフリースがおもな原因であるとされましたが、それ以来、すべての繊維がこの問題の一因であることを学びました。洗濯中には化繊および自然繊維の両方が抜け落ちるため、科学者たちは異なる素材に由来するマイクロファイバーの影響をいまも研究中です。自然繊維はやがては生分解しますが、化繊はせず、海のプラスチック問題の増幅をもたらしています。

これまで、パタゴニアはマイクロファイバー汚染の解決策を探る5つのプロジェクトに資金を提供してきました。また、抜け落ちを最小限にするための繊維タイプおよび構造技術の識別を、独自の素材開発チームに依頼しました。その取り組みを支援するため、パタゴニアはノースカロライナ州立大学にマイクロファイバーの抜け落ちにつながる繊維の特徴を理解し、布地の洗濯時の繊維抜け落ちの可能性を査定する早急なテスト方法を開発する研究を委託しました。ごく最近では、REI、MEC(マウンテン・エクイップメント・コープ)そしてアークテリクスとのパートナーシップのもと、非営利団体の〈オーシャン・ワイズ〉、バンクーバー水族館、メトロバンクーバーに、地元の排水処理場のマイクロファイバーのろ過効率についての研究を委託しました。私たちはこれらの成果について、またパタゴニアが学んだことについて、すべてブログに投稿してきました。

プラスチック問題についてパタゴニアが行なっていること

道路脇リサイクル・プログラムは、パタゴニア製品を梱包するのに使われたポリ袋はおそらくリサイクルできないが、それはほとんどのスーパーチェーンとパタゴニアの全ストアで可能。ポリ袋はプラスチックのフィルム製で、パタゴニアの袋は20%のリサイクル素材を含む。来春、パタゴニアのポリ袋のすべてが100%リサイクル素材製となる。Photo: Tim Davis

プラスチックのパッケージ

パタゴニアは工場から製品を個々に梱包し、輸送と取り扱いからの保護のためにポリ袋を使います。ポリ袋はアメリカ全土における道路脇のリサイクル・プログラムでは一般に回収されていない種類であるポリエチレン・フィルム(プラスチック・フィルム#4またはLPDEフィルム)から作られています。

市町村のリサイクリング・システムはこのプラスチックをリサイクルできないかもしれませんが、私たちはそれをできるサプライヤーを見つけました。2020年春、パタゴニア製品を包むポリ袋はグローバル・リサイクル基準(GRS)認定の100%リサイクル製となります。

パタゴニア製品が梱包されているポリ袋をリサイクルしていただくようお願いします。アメリカでは多くのスーパーチェーンは使用したプラスチックの買い物袋を回収する箱を入り口に設けています。パタゴニアの製品を梱包したポリ袋も、それらの買い物袋と一緒にリサイクルできます。お近くのリサイクラーについてはEarth911.comでご覧いただけます。また日本でも、お住まいの自治体の分別にしたがって、ごみに出してください。

プラスチック問題についてパタゴニアが行なっていること

太平洋ゴミベルトはハワイとカリフォルニアのあいだのどこかに存在し、最低8万7千トンのプラスチックが含まれていると推定されている。このプラスチックのうち46%は廃棄された漁網である。南米の追跡可能なサプライチェーンを通して捨てられた漁網を収集し、スケートボード、サングラス、サーフボードのフィンなどの素材にリサイクルしているのは、カリフォルニア州ベンチュラを拠点とするブレオ。写真:ブレオ提供

プラスチックを海に入れさせない

ティンシェッド・ベンチャー基金を通して、パタゴニアはカリフォルニア州ベンチュラを拠点とする南米の追跡可能なサプライチェーンから捨てられた漁網を収集する会社、ブレオに投資しました。同社はこれらの網をネットプラス素材にリサイクルし、それらはスケートボード、サングラス、サーフボードのフィンなどに変身します。私たちは彼らの素材をパタゴニアのハード製品や衣料に統合させるためにブレオと協働しています。これまでにブレオは680万平方フィート(50万以上)の漁網を南米の海岸から流用しました。

生分解性プラスチック

「生分解性」や「堆肥化可能」であるといった主張は、洗剤、植木鉢、買い物袋から、はては衣料まで、多くの消費者製品に登場します。固形廃棄物の廃棄方法は異なるため(アメリカでは典型的に埋立て地に送りますが、ヨーロッパでは焼却されるのが一般です)、これらの製品が分解する機会を与えられることは、めったにありません。

生分解性とは素材が微生物作用によって自然界に存在する基本要素に分解されることを意味します。すなわち、それらは土壌に存在するような微生物によって「食べられ」なければならず、分解は比較的すばやく起きなければなりません。多くの素材は日光、熱、湿気、機械的圧力によっていずれは劣化しますが、これだけでは生分解ではありません。

天然物は本質的に生分解性とみなされますが、それは必ずしも真実ではありません。たとえば、レザーは動物の皮を「タンニング」して丈夫な製品にしたものですが、分解には24年から40年を要します。コットン繊維は生分解性ですが、コットンのシャツには生分解しない他の要素が含まれているかもしれません。縫製糸はポリエステルあるいはポリエステルの芯にコットンを巻いたものがほとんどで、ボタンは通常プラスチックか金属製です。コットンに色付けする染料ですら、繊維が劣化し、微量の染料を土中に残すときは、問題となるかもしれません。プラスチックと化繊の原料には劣化を促進させる添加剤を加えることができます。しかしそれらが基本要素へと完全に分解しなければ、その結果としての「マイクロプラスチック」は環境を汚染することにもつながります。

2015年以来、私たちは衣料の洗濯によるマイクロファイバー抜け落ちの解決策として生分解性の化繊繊維を研究してきました。パタゴニアは海洋環境における既存および将来の繊維素材の生分解性状況を評価するため、ベルギーを拠点とするOWSに第三者研究を委託しました。この研究により、私たちは生分解が異なる環境におけるテスト方法、テキスタイル加工あるいは環境(海洋、埋立て地、排水処理、産業コンポストなど)によってどれだけ複雑になるかを確認しました。

プラスチック問題についてパタゴニアが行なっていること

リサイクル・ポリエステルを使うことはペットボトルを埋立て地から遮断するだけでなく、石油から直接抽出したバージン素材を使うことに比較すると、炭素排出を40%削減する。またパタゴニアの広範囲なフィールドテストでは、リサイクル製品はバージン・ポリエステル製のギアに勝るとも劣らない性能を発揮することが明らかになっている。Photo: Lloyd Belcher

研究結果では、私たちがテストした生分解可能な化繊技術が海洋環境において生分解するとは、明確に示しませんでした。海洋環境はとても多岐にわたり、現実の世界と類似する適切なテストは困難です。私たちは決定的な主張をするためには、その挑戦を克服する必要があることを知っています。それに加えて、私たちのテストで示されたのは、自然かつ生分解性繊維であると幅広く認識されているウールは海洋環境で分解しないということでした。これらのテストに基づくと、私たちは化繊ファイバーに若干の修正を施すだけで海洋環境における生分解性率を劇的に向上させるかどうか、について確信がもてません。

現時点では、生分解性はマイクロファイバー汚染の解決策となれることは証明されていません。パタゴニア製品は長持ちし、丈夫で信頼のおけるものであってほしいと、私たちは思っています。私たちはこれからも生分解性素材のための新しい技術を追求し、それらを評価するために学界および他の製造業者と協力していきます。それは深刻な課題ですが、素晴らしいことでもあります。

パタゴニアのポリエステルおよびナイロン衣類が、惑星にすでに出回っている60億トンのプラスチックから完全に作られる――その日は来ます。あるいは、自然源または食糧生産を削減しない方法で栽培された植物由来の繊維から作られたものとなるでしょう。完全リサイクルあるいはバイオ・ポリエステル、そしてナイロンは、それでも環境への影響なしに作ることはできないかもしれませんが、プラスチックの便利さと利点によって私たちが現在直面しているそれよりも、はるかに低い影響で製造することができるでしょう。

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